南極観測隊便り 2017/2018

第59次南極地域観測隊 内陸調査隊の活動をお伝えしていきます。
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2018/02/18

5名が成田到着

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ドーム隊メンバー5名を含む59次南極地域観測隊(先遣隊:隊員12名、同行者1名)は、2月17日に予定通り成田空港に帰国しました。
14:42 | 投票する | 投票数(23)
2018/02/14

ケープタウンへの移動

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2/5の投稿記事「待ち」のフォローアップとしての経過報告です。前回投稿以降、昭和基地滞在中は荒天が続きました。昭和基地では、荒天の程度に応じて、外出に制限がでてきます。昭和基地からの外出が申告制かつ複数名での行動が原則となる「外出注意令」がしばしば出されていました。低気圧が昭和基地北方を通過して数日荒天が続いたあとに、半日~1日程度穏やかなタイミングがあるような状況を繰り返していました。最終的には、荒天が一時的に収まり、空路帰国するメンバーが移動可能なチャンスがでたのが2/11でした。それまでも、何度か「ヘリ搭乗のため待機」という指示がでて荷物等をまとめスタンバイしたのですが、荒天で数回中止となりました。2/11朝に、空路帰国する14名の観測隊員や同行者が昭和基地から大陸上の航空拠点までヘリコプターで輸送されました。同日午後に、輸送を担うDROMLANという航空網のプロペラ機「バスラ-ターボ」が飛来し、隊員をノボ基地滑走路まで輸送しました。この輸送の完了が2/11夕刻。隊員らは、ノボ基地滑走路の宿泊施設(ベッドが多数設置されたコンテナ)に一泊し、翌日2/12午後の大陸間フライトによって、ケープタウンに移動しました。ケープタウン到着は2/12夕刻となりました。昭和基地から移動を開始して早約35時間後、ほぼ100日ぶりに街の環境にはいりました。これらの移動にあたっては、昭和基地の観測隊の方々、「しらせ」、それに国内の国立極地研究所や各機関からの支援など、様々且つ甚大なご支援を受け続けました。ここに記し、深く感謝申しあげます。昭和基地を去る際には、見送ってくれた昭和基地越冬隊の方々と、挨拶・握手・抱擁が続きました。
 
成田到着予定は17日となります。データとりまとめや研究の展開としては、新たな段階、そして長いエフォートの時間が間もなく始まります。来年の観測隊も間もなく冬期訓練がはじまり、10月に日本を出発する予定の次期ドーム内陸隊(夏隊メンバー)も準備を始動します。南極昭和基地で越冬観測を開始した方々とは連絡を密接にとりあいすすめます。アイスコア研究は、チームによるとても息の長いエフォートであるというのは私の確信です。少なくともこれまではそうでした。長い努力の先には、とても重要な知識が世の中に供給されていく。自らを鼓舞。各方面との連携もうまくとって。研究を志す方々に伝えたい知識やノウハウもたくさんあります。知識やノウハウの積み重ねで、それをこれから来る方々にもお伝えし、関係者全般の研究生産サイクルもどんどん上げたい。いざ!。(藤田記)
04:47 | 投票する | 投票数(18)
2018/02/10

全車無事帰還!

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ついに出発地点のS16まで還ってきた。思い返せば、約三か月前に成田空港を旅立ち、 S16を11月13日、雪上車5台でドーム基地に向けて出発した。二か月以上の雪上車の中での生活。食料、燃料を橇に載せ、水は南極の雪を雪上車の排熱を利用して溶かして利用。3ヶ月風呂に入らない覚悟をしてきたが時々、排熱で作ったお湯でシャワーも浴びた。生きてゆくためのすべてを雪上車に頼って生活してきた。どんなに荒れたブリザードでも暑いくらいの室温。本当に頼もしいヤツだった。食料橇のあり余る食材が我々を安心させてくれた。

私は修理屋。この南極ドーム旅行中、(どんなことがあっても、すべての雪上車を還さなければならない)と重責を負っていた。エンジン、ミッション、デフなどのブラックボックス的な大きな部品に致命的な故障がない限りどんな方法をとっても還さなくてはならない。そう考えていた。修理はあったものの、結果的に大きな故障なく全車元気に戻って来られた。

1月24日 16:00 先頭をピステンで走る伊藤隊員から、「只今S16に到着しました」と無線が入る こちら二番手を走る109号車もすでにピステンを確認できる距離。嬉しさがこみあげてくる。そして一番心配だった20年車歴のこの109号車も完走ゴール。直後、2か月以上共に同じ雪上車で生活をしてきたドクターの宮岡隊員と握手。すぐあとに今回一番コンディションが良かった111号車が雪煙をあげて元気いっぱいの到着。次いでエンジン熱が大きかった115号車も何気ない顔をして着。そして一番新しいが、少々問題が多かった117号車も無事ゴール。ゴール地点で感動の喜びに崩れ落ちる自分を想像していたが、全車が無事帰還したことに安堵し、緊張感が途切れ、力が抜けた。連日、早朝からルートの除雪整備をして大きくて硬いサスツルギを削りながら走ってくれた伊藤隊員の運転するピステン。スキー場とは格段に違う大きな除雪抵抗を受けながらもドーム基地往復を完璧に働いてくれた。お陰で長い橇列を引く4台の雪上車や橇、橇に乗った荷に負担をかけることなく走行できた。大きな衝撃負担が少なかったことがSM100の故障が少なかったことにつながったのではないだろうか。これは今後の内陸旅行を見直す大きな革命とも言えるだろう。その晩、この旅行で、私のたった一つの願い、夢だった全車完走が叶った喜びの中、酔いつぶれた。
(小林記)


