南極観測隊便り 2017/2018


2017/12/07

12月6日(水) 血圧に悪い

Tweet ThisSend to Facebook | by 管理者
こんにちは、医療隊員宮岡です。ここ数日、除雪車が整備したルートが、悟空が界王様の所に行く道のように見えてきていますが、意識は正常です。週刊誌を読まなくなってほぼ1ヶ月、『宇宙兄弟』や『ONE PIECE』の続きが気になって仕方がありません。ネット環境さえあれば電子版(定期購読中)で読めるのですが、普段目にすることの出来ない素敵な環境にいるので贅沢は言っていられません。

高所による多少の息苦しさを訴える方はいますが、皆さん概ね健康的で経過しております。最近、ごはんを炊く量が3~4割減になりました。標高があがるにつれて食事摂取量は減少すると伺っていますので、想定の範囲内ではあります。アルコールも隊員によっては半減しています。食事で気になる点が一つ、塩分です。昭和基地の調理隊員が調理冷凍していただいている食品の他に、即席(お湯を入れてできる)食材が多数あります。寒い中から車内に戻ってきて飲むみそ汁は格別です。しかし悲しいかな、非常に塩分が多いのです。調べてみたら2g以上ありました。食品によっては、スープまですべて飲んでしまうと、厚生労働省が推奨する1日の塩分摂取量を超えてしまうものがあるぐらいです!血圧を気にしている隊員がいますので忠告すると「医者が目の前にいたら全部飲めねえな」と苦笑しながらスープを半分残していただけるようになりました。たかが3か月、されど3か月、目くじらをたてなくてもいいかもしれませんが、頑張ります。なお、ビールや清涼飲料水にはナトリウムが殆ど含まれていないので、こちらに関しては塩分という視点からいうと問題ありません。



中継地点で試してみた風呂への入浴ですが、結果からいうと失敗に終わりました。
観測が終わった午後の休憩時間、バケツ4杯分(80L)のお水をお風呂が入っている橇に持っていきました。お風呂の大きさは一般家庭の浴槽と同じくらいで80Lでは半身浴もできるかどうかぐらいですが、体積の大きい私だと十分な量になります。順調にいったのはここまででした。入れた水の水面に何故か油が浮いているのです。匂いからすると軽油。なんらかの原因で、軽油が浴槽についていたようです。ここまで来たら多少の油には負けません。そもそも、日本には油が混じっている温泉があります。北海道の北部に豊富町という町に温泉があるのですが、そこの温泉は油分が混じっています。乾癬という皮膚疾患に対して効果があるといわれている知る人ぞ知る温泉で、私も大好きな温泉です。それと同じじゃないか(本当に同じではないですが)と半分開き直りました。
そこに投げ込みヒーターを2本投入して加温します。(投げ込みヒーター:外部電源によってエネルギーを得た熱い金属の棒)ここでも問題発生。調子が悪く1本しか稼働していません。全然水があたたまらないのです。1時間たっても30度前半の水温。迫りくる夕食タイム。せっかく準備した水・エネルギーがもったいないので、意を決して浴槽に飛び込みました。30数℃でも温かく感じます。水面はおへそあたりまで、そこから上は極寒です。気付いたら無心で手桶を使って上半身にお湯をかけていました。体も洗ってはみたのですが、油のにおいがさらについてしまった感じになりました。さらに寒くて浴槽から出られません。大げさでなく清水の舞台から飛び降りるつもりで、浴槽から飛び出してガタガタ震えながら体を拭いていると、隊員から無線連絡。私の身を案じて連絡してくださったのかと思いきや「ご飯時間来ているよ」……「すみませんが先に食べていてください」
軽油のにおいをさせながら夕食をとる事になりました。今回の失敗を踏まえ、ドームふじ基地で入浴再挑戦しようと考えています。次は成功するといいいのですが……。



本日の行動
出発地:MD500
キャンプ地:MD552
標高:約3600 m
気温:-39度(6時半)、-32度(18時半)
風速:5〜6 m/s
移動距離:52 km
S16(出発地)からの積算移動距離:874 km
ドームふじ基地まで:183 km
本日の行動:移動、ルート沿い雪尺観測とサンプリング、レーダー観測、キャンプ地での観測、雪上車整備、燃料橇つなぎ変え


04:50 | 投票する | 投票数(29) | 日々の活動状況