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北極温暖化増幅、および、北極域変動の日本への影響の研究

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 北極の温暖化増幅がはっきりと認識されるようになりました。北極域ではアイスアルベドフィードバックや気温逆転層の消滅など幾つかの正のフィードバックが強く働いています。それに加えて、北極域と中高緯度緯域との大気交換が活発になっています。これは、中緯度の寒冷な冬の気候などの異常気象という形で顕在化する可能性を含んでいます。

 日本の冬の寒暖を決定する要因として、これまで、エルニーニョや北極振動が着目されてきましたが、最近、北極海域の海氷分布の変動が大気波動を介して日本の冬の周期的な寒気吹き出しをコントロールすることが分かってきました。北極の気候変動は日本の気候と密接に関連することで、日本の社会活動に影響を持ちます。この点で、専門家だけのものになりがちな南極の科学とは大きく異なります。北極圏の監視から、中緯度の気候予測に有効な情報を提供できれば、防災や経済活動に対して研究成果を社会に還元することにもつながります。

 この研究を進めるためには、冬季低気圧活動の作用点近傍に位置するニーオルスンでの長期的な観測データの蓄積とともに、砕氷船や研究船を用いた北極海での現場観測から顕著現象を積極的に観測し、中緯度の気候変化と照らし合わせていくことが必要不可欠です。


図1:北極海では全球平均よりも急激に温暖化すると予測(IPCC, 2007)。





図2:温暖化増幅のもと中緯度では寒冷なイベントが頻繁になってきている。
   海氷減少が引き起こす日本の気候への影響を解析(Inoue et al. 2012を加筆・修正)。