南極観測隊便り 2018 - 2019


2018/12/27

アメリカ製アイスレーダーによる氷床内部層構造探査

Tweet ThisSend to Facebook | by ishida
当ブログ読者の皆様こんにちは、観測隊員の津滝です。いつの間にかクリスマスも過ぎ去りました。きっと皆様は美味しいクリスマスディナーを堪能したことでしょう。ちなみに私の12月25日の夕食は、カップ焼きそばでした。

ドーム隊では様々な観測が大詰めな上、ベースキャンプの撤収など帰路に向けた準備も控えており、各隊員は休日返上で慌ただしい毎日を過ごしています。そのうち5名の隊員は2台の雪上車に分乗し、アイスレーダーを用いた氷床内部層構造探査を行なっています。111号車にはアメリカのカンザス大学、アラバマ大学の2つのレーダーが設置されています。両側に4本のブドウのようなものが垂れ下がっているのがカンザス大学のレーダーアンテナで、氷床全層、特に深部の層構造を鮮明に観測することに特化しています。一方、ギザギザしたアンテナと黄色い箱がカンザス大学のレーダーで、主に表面から500m深までの詳細な層構造観測を目的としています。

111号車では3名の隊員が乗車し、レーダー観測を行なっています。車輌担当の金子隊員は、約1300kmに及ぶ探査ルートの運転と雪上車の管理を担っています。他2名はノルウェー極地研究所から外国人同行者として参加しているVan Liefferinge隊員と津滝で、2つのレーダーの測定、メンテナンスからデータ処理までを担当しています。

レーダー観測はベースキャンプ周辺にある3つのエリア(A、B、C)で行なっています。1エリア約200kmのルートを1泊2日で探査し、これを1セットとします。各エリアを2回ずつ探査するので、合計6セット、約1200kmを雪上車で走ります。これにベースキャンプからドームふじ基地までの往復100kmの観測を加えて、111号車では1300kmのレーダー観測を実施しています。1日あたり100~120kmを走行するため、朝5時半起床、7時前に出発して、途中1時間弱のお昼休憩を挟む以外は、17~18時まで走り続けます。その後キャンプの準備をして夕食を摂り、その日に取得したデータの処理とバックアップを行い、23時頃に就寝します。2つのレーダーで取得されたデータはとにかく大容量で、特にカンザス大学のレーダーは1日あたり1TB(テラバイト)にもなります。データのコピー、処理で毎日4~5時間を要するため、早朝出発し、夕方早めに観測を終えるスケジュールにしています。睡眠時間が少ないので、日中は絶えず襲い来る睡魔と闘いながら、レーダーシステムに接続されたノートパソコンの画面をにらめっこする毎日です。つらたん。。。


写真:カンザス大学、アラバマ大学のレーダーアンテナが設置された111号車

津滝記
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