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南極の質量収支研究

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南極氷床とグリーンランド氷床は今後どのように推移し、その海面上昇や全球気候への影響はどのように推移していくか?


図1:過去約25年間の氷床質量収支の時系列変動を、東南極、西南極、南極半島地域、そして全南極で表したもの。IMBIEチームと呼ばれる研究グループによって2018年6月にNature誌で公開された。この図は、文中に述べる「主要3手法」による結果を合成し、平均的な傾向を示している。このチームが示した傾向は、全南極では質量は減少していると評価されている。ただし、全南極では質量は微増していると主張する研究もある。
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 南極大陸氷床の規模の拡大や縮小は、南極大陸に降り積もる積雪の総量と、融解や氷河・氷床の流出で失われる氷の総量の収支で決まります。こうした収支のことを、氷床の「質量収支」と呼んでおり、地球温暖化のなかにある地球上の海水準に影響する重要な研究項目です。
 私たちは、巨大氷床の質量収支について、100万年規模やそれ以上の時間スケールの歴史や現在進行中の変動を解明し、将来の予測に繋げていきます。
 南極の質量収支をとらえることは、ごく最近まで非常に困難な作業でした。人工衛星からの観測が本格化した現在、主要な3手法があります。

 衛星搭載重力法
 →重力を衛星軌道上から観測し、南極の地域毎の重力の微少な変化をとらえ、氷の収支を推定します。
 衛星搭載のレーザー高度計やレーダ高度計法
 →氷床表面高度の微少な変化を衛星軌道上からの計測でとらえ、氷の収支を推定します。
 インプット・アウトプット法
 →氷床上に堆積する雪の量を、気象モデルや気候モデルをもとに推定します。また、氷床から海に流出する氷の量を、衛星搭載の合成開口レーダの解析から推定します。これらの差分をとることで、氷床の質量収支を推定します。

 南極の大陸規模の氷床の質量収支の俯瞰像は、これらの衛星観測に基づく手法を用いなければ決してわかりません。しかし、これらの3手法でおこなった計測に関しても、手法によって、得られる結果には大きな差がまだ存在します。その意味は、それぞれの手法には大きな誤差が依然として存在することが推定できます。そうした誤差を評価し、減らしていくためには、俯瞰像をとらえる研究に加え、質量収支にかかる諸々の要素の研究が重要です。

たとえば、以下の要素があります。

 海による氷床縁辺部融解量を実測し評価すること
 積雪量の真値を、氷床内陸部の現場観測でとらえていくこと
 領域気象モデルを応用し、積雪量の実測値とあわせ、モデル応用の可能性を追求すること
 GIAモデル(マントル粘性と大陸岩盤間の相互作用を研究するモデル)の応用研究
 フィルンプロセス(雪が圧密・焼結をして氷に変化していく過程)を理解すること
 氷床の底面で発生する融解量を評価していくこと
 現在南極のドローニングモードランド地域でしばしば検知されている氷床質量の増加傾向を確認していくこと
 氷床の表面融解を評価すること
 氷床の流動による氷の流出量を評価していくこと

主要3手法とあわせてのこうした要素についての研究を重要と考えています。