和名:ジェンツーペンギン(ゼンツーペンギン)
英名:Gentoo penguin
学名:Pygoscelis papua
亜種:2亜種が確認されており、キタジェンツーペンギン(P. p. papua)とより小さいミナミジェンツーペンギン(P. p. ellsworthii)と命名されている。両亜種間で、羽毛には全く差がない。

形態
分布
生息環境
餌と採餌行動
繁殖
個体数の現状と保全
形態
体長50〜90cmと中型。雌雄は似ているがメスの方が一回り小さい。頭とのどは黒く、両眼の上には独特の変化に富んだ白い斑紋がある。通常両側の斑紋は頭頂部でつながっており、目の周りの白い輪へとつながる。体の背側や尾羽の上側は、青みがかった黒で、腹側は白い。フリッパー表面は背中と同じ黒で、裏側は大部分が白くなっているが先端は黒い。嘴の横側は光沢のあるオレンジがかった赤で、上の嘴の上のラインと先端は黒くなっている。足は、薄い白っぽいピンク色から赤色。雛は、背面が濃いグレー腹側は白い羽毛に覆われている。

分布
極と取り巻くように分布し、亜南極の島々や南極半島で繁殖している(南緯46〜65度)。非繁殖地域についてはほとんど知られていない。ただし、ほとんどの成鳥は繁殖地に常にとどまっている。キタジェンツーペンギンは、フォークランド諸島、サウス・ジョージア島、ケルゲレン諸島に大きな繁殖地がある。また、規模は小さいがハード島、マッコーリー島、ステティン島でも繁殖している。一方、ミナミジェンツーペンギンは、南極半島、サウスシェトランド諸島に大きな繁殖地があり、サウス・オークニーとサウス・サンドウィッチ諸島でも小規模だが繁殖している。

生息環境
繁殖は南極半島や島々の氷のない地面で行われる。コロニーは海岸であったり、海岸からかなり内陸の場合もある。砂浜のような低くて平らな土地、高い岬、小山、勾配の急な谷や尾根などにコロニーがあるが、草むらの周りにあることも多い。流氷のできる海域は避ける。また各地の個体群の大きさは、大陸棚の採餌に適した地域と結びついている。

餌と採餌行動
餌は、魚類(ノトセニア科Pagothenia antarcticum, Notothenia rossii、ハダカイワシ類)と甲殻類(ナンキョクオキアミ)がほとんどである。40〜110m(最大170m)の潜水をして、獲物を追いかけて捕らえる。サウス・ジョージア島の繁殖個体には2つの潜水行動が見られた。全潜水のうち36%は、平均潜水深度4m、潜水時間は0.23分という調査や探索のための潜水であった。一方、残りの62%が、平均潜水深度80m、平均潜水時間2.5分という採餌に関わる深い潜水であった。ペンギンは1回の採餌旅行で平均176回(1時間当たり23回)の潜水を行う。また、深い潜水は昼と夜に2つのピークがあり、夜明けと黄昏時は、平均して40m、に中は80〜90mまで潜る。また餌によっても潜水深度は異なっており、オキアミを食べる個体は、魚を食べる個体よりも頻繁に深く潜ることが報告されている。採餌は日中、コロニー近くの沿岸で行われる。ほとんどの採餌旅行は短時間で、平均で6〜10時間である。採餌時間は、繁殖地、繁殖の段階によって異なるが、早朝出発し、夕方帰ってくる場合が多い。非繁殖期も日中採餌するが、採餌旅行の時間は繁殖期よりも短い。

繁殖
南と北の個体群の間には、繁殖生理の上で重要な違いがある。9月下旬から10月上旬にかけてより南のコロニーで個体数が増えることから、北の個体群の一部分は南へ移動するが、残りの北の個体群と南の個体群は常にその土地で過ごすと考えられている。集団で営巣するが、他種と比べるとコロニーは小さく密度も低い。巣は、しっかりした作りで、石を積み重ねて作られており、高さは10〜20cm、幅45cmほど。 地上では非常に良く声をだし、特につがい形成期やテリトリー形成期、育雛期には多い。性的コールも多く、恍惚のディスプレイ、相互ディスプレイ、おじぎなどが知られている。 10〜11月にかけて2つの卵(1つ120〜130g)を産む。北のコロニーでは、繁殖期間が長く、6〜7月に産卵する。抱卵は、34〜36日間で、両親が毎日交代して(北のコロニーは2〜3日交代)抱卵する。孵化後、25〜35日間は、両親が引き続き毎日交代しながら雛の面倒を見る。その後、ゆるやかにクレイシを形成し、80〜100日齢で巣立つまで、両親から毎日給餌を受ける。 1つがいあたりの育った雛の数は、キングジョージ島で1.17羽ないし1.01羽、 サウスジョージア島では11年間を平均して、0.85羽だった。しかし、繁殖成功率には年やコロニーの大きさなどによって大きな差がある。雛の死亡要因は、飢餓や肉食性大型鳥類による捕食などである。 成鳥は、繁殖期後、巣の場所から離れた海岸で換羽する。一夫一妻制でつがいのきずなは強く、80〜90%のつがいが翌年も同じペアーで繁殖する事が知られている。

個体数の現状と保全
全繁殖個体数は31万4000つがいで、現在安定しているかあるいは増加傾向にある。20世紀前半にはクジラなどの他のオキアミ捕食者が減少したために、食料が豊富になり拡大傾向にあったが、1950年代からは個体数は安定している。どの繁殖コロニーにおいても今のところ大きな驚異は存在しない。しかし、19世紀にはペンギンオイルの搾取と卵の乱獲のため、かなりの個体数減少が見られる繁殖地もあった。最近では、フォークランド諸島の個体数が地域的に見ると減少している。これは、人間が卵を食料にしていることと関係があるのかもしれない。人間活動に影響を受けやすい性質を持っており、ケルゲレン諸島に永続的な基地が出来て以来、地域的な個体群の減少が見られている。