PSニュース No.17

Polar Science


Vol.5(2) には、以下の論文が掲載されています。


CEAMARC, the Collaborative East Antarctic Marine Census for the Census of Antarctic Marine Life (IPY # 53): An overview
Graham Hosie, Philippe Koubbi, Martin Riddle, Catherine Ozouf-Costaz, Masato Moteki, Mitsuo Fukuchi, Nadia Ameziane, Takashi Ishimaru, Anne Goffart
「南極海洋生物センサス:CAML」(IPYプロジェクト課題53番)計画は南極の海洋生物多様性の分布や豊度を調査し、気候変動による影響を調べることを目的とした。この計画は2007-2008年の南極の夏期シーズンに行われ,観測船をベースにした大規模な研究プログラムであった。合計19隻の観測船に30ヶ国からの研究者が関わった。「東南極国際共同海洋生物センサス:CEAMARC」計画はオーストラリア、日本、フランスから3隻の観測船により、多くの国々からの研究者や学生による複数国共同でCAML計画に大きく貢献するものであった。この計画は東南極のテラ・アデリーやジョージ5世ランドの北側海域に焦点を当て、プランクトンから、魚類、底生生物、海洋や地球物理を調べた。この海域は過去の調査が不十分であったが、CEAMARC計画が実施されたことにより、海洋生物に関する確固たる情報を得ることが出来、将来の変化に対するモニタリン基準を築いた。

Summer hydrography on the shelf off Terre Adélie/George V Land based on the ALBION and CEAMARC observations during the IPY
M. Lacarra, M.-N. Houssais, E. Sultan, S.R. Rintoul, C. Herbaut

2007〜2008年夏季に得た140点のCTD観測データにもとづいて、東経138〜146度における南極陸棚域の海洋構造を解析した。海洋構造は高塩分陸棚水(HSSW)と周極深層水(MCDW)で特徴づけられ、底層で塩分と溶存酸素濃度が極値によってCommonwealth湾の特異性が見出された。同湾は高密度の陸棚水の形成域と考えられ、HSSWはAdélie凹地に存在する。この水塊は陸棚斜面を流れ下り、南極底層水を形成する上で十分に高密度である。一方、D’Urville谷で観測された高温・低塩分水は低密度であるため、底層水形成には寄与しないと考えられる。2009年には陸棚水の低塩分化が観測されたが、Adélie凹地では2008年に観測された特徴からほとんど変化していなかった。

A GIS approach to estimating interannual variability of sea ice concentration in the Dumont d’Urville Sea near Terre Adélie from 2003 to 2009
Martina B. Smith, Jean-Philippe Labat, Alexander D. Fraser, Robert A. Massom, Philippe Koubbi

Dumont D’Urville海の海氷密接度の経年変化が地理情報システムを用いて解析された。その結果、2003〜2009年のマイクロ波放射計AMSR-Eデータから得た密接度は、Buchanan湾やWatt湾、Adelie堆では変化が小さく、Adélie海盆とMertz氷河ポリニヤ外縁で大きな変化が認められた。解析領域の西部は通年にわたって定着氷が形成され密接度が高く、ポリニヤ域と北東部では開水面が頻繁に現れた。また2007〜2009年はそれ以前と比べて高い密接度で維持された。2010年2月のMertz氷河の分離以降に起こっているかもしれない局所的な氷状変化の評価基準を示す。

Interannual variability of zooplankton in the Dumont d’Urville sea(139°E − 146°E), east Antarctica, 2004–2008
Kerrie M. Swadling, Florian Penot, Carole Vallet, Armelle Rouyer, Stephane Gasparini, Laure Mousseau, Martina Smith, Anne Goffart, Philippe Koubbi
2004-2008年の夏季に東南極デュモンデュルビル海において動物プランクトンの時空間変動を調査した。Bongoネット(メッシュサイズ:500μm)で採集された試料にはオキアミ類のEuphausia crystallorophias、多毛類、翼足類、そして生物量で優占したカイアシ類が含まれており、南極沿岸域に見られる典型的な群集組成であった。現存量の空間変動は調査直前の春季における海氷の厚さや大きさとの関係性が見出された。全平均個体数は大きな年変動を示し、2004年に最小値(961 ind./1000m3)、2005年に最大値(15,627 ind./1000m3)を記録した。各年、現存量の空間分布は変動を示したが、物理環境(水温や塩分)は比較的安定しており、変動要因とは考えられなかった。変動要因は主に海氷の厚さと拡がり、Mertzポリニアの位置や大きさといった局所的な特徴の組み合わせによると示唆された。

