PSニュース No.6

Polar Science


<Vol.2(3) の掲載論文>

Rb-Sr, Sm-Nd and Ar-Ar isotopic systematics of lherzolitic shergottite Yamato 000097
Keiji Misawa, Ph.D; Jisun Park; Chi-Yu Shih; Young Reese; Donald D Bogard; Larry E Nyquist
Yamato 000097のルビジウム−ストロンチウム、サマリウム−ネオジム、アルゴン−アルゴン同位体年代学研究から、以下のことがあきらかになった。1)この岩石は、Rb/Sr比が小さく、軽希土に乏しいマントル起源物質から~150 Maに結晶化した。2)Yamato 000097に認められる過剰40Arは、火星大気を捕獲したものではなく、火星マントルの特徴を受け継いだものである。3)Yamato 000097とYamato 793605およびAllan Hills 77005は、同一のマントル起源物質に由来する。Lewis Cliff 88526の起源物質は、化学的な特徴がやや異なっている。

Mineralogy and petrology of paired lherzolitic shergottites Yamato 000027, Yamato 000047, and Yamato 000097: Another fragment from a Martian "lherzolite" block
Takashi Mikouchi, Dr.; Taichi Kurihara
Y000027、Y000047、Y000097は南極で見つかった新しいレールゾライト質シャーゴッタイト火星隕石である。これらの隕石の鉱物学的・岩石学的研究の結果、3つの隕石はペアであり、これまでに見つかっているこのグループの隕石とよく似た特徴を持っていることが明らかになった。しかし、これまでのレールゾライト質シャーゴッタイトとは、鉱物組成にわずかに差が見られることから、火星の同じ岩体の少し異なった場所を起源とすると考えられる。このことから、レールゾライト質シャーゴッタイトの岩体には、ナクライトと同じように集積作用による層状分化が見られる可能性が示唆される。

Noble gases of the Yamato 000027 and Yamato 000097 lherzolitic shergottites from Mars
Keisuke nagao, Dr.; Jisun Park, Dr.; Hoon Gong Choi
レルゾライト質シャーゴッタイトに分類される火星起源隕石Yamato 000027とYamato 000097およびYamato 000027に存在する溶融脈部分の希ガス同位体組成を測定した。希ガスデータは、これらの隕石が地球落下時に割れたペアであるという岩石学や鉱物学からの見解を支持している。宇宙線照射年代460万年は、これまでに研究されたALH77005, Y793605, NWA1950, LEW88516と同様であり、これらレルゾライト質隕石が火星から同時に放出されたことが明らかになった。測定値40Ar/36Ar=1900、129Xe/132Xe=1.6、84Kr/132Xeなどは、これらYamato隕石中に火星大気起源の希ガスが含まれていることを示している。

Seasonal changes in nauplii and adults of Calanus hyperboreus (Copepoda) captured in sediment traps, Amundsen Gulf, Canadian Arctic
Y. Ota, H. Hattori, R. Makabe, M. Sampei, A. Tanimura, H. Sasaki
カナダ北極圏大陸棚の物質循環研究の一環として、アムンゼン湾の4地点において時系列セジメントトラップを2003年10月から翌年7月まで設置し、カイアシ類を採集した。その中では体長が155-811μmのカイアシ類幼生が多く、体長が約190μmのCalanusのノープリウス初期幼生が2月から3月中旬に増加したことが特徴的だった。また、全地点でCalanus hyperboreusの雌成体成熟個体は2-3月に多く、雄成体は11-12月に多かった。雌成体成熟個体から推定された産卵時期は、体長が約190μmの幼生の出現時期と一致していた。この体長の幼生はC. hyperboreus由来であると考えられ、C. hyperboreusの産卵時期は11-12月に始まり、遅くても4月末まで継続することが推定された。

Unmanned Magnetometer Network Observation in the 44th Japanese Antarctic Research Expedition: Initial Results and an Event Study on Auroral Substorm Evolution
Akira Kadokura; Hisao Yamagishi; Natsuo Sato; Kei Nakano; Mike C Rose
第44次日本南極地域観測隊では2003年から2004年にかけて、沿岸域のスカーレン、オメガ岬、内陸のH100、ドームふじの4地点に無人磁力計を設置し連続観測を行った。前者の3点は、昭和基地から約80km、ドームふじは約800km離れており、オーロラ現象に伴う電離層電流系の小規模、中規模な時空間変動を観測することを目的とした。本論文では、観測器の仕様、設置概要、運用結果、及び初期解析結果について報告する。特に昭和基地やドームふじにおけるオーロラ光学観測機器との同時観測例を示し、こうした無人磁力計ネットワークが、オーロラ現象を研究する上で、非常に有効であることを示す。