南極観測隊便り 2017/2018


2018/01/12

変わらないもの、変わったもの、変わってほしくないもの

Tweet ThisSend to Facebook | by 管理者
【変わらないもの】
 こんにちは、南極出発2週間前に一人で奥華子さんのライブに行き、全曲南極に持ってきている医療隊員宮岡です。その奥華子さんで『時をかける少女(アニメ版)』の主題歌になっている『変わらないもの』という曲があります。その中の一節で『変わらないもの、探していた~』というのがあるのですが、レーダー隊は、100万年間変わらないもの(正確には動かないものかもしれませんが)探しているのだろうな、とプレーヤーから流れてきた曲を聴きながらそんな事を思っておりました。

【変わったもの】
 今回の内陸調査で一番変わったことといえば、ピステンと呼ばれる除雪車を内陸に持ち込んだことなのではないでしょうか。一例をあげると、
・先頭に立って除雪しながら走ってくれる→後続車はうねりが少なく走れる。
・1トン以上ある燃料タンクをヒアブで吊るして移動してくれる→人間が運ばなくて良い。
・試料溶解を防ぐ為に橇の雪入れする雪を集めてくれる→橇に荷物積み込みから完了まで40分で終了!!(おそらく大幅な時間短縮になっているはず)
その他にも非常にお世話になっています。これは除雪車の力だけではなく、数cm単位でブレードを操作できるオペレーター(運転手)の技量によるところが大きいのではないかと思います。



おそらく以前の隊次に比べ、作業時間・量とも大幅に減っているはずです。重い荷物をもつ事が減っていますので医療隊員の立場から申し上げても、腰痛や外傷などのリスクが減っており、非常に助かっています。「俺の時はなあ…」と、OBさん達から言われるかもしれませんが、禁断の果実の味を知ってしまった我々は、もう昔には戻れないでしょう。
そのような中で、空ドラムを橇から人力で降ろす作業中に、ドラムが足にヒットしてしまい皮下出血・擦過傷・打撲の診断を自ら診断する羽目になった自分は愚かとしかいいようがありません。あまりの痛みに雪面の上を転がりながら「お医者さんを呼んでください!!」と叫んでいる時の、周囲の設営隊員の冷ややかな表情は何とも言えないものでした。



【変わってほしくないもの】
 11日ドームを出発し、既に帰路についております。ここ数日は天気も良く風も殆どありません。そんな中心配になってくるのは食料橇内の食材達。強い日差しの影響か、橇に設置してある温度計は-8℃を指しており、わずかではありますが溶けだしている材料がありました。残り3週間、『米とカップ麺しか食べ物がない!』という事にならないよう、気温がもう少し下がり食材が溶けださない事を切に祈るばかりです。
 往路と復路は一部別のルートを走行しますが、基本的には同じルートを走行します。現在のルートは、約1か月前に走行した区間。画像の右半分に以前走ったルートがわずかではありますが残っています。左半分は、現在走行している先行車の跡。雪面が柔らかい影響かエンジンに負荷がかかっているようです。以前の除雪の跡がきれいに変わらず残っていれば走りやすいのだろうな、と素人目にはうつりました。



 助手席にいる時は基本的にすることがないので、依頼された医学研究の調整・整理や、撮りためた写真の整理をしています。カメラの中に、出発2ヶ月前に撮ったものが残っていました。

写真の左に写っているのは、50年前に南極で越冬した第10次南極観測隊医療隊員の85歳の吉川先生。
私が学生時代に友人に連れられて、たまたま入った飲み屋のカウンターで隣になり、それ以来交流が続いています。『おまえが帰ってくるまで生きているかな?』と冗談めかして言っておられましたが、いつまでも変わらず元気でいて欲しい、そんな風に思ったのを思い出しました。


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