1月の中旬以降、内陸ドーム隊がARP2地点から沿岸に近づくま
で、曇天や悪天が続いていました。移動にともなって緯度もだんだん低緯度側にうつ
ります。ドームふじ南方の探査地域では南緯77度付近だったものが、沿岸のS
16付近では南緯69度付近。季節としても、夏至がすぎて既に約1カ月経ち、その
うえ、緯度も約8度低緯度側に移動しました。日付けは特定できませんが、いつの
間にか日没が訪れるようになっていました。
1月19日の深夜零時頃に、真北方向の地平線に満月が半分顔を出
していました。振り返って真南方向をみたら、太陽は地平線の下に隠れていました
。日没をはじめて確認。
写真1:地平線上の真北の方角に半分顔を出した満月。日射がまだ
あたっている上側の空と、地球の影が映った下側の空があることがわかります。
写真2:真南の地平線。この日、太陽は既に隠れていました。
写真3:夜の橇列。これは西側。車列の風下側になります。
南極で越冬すると、天文現象の変化を観察しやすい環境になります
。月の動きや、満ち欠けのサイクル、あるいは、星々の動きなど。天文を観察する
ときに邪魔になるような街の灯りはありません。オーロラの観察とあわせ、天体
としての「地球」を実感できる環境です。
地平線に半分顔を出すような月も、越冬隊の方々はきっと何度も観
察されることとおもいます。三日月が地平線から昇りはじめるときには、蜃気楼
の効果も重なって、地平線からあたかも炎が上に立ち昇るかのように見えます。ほ
ぼ水平に移動しながらゆっくりと昇ってくるので、それが炎ではなく本当に三日
月であるのか確認できるまでに何時間も待つことになります。
今回、内陸観測の観測走行の終了時期と、日没の到来時期が重なり
ました。南極での盛夏は過ぎようとしています。
藤田記