PSニュース No.23

Polar Science


Vol.7(1) には、以下の論文が掲載されています。


Solar radiation transfer in the surface snow layer in Dronning Maud Land, Antarctica
Onni Jarvinen*, Matti Lepparanta
 太陽放射の分光放射計測定(広帯域:400-900nm)を、2009-2010年の夏期間に、 南極氷床西ドローニグモードランドの表面積雪層にて行った。ここで 氷床表面から30p深まで、透過率と減衰係数の垂直分布を調べた。積雪の物理的特徴として 層構造、密度、硬度(ハンドテスト)、含水率、粒径と雪質(雪粒の写真から)を観測した。透過率は、20p深までで1%未満、10p深までで27%未満であった。平均分光拡散減衰係数は深さ10-20p層で0.04cm-1 から 0.31cm-1に変化した。0-10cm層と10-20cm層の分光拡散係数を使って、広帯域(400-900nm)な放射が表面での下向き放射量の1%になる深さは、50pであった。積雪上部(0-50p深)の雪密度は300から440kgm-3に変化した。主な雪結晶はしまり雪で、平均的な粒径は1oであった。

A Spectral Index Ratio-based Antarctic Land-cover Mapping Using Hyperspatial 8-band WorldView-2 Imager
Shridhar D. Jawak*, Alvarinho J. Luis
  本研究は、8バンド高解像度WorldView-2衛星(WV-2)のパンクロマティック(PAN)およびマルチスペクトル画像(MSII)データによる、極域の地理空間情報の抽出の可能性について評価した。南極域における土地被覆マッピングの精度を改善するため、専用の正規化差分スペクトル指数比(SIRs)に基づいた新たな方法を導入した。SIRsにより、入手可能なWV-2のデータを用いて、陸域表層を雪/氷、水域および露岩等の分類を行った。衛星データのスペクトル特性と、関連するSIRsを用いた土地被覆マッピングにおける、パンシャープン・アルゴリズムの効果を評価するため、新たな多様な方法論が用いられた。MSIデータとPANを合成するために、現存するパンシャープン・アルゴリズムが適応され、続いてその結果から対象となる土地被覆種類を抽出するための複数のSIRsが見積もられた。これらのアルゴリズムは、定義したSIRsを用いた対象の種類を抽出するための有効性を元に比較された。我々の結果により、8バンドWV-2、専用のSIRs、および適切なパンシャープン処理によって、土地被覆情報の抽出が大きく改善される事が明らかになった。

Zonal variations in abundance and body length of chaetognaths in the 140°E seasonal ice zone during the austral summer of 2001/02
Makoto Terazaki, Kunio T. Takahashi*,Tsuneo Odate
 2001/02シーズンの夏季(11−3月)に南大洋インド洋区東経140度線の季節海氷域においてヤムシ類の現存量および体長を調査した。試料採集は同海域においてNORPACネットを用いた0−150mの鉛直曳きを11、1、2、3月の4回実施した。ヤムシ類はEukrohina hamata、Sagitta gazellae、S. marriの3種が出現した。E. hamataは最も優占して出現し(89.6−100%)、南緯64−65度付近に存在していた南極周極流のSouthern Boundary (SB-ACC) を境に、南北で現存量および体長は大きく異なっていた。SB-ACCの南では3月に現存量が低く小型サイズ(< 6 mm)の個体がほとんど見られなかった。そのためSB-ACCの南北で本種の再生産時期が異なっていることが示唆された。