04:59 | 投票する | 投票数(30)
2018/02/10

自転車

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ドーム隊ブログをお楽しみの皆さん お久しぶりです ちょっと前の話で
本日は私事です お正月 ドーム基地で貴重な休日がありました。私の趣味は自転車です。何とか南極の内陸で自転車に乗ってみたいという夢がありましたが、今回は(観測船しらせ移動)ではなく一か月早い飛行機移動の先遣隊だったので、荷物に厳しい制限があり、自転車などとても持ってゆく余裕はありませんでした。南極サイクリングを諦めていたところ、57次越冬隊の古見さんから「昭和基地に自転車置いてあるから乗っていいよ」と声がかかりました。リーダーの川村さんに許可をもらい、諦めていた夢が現実になることに感激。皆さん、往路の109号車の屋根の上に自転車が載っていたのにお気づきでしょうか。
さてその自転車ですが最近流行り始めたファットバイクと呼ばれているマウンテンバイク。タイヤサイズは26×4.0 幅4インチもあるオートバイ並みの太さのタイヤ。これならかなりの雪道でも走れそう。屋根から自転車を下ろしてみると、マイナス25℃以下の極寒地ではチェーンオイルが凍り付いてクランクが回らない。変速機のテンションプーリーも固着。後ろの車輪に付いているフリーホイルも回らない。さすが南極! 対策はチェーンに付いたオイルを南極軽油で完全に洗浄、とりあえず無給油。プーリーを分解し内部のグリスをぬぐい取り、雪上車に使う南極専用グリスをうっすら塗る。後輪を雪上車内に持ち込んで温め、フリーホイルに浸透性潤滑剤スプレーを流し入れる。これを極寒の中に出して試運転してみると、何とか普通に動いた。しかし低温下ではペダルやホイールのハブなどのベアリング部分はグリスが固まってとても動きが悪くなっていました。問題は雪面。素人考えでドーム基地まで行けば極寒地の氷の上を走れる、と考えていたのが大間違い。ドーム周辺の雪は軟雪で、表面の薄いクラストの下はサラサラの雪。クラストが割れればまったく走れない。吹き溜まりのやわらかい雪に入ってしまうと進まない。まったく予想を裏切る雪面でした。結果、雪上車の走った跡が一晩経つと固くなるので、そこをタイヤの空気圧を落としてかろうじて走れる程度でした。それよりも何よりも、ドーム基地は標高3800mの高所。気圧は600hpと非常に空気が薄い。何もしなくても、息苦しくなる時もあり、少し歩いたり、雪堀りなどしただけで、ハーハーと息切れ。これは私だけでなく隊員全員が空気の薄さに苦しんでいます。この状況下で自転車を乗るとどうなるかというと。自転車の体力には自信があった私でも、抵抗の多い雪面を走ってみると100m走っただけでハーハーゼーゼー、少し頑張って走ると呼吸困難になるほどです。この苦しさは、ヒルクライムという登りだけの自転車レースのゴール地点の苦しさ以上でした。南極をなめていました。
今まで、移動、観測の手伝い、食事の準備、車両整備などでのんきに自転車に乗っている暇などあるはずもありませんでした。ルーフに乗った自転車はずっと飾り物でした。ドーム基地では長い滞在になる予定でしたので、そのわずかな半日の休みに南極内陸をほんのちょっと走ってきました。忙しい日々のわずかな正月休日のサイクリング。と言っても雪上車からドーム基地、天文観測塔までを、雪上車の踏み跡を往復するだけのものでしたが、間違いなく私は南極大陸を自転車で走ったんだ! そんな気持ちで満たされた一日でした。
小林 記








04:50 | 投票する | 投票数(25)
2018/02/10

Polar Yoga(極ヨガ) ~ マイナス37℃でヨガをやってみた ~

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はじめまして。 野外観測支援担当の赤田です。
ドーム旅行中はほとんどパソコンを開くこともなく、ブログ原稿を書けませんでしたので、せめて1回くらいはと思って、昭和基地から投稿致します。

ドーム旅行中にこっそりヨガをやってみました。名付けて「Polar Yoga」です。
日本ではいろいろなスタイルのヨガが乱立?していますね。ちょっと前にはホットヨガが流行りましたが、果たして極寒系ヨガはウケるのでしょうか?  ・・・検証結果をご報告。


【分かったこと】
・寒すぎてヨガマットはロールのまま。
・ウジャイ呼吸で鼻腔が凍結。
・空気が薄くてパワー系ポーズは無理。
・1分間のシャヴァアーサナで低体温症。
・太陽礼拝だけはいつでもできる


【結論】
・「Polar Yoga」は流行りません。
・南極大陸でおこなうエクササイズは「ラジオ体操」がいちばん。

以上 ご報告まで。
この後は、59次隊の越冬成立にむけて準備をすすめます。(赤田記)



04:17 | 投票する | 投票数(36) | ご挨拶・まとめ情報等
2018/02/10

ドーム内陸旅行を終えて(むすんでひらいて)

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こんにちは,杉浦です.2017年10月28日に日本を発ち,そろそろ第59次南極地域観測隊ドーム隊の南極での活動が終わりに近づいてきました.課題名「東南極における氷床表面状態の変化と熱・水循環変動の機構」の一環(ミッション名「ドームふじ気候」)として,ゾンデによる大気観測,SPC(スノーパーティクルカウンター)による吹雪観測,インターバルカメラによる積雪表層環境観測,自動気象観測装置の設置など,自分以外の9名それぞれひとかどの隊員のお蔭で無事に終えることができました.解析はこれからはじまります...今回の観測を終えるにあたり,学生の皆さんには雪氷に興味を持ってもらい,今後の雪氷研究者として広く活躍してもらいたいなぁと思っています.今回,昭和基地から南極氷床頂部までの約1,000kmの内陸旅行でさらに雪氷に関するおもしろい現象に出会うことができ(このブログで書ききれなかったものは,また別の機会に紹介したいと思います),そのための材料を集めることもできました.一緒に雪氷に関する未解明な現象を探求してみませんか.
(杉浦記)
03:53 | 投票する | 投票数(15) | ご挨拶・まとめ情報等
2018/02/05

待ち

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昭和基地では、本来、夏隊や同行者として夏の間活動していた人々が、順次「しらせ」への移動や、空路帰国のための準備の動きをする時期にはいっています。ただ、天候状況によりいろいろな影響を受けています。2月3日(土)午後には風雪が強まりました。本日5日(月)は、現在、平均風速25メートル/秒、瞬間最大風速35メートル/秒となっています。ヘリによる移動はもちろん、建物からの外出にも制限がでています。風が吹きすさぶ音が建物に響いています。天気予報によれば、明日6日(火)はいくぶん和らぐものの、7日(水)以降には再び数日間の荒天が予報されています。荒天が和らぎ、次のアクションに移れるタイミングまで「待ち」です。夏宿滞在中の人々の多くは、日中はデスクワークをされているようです。
(藤田記)
13:44 | 投票する | 投票数(24) | 現地の状況など
2018/02/04

大陸の拠点S16を離れて

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前回の投稿である1/28から約1週間たちました。ドーム隊のその後の経過の概略のみ述べます。
 

・1月29日:S16から昭和基地に向かうヘリコプター輸送があり、機械担当隊員の伊藤と医療担当隊員の宮岡が昭和基地に先行して移動しました。

・1月30日:残った8名のメンバーは、1/30までに、大陸の拠点S16で、そこを離れる準備として物資や橇等の整理をすすめました。大忙しの一日。
 
・1月31日:この日は、S16から「しらせ」行きのヘリ輸送で、国内へ送り返す物資を「しらせ」に輸送しました。同時に、研究系隊員の大野が帰国に向けた動きとして「しらせ」へ移動しました。S16から昭和基地への輸送もヘリが4便用意され、残った人員(赤田、大藪、川村、小林、杉浦、中澤、藤田)が昭和基地に移動しました。また、物資(各種装備等物資、廃棄物)も昭和基地に輸送されました。輸送オペレーションは午前中に実施されました。到着したヘリポートでは、昭和基地滞在の隊員や、先行して基地に滞在していた宮岡・伊藤の両隊員の出迎えを受けました。物資の仮片付けとあわせ、まずは入浴をさせていただきました。夕方には、基地で建設がすすんでいる「基本観測棟」の上棟式に参加することができました。疲労の蓄積と環境の大変化もあり、入浴後は疲れがどっとでて筋肉痛もではじめました。
 

・2月1日から現在:2月1日に昭和基地で越冬交代式がおこなわれました。59次越冬隊員であるメンバー(赤田、川村、宮岡)は昭和基地の住人として越冬観測体制にはいりました。58次越冬隊員であった伊藤は、越冬観測としての立場を正式に終え、帰国に向けた動きとして「しらせ」へ移動しました。他の5名(大藪、小林、杉浦、中澤、藤田)は、現在、昭和基地に一時的に滞在し、今後ケープタウンに向かうフライト(大陸内フライト(S16→ノボ基地)、大陸間フライト(ノボ基地→ケープタウン))のために待機しています。設営系の方々や他の研究分野の方々とあわせ、合計14名がこの経路で帰国の途につきます。
 

