和名:オウサマペンギン(キングペンギン)
英名:King penguin
学名:Aptenodytes patagonicus

形態
分布
生息環境
餌と採餌行動
繁殖
個体数の現状と保全
形態
体長85〜95 cmとペンギンの中ではコウテイペンギンに次いで2番目に大きい。雌雄は似ているが、メスの方がやや小さい。頭からあご、のどにかけては黒く、首の両側にあるオレンジ色で曲玉形の斑紋は細い帯となって首から胸の下部にまで広がっている。背側は首からしっぽまでが青みがかった銀灰色。胸の上部には、のどの黒い羽と混じり合ってオレンジ色の羽が生えているが、これは下にゆくに従って淡い黄色へと色あせてゆき、胸の下部に至り白くなる。腹部は光沢のある白色。フリッパー表面は背中と同じような色である。嘴は細長く、湾曲は少ない。上嘴は黒っぽい色で、下嘴は先端だけ黒いが、残りは鮮やかなオレンジないしピンク色が広がっている。足は暗い灰色で、足根部には羽が生えていない。 孵化直後の雛は灰色がかった茶色の毛がまばらに生えている。その後茶色い羊毛のような密生した羽毛に生え換わり、この羽毛が約10〜12ヶ月齢まで維持される。嘴は換羽を迎えるまでは黒く皮のように硬い。

分布
繁殖地は南緯45〜55度に位置する亜南極の島々で、サウス・ジョージア、マリオン、プリンス・エドワード、クローゼ、ケルゲレン、マッコーリーなど。南極収束線より南では、ハード島とフォークランド諸島で繁殖している。 生息範囲は、大西洋、インド洋、南大洋、アジア地区の亜南極および南極海低緯度地域。しかし、未だ詳しいことはわかっていない。

生息環境
繁殖地は海洋、それも遠海で、一般に流氷が来ない開けた海に限られる。繁殖地は、すべて通常の年の流氷の北限よりも北側に位置し、年平均気温が0℃の等温線よりも北側である。繁殖地は植物が周辺にある裸地やなだらかに傾斜した砂浜、あるいは広い平原の窪地に見いだされる。また、雨風をしのげる日当たりの良い場所であることも多い。

餌と採餌行動
餌は主として小さな群集性の魚(主にハダカイワシ科)やイカ(アカスルメイカ、ウデナガニュウドウイカなど)などを食べている。獲物は水中で追い回して捕らえる。餌は日中に捕り、100〜300mまで潜水する。これらの行動は採餌のために海に出ている5〜7日間のうちに行われる。 潜水深度は日中に100〜300mの潜水を頻繁に行うが、夜間は浅くしか潜らない。ポゼッション島における研究では、最大潜水深度は125〜304m、平均218mで、潜水時間は2.5〜7.4分、平均5.5分だった。潜水深度の最高記録は、サウス・ジョージア諸島で観察された322m。クローゼ諸島の研究では、潜水中の体の各部の温度が急激に下がる現象が報告されており、腹腔内下部では、19℃まで下がることが報告されている。このような体温低下は、潜水中に限られた酸素を有効に利用するため、末梢部の血流を減らすことで酸素消費速度を低下させているためと考えられている。また、潜水には、餌をサーチするために行うと考えられている一定の速度で、潜行・浮上するタイプの潜水と、最大潜水深度付近で採餌と考えられている停滞が見られる潜水が報告されており、近年の研究では最大潜水深度付近でストップとダッシュを行って餌を追尾している様子が確認されている。

繁殖
稠密(ちゅうみつ)で大きなコロニーのなかで繁殖が行われるうが、巣は作らない。繁殖地の個体密度は、地域差はあるが1平方メートルあたり約1.3〜2.2つがいである。ペンギンたちは、繁殖期前に換羽を終わらせるため、9〜1月に上陸する。この換羽期間は潜水することができないため絶食する。それから絶食で落ちた体力を補充するために海に戻り約20日間集中的に採餌を行う。その後再び11〜3月に繁殖地に再上陸する。一夫一妻制だが、つがいのきずなは他の種に比べ弱い。翌年も同じペアーで繁殖する確率は約29%である。ペアーが形成されるとさまざまな性的ディスプレーが見られる。そして長い『おじぎ』ディスプレーの後、交尾が行われる。再上陸後、産卵までは約10日間かかる。卵は1個産み、重量は平均310gである。抱卵は約54日間続き、この間両親は交代で抱卵する。雛は、30〜40日間両親に育てられ、育雛も交代で行われる。この育雛交代は雛が32.8日齢になって、クレイシ(共同保育所)が作られるまで続く。4月には雛の体重は親と同じくらいになるが、長い冬の最初の時期、3〜8月には親は給餌をほとんど行わなくなるため、雛は絶食状態におかれ、体重は夏の頃の約2/3まで減ってしまう。9〜10月にかけて、親は規則的な給餌を再開し、雛は12〜1月には巣立つ。合計で、抱卵と育雛にかかる期間は14〜16ヶ月である。ほとんどの個体は毎年繁殖を試みるが、成功するのは最大でも3年のうち2回である。繁殖成功率は、年、繁殖地によって大きく変動することが知られており、サウス・ジョージア島では84%、ポゼッション島では30.6%だった。繁殖開始年齢は、4歳で約6.6%の個体が、5歳で38.2%、8歳だと87.9%の個体が繁殖し、中間値は5.9歳だった。

個体数の現状と保全
繁殖個体数は、最低でも107万800つがい以上。19〜20世紀初頭にかけてペンギンオイルの搾取のため個体数は激減したが、現在は保護が進み個体数は回復しつつある。現在生息地は安定しており、すべての生息地で個体数が増加している。現在は人間の活動に脅かされているということはない。ただし、サウス・ジョージア諸島周辺においては漁業と競合する可能性が指摘されている。