Surface zooplankton distribution patterns during austral summer in the Indian sector of the Southern Ocean, south of Australia
Kunio T. Takahashi
, Graham W. Hosie, David J. McLeod, John A. Kitchener
2007/08シーズンの夏季(12−2月)に南大洋インド洋区において連続プランクトン採集器(CPR)を4回曳航し、表層動物プランクトン群集の季節変化を調査した。表層における動物プランクトンの現存量は極前線海域で高い値を示した。キクロプス目の小型カイアシ類であるOithona similis とカラヌス目のCalanus simillimus、および小型カラヌス目(例えばCalanus属、Ctenocalanus属、Clausocalanus属)が卓越し、全体の70%以上を占めていた。続いてカイアシ類のノープリウス幼生、有孔虫、尾虫類が広範囲で出現した。本調査における4回の曳航で現存量、優占種や分布パターンに有意な季節変化は認められなかった。

Euphausiid community structure and population structure of Euphausia superba off Adélie Land in the Southern Ocean during austral summer 2003, 2005 and 2008
Atsushi Ono, Masato Moteki, Kazuo Amakasu, Ryoji Toda, Naho Horimoto, Daisuke Hirano, Takashi Ishimaru, Graham W. Hosie
2003, 2005および2008年夏季の南大洋インド洋セクターアデリーランド沖におけるオキアミ類の群集構造とEuphausia superbaの個体群構造を明らかにした。E. frigidaE. triacanthaは主に南極周極流の南縁 (Southern Boundary of the Antarctic Circumpolar Current: SB) の北側で優占したのに対し,E. superbaはSBの南側,特にAntarctic Winter Waterの見られた陸棚斜面域で卓越した。2003年におけるE. superbaの個体群構造は,2005年および2008年とは異なった。これは観測前年度冬季の海氷張り出しが影響したと考えられる。クラスター解析の結果,adult maleとgravid female (IIIC–E) が主に沖合域や中・深層に分布するのに対し,juvenileとsubadult maleは陸棚斜面域の表層に分布することが明らかになった。以上のことから,E. superbaは成熟するに従い,沖合域や中・深層へ移動することが示唆された。

Interannual variations in euphausiid life stage distribution in the Dumont d’Urville Sea from 2004 to 2008
Carole Vallet, Jean-Philippe Labat, Martina Smith, Philippe Koubbi

2004-2008年の夏季にアデリーランド沿岸においてオキアミ類幼生期の分布を調査した。Euphausia crystallorophiasThysanoessa macruraの幼生は毎年出現し、両種の現存量はともに2004年に最高値を示し、2005年に最も低くなった。E. crystallorophias が毎年優占しており、全体の80%を構成していた。両種ともステージ段階の時空間変動は深層の密度と塩分濃度と有意に関連づけられた。これらの変動は海氷の後退時期、海氷密度、さらには産卵期における成体の代謝状態の情報とあわせて議論した。

Sexual dimorphism in body shape of Antarctic krill (Euphausia superba) and its influence on target strength
Kazuo Amakasu, Atsushi Ono, Masato Moteki, Takashi Ishimaru

ナンキョクオキアミ(Euphausia superba)の体形状の雌雄差を調べ,それがターゲットストレングス(TS)へ与える影響について理論散乱モデルを使用して明らかにした。また,音響散乱強度からオキアミ密度へ換算するために使用するTSも示した。体形状は,アデリーランド沖においてRectangular Midwater Trawlによって採集した456個体(ジュベニル54個体,オス200個体,メス202個体)から得た。体長40 mmを超えるメスは頭胸部の膨らみが顕著であり,雌雄差として見られた。低周波においては,同じ体長であってもメスの方がオスよりもTSが高かった。これはレイリー散乱領域や幾何散乱領域への遷移領域に相当するからである。幾何散乱領域に近づく70 kHz以上では,TSへの雌雄差の影響は小さかった。理論散乱モデルによって推定した456個体のTSから求めた回帰曲線は,他の先行研究におけるTSの実測値と一致しており,ナンキョクオキアミの音響調査に使用することができた。