内陸ドーム隊としては、現在「しらせ」滞在が2名、昭和基地の主要区画滞在に4名、昭和基地の別棟である「夏宿」滞在が4名、分散滞在した状況となりました。今回の南極滞在中に全員が再集合する機会はもうありません。今後それぞれの経路(越冬、船で帰国、空路帰国)をすすんでいくことになります。
(昭和基地夏宿にて、藤田記)


15:17 | 投票する | 投票数(29) | 週の活動状況
2018/01/28

時の流れ

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 S16にて、これまで撮影した写真を整理するなかで、ドームふじ基地のごく近傍のルートポイントであるMD734で、59次隊2018年1月2日に撮影した写真と、37次隊1996年11月20日に撮影した写真がありました。
 37次隊1996年に写っているメンバーは、37次隊員の谷口さん(右)、永田さん(中央)、それに藤田(左)です。1996年の当時も、今回59次隊でも使用しているもののひとつと同じレーダを用いてドームふじ近傍の探査をした帰り、数日間の観測を終えて基地に戻ってきた日の撮影です。2018年1月の写真は、大晦日や元旦をはさんで長距離雪上トラック走行レーダ計測中の途中でここを通過したときの写真です。1996年当時、基地で越冬した仲間にはみな珍妙なあだ名がありました。ヤンバルクイナ、一番星、べねとん、トコロ君、ヨネドクなどなど。私についたあだ名は「みらーまん」。アイスコア解析・処理やレーダ観測・雪氷観測に忙しすぎたなかで、お前は研究者の鏡だとか何とかいってついたあだ名です。38次隊西村淳さん著の「南極面白料理人」の本でも記述があるようです。当時全力でアイスコア掘削プロジェクトを支援してくれたこれら設営(機械・通信・気象・医療・調理)の仲間に、「みらーまん、お前またそのレーダとアイスコアの仕事をしているのか?何がわかったの?」と笑い飛ばされそうな気がしています。約21年経過し、木製標識はここまで雪に埋まりました。私自身、その分加齢しています。どの木製標識も、そして内陸基地も、いつかは埋没し、視界から消えていきます。諸行無常。しかし、皆が現場で輝いた青春のひととき。今回も、そして21年前も。南極観測の内陸の現場は、各観測隊次の甚大な努力の連鎖で成立しています。研究データや論文として社会に貢献し長く残る記録・記憶・知識の生成は、設営からの甚大な支援のことを胸に、研究者らがその社会的責任として背負っていきます。ところでこのとても立派な標識、ドーム基地の風下に設置したのが不運でこんなにも埋まってしまった。もし今一度掘り起こし再設置したらあと20年はもつかな、、、
(藤田記)


写真1:MD734にて、2018年1月2日に撮影した木製標識


写真2:同地点にて、1996年11月20日に撮影した写真。ヤンバルクイナ、一番星、べねとん、トコロ君、ヨネドク、あの時は大変にありがとうございました。後方の雪上車はSM106号車。現在は車両後部空間がクレーンに置き換わり改造されてS16にあります。
23:05 | 投票する | 投票数(29)
2018/01/27

国内とのデータ通信・ボイス通信

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南極の内陸へ遠征中は、通信環境が日常とは大きく異なります。本記事は主に技術情報です。今後に極地に出向く方のご参考になればとおもい、記事にします。


 今回の遠征にあたり、国内とのメール通信の確保とボイス通信は重要でした。昭和基地の環境では、インテルサット衛星回線が整備されており、インターネット接続もボイス通信も確保されています。内陸では、そのような設備はありません。データ通信もボイス通信も、基本的にはイリジウム衛星携帯電話か、インマルサットBGANと呼ばれる衛星回線を利用する携帯機器を用意する必要があります。機器のコスト面では、イリジウム衛星携帯電話が大幅に安価です。今回これを利用するにあたり、問題はメールアカウントの確保と安定した通信の確保でした。極地研究をすすめる関係の方々に照会しても、うまくいっている事例はみあたりませんでした。


 GoogleのGmail等は、イリジウム衛星携帯電話をモデムとした通信をおこなうと、通信時間が遅いことをエラーとして認識し、通信を自動的に遮断してしまいます。日本での実験段階では、AOLのアカウントが有効で、何回かのテストを経て「これでOK」とおもっていたのですが、なんと、今回南極の昭和基地入りをしたタイミングで、AOL側から「セキュリティの問題あり」通知が入り、アカウントは強制的に廃止されてしまいました。そうした状況のなかで、ノルウェー極地研に勤務する研究者である松岡さんから、米国にあるサービスuuplusの紹介をうけました。


http://uuplus.com/


 PCにこのuuplusの通信ソフトをインストールし、uuplusと月額約6,000円の契約をすると、イリジウムやインマルサットBGANの通信が圧縮されて高速でおこなわれます。メールに特化したシステムで、ウェブ閲覧は対象外です。メール送受信の接続完了まで10-20秒台で接続が確立します。普段使用しているメールソフト(たとえば、Thunderbird、Outlook、Becky!)は、このPC上にあるuuplusをlocalhostとして、メール送受をします。イリジウム通信が途中で遮断されてしまっても、次に接続したときには遮断した部分からの再開となり、やり直しのムダが発生しません。


 欧米では漁船を中心に多くのユーザーがいるそうです。uuplusとの契約は、通信量にかかわらず定額です。あとはイリジウム衛星携帯の料金が、通話時間に応じてかかるだけです。私は、南極や北極やグリーンランドにしばしば出向く方々に照会をかけるなかで、皆イリジウムのデータ通信の確保で難儀していることを理解しました。それで、この仕組みの情報を共有することは意味があるかとおもいました。今回の内陸行動中、快適に使うことができました。本ブログ記事のテキストの多くも、メール通信で、国立極地研究所アイスコア研究センターに送り、ブログにアップしてもらっています。感謝!。契約には1週間のお試し期間があります。ノルウェー極地研では研究所としてuuplusと契約しているとのこと。日本隊の内陸遠征でも、たとえばIridium Go!という通信機器をルーターとしてチームメンバーが一定のメール送受をできる環境を確保することで、昭和基地のインターネット環境からははるかに劣るとしても、職務・通信の効率化、留守家族の安全保障、精神衛生の改善がすすむと考えます。工夫や改善は重ねられるべきと考えています。


 今回は、昭和基地に居る段階で、このソフトをその後使用することになる可能性を念頭に、ダウンロードしてPCにインストールをしていました。しかし、契約方法の説明がウェブではほとんどわからない。昭和基地を離れてS16についてから、AOLアカウントの強制廃止を確認しがっかり。その後、日本にいる私の家族がuuplusに数回の照会をいれて使用法や契約方法を確認してくれました。予めインストールしておいたことが幸いし、往路の途中で契約とメール通信確保が成立しました。半ば奇跡的とおもっています。ほっと胸をなで下ろした状況でした。
松岡さんと家族からの情報や対応に大感謝でした。


