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SuperDARN研究の重要性

SuperDARN HF Radarの大きな特徴は、レーダービームを16-20方向に放射・掃引することで、比較的短時間に電離圏の広い領域の視線方向の変動等を検出できることにあります。更に、極域、中緯度帯に設置された多数のレーダー観測を統合することで、グローバルな電離圏プラズマの運動を2次元的に観測し、極域~中緯度帯の電離圏ダイナミクス、磁気圏-電離圏結合の研究に大きな威力を発揮しています。

また、このようなグローバルな観測ネットワークは、地球近傍の宇宙環境の変動及びその社会インフラに対する影響を予測する宇宙天気予報にとっても重要です。電離圏変動は通信・放送・測位等に影響を及ぼします。電離圏嵐と呼ばれる大きな電離圏変動が生じる際には、短波による通信・放送が出来なくなったり、衛星を用いた精密測位の誤差が大きくなったりします。電離圏変動を駆動する主なエネルギーの源の一つは磁気圏から極域電離圏へのエネルギー流入であり、SuperDARNの観測と他の地上観測を組み合わせることで、極域へのエネルギー流入量とその空間分布を把握することが可能となります。また、深部帯電と呼ばれる人工衛星の障害要因の一つである放射線帯粒子変動は、周期150~600秒程度のPc5地磁気脈動と呼ばれる変動などに伴って増加することが知られており、SuperDARNはこのような長周期の地磁気脈動の空間分布の把握・モニタリングにも威力を発揮します。

加えて、HFレーダーの放射する電波を短波の電波伝搬の現況把握として活用できます。地上からの反射エコーの分布は、そのままレーダーサイトからの伝搬可能領域の目安となりますし、地上からの反射エコー分布を電波伝搬モデルと比較することによって、電離圏電子密度の3次元分布を把握できる可能性があります。

-今後の可能性

SuperDARNは、レーダー技術を発展及び観測ネットワークの拡大によって、更なる発展が期待できます。

1) 多周波数観測

現在、いくつかのレーダーで2周波数のビームを同じ方向に同時に発射する観測が行われています。複数の周波数で電離圏の同じ領域を同時に観測することができると、視線方向のドップラー速度の推定精度が向上すると共に、反射位置での電子密度の推定が可能となります。
又、HFレーダーが観測可能な領域はビームに用いる周波数によって変化するので、将来多周波数で観測を行うと、HFレーダーで観測できる領域が更に拡がります。

2)干渉計観測による到来仰角の推定

SuperDARN HFレーダーは視線方向に並んだ2組のアンテナを用いて、その時間差からエコーが到来した仰角を推定することができます。これにより、エコーの戻ってきた領域推定の精度が向上します。

3)イメージングレーダー

HFレーダーの受信機を各アンテナ毎に搭載し、その受信信号を合成することで、電離圏エコーの分布を高空間分解能で推定するイメージングレーダーの技術も研究されています。この技術によって更に高い空間分解能で電離圏変動を計測することが可能となります。

4)パッシブレーダー

SuperDARNのHFレーダーは送信サイトと受信サイトが同じ場所で観測を行っていますが、受信機のみのサイトを設けることで、パッシブレーダー観測が可能となります。これにより、異なる方向、異なる領域のプラズマの運動の計測が可能になります。

5)低緯度領域での観測

HFレーダーを更に低緯度に設置して、プラズマバブルに伴う変動を検出することもを検討されています。