南極ドームブログファンの皆様 こんにちは 機械隊員の小林です
本日は私たちが乗っている大原の雪上車のことをお話します
オレンジ色の大きな雪上車、お世辞にもカッコイイとは言えない、武骨な昭和レトロ感のある車体。全長6100㎜、車体幅2900㎜、高さ3940㎜。日本を走る大型バスの半分くらいの長さと思ってもらえば想像がつくでしょうか。室内高は170cmくらい、身長の高い隊員はいつも背中を丸めています。各車両に3トン近い重い橇を7台も引いて走る頑張り屋。エンジンは日本で走っている4トントラックのもの(220kw)に4速オートマチックトランスミッションが付いていています。デファレンシャルギアだけが特殊なもので左右の駆動軸を独立して制動させるバンドブレーキが付いていて、これでかじ取りをします。運転席にはアクセルペダル、シフトレバー、テンパーという左右の駆動軸のブレーキをかける長いパイプシャフトが出ているだけでブレーキペダルはありません。いたってシンプルです。二名の隊員が交代で運転して、ドーム基地往復を走ります。
私が乗る109号車は食堂車にもなっていて、朝晩は10人の隊員が全員集合して食事をする団らんの場です。走行中はすべて無線機での交信。UHF、VHF、HFの高性能の無線機が搭載されてます。現在、昭和基地とはキャンプ地で20:00にHF無線機で定時交信、人員の無事を伝えています。100vインバーターもあるので、PCやその他の充電には困りません。
車両は南極内陸旅行に特化して作られたもので、あらゆるところに工夫が見られます。ラジエター➡エンジン➡ミッション➡デファレンシャルギアまでがフタの付いた一つの長い箱に収めた状態です。これで吹雪の時の停滞中は前後のフタを閉めて外部と遮断できます。ブリザードという言葉を聞いたことがあると思います。有名なのはユーミンの歌。しかし本当のブリザードとはそんなロマンチックな生やさしいものではなく、風速30mを超える時もあり、南極の細かい雪の粒がどんな狭い隙間からも入り込んできます。フタが無ければ、たぶんエンジンが見えないほど雪が入り込んでしまうことでしょう。ブリザードで停滞中は不必要な冷却をせずに室内のヒーターがとても効きます。当然、走行中はフタを全開にして走ります。
熱線入りフロントガラス以外の窓ガラスは二重ガラスで壁の保温材も厚く、ドアは冷凍室の扉の構造です。エンジンがかかっていればとても暖かい(暑い)です。そのため走行中、隊員は半そで短パンの人もいます。寝るときはエンジンを止めますが、その余熱で朝まで凍えることなく眠ることができます。私は車内のエンジンカバーの上で寝ているので外気温がマイナス20℃でも暑くて汗をかいて目を覚ますこともあります。室内の床板を開くとエンジン、ミッション、デフが丸見えとなり、日常点検をはじめ、ほとんどの整備や修理が室内で行えます。これは寒い南極での修理屋にとっては大変ありがたいことです。今のところ全車異常無く元気に走っています。