南極観測隊便り 2017/2018


2017/12/09

軟雪地帯を行く

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中澤です。ドーム隊は現在、軟雪地帯を進んでいます。この地域の雪は軟らかいため、雪上車の履帯(キャタピラ)はグリップが低下し、また引いている橇のスキー部は雪面にもぐってしまい、雪上車は進むのに難儀します。中継拠点の辺りから、この軟雪地帯が始まります。私が乗車している115号車は車列の最後尾を走っているため、前の車両が踏み荒らした(耕した)ルート上を走ることになります(写真1)。12月5日には、すぐ前を走る111号車に付いていて行けず、どんどん離されてしまいました。その日のキャンプ地MD500では、帰路の燃料用に、燃料ドラム缶12本を積んだ橇を1橇置いてきました。これにより、115号車が引く物資は約3.2トン分が減りました。現在、走行が随分楽になり、111号車にも遅れずに付いていて行くことが出来ています。

(写真1:荒れたルートを走る。)

 さて、この軟雪地帯の雪質(雪の分類名)ですが、表面はウインドクラスト、もしくは、こしまり雪のようです(写真2)。ウインドクラストは、風の影響で表面近傍の雪が固まってできる薄い硬い層のことをいいます。こしまり雪とは、新雪が積もってから雪温が0℃より低い状態で時間が経ったときに見られます。日本では、降雪時の結晶形から雪粒が丸い形に変わって、且つ隣り合う雪粒同士が焼結作用により、つながり固くなり始めていることが多いのですが、南極は雪温が低いので、降雪時の結晶形が若干残っていたり、雪粒同士のつながりもさほど進んでいないため、さらさらしています。一方、表層数センチメートルより下層では、こしまり雪からこしもざらめ雪へ徐々に変態しているのが観察できます。こしもざらめ雪は、積雪内部に長時間温度差があるとき、雪粒が角ばった平らな形に変わったものです。こしまり雪やこしもざらめ雪は非常にもろく、グラニュー糖のようにさらさらしています(写真3)。このこしもざらめ雪が積雪の表層数センチメートル下から深くまで発達しているのが軟雪地帯の特徴です。

(写真2:表面はやや硬い。)


(写真3:積雪表面から数センチメートル以深では、さらさらした、こしまり雪やこしもざらめ雪が発達しており、もろい層になっている。)

本日の行動
出発地:MD620
キャンプ地:MD680
標高:約3800 m
気温:-36度(6時半)、-32度(18時半)
風速:1〜3 m/s
移動距離:60 km
S16(出発地)からの積算移動距離:1003 km
ドームふじ基地まで:53 km
本日の行動:移動、ルート沿い雪尺観測とサンプリング、レーダー観測、キャンプ地での観測、雪上車整備

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