Distribution and density of Antarctic krill (Euphausia superba) and ice krill (E. crystallorophias) off Adélie Land in austral summer 2008 estimated by acoustical methods
Kazuo Amakasu, Atsushi Ono, Daisuke Hirano, Masato Moteki, Takashi Ishimaru
Collaborative East Antarctic Marine Census(CEAMARC)プロジェクトの一環として,調査練習船海鷹丸は2008年1〜2月にアデリーランド沖140°E周辺において包括的な海洋調査を実施した。本調査では,ナンキョクオキアミ(Euphausia superba)とコオリオキアミ(E. crystallorophias)の分布と密度を推定するために38,70 kHzの計量魚群探知機による音響調査を実施した。特に140°Eにおいては,ナンキョクオキアミの鉛直分布と水温構造の関係を調べた。ナンキョクオキアミは65〜66°Sの陸棚斜面上に分布し,1マイル毎の平均密度は最大で4,344 inds. m-2であった。コオリオキアミは66°S以南の陸棚上に分布し,平均密度は最大で23,669 inds. m-2であった。140°Eにおいては,ナンキョクオキアミは0.5°Cより低い水温帯に分布していた。そのほとんどは約100 m以浅に分布していたが,約180〜200 mにおいても密集した群れが観測され,その分布は水温構造の落ち込みと一致していた。

Size distribution of meso- and bathypelagic fish in the Dumont d’Urville Sea (East Antarctica) during the CEAMARC surveys
Philippe Koubbi, Percy-Alexander Hulley, Patrice Pruvost, Pauline Henri, Jean-Philippe Labat, Victoria Wadley, Daisuke Hirano, Masato Moteki
2008年夏季のDumont d’Urville Sea(東南極)の中深層性魚類群集を,中層トロールを用いて調査した。ハダカイワシ科魚類が中深層性魚類の中で優占したが,深い曳網ではソコイワシ科が最も多く採集された。ソコイワシ属sp.,オニハダカ属spp.,Gymnoscopelus opisthopterusElectrona antarcticaProtpmyctophum boliniおよびKrefftichthys anderssoniが最も多く採集された。ソコイワシ属sp.とE. antarcticaの体長は採集深度とともに大きくなった。群集と体長構成は,Modified Circumpolar Deep Waterの循環と関連するとともに,海洋物理環境と陸棚縁辺からの近さに影響を受けていると考えられる。

Spatial distribution of pelagic fish off Adélie and George V Land, East Antarctica in the austral summer 2008
Masato Moteki, Philippe Koubbi, Patrice Pruvost, Eric Tavernier, Percy-Alexander Hulley

2008年夏季における東南極アデリーランドおよびジョージVランド沖の漂泳性魚類の空間分布を明らかにした。採集はRMT8を用いて,外洋域では原則として0-2000 mの6層および陸棚域では0-200 mの3層で行い,27種からなる20,281個体の魚類が採集された。個体数ではPleuragramma antarcticaが最も多く採集され,他にはTrematomus newnesiCyclothone microdon, Electrona antarctica, Bthylagus antarcticus, Notolepis coatsiが多く採集された。種組成の類似度にもとづくクラスター解析の結果,群集はAntarctic Slope Frontで外洋域と陸棚域とに分けられ,それぞれは中深層性魚類とノトセニア亜目魚類で構成されていた。本研究では中深層性魚類による日周鉛直移動が認められなかったことから,海鳥による捕食圧は低いと考えられる。一方沿岸域の表層(0-100 m)では,ノトセニア類の仔稚魚は,海鳥やノトセニア類成魚の餌料として重要な役割を担っていると考えられる。

