南極観測隊便り 2018 - 2019


2019/01/21

アイスコアのヘリ空輸

Tweet ThisSend to Facebook | by ishida
アイスコアのヘリコプター空輸は、1月18日に実現しました。90梱包の冷凍試料を、H128地点(S16から約80km内陸の地点、標高約1300m)に、「しらせ」からCH型ヘリコプターが4度飛来し、朝から午後までかけて全試料を船の冷凍コンテナに輸送しました。曇天と降雪が予報されていたなか、前日の段階ではヘリ輸送の実現に楽観的にはなれませんでしたが、天候が良好であったため輸送は順調にすすみました。気温は-10℃前後になっているため、アイスコアの保存にとっては氷の融点に近い「非常に高温状態」になっています。輸送の途中にどうしても避けることのできないこの沿岸地域での高温状態を如何に短時間で済ませるかという点が重要なのです。もし悪天がきて、数日~1週間程度経過してしまうと、アイスコアの劣化は避けられません。氷の結晶の状態が変わる(再結晶といいます)現象や、ガスの拡散の現象が起こってしまうのです。輸送船「しらせ」の冷凍コンテナの温度設定は-30℃。内陸からここに速やかにアイスコアを移送します。以下は写真特集です。


写真1:冷凍試料は、橇2台にアルミを表面に引いた断熱シートでおおっています。断熱シートのなかには雪を大量に詰めてあり、沿岸の-10℃付近の高温でも冷凍試料の温度が簡単には上昇しないように工夫をしています。冷凍梱包の中には温度記録計を入れてあり、温度履歴を追跡できるようにしています。



写真2:ヘリの到着を待つ間、冷凍試料の近くで待機するメンバー。川村、伊藤、津滝の3名がヘリに搭乗し、冷凍試料に同伴しました。取り扱い等に間違いが無く、確実に冷凍コンテナに収納されるまでを見届けてきます。


写真3:朝8時過ぎに「しらせ」を出発したヘリコプター第一便は、9時頃に到着しました。


写真4:発煙筒を使って、ヘリコプターのパイロットは風向きを視認します。そのうえで、風下から風上に向かって離発着をします。


写真5:ヘリコプターの着陸後、雪上車が冷凍梱包の入った橇を後ろから押して、物資をヘリコプターに接近させます。約30メートル程度まで接近したのち、物資は、人力で曳くさらに小型の橇「ナンセン橇」に載せ替えて、人力でヘリコプターの入り口付近まで運びます。ヘリコプ ターへの搭載作業には、ヘリに搭乗してやってきた「しらせ」乗員約10名が加わります。


写真6:物資と人員を搭載したのち雪煙を上げて離陸するヘリコプター。第一便では、原田夏隊長がH128地点に飛来し、第2便飛来までの間内陸ドーム隊のメンバーと歓談しました。


写真7:ヘリコプターから撮影した、南極氷床と海の境界「氷縁」。片道の飛行時間は約30分です。(撮影:津滝)


写真8:輸送船「しらせ」のヘリコプター甲板に着陸したヘリコプター。ただちに給油作業が行われます。そののち、再度H128地点に向かいます。こうしたサイクルを4セットおこないました。(撮影:津滝)


写真9:しらせの冷凍コンテナ入り口付近で、コンテナへの収納を待つ冷凍梱包。(撮影:津滝)


午後1時過ぎにはすべての輸送が完了し、また、しらせに出向いた3名も、冷凍試料のコンテナへの収納を見届けたのちH128に帰還しました。S16地点に向けて、午後2時に再出発。この日は30km移動し、S16地点まであと50kmの地点に到達しました。翌日は、内陸旅行としての走行の最終日となります。

藤田記
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