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海氷生成と海洋大循環・海洋物質循環の研究

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 北大西洋域と南極氷床沿岸域での海氷生成に伴う高密度水形成は地球規模の海洋大循環の駆動力として気候システムに対して重要な役割を担っています。この海洋大循環は約2000年の周期を持ち、全球規模の熱の輸送やCO2を含めた海洋中の物質循環を通して気候変動の時間スケールを規定する一つとなっています。両極のアイスコアから検出される南半球と北半球の気温のシーソー的変動の原因が海洋大循環の変調であると考えられています。

 大循環を駆動するためには、高密度水が沈降中の拡散によっても消滅しないような時間的・空間的な集中生産性が必要とされます。南極域では大陸沿岸の地形や氷舌の分布がカタバ風等の大気条件と合わさって効率的な高塩分水が形成されますが、それに加えて高塩分水が溜まりやすい海底地形とのカップリングが効率性を高める条件になっています。JAREを含めた日本のIPYでの観測により、新たな南極底層水の形成域が発見され、注目を集めています。温暖化やそれに伴う棚氷の崩壊等によって、海氷生産域が変わり、底層水生成量が変わって海洋大循環の変調へと結びつく可能性もあり、係留系を用いた海洋中深層の流体力学場の観測を併せて監視を続ける必要があります。

図: 海氷生成と南極底層水形成に関する一連の物理過程の模式図(断面図)。
矢印は海洋の流れや海氷の移動方向を示す。