Site Testing at Dome Fuji for Submillimeter and Terahertz Astronomy: 220 GHz Atmospheric Transparency
Shun Ishii; Masumichi Seta; Naomasa Nakai; Satoshi Nagai; Naoki Miyagawa; Aya Yamauchi; Hideaki Motoyama; Makoto Taguchi.
南極大陸内陸部での天文学の開拓を目指したサイト調査として、2006年12月14日から2007年1月14日までの間、ラジオメータを用いてドームふじ基地における220GHzでの大気透過率の測定を行った。天頂方向の220GHzでの光学的厚みの平均値は0.045±0.007であり、測定全期間の98%の期間は0.06を下回る良好な値であった。今回得られたドームふじ基地での大気透過率の測定値は、条件の悪い夏期にも関わらず、サブミリ波観測の好適地として知られているチリのアタカマ砂漠での最も良好な時期(冬期)の大気透過率と同程度である。
Titanium behavior in quartz during retrograde hydration: occurrence of rutile exsolution and implications for metamorphic processes in the Soer Rondane Mountains, East Antarctica
Tatsuro Adachi, Tomokazu Hokada, Yasuhito Osanai, Tsuyoshi Toyoshima, Sotaro Baba, Nobuhiko Nakano.
東南極・セールロンダーネ山地に産出する珪長質角閃石黒雲母片麻岩(HBG)に含まれる石英中にルチル離溶組織を見出した。HBGは、周囲に分布する珪長質斜方輝石片麻岩(OPG)がペグマタイトの貫入に伴って加水後退反応を起こした結果であると考えられる。OPGに含まれる主要鉱物からは約800℃のピーク変成条件が得られる。一方でHBGに含まれる主要鉱物からは約650-700℃の加水作用の条件しか得られない。そこでHBGに含まれる石英について、ルチル離溶以前のTi含有量を復元し、Ti-in-quartz地質温度計を適用すると、OPGと同様に約800℃のピーク変成条件が得られる。このことは加水作用などの二次的なイベントによって情報が改変された岩石からでも、Ti-in-quartz地質温度計を適用することで初生的な変成条件を復元できる可能性を示している。
Surface zooplankton distribution in the Drake Passage recorded by Continuous Plankton Recorder (CPR) in late austral summer of 2000
Kunio T. Takahashi, So Kawaguchi, Graham W. Hosie, Tatsuki Toda, Mikio Naganobu and Mitsuo Fukuchi
2000年2月にドレーク海峡を縦断する航路において連続プランクトン採集器(CPR)を曳航した。表層動物プランクトン群集の現存量は極前線域および亜南極前線より低緯度海域で増加した。動物プランクトンは21のカテゴリーに分類され、もっとも卓越して出現したのはカラヌス目の小型カイアシ類(例えばCtenocalanus属や Clausocalanus属)で全体の57.5%を占めていた。続いてキクロプス目の小型カイアシ類であるOithona属が25.9%であった。クラスター解析の結果、小型のカラヌス目カイアシ類が本海域における現存量の増減に大きく貢献していることが明らかとなった。また1927年の英国ディスカバリー号航海において同海域で曳航されたCPRデータとの比較から、表層動物プランクトン群集の優占種が大型のカイアシ類やヤムシ類から小型カイアシ類に変化している可能性を示唆した。
Evaluating the impact of environmental pollution on fish in McMurdo Sound, Antarctica: A biomarker approach
Glenn J. Lurman, John A. Macdonald, Clive W. Evans
南極における汚染物質の動物相への影響を調べるため、マクマード基地近くのWinter Quarters Bay (WQB)と基地から離れたBackdoor Bay (BDB) においてウロコギスを捕獲し、様々なバイオマーカーの活性を比較した。計測項目のうち、エトキシレゾルフィン-O-デエチラーゼ (EROD)活性はWQBで捕獲されたウロコギスにおいて有意に高かった。しかし、両者で肝臓重量指数、栄養状態の指標には違いがなかった。またBDBで捕獲したショウワギスをWQBでケージにいれ2-4週間飼育した所、ナフタリン・フェナントレンの蓄積が対照群に比べ高くなった。しかし、これらについても形態的な違いはみられなかった。以上の結果から、WQBにおいて過去に蓄積された汚染物質が、局所的な動物相にいまだ影響を与えていることが明らかになった。
Development of Antarctic herb tundra vegetation near Arctowski station, King George Island
Kozeretska I.А., Parnikoza I. Yu., Mustafa O., Tyschenko O.V., Korsun S.G., Convey, P.
南極草本ツンドラ植生の発達を、キングジョージ島のH. Arctowski基地周辺における氷河後退史との関連で調査した。環境傾度に応じて海岸・中間・氷河縁辺の3ゾーンを設定し、総植生被度、2種の固有の顕花植物種とコケの被度、顕花植物の齢構成と繁殖状況、蘚苔類の種多様性の定量化を行った。その結果は、上記3つのゾーンの存在を支持するものであった。しかし、これら2種の顕花植物、特にDeschampsia antarctica は、この地域の最近氷河が後退した立地へ真っ先に侵入を果たす種であるが、2種にはゾーンをまたいで生物学的特性の違いが見られた。
Limnological characteristics of vertical str ucture in the lakes of Syowa Oasis, East Antarctica
Shigeko Kimura; Syuhei Ban, Ph.D; Satoshi Imura, Ph.D; Sakae Kudoh, Ph.D;Masahiro Matsuzaki, Ph.D
昭和オアシスの27湖沼について、2003年12月から2004年2月の期間、その物理化学的特性の鉛直構造を調べた。湖沼は、その成因と地理的特徴によって3つのタイプ(非海跡湖、流水性海跡湖、止水性海跡湖)に分けることができた。非海跡湖では、湖面が氷結しているとき湖水は成層していたが、開氷期には循環していた。これは湖盆が浅いので頻繁に鉛直混合がおこるためである。流水性海跡湖は、融解水に涵養されることで、非海跡湖と同様の特徴を示した。一方、止水性海跡湖では、強い塩分成層が認められた。すりばち池と舟底池では、塩分は極めて高く、20%に達していた。すりばち池は部分循環湖であり、10m以深に終年停滞層の形成が認められた。
Discovery 1 of the Yamato Meteorites in 1969
Masaru Yoshida
第十次日本南極地域観測隊の内陸調査隊は、1969年12月にやまと山脈東南縁の裸氷帯で9個の隕石を発見・採集した。これはやまと隕石の最初の発見であり、これがきっかけとなって今日までに南極から45000個を越える膨大な量の隕石が収集され、世界全体の収集隕石数の大部分を占めるようになった。最初の発見のきっかけは、氷床の測量作業中に数人の調査員が偶然に3個の岩石を採集したことであったが、その後は測量のルート上で採集作業が意図的に行なわれた。報告では、日本出発前に隊員に対して行なわれたシニア科学者による隕石採集の示唆、現地での発見と採集作業の詳細、現地及び日本における隕石集積機構の考察、日本での隕石の確認と発表の事情等を、当時の写真や関係者間の手紙等と共に明らかにした。