データも、ボイスも、通信の確保は内陸隊やそのメンバーにとってどんな場合でも極めて重要です。

(藤田記)
21:50 | 投票する | 投票数(28) | 現地の状況など
2018/01/27

1月23日(火)コア空輸 追加記事

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記事が前後しますが、1月23日、ドーム隊最後の大仕事、アイスコアの空輸が無事に終了しました。しらせからH128まで片道約100kmありますが、大型ヘリを8便運用していただき、深層コア173箱、浅層コア88箱、雪氷試料59箱、計320箱を無事にしらせのリーファー(冷凍コンテナ)と観測室冷凍庫に搬入しました。しらせの乗組員、昭和基地としらせの通信の方々、しらせ乗船の59次隊隊長や輸送担当隊員、海洋観測チームなど、多くの方々と部門のご協力のおかげで、滞りなく輸送を行うことができました。

輸送作業は朝9時半〜18時半頃まで、丸一日の仕事となりました。ドーム隊からは4名が第1便でしらせに行き、リーファーヘの搬入と確認作業にあたりました。H128には6名の隊員が残り、ヘリへの積み込み作業にあたりました。毎回5人程度H128まで支援に来てくださったしらせの乗組員と、取材でH128に訪れた取材関係2名のご協力により、一箱あたり30kgを超える深層コアの積み込みもあっという間に進みました。しらせの船上でも多くの乗組員にご協力いただき、各便のヘリからの荷降ろしとリーファーへの搬入も迅速に終了しました。

この翌日を境に天候が悪い方に傾いたので、もしこの日に空輸ができていなかったら数日〜1週間ほどの遅れが生じ、その間にコアの温度も上昇するため、分析結果や研究に影響が出た可能性もあります。多くの方々のご協力に大変感謝しています。

ドームふじ基地に-50度以下で保管されていたコアの、基地からH128経由しらせまでの輸送中の温度履歴や、そのことのコアの分析結果への影響などは、極地研にコアが届いた後に、コア箱に同封した温度計の記録の確認や、実際に分析によって確かめます。そして、世界でも例を見ない−50度での低温保管を続けているドームふじ氷床コアを用いて、私たちにしか出せない研究成果を出していきます。(大藪・川村記)

1月23日
キャンプ地:H128
気温:-16度(6時)、-10度(18時半)
風速:1〜9m/s
気圧:831hPa
本日の行動:アイスコアと雪氷試料の空輸(深層コア173梱、浅層コア88梱、雪氷試料59梱)
04:39 | 投票する | 投票数(23) | 日々の活動状況
2018/01/26

沿岸拠点到着後のブリザード

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1月23日に冷凍物資の空輸を終えて、翌24日には約80キロメートルの行程を沿岸拠点である「S16」に移動しました。雪上車による長距離移動としてはラストランの一日でした。曇天がどんどんすすみ、もしヘリ空輸の日程が一日ずれていたら空輸は大幅延期になっていたことを認識しました。さらに翌25日には天候の悪化が予報されていました。予報通り、午前中にどんどん風速が強まり、昼頃には風速は秒速12メートル程度になりました。風速が10メートルをこえると、野外作業は実質困難になります。ブリザードにあうと困る物資についての整理のみを午前に行い、午後には、車両に戻り天候待機となりました。その後もどんどん風雪は悪化し、本格的なブリザードとなりました。

 今後少なくとも数日はブリザードによって雪上車外ではほぼ何もできない日が続くかもしれません。南極沿岸部の観測でよくあることです。これまで観測に用いたレーダ装置系の雪上車からの取り外しと梱包だけでも3~4日間はかかると見積もっているのですが、この作業開始も天候回復まで延期です。車内でできることをすすめながら、機を待つような状況です。でも、観測も、走行も、冷凍試料も、いまやごく一部をのぞき実質完了しています。気持ちの余裕は大です。今回の一連の行動では、天候や航空機移動や空輸の日程など、機に恵まれた要素がとても多かったとおもいます。こうした機に恵まれない場合も当然多々あるわけ
で、これまでの隊次でも何度もそうしたことはありました。これからも何度も出会うでしょう。今回のとても恵まれた要素に感謝し、それは肝に銘じたいとおもいます。そして、研究所や観測隊や「しらせ」による最大限のバックアップによってこうした恵まれた状況が順次できました。ありがとうございました。

 ブリザードが去るタイミングでは、しばしば、激しくうごき徐々に晴れ間ができる積雲や、そこから差し込む光や雪原の風景のおりなす壮大な風景が出現します。息をのむような。日本でも、一度だけ台風が関東を通過する最後のタイミング、台風の雲の塊の最後尾のさしかかりで似たような光景を目にしたことがあります。今回も出現を期待しています。
(藤田記)
16:03 | 投票する | 投票数(20) | 現地の状況など
2018/01/26

1月25日(木)

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昨日(24日)夕方、ドーム隊10名は無事にS16に到着しました。走行途中は曇り/弱い雪で雪面が非常に見えづらく、地平線も見えず、地面から空まで真っ白で空を飛んでいるかのような走行でした。16時ごろに先頭車両がS16に到着、最後尾の車両も18時ごろには到着しました。旅行中、大きな事故や怪我もなく、人員10名と車両5台が無事にS16に戻ることができ良かったと思います。

S16に到着し、一晩明けた今日は午後からブリザードでした。午前中は風は強かったものの、気温も高くなんとか物資の片付けをすることができましたが、午後からは風雪が強まり外での作業は中止としました。往路ではZ008で悪天により5日間停滞しましたが、その時のブリザードよりも強く、今回の南極生活の中では最も天気の悪い1日となりました。明日と明後日の午前中くらいまでは天気が悪いようです。

特に復路は大した休みもなく旅行を続けて来たので、明日は良い休息日になれば良いと思います。(大藪記)

キャンプ地:S16
気温:-6度(8時)、-5度(18時半)
風速:9〜15m/s
気圧:910hPa
本日の行動:物資の片付け、ドラム橇の移動
06:44 | 投票する | 投票数(22) | 日々の活動状況
2018/01/26

アイスコア輸送の様子

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ドーム隊の一大ミッションである第二期ドームふじ深層アイスコアの輸送ですが、内陸での気温が高かったことから、早くしらせの冷凍コンテナに入れるべく、1日当たりの走行距離を長くして移動して来ました。今回空輸の始点はH128という標高約1400mの地点で、従来の空輸地点より標高が400mほど高く、輸送中の温度上昇を最小限に抑えられたはずです(それでも日中の気温はマイナス10度台前半に達しました)。8便のうち1便目と2便目でドーム隊メンバーが2名ずつしらせに移動し、冷凍コンテナへの積載および積載状態の確認をしました。
しらせ乗組員や海洋観測チームにも大変お世話になりました。
(川村記)








05:58 | 投票する | 投票数(25) | 日々の活動状況
2018/01/24

DF2深層コア等冷凍資試料をすべて「しらせ」へ空輸

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2018年1月23日、DF2深層コアや今回の内陸調査で掘削・採取したアイスコア等の冷凍資試料がすべて輸送船「しらせ」へ空輸されました。海上自衛隊のヘリコプターが、昭和基地近傍に停泊する「しらせ」と私たちが滞在した場所「H128」の片道約85kmの区間を8往復する、一日がかりの空輸オペレーションでした。観測隊、それに、「しらせ」各方面の方々に深く感謝です。詳細は本ブログに別途記載されるとおもいますので、私からの記述をここでは控えます。

