今度はオーロラの動きに着目してみましょう。
右の図は、アイスランドと昭和基地で撮影した魚眼の映像を左右に並べたものです。上が極方向ですが、東西の向きをそろえるために昭和基地の方の映像は左右を反転しています。右の図をクリックすると動画を見ることができます。(RealPlayerが必要。詳しくはこちらへ)
この動画は2000年9月30日に観測された共役点オーロラの映像で、時間圧縮(早送り)した映像になっています。正確な時刻はアイスランド(左側)の画像に表示してあるものを参考にして下さい。それぞれの現象の同じ部分・違う部分に着目してみると良いでしょう。
この動画は3つの部分からなっています。以下は解説です。
1) Westward Traveling Surge (WTS)
この映像では、画面の左から右へ(東から西へ)オーロラが激しく渦をまきながら移動していきます。このように西側に伝播する渦状のオーロラは、“Westward Traveling Surge”と呼ばれています。オーロラサブストーム(下記のAuroral Breakupを参照)が真夜中側で発生し、オーロラの領域が高緯度方向及び西向きに拡大する過程で見られます。一般的にこの西向きの移動速度は毎秒500〜800mです。
この日の観測では、昭和基地でアイスランドよりも早くWestward Traveling Surgeが出現しています。つまりこの時の昭和基地の地磁気共役点は、アイスランドよりも東側に位置していると考えられます。
なお、アイスランドTV画像の西側の地平線に見える明るい部分は夕日の名残です。
2) Auroral Breakup
オーロラのブレイクアップとはオーロラの明るさと動きが爆発的に発達する過程のことです。この爆発現象は低緯度側(画面下側)から発達し、激しい動きをしながら天頂から極方向(画面上方向)へ移動してやがて弱まります。継続時間は10分程度です。
ブレイクアップは、オーロラの中でも最も感動的で神秘的な現象です。この現象は磁気圏全体に蓄積されたエネルギーの解放過程でもあることから、オーロラ・サブストームとも磁気圏サブストームとも呼ばれています。
この映像中のブレイクアップ・オーロラはアイスランドと昭和基地でほぼ同時に開始しています。
3) Large Scale Pulsating Aurora
オーロラが数秒から数十秒で点滅を繰り返す現象のことを、Pulsating Aurora(脈動オーロラ)といいます。大きさは数十〜数百kmで、オーロラ・ブレークアップの直後に必ず出現する普遍的な現象です。
脈動オーロラの代表的なタイプとして以下の2つが挙げられます。
- 塊状のオーロラがあまり動くことなく全体として点滅を繰り返す『非伝搬型パッチ状脈動オーロラ』
- 東西方向や南北方向に伝搬しながら点滅を繰り返す『伝搬型脈動オーロラ』
この映像の脈動オーロラは2番目の、『伝搬型脈動オーロラ』です。
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