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氷床流動の力学過程の研究

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 南極やグリーンランドの氷床は、表面・内部・底面の力学過程を経ながら、自重を駆動力にして海に流れ込みます。地球温暖化の様々な影響が、海水準状況をもたらすことが懸念されています。温暖化が氷床にどんな効果をもたらし、氷床がどうふるまうかを明らかにすることは人類的課題です。
以下のような着眼点のもとに研究と教育をすすめています。

 氷床流動は氷床の質量収支の根幹です。気候モデルにおける氷床モデリングで仮定される境界条件として氷床底面環境と氷床縁域の流出状態があります。

 私たちは、氷床の厚さや内部構造や底面状態を知るために、アイスレーダーと呼ばれる高周波レーダを用いて、過去数十年間南極内陸部の観測をおこなってきました。最近の観測結果から、底面の融解層がこれまで考えられてきたより広域に広がっている可能性を捉えました。底面摩擦が今考えているより小さい可能性があります。

 また、最近頻発している、棚氷の崩壊や氷山の離脱は、氷床流動のブレーキが弱まったことを意味します。昭和基地近くの氷床のグランディングライン(接地線: 氷床が大陸岩盤に接している内陸と、氷床が海に流れ込む際にうきあがる領域の境界線)が予想より内陸に遡った位置にあることも最近分かりました。氷床流動を抑える働きが弱くなってきている可能性があります。

 氷床流動のモデリングにこれらの我々の得る現地情報を供給し、氷床流動と結合した気候モデルの精度向上に貢献します。




(上)合成開口レーダ干渉法を用いて作成された南極氷床表面流動速度実測図 (Rignotら, 2011)



しらせ氷河: 南極縁辺部に存在する氷流のひとつです。南極昭和基地の近くにあります。「しらせ氷河流域」の広大な領域の氷を、海に流出させるシステムになっています。こうした氷流の下には、内陸域の岩盤と氷の界面で生成された融解水が流れています。その結果、氷と岩盤のあいだの摩擦がなくなり、氷が年数キロメートルの早さで流れることになります。
   


(上)2012年に、BEDMAP2プロジェクトによって編纂された南極大陸の基盤地形図 (Fretwellら、2013)。この図の国際的な編纂には、国立極地研究所が中心となって南極内陸部のトラバースで観測した氷厚データも大量に使用されました。



(上)氷床探査レーダを搭載し内陸の観測をすすめる雪上車隊。