<Vol.4(4) の掲載論文>
Petrology and geochemistry of Yamato 984028: a cumulate lherzolitic shergottite with affinities to Y 000027, Y 000047, and Y 000097
Amy J.V. Riches, Yang Liu, James M.D. Day, Igor S. Puchtel, Douglas Rumble III, Harry Y. McSween Jr., Richard J. Walker, Lawrence A. Taylor
レールゾライト質シャーゴッタイトYamato (Y) 984028の岩石鉱物学的、化学的、酸素とオスミウム同位体組成に関する研究を行った。酸素同位体組成から、この岩石は火星起源であることを確認した。岩石組織や鉱物組成の特徴から、Y980428は集積岩であると考えられる。この岩石の全岩組成とオスミウム初生値は、欠乏したシャーゴッタイトのものに類似する。このことから、外の南極産シャーゴッタイト(Y793062、Y000027/47/97など)と火星上の同じクレータ起源であると考えられる。オスミウム同位体組成および親鉄元素組成から、Y980428はコンドライト組成から進化したRe/Os組成をもつマントルが起源であると考えられる。
Sm-Nd and Rb-Sr studies of lherzolitic shergottite Yamato 984028
C.-Y. Shih, L.E. Nyquist, Y. Reese, K. Misawa
レルゾライト質シャーゴッタイトYamato 984028のSm-NdおよびRb-Sr鉱物アイソクロン年代と初生比は、 それぞれ170±10 Ma、初生143Nd/144Nd=+11.6±0.2ε、170±9 Ma、 初生87Sr/86Sr=0.710389±0.000029であることから、Y984028の結晶化年代は、170 Maといえる。Y984028のマントル起源物質の時間平均した87Rb/86Srは、 2段階進化モデルを仮定すると0.182となり、他のレルゾライト質シャーゴッタイトにおいて報告されている0.178-0.182の範囲内におさまる。Y984028のマントル起源物質の時間平均した147Sm/144Nd (0.217) は、コンドライト値よりも大きいことから、軽希土に乏しい苦鉄質の火星マントルに由来していると考えられる。
Spectroscopy of Yamato 984028
M.D. Dyar, T.D. Glotch, M.D. Lane, B. Wopenka, J.M. Tucker, S.J. Seaman, G.J. Marchand, R. Klima, T. Hiroi, J.L. Bishop, C. Pieters, J. Sunshine
火星隕石Y984028の内部および外部の総合的な分光解析を6つの技術を用いて行なった。全岩および分離した鉱物の紫外・可視・近赤外反射、中間赤外放射、減衰全反射(ATR)、透過FTIR、顕微ラマン、メスバウアースペクトルのデータを総合比較した。その中5つの手法はカンラン石の組成Fo65を10モル%以内の精度で正しく決定した。透過FTIRとATRスペクトルは3500cm-1付近に吸収帯を示し、表面からの吸収でないOH/H2Oの存在を示した。Y984028のカンラン石の褐色は火星での衝撃で出来たナノ金属鉄粒子が存在を示していると思われる。この隕石とMIL03346は火星隕石の中でも最も酸化されたものであり、そのFe3+量はQFM酸素分圧付近での高温平衡状態と整合的である。
Petrography of Yamato 984028 lherzolitic shergottite and its melt vein: Implications for its shock metamorphism and origin of the vein
Shin Ozawa, Masaaki Miyahara, Eiji Ohtani, Makoto Kimura, Yoshinori Ito
レルゾライト質シャーゴッタイトYamato 984028 (Y984028) の岩石学的記載を行った。衝撃による変成組織として、鉱物中の不規則な割れ目、輝石の双晶ラメラ、斜長石のマスケリナイト化などが認められ、これらの特徴は他のレルゾライト質シャーゴッタイトと類似していた。また、Y984028には幅1.5 mm程度の溶融脈が含まれており、その内部は、粗粒の鉱物片(主にかんらん石)、細粒の自形かんらん石結晶、およびケイ酸塩ガラスで構成されていた。粗粒のかんらん石片は、より細粒のかんらん石結晶が多数集合した特異な組織を示しており、また、細粒・自形のかんらん石結晶には、複雑な結晶化過程を示唆する様々な種類・組成の累帯構造が認められた。
Petrology and mineralogy of the shock-melted H chondrites Yamato-791088 and LaPaz Ice Field 02240
Takafumi Niihara, Naoya Imae, Keiji Misawa, Hideyasu Kojima
異なる特徴を持つHコンドライトの衝撃溶融岩(Y-791088およびLAP 02240)を、岩石・鉱物学的視点から比較し、形成環境を検討した。Y-791088は,とけ残り物質を約40%含み,コンドルールの形態を保持している。一方、LAP 02240は約10%のとけ残り物質を含み、コンドルールは変形している。同様の特徴はLLコンドライトの衝撃溶融岩である、Y-790964およびY-790519で観察される。Y-790519では、2つの衝撃溶融岩相が共存しており、両岩相が同時に形成したことを示している。異なる衝撃溶融岩の特徴は、溶融度の違いのみではなく、加わった剪断応力の差を反映していると考えられる。
GPS scintillation studies in the arctic region during the first winter-phase 2008 Indian Arctic Expedition
A.K. Gwal, Amit Jain
北極の極冠域に位置するNy-AlesundのインドHimadri基地においてGPS電離圏シンチレーションと全電子数(TEC)の観測を2008年3月に行った。振幅シンチレーション(AS)は限られた領域で発生するが、位相シンチレーション(PS)は地磁気緯度・地方時に強く依存し、両者の発生は地磁気擾乱時に増大する。擾乱時のPS域はオーロラオーバルの移動と共に低緯度に移動する。AS・PS発生頻度の正午付近での極大は、カスプ域での粒子降込によると推測される。TEC及びTECの時間変化率(ROTI)の増大は、惑星間空間磁場が南向き又はKp>4で発生しやすい極冠域パッチと関連している。また、GPSロック外れは朝方にL2信号で発生しやすく、測位誤差も擾乱時に増大する。
Three lecideoid lichens new to Svalbard, Norway
T. Inoue, S. Kudoh, M. Inoue, M. Uchida, H. Kanda
スバールバル諸島スピッツベルゲン島ニーオルスンにおいて、1994年、2000年及び2007年に行った植生調査による地衣類標本について、顕微鏡観察及び化学分析により同定を行なった。その結果、スバールバル諸島における新産種Lecidea apochroeella Nyl., Lecidea leucothallina Arnold, and Porpidia contraponenda (Arnold) Knoph & Hertelの存在が明らかとなった。L. apochroeellaは、これまでの報告よりも高緯度での発見となり、分布域の北限を更新した。