本ブログのホストである「ドームふじアイスコアコンソーシアム(ICC)」にとって、この陸上輸送と空輸の成功は大イベントです。2007年前後までに掘削を完了していたDF2深層コアがこれですべて4月中旬に日本に届くことが確実になりました。主に1,400 - 2,400メートル深の深度で、これまでは、この深度に関する研究は、1990年代に掘削をしたDF1コアのみを用いておこなってきました。2本目のコアもすべて国内在庫として揃うことによって、DF1コアのみで研究をおこなっていた深度について、DF2コアも用いた解析研究が可能になります。国立極地研究所では、今回のコアが日本に届いたら立川の国立極地研究所の-50℃の冷凍貯蔵庫に収納可能になるように、既存在庫のアイスコアの整理や国内の貯蔵バックアップ体制(仙台市の民間倉庫への冷凍貯蔵)の手配・整備など、甚大な努力をはらってきています。今回のコアが日本に届いたらただちに行うべきことは、「DEP」と呼ばれる電気伝導度の非破壊連続計測とおもいます。これによってDF1コアとの対応深度を精密に確定し、火山性硫酸不純物の含有量を見積もり、DF1コアや他の深層アイスコア(ドームCコアやボストークコア等)との精密深度
対応づけができます。そして、その後は、このアイスコア資料を本ホームページに記載している各研究グループやその連携グループが洗練された研究を順次おこなっていきます。ICCの会員の方々におかれましては、筋のいい狙いを定めた研究の準備の継続をよろしくお願いします。連携プロジェクトの立案と実行もよろしくお願いします。さらなるサイエンスの展開が、真に科学と人類・社会への貢献となります。
(藤田記)
16:35 | 投票する | 投票数(28) | 研究トピックス
2018/01/24

「生活用水を造る!」への追記

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少し更新が空きましたが、藤田さんより連絡がありました。
生活用水を造る!の前記事はこちらです。ICC事務局
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雪上車のエンジンの廃熱を利用して生活用水をつくっていることを以前にお伝えしました。ふたのついた20リットルポリバケツに雪を入れて、雪上車内にある廃熱吹き出し口に置きます。空気を介した熱交換の効率をあげるために、ステンレス製の20リットル寸胴鍋も用いていることをお伝えしました。

実際に温度計測をしてみたところ、造水の効率という点では、決定的な差は両者にはありませんでした。5~6時間かけて造水をするにあたり、寸胴鍋の方が数十分から1時間程度時間が短くて済む程度です。出来上がったお湯の冷めやすさの点でも、寸胴鍋入りのほうが若干早いです。これだけなら、寸胴鍋をがんばって用意することもありません。しかし、寸胴鍋のもっていた大きな利点は、コンロにかけて加熱できること。シャワーを浴びようとしているタイミングでお湯の温度が低くても、コンロにかけて+45℃程度の適温にすぐもっていくことがで
きます。雪上車のエンジンをかけない日などには重宝します。

将来の内陸旅行隊に現時点で推奨したい造水(シャワー・洗濯)用装備案(各車両)
・シャワー用小型テント1
・テント内床用スタイロホーム
・蓋付き20Lポリバケツ(6~8(うち1は洗濯専用))
・20L寸同鍋1
造水用の蓋付きポリバケツの数が多いことは重要です。

今回、シャワーや洗濯にかかる衛生面で、内陸旅行の生活環境はとても改善しました。小さなことですが、内陸チームの精神衛生面での利益はとても大きいとおもっています。今回の調査旅行にあたり、「シャワーや風呂にかける藤田さんの執念・こだわりはすごい」などと思われ言われていたようですが、欲しかったのはむしろ内陸チームの生活衛生と精神衛生なのです。今回も、今後も。過去に感じた種々の不便さや工夫の足りなさや経験への反省もあり、、、
(藤田記)
15:05 | 投票する | 投票数(20) | 内陸隊活動トピックス
2018/01/22

みずほ高原の氷床下の深い谷

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帰路も氷床レーダ観測を継続しています。みずほ基地から沿岸に向かうまで、氷床の下にある基盤岩に、幅数キロ、長さ名が数十キロかそれ以上にわたる深い谷地形が無数にあります。昨日と本日、それぞれ数箇所の谷の上を横切る形で通過しました。過去に何度もこの地域の谷の上でレーダ観測をしてきましたが、深すぎて、送信した電波が途中で吸収されてしまい、深さをこれまで検知できずにいました。昨日と本日の二日間、今回用意した高感度の計測設定を使ってついに計測ができました。

 この近傍の氷床の厚さは、概ね2,000メートル前後です。そのなかに、幅2~3キロメートル、深さが最大約500メートルのV字形の谷がありました。氷床に覆われた地形なので、氷河特有のU字谷の可能性を考えていましたが、多くの谷の底は鋭いV字の形状をもっています。氷河が削ったのではないとすると、一体何が原因で形成された地形なのでしょうか。人工衛星画像でこの地域の地形をみると、こうした谷が、粗い碁盤の目のごとく縦横に入り組んでいます。まるで、上下に力を繰り返しかけて割れたかのようにみえます。もしかすると、氷河期と温暖期の氷床の増減を反映して、大陸岩盤が上下動を繰り返すなかで発達した割れ目なのかもしれません。そうであれば、谷底の形状が鋭いVであることとも辻褄があいます。帰国後に、こうした現象に詳しい方々にお示ししていきたいとおもっています。谷底の標高は、海面下数百メートルに相当します。

 標高約2,300メートルにある「みずほ基地」も、実はこうしたV字谷のごく近傍にあります。みずほ基地から、南側に百メートルも移動すると、氷の厚さは2,000メートル前後から一気に厚くなり、2,500メートルをこえます。谷の対岸までの距離はやはり数キロメートル。氷床がもしなかったら、「みずほ基地」は谷の「崖っぷち」に立つ基地であったことになります。実は、みずほ基地は上流から流れてくる氷が、収束してくる場所であることが以前からわかっています。谷地形は、氷床の流動を集めてくる構造をもつ場所である可能性が高そうです。谷底には相対的に暖かく軟らかい氷があることや、谷底の水の存在が影響を与えているのかもしれません。昭和基地とみずほ基地間は古くからの日本の南極観測の対象エリアですが、未知・未解明の現象はまだまだあります。特に、「氷床下」は南極研究の最前線のひとつと多くの研究者が認識しています。谷の深さや形状や効果的な計測方法が今回わかったことで、大陸や氷床の歴史をひもとく研究をこの先につなげていくことができそうです。

(藤田記)
06:30 | 投票する | 投票数(26) | 研究トピックス
2018/01/21

みずほ高原の夏の後半の風景

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ドームふじから離れ、サスツルギ帯をこえて標高約2,300メートルのみずほ高原に到着しました。まだ白夜は継続しているものの、深夜の太陽は地平線近くまで高度を下げ、深夜には夕焼けのような風景がひろがります。みずほ高原の、サスツルギ混じりの固い雪面、地吹雪を起こすカタバ風、それに、太陽高度が下がった結果の夜の夕焼けや盛夏と比べてのいくぶんの暗さは、この時期のみずほ高原の特有の風景です。夜の風景には若干の寂寥感も感じます。夜半にはマイナス二十数度の風が雪上車の熱を外側から奪うので、車内も冷え込みます。就寝時には普段より一枚厚着をしてシュラフに入ります。お湯を沸騰させたときの沸点も、標高低下に応じて上がっているもよう。昨日は数ヶ月ぶりでドリップコーヒーをいれてみました。インスタントラーメンも圧力鍋なしでもおいしく調理できます。
沿岸まであと約270km、4~5日の距離です。行程も大詰め。

