Vol.5(4) には、以下の論文が掲載されています。
Comparative analysis of measurements of stratospheric aerosol by lidar and aerosol sonde above Ny-Alesund in the winter of 1995 [Comparative analysis of lidar and OPC observations]
Koichi Shiraishi, Masahiko Hayashi, Motowo Fujiwara, Takashi Shibata, Masaharu Watanabe, Yasunobu Iwasaka, Roland Neuber, Takashi Yamanouchi
1995年12月17日ノルウェイ、ニーオルスンにおいてライダーとエアロゾルゾンデにより観測した固体PSCに対して、両者の比較解析を行った。検出した固体PSCの粒径(半径)は、2.3μmと推定された。PSCを含む空気塊の温度履歴解析は、検出したPSCが観測前の4日間NATの平衡温度より数K低い温度を経験していたことを示していた。また、その空気塊は、観測の1日前にグリーンランド北部、エルズミーア島上空を通過して、ニーオルスン上空に到達していた。検出した固体PSCの形成機構について検討するため、微物理BOXモデルを利用した。その結果、検出した固体PSCは、グリーンランド北部やエルズミーア島上空な
どの比較的標高の高い地形の上空を通過した時に、山岳波のようなメソスケール規模の温度擾乱下で形成した可能性が強いことが示唆された。
Dating of the Dome Fuji shallow ice core based on a record of volcanic eruptions from AD 1260 to AD 2001
Makoto Igarashi, Yoichi Nakai, Yuko Motizuki, Kazuya Takahashi, Hideaki Motoyama, Kazuo Makishima
南極ドームふじ浅層コアの表面から深さ40m間について年代軸をつけるため、非海塩性硫酸(nssSO42-)濃度を測定し火山噴火記録と照合した。大規模火山噴火に起因する高濃度のnssSO42-スパイクは、このコアの深さ12.5m、29.9m、そして38.8 mから検出した。それぞれのスパイクは、AD1815に噴火したタンボラ火山、AD1452のクワエ火山、AD1259年の火山名が同定されていない噴火と関連を示した。他にも噴火年代が正確に推定されている火山と関連づけられる9つの顕著なnssSO42-スパイクを検出した。年代を正確に同定したこれら12箇所のnssSO42-スパイクを用いて、AD1260からAD2001年までに相当するコアの年代軸を推定した。本研究で作成した氷の堆積年代は、先行研究で報告された値を最大約20
年修正した。加えてAD1260からAD2001年までの年平均涵養量を25.5 mm、時代毎の振れ幅は±〜15%と推定した。
Statistical analysis of seismicity in a wide region around the 1998 Mw 8.1 Balleny Islands earthquake in the Antarctic Plate
Tetsuto Himeno, Masaki Kanao, Yosihiko Ogata
1998年3月25日にバレニー諸島周辺で発生した大地震は、南極プレート周辺でこれまでに記録されてきた地震の中で最大のものであった。このバレニー地震発生後、その周辺の地震活動度の変化が地震カタログからは見て取れる。しかし、地震カタログには余震や地震の検知率の変化の影響も含まれているため、本当に地震活動が活発になっているか判断することは難しい。そこで、我々はEpidemic Type Aftershock Sequences (ETAS) モデルなどの統計手法を用い、余震などの影響を取り除いた地震活動度(background seismicity)の変化を調べた。
Microtopographic properties of sparse moss vegetation in the Antarctic polar desert
Masaki Okuda, Satoshi Imura, Masaharu Tanemura
大陸性南極の蘚類定着過程を解明するために、地形との対応の定量評価を行った。基質が砂で粗密に蘚類が分布する調査区を設置し、調査区内の相対標高から設定した地形属性値により、出現した蘚類2種の分布の説明を行った。2種共通の分布の特徴として、1辺4mの調査区スケールの凹地部分における、1辺20pの区画スケールの急斜面や凸地に蘚類が分布している傾向にあった。調査区スケールの凹凸については、よりロバストな回帰方法により求めた基準面からのものが、蘚類との対応が強くなっていた。これらの状況から、潜在的な水路の水面が接する縁の部分や、陸上のラン藻等の有機物により小さな盛り上がりがある所に蘚類が定着していることが推察された。