PSニュース No.21

Polar Science


Vol.6(2) には、以下の論文が掲載されています。


Comparison of global synthetic seismograms calculated using the spherical 2.5-D finite-difference method with observed long-period waveforms including data from the intra-Antarctic region
Genti Toyokuni, Hiroshi Takenaka, Masaki Kanao, Douglas A. Wiens, Andrew Nyblade
 我々は全地球を対象とした計算精度と効率の良い理論地震波形計算手法「球座標系2.5次元差分法」の開発を行ってきた.本論文では,この手法による理論波形を,世界中に分布した30点の広帯域地震計による3成分の観測波形と比較し,計算精度のチェックを行った.また現在,南極大陸内陸部の氷床上では,国際極年(IPY2007-2008)に伴うプロジェクトで多数の臨時地震観測点が展開されている.今回はこれら南極氷床上での観測波形と理論波形の比較も行い,氷床上でも上下動成分の観測精度が十分であることと,30 s程度の長周期では標準地球モデルによる理論波形でも観測を十分説明できることを示した.

Provenance and depositional environment of epi-shelf lake sediment from Schirmacher Oasis, East Antarctica, vis-à-vis scanning electron microscopy of quartz grain, size distribution and chemical parameters
Prakash K. Shrivastava, Rajesh Asthana, Sandip K. Roy, Ashit K. Swain, Amit Dharwadkar
  東南極、シルマッヒャー・オアシスにおける2つのエピシェルフレイク(Epi-shelf lake)周辺の堆積物の粒度、化学組成の分析を行うとともに、堆積物に含まれる石英粒子の走査電子顕微鏡(SEM)による形態の特徴を組み合わせて、堆積物の堆積環境と運搬過程を明らかにした。堆積物の粒度組成は淘汰が悪く、二峰性を示し、化学組成は均質で周囲の基盤岩である花崗岩質片麻岩によく類似する。また、堆積物中の石英表面は物理的な摩耗を強く受けて角張った粒子が非常に多い。これらの結果から、この堆積物は、周囲の基盤岩に由来する物質が、風と融氷河性の水流の作用で運搬されて堆積したものと考えられた。

Effect of radioactive pollution on the biodiversity of marine benthic ecosystems of the Russian Arctic shelf
Denis K. Alexeev, Valentina V. Galtsova
 1993-2009年の間に、ロシア北極海の大陸棚で採取した海洋小型底生生物(サイズが0.1〜3.0ミリメートル)の分類学的、定量的特性の空間分布が解析された。データ解析の結果、自然条件、および人間活動の影響を受けた条件下で小型底生生物生物の空間的分布を決める要因は塩分濃度、水深、炭化水素、重金属、及び放射性セシウムの容量活性であることが明らかになった。環境影響評価のために小型底生生物の利用はより高い分類群のレベルでも提案され、議論された。

Sphaeronectes pughi sp. nov., a new species of sphaeronectid calycophoran siphonophore from the subantarctic zone
Mary M. Grossmann, Dhugal J. Lindsay, Verónica Fuentes
 2008年に行われたCEAMARC調査 (Collaborative East Antarctic Marine Census ) において,新種の鐘泳亜目管クラゲ類Sphaeronectes pughi sp. nov. がオーストラリア南部の亜南極域 (42°48’S,121°05’W; 表面水温9.5-13℃) で採集された。得られた泳鐘は丸みを帯びた円錐形であり,大きさは幅2.85 mm,高さ3.36 mmであった。本研究では,泳鐘の同定形質を既に記載されている10種のイラストと共に示す。

Effects of neighboring vascular plants on the abundance of bryophytes in different vegetation types
Annika K. Jägerbrand, Gaku Kudo, Juha M. Alatalo, Ulf Molau
 気候変動により、ツンドラ生態系の植生は灌木や樹木に移動すると予測され、この変化はまた、コケ植物にも影響する可能性がある。ヒース(灌木の荒野)とメドー(草地)の二つの生育環境と、灌木や樹木等の維管束植物の優占度の変化がどのようにコケ植物へ影響を与えるかを評価するために、5年間の温暖化や施肥実験、及び両者の実験を行った。その結果、ヒースではコケ植物の優占度に影響は与えなかったが、メドーでは落葉低木、常緑低木、草類がコケ植物の優占度に与える有意な影響が認められた。