<Vol.3(2) の掲載論文>
Noble gases in two shergottites and one nakhlite from Antarctica: Y000027, Y000097, and Y000593
Susanne P. Schwenzer, Ph.D.; Siegfried Herrmann; Ulrich Ott, Ph.D
南極で回収された火星隕石-レーゾライト質シャーゴッタイト(Y000027, Y00097)およびナクライト(Y000593)の希ガス含有量の二次的な影響について考察した。衝撃変成作用、宇宙線照射、地球上での風化という三つのプロセスが大きな影響を与えることを明らかにした。衝撃変成作用のために放射起源のHeは完全に脱ガスしている。シャーゴッタイトの宇宙線照射年代は4.41±0.54Maで、ナクライトのそれは11.8±0.3Maである。隕石表面付近は内部に比べ重希ガス(Ar, Kr, Xe)に富む。これは、表面付近が地球上で強い風化作用を受けたことを示す。
Statistical properties of the Transantarctic Mountains (TAM) micrometeorite collection
Clément Suavet; Pierre Rochette, Professor; Myriam Kars; Jérôme Gattacceca; Luigi Folco; Ralph P Harvey, Associate Professor
南極横断山脈のヌナターク頂上付近から微隕石が回収された。これらの微隕石は、過去数十万年の間に降下したものだと考えられる。石質微隕石に含まれるかんらん石の風化の度合いは大きくばらつく。これは、長期間にわたって降下したという事実と調和的である。比較的大きな(>1000μm)微隕石を含む数多くの微隕石が回収されたため統計学的な考察を行った。粒径100-1600μmでの粒度分布の傾きは一定であり、これは微隕石の粒度分布は一つのプロセスに支配されるためだと考えられる。
Evaluation of a curve-f 1 itting method for diffuse reflectance spectra in the UV-Visible-NIR wavelength region
M. Miyamoto, T. Arai, M. Komatsu, A. Yamamoto, and T. Mikouchi
惑星や小惑星の表面物質研究に用いられる紫外・可視・近赤外波長領域の反射スペクトル解析では、それぞれの鉱物の吸収帯を分離する必要がある。そのためには、Sunshine ら(1990)により提案されたModified Gaussian Method (MGM)が用いられることが多い。我々は、この分離方法について、吸収帯の関数形として、ガウス関数がローレンツ関数より、バックグラウンドの関数形は、波数についての一次関数より二次関数が良い結果を与えることを示した。これは、MGMの自然な拡張となっている。また、この方法を、普通隕石とユークライト隕石の反射スペクトルについて、カンラン石と輝石の吸収帯分離に応用し、吸収帯位置がそれぞれの鉄の含有量と調和的であることを示した。
Chemical characteristics of the lherzolitic shergottite Yamato 000097: 1 magmatism on Mars inferred from the chemical compositions of shergottites
Naoki Shirai; Mitsuru Ebihara, Professor
即発ガンマ線分析法、機器中性子放射化分析法、機器光量子放射化分析法を用いて、南極で見つかったレールゾライト質シャーゴッタイトYamato 000097の分析を行った。鉱物組成の割合のためレールゾライト質シャーゴッタイト間で化学組成に微かな違いが見られたが、どのレールゾライト質シャーゴッタイトも同じような化学組成の特徴を示しており、レールゾライト質シャーゴッタイトは同様な形成過程を経てきたと考えられる。Yamato 000097のHf/Sm比は、他のシャーゴッタイトと同じ比であり、コンドライトより高い値であった。シャーゴッタイトの化学組成と実験系で求められた分配係数より、シャーゴッタイト中のHfとSmを分別させた火成活動には、メージャライトが関わったものと考えられる。
Inter- and intraspecific variations of the chemical properties of high-Arctic mosses along water regime gradients
Takeshi Ueno, Ph. D; Takashi Osono, Ph. D; Hiroshi Kanda, Sci. D
高緯度北極カナダ・エルズミア島において、生育地の水分条件がコケ植物の化学特性に及ぼす影響を調査するために、水分条件の異なる場所に生育する3種類のコケ植物(オオササバゴケ,イワダレゴケ,シモフリゴケ)とイワダレゴケにおける3つの個体群の化学特性を比較した。化学特性は,コケ植物配偶体の緑色部に含まれる有機炭素化合物量(リグニン様物質,全炭水化物,アルコール・ベンゼン抽出物,炭素)と栄養塩量(窒素,リン,カリウム,カルシウム,マグネシウム)とした。その結果、生育地の水分条件はコケ植物の化学特性に大きな影響を与えることが示され、湿潤な環境に生育するコケ植物ほど、全炭水化物含量が低く、栄養塩含量が高いことが分かった。また、栄養塩の化学量比が生育地の水分条件の指標となり得ることも示唆された。