和名:ハイガシラアホウドリ
英名:Grey-headed albatross
学名:Diomedea chrysostoma
形態
分布
生息環境
餌と採餌行動
繁殖
個体数の現状と保全
形態
体長81 cm、体重 3-3.8 kg、翼開長 180-220 cm。成鳥の頭部は灰色で覆われている。

分布
繁殖地は主に亜南極の島々である。サウス・ジョージア島、キャンベル島、ケルゲレン諸島、クローゼ諸島、プリンス・エドワード諸島など。外洋では南大洋において周極的に、南極周辺の海域から亜熱帯海域まで広く分布する。

生息環境
外洋域を主な生息域とし、繁殖のため以外陸地を訪れない。繁殖は離島で行う。繁殖地はタソックなどの草に覆われた斜面が多い。外洋では広い採餌域を持つが、夏期間には南極収束線の北もしくは南側の冷たい海域を利用することが多い。

餌と採餌行動
餌は主にイカ類(Todarodes、ウデナガニュウドウイカ、Histioteuthis)で、魚類(ハダカイワシなど)などや甲殻類も食べる。サウス・ジョージア島での調査では、餌構成(湿重比)はイカ37.3-74.5%、魚類8.7-60.8%、甲殻類1.5-32.3%、その他0-10.4%であった。餌はおもに表層ですくい上げる方法によって採餌する。しかし浅い飛び込み潜水して餌をとることもあり、12個体へ潜水記録計を装着し、それぞれ3.3日間の調査をおこなったところ、最大潜水深度は平均3.0m、最大の個体で6mだったとの報告がある。船を追いかけて飛ぶことはあまりなく、ほかのアホウドリ類にくらべ魚のゴミを捨てる漁船などに集まる数も少ない。サウス・ジョージア島では同所的に繁殖するマユグロアホウドリよりもイカ類を餌としていることが多い。キャンベル島ではマユグロアホウドリよりも水深の深い海域(3000-6000m)の表層や、極前線海域に滞在する時間が多く、外洋性のアカスルメイカをよく利用する。

繁殖
成鳥は繁殖を2年に1回行う。10月に繁殖が始まる。コロニーを形成して繁殖する。巣は地上に泥と草を使って作られる。180-330gの卵を1つ産む。抱卵期間はおよそ72日でオス・メスは5−15日交代で抱卵する。雛は白い羽毛に覆われており、巣立ちまでは141日を要する。サウスジョージア島では同所的に繁殖するマユグロアホウドリより巣立ち期間約20日が長く、これはマユグロアホウドリが餌としているオキアミ類よりも本種の主な餌であるイカ類のエネルギー価・カルシウム含有量が低いことが一因と考えられている。性成熟するまでは8-10年かかる。成鳥の年死亡率は7%程度で、野生で30年以上生存した個体が確認されている。サウス・ジョージア島での1975-1991年までの17年の調査では平均年繁殖成功率は39%で、同時期のマユグロアホウドリの繁殖成功率29%よりも高く、また年毎のばらつきが小さかった。これは本種が主にイカや魚などの餌を利用するため、オキアミのように変動の大きい資源の影響を受けにくいためだと考えられている。
個体数の現状と保全
全個体数は50万羽と推定されており、一年に8万つがいが繁殖する。サウス・ジョージア島に3万8千つがい、キャンベル島に1万1千500つがい、インド洋の島々(ケルゲレン、クローゼ、プリンス・エドワード)に2万つがいが生息している。