【メンバー】

麻生武彦(極地研)、Bjorn Gustavsson(UiT,ノルウェイ)、
田邉國士( 早稲田大/統数研)、田中良昌(融合センター)、門倉昭、小川泰信(極地研)、
Ingrid Sandahl, Urban Brandstrom, Tima Sergienko (IRF,スウェーデン)

【研究目的】


北欧に展開されているALIS(Aurora Large Imaging System)オーロラ地上多点観測網により得られたオーロラ画像データを中心に、「れいめい」衛星による上空からのオーロラ画像データ、EISCATレーダーによる電離層電子密度高度分布データ、イメージングリオメータによる下部電離層における銀河雑音電波吸収の2次元分布データ、など多種類のデータを用いて、逆問題を解き、オーロラの3次元立体構造、及び、オーロラを光らせている降下粒子(オーロラ粒子)のエネルギー特性の推定、などを行うための、一般化オーロラトモグラフィ(Generalized Aurora Computed Tomography) 解析手法を開発することを目的とする。




















一般化オーロラトモグラフィの研究
〜 極域科学における逆問題 〜
ALISデータから再構成されたオーロラの3次元立体構造の例
【期待される成果】

オーロラ、夜光等の高層における発光現象の3次元的な位置や構造を知ることは、それぞれの生成の物理過程や超高層ダイナミクスの解明に欠くことができない。オーロラの3次元発光構造、さらには降り込み粒子エネルギーのスペクトルを、地上と衛星観測データの包括的な解析とくに観測におけるさまざまな誤差とモデルの不確かさを考慮に入れた統計的な解析モデルの構築を通して明らかにする本手法が確立されれば、極域科学における異種情報の統合解析手法とオーロラ電離圏エアロノミーの知見の蓄積に資するものとなる。

【平成19年度までの経過と成果】

2005年8月に「れいめい」衛星が打ち上げられ、本融合プロジェクト研究の一環として、昨年10-11月にALIS-REIMEI-EISCATキャンペーン観測を行った。最適な同時観測データの取得には至らなかったが、多点地上観測画像データや、アルベドなど衛星からのトモグラフィー観測画像解析に関する知見を得た。

この逆問題解析を行うについて、われわれが従来用いていた代数的再構成法であるMART (Multiplicative Algebraic Reconstruction Technique), SIRT (Simultaneous Iterative Reconstruction Technique)やその変形法等から、一歩進んだ統計的モデリングに基づく新たな解析手法への発展について検討した。
オーロラ画像データと上述のマルチモーダルな情報を併せて取り込んだ一般化オーロラトモグラフィ(Generalized−Aurora CT)によるオーロラ発光、とりわけ大気層上端における降り込み粒子のエネルギースペクトル推定を行うアルゴリズム研究の方向性をグループで討論、確認し、具体的な定式化に入った。

2006年4月より融合プロジェクト研究員1名を採用し、従来の解析プログラムを新しい環境に移植し動作確認を行うとともに、れいめい衛星とALISとの新たなキャンペーン観測データを用いたオーロラ3次元形状の再構成解析、及びその時間発展解析を「PhaseT」として進めている。
さらに次の「PhaseU」のステップとして、EISCATレーダーやリオメータなどマルチモーダルな観測データを取り込み、オーロラ粒子のエネルギースペクトルの導出を目的とした、一般化オーロラトモグラフィーアルゴリズムの検討も並行して進めている。これらの目的のため、国内外において研究発表・研究打合せを行った。

平成19年度は、一般化オーロラトモグラフィ解析アルゴリズムの開発を進め、EISCATデータとイメージングリオメータデータを取り入れた解析アルゴリズムの構築にまで至った。また、解析対象となるデータを取得するため、ALIS−れいめい衛星−EISCAT同時観測キャンペーンを計画・実施した。

【平成20年度の計画】

オーロラ画像の他にEISCATデータ、イメージングリオメータデータ、人工衛星データを取り入れた一般化オーロラトモグラフィ解析アルゴリズムの開発を進め、実際の観測データを用いたイベント解析を行う。また、解析対象となるデータを取得するため、ALIS−れいめい衛星−EISCAT同時観測キャンペーンを計画・実施する。