本ページ後半に日本語で説明しています。
[English]
Clarify the present, past, and future global environment conditions through polar research
In the Polar Meteorology and Glaciology (PMG) Group, our research fields include atmospheric science, meteorology, glaciology, sea ice/ocean sciences, and paleoclimatology. We study the past, present, and future conditions of the global environment and climate through studies on the polar atmosphere (troposphere, stratosphere), snow and ice, and the ocean. To this end, we conduct research on the many interrelated changes in the atmosphere, hydrosphere, and cryosphere, mainly by conducting on-site observations, satellite remote sensing, and climate/ice sheet modeling. With the acceleration of global warming in recent years, the social and scientific roles of polar research have become extremely important.
Responding to many of society’s questions is a social demand. What roles do the Antarctic and the Arctic regions play in global climate and environment systems? How were the ice sheets on the Antarctic continent formed, and what boundary conditions and internal structures maintain these features? The ice sheets in both polar regions are fragile and are melting at an increasing rate due to global warming, causing sea levels to rise. How will such melting proceed, and what impacts will this have on the global environment and human society? In addition, the history of climate change for the last one million years on Earth can be inferred from an archive called “ice cores”. Since the polar regions are areas remote from sources of anthropogenic contaminants, we can elucidate changes in the Earth’s climate based on observations of these cores.
Studies to clarify the phenomena in the polar atmosphere and their mechanisms include research on the circulation and transport of atmospheric substances (e.g. aerosols, trace gases, and water) and radiation characteristics of polar aerosols and their interactions with clouds and climate. We are also investigating the radiation balance; conducting continuous observations of greenhouse gases, such as carbon dioxide and methane; and researching the heat and material cycles at the surface and in the upper-atmosphere through meteorological observations over extensive areas in both polar regions. In addition, we are investigating changes in atmospheric circulation over the Arctic and the effects that these changes have on mid-latitude weather.
Studies on the polar cryosphere using ice cores, which act as records of paleoenvironmental conditions, have clarified past global climatic and environmental changes. Ice cores are collected by drilling ice sheets and glaciers in the polar regions of Antarctica and the Arctic, including Greenland. The oldest ice core that we have obtained to date is one that was drilled at Dome Fuji in Antarctica; the core covers the past 720,000 years. We aim to clarify paleoenvironmental conditions up to an age of more than one million years by future ice core drilling.
Furthermore, we are conducting research on the formation process, internal structure and flow of the ice sheets in Antarctica and Greenland, and the mass balance of the ice sheets. Melting at the margins of the ice sheets, collapse of ice shelves, changes in ice flow, and changes in mass balance are important factors that affect sea-level increases due to global warming, and there is a strong demand for understanding these changes in the polar regions.
We are conducting comprehensive interdisciplinary observations on the effects of changes in the Arctic cryosphere on global climate and environment through the atmosphere and ocean. Regarding the polar oceans, we are conducting research on the formation mechanisms of polynyas and Antarctic bottom water, sea ice growth/decline processes, and ocean structure/circulation characteristics. We are also investigating the effects of sea ice changes on the climate, the atmosphere over the polar oceans, and on ocean-atmosphere carbon dioxide exchange and ocean acidification.