(藤田記)
10:40 | 投票する | 投票数(31) | 現地の状況など
2018/01/21

1月20日(土)

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ドームふじを出発して10日目。今朝みずほ基地を出発し、本日は約50km走行しました。S16まではあと200kmです。私が乗車するSM117はデフの調子が昨日から悪く、走行中にどんどん温度が上昇します。今日は温度をこまめに確認してSM117の後ろを走行している機械隊員の小林さんに状況を報告し、冷却のための休憩をとりながらの走行となりました。車内は南極とは思えない超高温。窓を開けてもなかなか冷風が入って来ず、半袖半ズボンで過ごせる温度です。外の気温も上がってきており、20時の温度は-15度でした。日本で-15度なんて聞いたら「えらい寒い!」と思いますが、こちらではぽかぽか陽気です(綿なしジャケットとサンダルで外を歩けます)。アイスコアを運んでいますので、もっと温度が低い方が良いのですが。(大藪記)

キャンプ地:Z38
気温:-19度(11時)、-15度(20時)
風速:1〜4m/s
気圧:752hPa
本日の行動: IM0(みずほ基地の1ポイント隣)からZ38まで移動(54kmの走行)、レーダー観測、ルート沿いの積雪サンプリング




06:40 | 投票する | 投票数(30) | 日々の活動状況
2018/01/20

1月19日(金)

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ドームふじを出発して9日目。サスツルギ帯の難所を抜け、本日夕方みずほ基地に到着しました。往路はみずほまででもかなり遠いなと思いましたが、あと4日でS16まで到着できる距離。かなり近くまで帰ってきたなと感じています。標高は2200mほど。気温は-20度を上回り、そろそろ羽毛服の出番は終わりかなと思いました。まだ太陽の沈まない白夜が続いていますが、0時ごろには地平線近くまで沈むようになり、夕方のように空と雪面がオレンジ色に光るようになりました。4日後には最後の大仕事、アイスコアの空輸がH128で予定されています。明日と明後日は50km程度の移動予定です。(大藪記)





キャンプ地:IM0(みずほ基地近辺)
気温:-25度(6時)、-19度(18時半)
風速:3〜11 m/s
気圧:736 hPa
本日の行動:MD92からIM0まで移動(約96kmの走行)、レーダー観測、ルート沿いの雪尺観測および積雪サンプリング
06:51 | 投票する | 投票数(22) | 日々の活動状況
2018/01/19

1月18日(木)

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今日は難所と呼ばれているMDルートMD180〜MD92を通過しました。途中人の背丈もあるようなサスツルギがありました。



SM100だけの走行では通過するのに苦労するだろうなと思われる箇所がいくつもありましたが、ピステンの整地のおかげで車速を落とすことなく90km移動することができました。明日はいよいよみずほ基地に到着の予定です。往路ではみずほ基地でもだいぶ遠いなと思っていましたが、復路はあっという間です。気圧が上がり、標高もだいぶ下がりました。私は「明らかに体が楽になった」という実感はありませんが、毎日測定している血中酸素濃度はだんだん高くなってきています。(大藪記)

キャンプ地:MD92
気温:-29度(6時)、-18度(18時半)
風速:5〜8m/s
気圧:715hPa
本日の行動:MD180からMD90まで移動(約90kmの走行)、レーダー観測、ルート沿いの雪尺観測および積雪サンプリング
05:14 | 投票する | 投票数(24) | 日々の活動状況
2018/01/18

1月17日(水)

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ドームふじを出発して7日目。約550km進みました。MDルートに入ってからは3日目。ここまではサスツルギ帯と比較的平らな雪面が交互に訪れ、NMDルートとさほど変わらないような感じです。明日からいよいよMDルートで最も激しいサスツルギ帯に入ります。PBによる整地なし、SM100だけの走行では時速3〜4km程度まで落ちてしまうそうです。明日はどのような走行になるのでしょうか。
今日はピステンにトラブルがあり、ルート上で緊急修理が行われました。油圧ホースが破断し一時走行不可となりました。まず交換することのない部位のため、予備品は持ち合わせておらず、別のホースに破断したホースから継手だけ取り外して溶接したそうです。カタバ風が吹く中、伊藤さんと小林さんペアによる6時間におよぶ作業の末、ピステンは再び問題なく走行できるようになりました。これからがサスツルギ帯の本番。無事に走行できるようになりホッとしました。


(現場で継手を溶接した油圧ホースが120気圧に耐え、応急修理が成功!)

私は今進んでいるMDルートでは観測車両に乗り込み雪尺観測を行なっています。前回の内陸旅行は5年前。雪尺は80cm以下の長さになると交換することになっていますが、今回は交換の必要がある雪尺が多いです。また、完全に埋まってしまいルート上で発見できない雪尺もあります。昨日は78kmのルート上で39本中23本が交換、7本の雪尺がルート上で発見できませんでした。
(大藪記)

キャンプ地:MD180
気温:-25度(6時)、-22度(19時半)
風速:6〜8m/s
気圧:685hPa
本日の行動:MD222からMD180まで移動(約40kmの走行)、レーダー観測、ルート沿いの雪尺観測および積雪サンプリング、ピステン修理


(わずかな上り傾斜の区間で、最後尾のSM111から先行する全車両が見えた。先頭からPB300、SM109、SM117、SM115)
05:40 | 投票する | 投票数(29) | 日々の活動状況
2018/01/17

帰路行程のなかで眺める南極氷床の姿

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 本日は帰路行程の6日目になります。距離的には、行程のなかばに近づきました。往路と同様、移動する雪上車のなかでは、人工衛星から観測した雪面の様子をGPSナビ画面で確認し、また、そのときの氷床の厚さも逐次確認しています。夕食後には、バックアップデータの作成にあわせて、その日走行した氷床の断面画像を作成します。そうした毎日の作業を通じて、氷床流動のイメージの構築が可能になります。

 氷床を流動させる駆動力は、斜面にかかる重力です。ドームふじ頂部付近は、たとえば10キロメートルの距離を水平に移動しても、表面標高は1メートル違うかどうかです。ですから、流動の駆動力はとても弱く、実際にも年間の流動速度が1メートル以下のエリアは大きいです。帰路、ドームふじから距離が離れても、標高はなかなか低くなりません。ドームふじの標高は約3,800メートル。標高がそこから100メートルさがり標高3,700メートルになるまで、水平方向には約140キロメートル!の移動を要しました。レーダで氷下の地形をみていると、その標高3700m付近の下に、巨大な山塊があります。面積としては、約5千平方キロメートル程度の山塊です。周囲とくらべ、約500m基盤地形が高くなっています。この山塊が氷床の流動をせきとめている様相がみえてきます。山塊の直上の氷床はにわかに傾斜がきつくなります。頂上付近にせき止められている氷が、山塊をこえてあふれ出ているのです。標高をもう100メートル、つまり3,600mまで下げるのには、わずか60キロメートルの移動で済みます。つまり、最初の山越えの段階で、傾斜は、頂上付近と比べて2~3倍になりました。

