写真は、私達が物資輸送に用いている通称「2トン橇」です。
観測
隊の早い時期にノウハウとして確立し、これまで用いられてきました。物資を
搭載した後、荷物を押さえるために、現在は「ラッシングベルト」と呼ばれる荷
締めベルトが多く用いられています、写真に写っている橙色のベルトです。両端
のフックを橇に引っかけ、あとはベルト長を調整してバックルを締めるだけなの
で大ざっぱで扱いは簡単です。古い時代の観測隊では、こうしたベルトではなく
、荷締めには直径15mm程度、長さ10-20m程度のロープを用いていまし
た。これを「ラッシングロープ」と呼んでいます。橇の両側にあるフックを用いて、「南京
結び」というロープの結び方をします。写真に写っている橙色の細いロープは、
かつてのラッ
シングロープとは異なりますが、この「南京結び」をしています。
ラッシングベルトが多用されるようになり、今は「ラッシングロープ」は使用さ
れなくなりました。近年はまず見ません。基地在庫の有無を尋ねてもどうも無い
ようです。ドームふじ基地には数本の在庫があるのを見ました。
廃れた昔のスキル?。「でも」、です。ロープのいいところは、1
本のロープで、写真のようにキメ細かに橇の多数箇所の荷物を押さえることが
できます。それに安価です。15メートル長程度のロープが一本あれば、現状で
のラッシングベルト3~5本程度以上で押さえている荷物を押さえることができま
す。ランシングロープ全盛の時代の隊員は「南京結び」は基本スキルとして身に
つけていて、橇の両側にそれぞれ立ち、自分の側を結んでは橇の反対側に居る相
手に投げ渡し、両サイドからテンポ良くどんどん荷を絞めていきました。ロープの
利用は、ラッ
シングベルトの価格の高額さや、結果として観測隊の現場での数の
不足にも悩まされる度合いは減るとおもいます。今回の現場でも不足気味でした
。橇一台の荷を押さえるのに、5本程度のベルトをしばしば使っています。これ
でおそらく数万円の出費。1本のロープがあれば単純に皆済んでしまうのに。荷
締め道具やスキルの多様性や選択肢は、廃れさせず今後に継承すべきものである
とおもいます。
「ラッシングベルト」登場時には、「便利だが大ざっぱな道具がき
たもの」とおもっていました。いつの間にか今はそれがロープを駆逐してしまい
ました。写真のように、ベルトが不足していてもロープがあれば不足部分を「さ
さっ」と南京で締め上げることができます。
写真:2トン橇に積んだ荷物を押さえているラッシングベルトとラ
ッシングロープ。
藤田記