南極観測隊便り 2017/2018


2018/02/10

全車無事帰還!

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ついに出発地点のS16まで還ってきた。思い返せば、約三か月前に成田空港を旅立ち、 S16を11月13日、雪上車5台でドーム基地に向けて出発した。二か月以上の雪上車の中での生活。食料、燃料を橇に載せ、水は南極の雪を雪上車の排熱を利用して溶かして利用。3ヶ月風呂に入らない覚悟をしてきたが時々、排熱で作ったお湯でシャワーも浴びた。生きてゆくためのすべてを雪上車に頼って生活してきた。どんなに荒れたブリザードでも暑いくらいの室温。本当に頼もしいヤツだった。食料橇のあり余る食材が我々を安心させてくれた。

私は修理屋。この南極ドーム旅行中、(どんなことがあっても、すべての雪上車を還さなければならない)と重責を負っていた。エンジン、ミッション、デフなどのブラックボックス的な大きな部品に致命的な故障がない限りどんな方法をとっても還さなくてはならない。そう考えていた。修理はあったものの、結果的に大きな故障なく全車元気に戻って来られた。

1月24日 16:00 先頭をピステンで走る伊藤隊員から、「只今S16に到着しました」と無線が入る こちら二番手を走る109号車もすでにピステンを確認できる距離。嬉しさがこみあげてくる。そして一番心配だった20年車歴のこの109号車も完走ゴール。直後、2か月以上共に同じ雪上車で生活をしてきたドクターの宮岡隊員と握手。すぐあとに今回一番コンディションが良かった111号車が雪煙をあげて元気いっぱいの到着。次いでエンジン熱が大きかった115号車も何気ない顔をして着。そして一番新しいが、少々問題が多かった117号車も無事ゴール。ゴール地点で感動の喜びに崩れ落ちる自分を想像していたが、全車が無事帰還したことに安堵し、緊張感が途切れ、力が抜けた。連日、早朝からルートの除雪整備をして大きくて硬いサスツルギを削りながら走ってくれた伊藤隊員の運転するピステン。スキー場とは格段に違う大きな除雪抵抗を受けながらもドーム基地往復を完璧に働いてくれた。お陰で長い橇列を引く4台の雪上車や橇、橇に乗った荷に負担をかけることなく走行できた。大きな衝撃負担が少なかったことがSM100の故障が少なかったことにつながったのではないだろうか。これは今後の内陸旅行を見直す大きな革命とも言えるだろう。その晩、この旅行で、私のたった一つの願い、夢だった全車完走が叶った喜びの中、酔いつぶれた。
(小林記)


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