Spatial distribution and inter-annual variations in the size frequency distribution and abundances of Pleuragramma antarcticum larvae in the Dumont d’Urville Sea from 2004 to 2010
Philippe Koubbi, Colleen O'Brien, Christophe Loots, Carolina Giraldo, Martina Smith, Eric Tavernier, Marino Vacchi, Carole Vallet, Jean Chevallier, Masato Moteki
Dumont d’Urville Sea(東南極)で2004から2010年にかけて,コオリイワシの分布様式をサイズ・クラスごとに調べた。Dumont d’Urville 基地からMertz Glacierにかけて「RV l’Astlorabe」によって採集されたサンプルは年変動と空間分布の解析に,「TRV海鷹丸」によって得られたサンプルはおもに発育段階ごとの鉛直分布の研究に用いられた。Mertz Glacier近傍の海盆とCommonwealth Bayには小型の仔魚が多く分布していたが,大型の個体はより沖合に分布していた。海底谷の存在や海氷の量,水柱の安定性や水温が仔魚の最適な分布域を決定している。

Food preferences of larvae of Antarctic silverfish Pleuragramma antarcticum Boulenger, 1902 from Terre Adélie coastal waters during summer 2004
Carole Vallet, Cristina Beans, Philippe Koubbi, Lucie Courcot, Jean-Henri Hecq, Anne Goffart
Dumont d’Urville Sea(東南極)で,2004年1月に採集されたコオリイワシ仔魚95個体の消化管内容物を調べた。ほとんどの個体は植物プランクトン,とくに珪藻類を食べており,その他の個体は植物プランクトンと動物プランクトンの両方を食べていた。消化管内容物はThalassiothrix antarcticaFragilariopsis spp.およびChaetoceros spp.が優占していた。摂餌選択性は顕著ではなかったが,一部の餌生物に対してはみとめられた。すなわち,Coscinodiscus spp.やT. antarcticaは,Fragilariopsis spp.よりも環境中では密度が低いにもかかわらず高い摂餌選択性が観察された。夏季にはコオリイワシ仔魚は機会捕食者として広い栄養ニッチ(trophic niche)をもち,これによって様々なタイプの餌生物を利用することができる。

Ontogenic changes in the feeding ecology of the early life stages of the Antarctic silverfish (Pleuragramma antarcticum) documented by stable isotopes and diet analysis in the Dumont d’Urville Sea (East Antarctica)
Carolina Giraldo, Yves Cherel, Carole Vallet, Patrick Mayzaud, Eric Tavernier, Masato Moteki, Graham Hosie, Philippe Koubbi
安定同位体と消化管内容物の解析から,コオリイワシ(ノトセニア科)の仔魚期から稚魚期にかけての餌組成の変化を明らかにした。すべての標本は,High-Antarctic zoneでの中層性魚類の特徴のひとつである,低いδ13C値(< -24‰)を示した。筋肉のδ15N値は仔魚と稚魚で栄養段階が一つ異なることを示した。餌生物解析の結果,仔魚は雑食性で動物プランクトンのほか植物プランクトン(おもに珪藻類)を食べていた。δ15N値と体長の間で正の相関が認められ,成長に伴い動物プランクトン食へ移行することが示された。

Lipid composition of the Antarctic fish Pleuragramma antarcticum. Influence of age class
P. Mayzaud, J. Chevallier, E. Tavernier, M. Moteki, P. Koubbi
2008年夏季、Dumont d’Urville Sea(東南極)で採集されたコオリイワシの脂質クラスと脂肪酸組成を調べた。コオリイワシでは、明瞭な体サイズの増加に伴う脂質の蓄積が認められた。仔魚期には、脂質のうち極性脂質が主要で(全脂質の83%)で、トリグリセリドの割合は小さいが(7%)、稚魚期にはトリグリセリドが72.4%まで増加した。極性脂質の脂肪酸組成は22:6n-3と20:5n-3が主要で、仔魚期と稚魚期でほとんど同じだった。トリグリセリドについては、3つの年級で脂肪酸組成が明瞭に異なっていた。仔魚は16:0、20:5n-3、20:6n-3が主要で、わずかに18:4n-3が占める。稚魚ではC20:1とC22:1の割合が大きく、稚魚後期には18:1n-9が増加する。このことから、仔魚ではprymnesiophyteを基本とした餌を食べ、稚魚期にはCalanusタイプのカイアシ類、さらに稚魚後期には餌がオキアミ類にシフトしていることを示している。