[日本語]
活動概要
国立極地研究所は、南北両極域に関する総合研究を行う国内唯一の学術研究機関として,大学等研究機関との連携協力,機関連携プロジェクトや国際共同観測・研究プロジェクトを主導しつつ,国際水準の観測・研究を実施している。極地研が担う4つの主要タスクは「日本の極地科学研究と極地観測の中核拠点としての役割」、「南極地域観測の中核機関としての役割」、「北極観測の中核機関としての役割」および「研究者の養成機関としての役割」である。
国立極地研究所のなかで、気水圏研究グループでは、大気科学、気象学、雪氷学、海氷・海洋科学、古気候学などに関する広いテーマの研究を進めている。極域の大気圏(対流圏、成層圏)、雪氷圏、海洋圏を研究対象とし、地球環境や気候の過去・現在・未来を明らかにする。この目的のため、相互に関連する気水圏の変動メカニズムに関する研究を主に現地観測、衛星リモートセンシング研究や、気候・氷床システムのモデル研究との連携によって進めている。
近年に地球温暖化が顕在化してきたことで、極域研究の社会的な役割は極めて重要になっている。多くの問いに答えていくことが社会的な要請となっている。南極や北極が地球の気候環境システムのなかでどのような意味を持つか?南極の大陸と氷床の構造体がどのように成立し、どのような境界条件や内部構造で維持されているのか?両極の氷床は、地球温暖化とともに今融解を加速しつつあり、海面上昇をひきおこすもととなる脆弱な物体である。これらの融解がどうすすみ、地球環境やそこに住む人類社会にどのような影響をもたらすのか?さらに、地球上の過去100万年規模の気候環境変動の歴史を氷床アイスコアというアーカイブから解明することができる。極域は人為起源物質の放出源から距離のあるエリアであり、そこで得られる観測情報から地球の変化を知ることができる。
極域大気圏の現象とそのメカニズムを明らかにする研究としては、大気や大気中のエアロゾル、微量気体、水などの物質循環・物質輸送に関する研究、極域エアロゾルの放射特性や雲との相互作用とその気候への影響、放射収支の研究、両極での二酸化炭素・メタンガスなど温室効果ガスの連続観測や、広域な地上気象や高層気象観測による熱・物質循環研究を行っている。また、北極の大気循環の変化、中緯度の気象及ぼす影響も探っている。
極域雪氷圏に関する研究は、南極とグリーンランドという両極地域の氷床や氷河の掘削によってアイスコアを採取し、古環境を復元する研究から過去の地球規模の気候・環境変動を明らかにしてきた。その時間スケールは、これまで最も古いものとしては南極ドームふじで掘削したアイスコアを用いて72万年の時間スケールをカバーするほか、将来のアイスコア掘削は100万年を超える年代までの古環境の調査を目指している。
さらに南極とグリーンランドの氷床の形成過程や内部構造や流動、質量収支や氷床への物質輸送に関する研究をおこなっている。氷床縁辺部の融解や棚氷の崩壊、流動の変化、かん養量の変化は、地球温暖化にともなう海水準上昇を決定づける重要な現象であり、極域全体の変動の把握が強く求められている。
北極雪氷圏での変化が大気・海洋を通じて広域へ影響することに関し学際的な総合的観測を行っている。極域海洋圏に関しては、ポリニヤ域や南極底層水の形成機構、海氷成長・融解過程と海洋構造・循環特性及び海氷変動が気候変動に与える影響の研究、極域海洋が地球表層における大気-海洋系の二酸化炭素循環に及ぼす影響および海洋酸性化の研究などを行っている。
本ページは、国立極地研究所が担う研究・教育のなかでも、この気水圏研究関連のものを特に紹介するものです。国立極地研究所のメインとなるウェブページについては、左にあるバナーからお入りください。
科学的目標
私たちは、極域の大気・水・物質・エネルギー循環の研究および教育をおこなっています。こうした研究を通じ、現在の人類社会が直面する問題である地球温暖化/気候変動に関連した極域の変化の理解を追求します。
私たちは、気候システムの研究を通して、気候変動における極域の応答と役割を解明していきます。
私たちは、そうした最新の知見を社会に伝え続ける役割を果たします。それによって、社会の各方面の方々や政策決定者が地球温暖化/気候変動に関連し進むべき方向性にかかる判断材料となる知見を供給します。
研究対象とする時間スケール:
私たちが研究対象とする時間スケールは、主に過去約200万年間のなかでの氷期・間氷期サイクルから、現在気候、そして、将来予測までをカバーします。
研究対象とするフィールド:
雪氷圏の大気・地球表面・海洋
鉛直方向には、成層圏・対流圏・大気境界層、氷床・氷河、大陸表層、海面・海氷、海洋表層~深層を研究対象としています。
水平的には南極内陸域から昭和基地、南大洋・季節海氷域、北極海域、グリーンランド氷床、及びニーオルスン・東シベリア・アラスカ・カナダにおける観測拠点を含めた地域を軸にして、研究対象にしています。
代表的なキークエスチョン
海水準は今後どのように変動していくか?
両極氷床は今後どのように推移し、その海面上昇や全球気候への影響は?
両極氷床は、動力学・流動過程としてどれだけの氷を海へ供給するのか?
様々な周期をもつ氷期サイクルを決定し、急激な気候変動をもたらすメカニズムは何か?
高緯度で発生するエアロゾルの気候システムにおける役割は何か?
温室効果気体や関連成分の長周期・短周期の変動は何によって決まるか?
極域の湿潤化の要因と影響はどのような時間・空間スケールで決まるか?
両極域で起こっている海氷変動は何が原因か?
※上記は代表的なものの例であり、キークエスチョンは更に多岐にあります。
リンク:旧バージョン:科学的な目標2013年版へ
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