和名:ノドジロクロミズナギドリ
英名:White-chinned petrel
学名:Procellaria aequinoctialis
形態
分布
生息環境
餌と採餌行動
繁殖
個体数の現状と保全
形態
体長51-58 cm、体重1020-1420 g、翼開長134-147 cm。全身黒褐色で大型である。喉に白い班が見られるが、個体変異・地域変異が大きく、海上では見えないこともある。嘴は薄黄色。足が尾の先から少しだけ突き出す(と図鑑にあるが、本稿担当者はかなり至近距離で観察しても気づかなかった)。

分布
繁殖地は亜南極の南大西洋、インド洋、南西太平洋の島に分布している。サウス・ジョージア島、プリンスエドワード諸島、クローゼ諸島、ケルゲレン諸島、ニュージーランド周辺の島々などである。外洋では南極周辺の海域から亜熱帯海域まで広く分布する。ペルー沖では冷たいフンボルト海流によって南緯6度付近まで観察されることもある。


生息環境
繁殖地はタソックなどの草に覆われた斜面が多い。外洋での生息環境は餌と採餌行動の項を参照。

餌と採餌行動
餌は主にイカ類(ウデナガニュウドウイカ、Histioteuthis)と甲殻類である。繁殖期以外では魚や漁船からのゴミが重要な餌となっている。サウス・ジョージアのバード島では、周辺海域のオキアミの現存量が大きく変化した1996-1998年の3年間で餌構成(湿重比)は甲殻類41-42%、魚類39-29%、イカ類19-25%で比較的一定していた。餌はおもに表層ですくい上げる方法によって採餌するが、浅い飛び込み潜水もする。魚のゴミを捨てる漁船などによく集まる。クローゼ諸島で育雛期に行われた衛星追跡調査によると、採餌トリップは1-3日以内の短いトリップと3-13日に及ぶ長いトリップの二山に分かれており、6個体のトリップの平均採餌レンジ(繁殖地からの最大距離)は前者で62 km、後者で1868 km(最大の個体では2421 km)だった。短いトリップではクローゼ島周辺海域で魚や延縄漁船からのゴミを利用していた。長いトリップでは南極海のパックアイス縁近くまで飛翔し、表面水温が2度近くの水域を主に利用してナンキョクオキアミを取っていた。亜南極の島々に広く分布する本種にとっても南極大陸周辺の海域が重要な餌資源を提供していることが示されている。

繁殖
10月に繁殖が始まる。コロニー性を示す。巣は地上に泥と草を使って作られる。110-150 gの卵を1つ産む。抱卵期間はおよそ57-62日でオス・メスは1-19日交代で抱卵する。雛は濃い茶色の羽毛に覆われており、ふ化後数時間は親が抱雛する。巣立ちまでは87-106日を要する。サウス・ジョージアのバード島では繁殖成功率は44%近くで安定しており、成鳥は毎年繁殖する。


個体数の現状と保全
個体数の総計は数百万個体と推定されている。サウス・ジョージア島で200万つがい、ケルゲレン諸島に数十万つがいが繁殖している。現在トリスタン諸島では個体数が減少し、ニュージーランド海域のチャタム島では個体群が消滅したが、これは人による捕獲の影響と考えられている。移入されたネコ・ラットによる多数の繁殖個体の捕食によりクローゼ諸島やマリオン島、キャンベル島では個体数が減少している場所がある。サウス・ジョージアのバード島では、1981年と1998年に巣穴営巣率を調査した結果、28%の営巣率の減少が見られた。外洋での成鳥の生存率の低下が強く示唆され、延縄漁業における混獲が懸念されている。