Demersal ichthyofaunal shelf communities from the Dumont d'Urville Sea (East Antarctica)
Romain Causse, Catherine Ozouf-Costaz, Philippe Koubbi, Dominique Lamy, Marc Eléaume, Agnès Dettaï, Guy Duhamel, Frédéric Busson, Patrice Pruvost, Alexandra Post, Robin J. Beaman, Martin J. Riddle

Dumont d’Urville Seaで底生性魚類相を調査したところ,個体数密度はノトセニア科が最も高く,それに次いでバシドラコ科が多かった。バシドラコ科は最も多様性が高く11種が採集された。明確な群集構造が認められ,種の豊度は570〜681 mで最も高かった。種組成は,陸棚上と海盆とで大きく分けられ,陸棚斜面ともはっきり異なっていた。細かいスケールでみると,George V Basinの海流と堆やその側面における氷山の海底研磨によって様々な生息環境が作られると考えられた。

Isotopic niches of fishes in coastal, neritic and oceanic waters off Adélie land, Antarctica
Yves Cherel, Philippe Koubbi, Carolina Giraldo, Florian Penot, Eric Tavernier, Masato Moteki,Catherine Ozouf-Costaz, Romain Causse, Amélie Chartier, Graham Hosie

アデリーランド沖の,沿岸から外洋域にかけての魚類の生態的地位(ニッチ)を,炭素と窒素の安定同位体比を用いて調べた。炭素同位体比はoffshore/pelagic speciesよりもinshore/benthic speciesでより大きい。Pelagic fishにおいてneriticとoceanicでは炭素同位体比に違いは見られなかった。窒素同位体比をみると,neriticではpelagic fishよりepibenthic fishで,およそ1栄養段階が高かった。最も低い窒素同位体比は無脊椎動物食,高い同位体比は魚食性の魚類で認められた。同位体比からみると、ほとんどの種が炭素(生息場所)か窒素(餌)の同位体比のどちらか、または両方によりニッチは分けられ、多種の魚類が共存できることを示している。魚類の窒素同位体比はペンギンやアザラシと重複しており,海鳥や海生哺乳類と,大型魚類は高次のレベルで漂泳圏生態系を共有している。

DNA barcoding and molecular systematics of the benthic and demersal organisms of the CEAMARC survey
Agnes Dettai, Sarah J. Adamowizc, Louise Allcock, Claudia P. Arango, David K.A. Barnes, Iain Barrat, Anne Chenuil, Arnaud Couloux, Corinne Cruaud, Bruno David, Françoise Denis, Gael Denys, Angie Díaz, Marc Eléaume, Jean-Pierre Féral, Aurélie Froger, Cyril Gallut, Rachel Grant, Huw J. Griffiths, Christoph Held, Lenaïg G. Hemery, Graham Hosie, Piotr Kuklinski, Guillaume Lecointre, Katrin Linse, Pierre Lozouet, Christopher Mah, Françoise Monniot, Mark D. Norman, Timothy O'Hara, Catherine Ozouf-Costaz, Claire Piedallu, Benjamin Pierrat, Elie Poulin, Nicolas Puillandre, Martin Riddle, Sarah Samadi, Thomas Saucède, Christoph Schubart, Peter J. Smith, Darren W. Stevens, Dirk Steinke, Jan M. Strugnell, K. Tarnowska, Victoria Wadley, Nadia Ameziane
東南極のデュモンデュルビル海では、ロス海や南極半島に比べ、DNAバーコーディングおよび分子分類学的研究が進んでいない。このため、The Collaborative East Antarctic MARine Census (CEAMARC)と題する研究プロジェクトが2007年から2008年にかけての夏期間に実施され、海底近辺からのきわめて多様な生物サンプルが採取された。標本はソートされた後、種の同定およびバーコーディングが行われた。途中経過ではあるが、本プロジェクトにより取得されたミトコンドリアのCOI遺伝子塩基配列は、ほとんどのグループでの同定作業に有効で、予備的な分類検索に役立つものであることが示された。本プロジェクトはすでに、頭足類、ウミグモ、硬骨魚類、ウミユリ、ウニにおける系統地理学的および系統遺伝学的研究に新しい材料を提供しており、いくつかの新種も記載されると共に、南大洋における進化パターン研究にも貢献している。