 標高約3,700m以下のこのエリアにはいると、氷床表面にはメガデューン(12月の過去記事をご参照ください)の出現がはじまります。傾斜の上を吹き下ろす風が、雪粒子の堆積の巨大な構造に作用したのです。メガデューンは標高3,700メートル以上のエリアにはありません。傾斜が大きいことがメガデューン形成にとって重要な要素であることがわかります。メガデューン直下の氷床の微細な層構造もレーダでとらえました。他の地域は比較的単純で明瞭な層構造があるのとは対照的に、メガデューン直下では、堆積があった部位となかった部位が複雑に入り交じった積雪の履歴があったことを読み取ることができます。

 レーダでは氷床の最深部の流動の様子も確認することができます。前述の山塊にせき止められた氷床の内陸側では、比較的単純な層構造を深部によみとることができますが、山塊直上付近には、氷が大きくひずんでいることにより、氷床の底部に電磁波をよく散乱する層が発生します。そこに特に強い力がかかり、氷が変形している様子がみえるのです。実際、氷床は、岩盤に近いほど地熱の影響をうけていて、温度は高くなっています。そうした氷は、力をうけると比較的容易に変形してしまいます。表層付近の冷たい氷よりもずっと変形しやすい。氷床の構造は、底部付近の限られた部位が変形し、あとは、その上にどっかりと乗った変形しにくい氷になっているのです。氷床流動を起こすような氷の変形の大部分は底面近傍でおこっています。変形しやすい氷と変形しにくい氷はやがて明瞭に上下に2分化(2層化)し、その境界面からは強い電磁波の反射が起きます。この上下2分化は氷床の流動構造の重要な要素です。

 ひとたび最初の山塊を乗り越えた氷は、その後もいくつもの氷下山地を乗り越えながら下流に流れます。山を多数乗り越えて流れ落ちる粘性体、私はそれが氷床の姿であるとおもっています。断面画像を大陸スケールでみると、あたかも水か滝が流れ落ちるように見えます。氷と大陸岩盤の間には、多くの部分に水があります。氷下山地の上を氷が流動するときには、山のうえに氷が乗り上げて、その乗り上げた氷に風による昇華や削剥が作用して、凸凹の少ない光沢の多い雪面になります。山と山の合間の氷下盆地の上には、積雪が多く、且つ、斜面を吹き下ろす強風が凸凹をきざみつけサスツルギを形成してしまいます。こうして、氷床表面と深部の様相は、概して氷下の地形や、頂上付近からの位置関係できまっています。私達は、現在、こうしたわずかな光沢雪面と広大なサスツルギ帯が繰り返しでてくるようなエリア -中継拠点とみずほ基地の間のルート- を、沿岸に向けて走行しています。輸送中のアイスコアや積雪資試料に決してダメージを与えてはならないと注意しつつ。標高は本日3,000メートル以下にはいりました。標高もぐんぐん低下をはじめています。経路や周囲には多数のメガデューン。これから2~3日がサスツルギ帯ごえの正念場。
(藤田記)

キャンプ地:MD222(標高2948 m)
気温:-31度(6時)、-21度(18時半)
風速:3〜6 m/s
気圧:671 hPa
本日の行動:MD300からMD222まで移動、レーダー観測、ルート沿いの積雪サンプリング
04:38 | 投票する | 投票数(22) | 日々の活動状況
2018/01/16

賞味期限は食べられる期限ではないという事

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 ダイエットするのが面倒くさくなってきた医療隊員宮岡です。現在の地点は、ドーム基地に比べると標高が約600m下がり、体が楽になった事を感じている隊員が出てきました。私は消化管の活動が亢進し、ガスが多く出るようになりました。標高が下がるという事は、水の沸点があがりますので、お湯を沸かした際のガス缶の消費量がUPします。標高(気圧)っていうのは様々な所で影響を与えているのだなあ、としみじみ感じます。

 皆さんは食品の賞味期限を考えたことはありますでしょうか。私は出国前に、災害や紛争があってもしばらく生きられるように10日分の食料を購入し自宅に保管したのですが、その際感じたのが賞味期限って案外短いって事です。コンビニに置いてあるカップ麺やお菓子等は基本的に半年以内に期限が来ます。日本の南極観測は基本的に年1回しか食料は補給されないので、1年以上賞味期限が無いものは食べてしまうか、期限切れを食べるか、もしくはその食材は食べずに我慢するかのどれかになります。その為、こちらにくると皆賞味期限の感覚がマヒします。自己責任になってくるのですが、臭いや味が問題なければだいたい食べます。ここでは口に出すのもはばかるぐらい賞味期限がきれた物も食べていますが、皆元気です。『全員が下痢になったら点滴も限りがあるし困るなあ。まあ、水(雪)と食塩(あじしお)は大量にあるから、あれで点滴作ればいいか』と、『ゴルゴ13』で得た知識をもとに計画を立てている事は誰にも言っていませんが、医療隊員としては少しヒヤヒヤしつつ、皆の食事をチェックしています。(なお、下痢がひどい場合は経口補水も有効なので、嘔吐がなければそちらが第一選択になります。)

 帰路も中継拠点と呼ばれるポイントを過ぎました。ここは、以前の隊が「A-COOP」と称して食品やお酒を置いていってくれていた場所でもあります。我々も頂くだけでなく、未来の隊の為に何か残さなくてはなりません。ただ、今回の隊員の多くは、今後も内陸調査に加わる可能性の高いメンバーばかり。中身を知っていては面白みが半減します。どうしようかなと思っていたら、たまたま先行して私ともう一人の隊員がこの地点に到着しましたので、二人の独断で食品をチョイスして埋めておきました。中身は内緒というか、急いで入れたのであまり覚えていないというのが正直なところですが、甘いもの、しょっぱいもの、酒のつまみにぴったりなもの等を選んだ気がします。これに関しては、現地に来ていただければ、観測隊員でなくてもご自由に持って行って構わない(南極に置いているだけなので所有権がそもそもはっきりしない)ものと(多分)なっておりますので、ご興味のある方は、是非。





 雪だけの景色は変わらないのですが、雪面の状況は素人でも変化しているのがはっきりわかります。サスツルギという雪のコブみたいなものが増えてきて、雪面も硬くなってきました。橇(ソリ)の連結の為に除雪しているルートを外れた時です。突然「ストップ!」と無線機から聞こえる大きな声。運転していた私は急いで雪上車を止め後ろを振り返ると、ひっくり返る直前の食料橇が目に飛び込んできました。食料橇は他の橇と違って高さがあり重心が高い為横転しやすく、また食材もだいぶ減ったため重量が減りサスツルギをつぶせなかったのもあるかもしれません。ピステンにレスキューしてもらい、事なきを得たのですが、ピステンがいなかったらと思うとぞっとした瞬間でありました。




05:30 | 投票する | 投票数(36) | 日々の活動状況
2018/01/15

1月14日(日)

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ドームふじを出発して4日目。ドームふじから約340km進みました。今朝は強いハロー(一部二重)が出ていました。一昨日(12日)からは、朝7時過ぎから走行し始めています。軟雪帯はあっという間に通り過ぎ、風が強くなり始め、大きなサスツルギが現れてきました。標高は3400m程度まで下がり、気圧は10hPa程度上がりました。気温はまださほど変化していません。明日は中継拠点を通過する予定です。往路はNMDルートと呼ばれる、サスツルギ帯をなるべく避ける比較的新しいルートを走行しましたが、復路は雪尺観測のため全車ともMDルートと呼ばれる旧来のルートを走行します。このルートは激しいサスツルギ帯のため、過去の隊も走行に苦労してきたものです。今回は往路と同様ピステンが先行し、整地しながら走行します。過去と比較し、どれくらい走行時間が短縮できるのでしょうか。明日からいよいよMDルートに突入です。(大藪記)

キャンプ地:MD392
気温:-33度(6時)、-26度(19時)
風速:6m/s
気圧:628hPa
本日の行動:MD492からMD392まで移動、レーダー観測、ルート沿いの積雪サンプリング、車両整備


(写真:給油のため脇にそれた117号車を追い抜いていく109号車)
05:44 | 投票する | 投票数(22) | 日々の活動状況
2018/01/13

ついに雪まりもに出会えたのか?

