アイスコア研究ブログ


2019/05/05

海水面上昇のペース現況

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 4月8日に、Sea Level Change のセッションに参加しました。基調講演は、NASAのSea Level Change (SLC)チームに所属するSteven Nerem氏がおこないました。
人工衛星搭載の高度計に基づいて1993年以降続いている海面上昇の数値が示され、これまで70mmの上昇が平均値で観測されています。加速傾向にあり、その加速度は0.097mm/yr^2となっていました。同氏は昨年にPNAS誌に下記の論文を発表しています。

Climate-change–driven accelerated sea-level rise detected in the altimeter era
R. S. Nerem, B. D. Beckley, J. T. Fasullo, B. D. Hamlington, D. Masters, and G. T. Mitchum
PNAS February 27, 2018 115 (9) 2022-2025; first published February 12, 2018 https://doi.org/10.1073/pnas.1717312115

この段階では、加速度をもっと小さな値で示しています(0.084)。上方修正(更新)のようです。実際には、海面上昇には地域特性もあります。時系列変動としても、エルニーニョ・ラニーニャの出現に応じた短期的な海面上昇の停止やその後のリバウンドも観測されています。将来どうなるかの外挿は、多項式近似(Quadratic)や直線近似の大雑把な外挿で表現され、こうした現象の解析的な予測が困難な様子を示していました。

海水準上昇は、2100年までに、2005年と比べ約65cm程度と見積もられていますが、この数字が、氷床流域の融解によってどう増加しうるか、それが今後の世界にとり非常に重要な課題になります。
23:22 | コメント(0) | 学会での見聞録など