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 南極に上陸してからだいぶ日が経ちました.雪まりもはあるかな,とまわりを見渡してもなかなか見つけることができませんでした.たまに表面霜が雪面に発達する日がありました.そこで,表面霜に息を吹きかけ,折れた表面霜が他と機械的に絡み合い,コロコロと転がり,雪まりもにならないかなと思い試してみましたが,ダメでした.
 担当藤田さんの雪上車に乗り込み,南極氷床頂部ドーム基地周辺を広域にレーダーで観測中のことでした.その日も,数日にわたり雪面には表面霜が発達していました.雪上車の窓から雪面を眺めると,雪まりもらしきものがあるようなないような,そのような雪面でした.レーダー観測中のため,移動している雪上車の窓から適当に何枚も何枚も雪面の写真を撮ることにしました...後で写真を確認してみると,その中の1枚に何か写っていました(拡大写真).これは!と思いましたが,...うぅん,何か心に引っかかります...そうだ,帰国後に雪まりもの亀田博士に伺ってみよう.帰国後の楽しみがまた1つ増えました.


06:17 | 投票する | 投票数(19) | 研究トピックス
2018/01/12

夏至から数週間経過して

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ドーム隊も約1ヶ月の内陸滞在を経て帰路につき始めました。
あと1ヶ月ほどで帰国となるでしょうか。
ドームふじ基地からS16へ移動中の藤田さんより連絡がありました。ICC事務局

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今回の内陸チームは、ドームふじ地域で予定されていたすべての観測や設営にかかるタスクを完了しました。昨日1月11日午後にドームふじを出発し、既に帰路についています。残る大きなタスクは、大量の第Ⅱ期掘削のアイスコアを初めとした資試料を輸送船「しらせ」まで輸送すること、それに、帰路に沿った、各種サンプリング・観測や氷床レーダ観測です。氷床レーダ観測では、ドームふじ近傍で設定した高性能のアンテナ設定を2台の雪上車で維持したまま沿岸地域に向かいます。従来の氷床レーダ観測と同じルートでも、従来では検知できなかったような氷床深部の情報が得られるはずです。あとはもちろん重要なことは、帰路行程を安全にすすめること。「ご安全に!」は毎朝の体操のあとの合い言葉です。

 往路の行程の時期は12月初旬まででした。そのときに軟らかい新雪であった氷床表面積雪は、夏の後半にあたるいま、すでに変態(状態の変化)のすすんだ硬い雪面になっています。あたかも土を焼いたとき固まったような様子です。特徴的には、表層5~10センチ程度の厚さが固くしまっています。夏至をすぎる時期にこれが顕著に発生することはこれまでも知られています。今回も、1月初旬にみるみるすすんだようです。密度の増加もともないます。ただ、この夏の終わりの雪表面の固化の現象の中身がよく知られているかというとそうでもないのです。たとえば、層毎の水蒸気のやりとりの収支や変形をともなうかなどは、温度や放射や堆積などを考慮にいれた高度なモデル計算を必要とします。もともと新雪を構成していた砲弾状と呼ばれる雪の断片が、夏の強い日射やそれにともなう雪のなか大気のなかの水蒸気の移動にさらされ、丸みをおびた大きな粒に変化し、さらには粒どうしの連結が強まります。雪の堅さは、この粒の連結に起因したものです。こうした3次元的な変化を、どうやって定量化できるかが研究のうえでの課題です。顕微鏡写真を撮影し、ビジュアルにこれをみる手法があります。外国の事例ですが、X線CTスキャナーを南極内陸高地に持ち込んで、採取直後の構造を明らかにしようとした事例もあります。でも、大型のハイテク機械を南極の現場にもっていくのはリスクでもあります。機器を持ち込んだはいいが、極地の高地の温度・気圧・湿度の環境では機能しなかったと聞きました。近赤外光と呼ばれる光の反射率が、雪の3次元的な構造、特に、氷と空隙のなす面積に相関することがわかっていますので、この原理を用いて近赤外高反射率を計測することは、近年は各国の研究者がおこなっています。今回、この私たちの隊でも、メンバーの大野さんがこの種の計測を実施しています。また、メンバーの杉浦さんも、
積雪の特徴の観測を継続的に実施されています。雪を日本のラボまで持ち帰れば、さらにできる計測は増えるのですが、輸送中に雪が変質してしまったり、輸送中の衝撃や振動の影響をうけたりします。それでも、破壊の歩留まりも見込んだ一定量の雪サンプルも採取し、国内への輸送を開始しました。雪の夏の変質にはまだ未解明の点は多く、それだけ研究上はやりがいもありますし、そこには国際間の研究競争の側面もあります。

 南極では、四季の定義はあてはまらず、白夜の日射のある「夏」と、暗夜期の「冬」、あとはその中間のような様相(太陽が昇り、沈む、昼と夜がある時期)があります。積雪がその外部から多くのエネルギーをうけて変態がすすむのは、なんと言っても夏、それも、夏至前後の強烈な日差しなのです。夏の日射がもしなければ、南極の雪質は、粒子間の結合のごく弱いまったく違ったものになることでしょう。水の安定同位体成分(酸素同位体、水素同位体)にも大きな影響があるはずです。日射の影響は、この雪が氷床深部に沈降していっても、様々な物理的特性や、含有ガスの成分などとして氷のなかの情報として残り続けます。この点の様々な物理プロセスも私たちの研究対象となっています。南極氷床という巨大な氷体。そのほぼ全部といっていい氷は、一度「雪」の状態を経験しており、日射や外気や氷床表面での温度勾配にさらされた経験ももつものです。日射や降雪量や風など、どうした条件の結果、どういう変態がすすみ、結果として氷や含有成分が生じるか、氷床表面から、最古の氷(100-150万年程度)まで、連鎖した課題です。その「初期条件」を、夏至をはさんだ約1カ月間の期間にまさに見ています。
(藤田記)
14:16 | 投票する | 投票数(22) | 研究トピックス
2018/01/12

1月11日(木)

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本日午後、ドームふじ基地を出発しました。ドームふじ基地へ到着したのは12月9日。短かったようで長かったようで短かった・・・1ヶ月間の内陸滞在でした。内陸滞在中のアイスコア掘削、レーダー観測、AWS設置、積雪観測、燃料ドラム整理、各種依頼作業を全て欠かすことなく無事に終えることができ、隊員全員晴れ晴れとした顔をしていました。今回が最初で最後にならないように、また訪れることができれば良いなと思いました。
あとは帰るだけ・・・と言っても1000kmの道のり、日本で走れば3日で着く距離でも、雪上車による旅行では10日〜2週間近くかかります。復路は下りであることや走行時間を往路よりも伸ばす計画のため(7:00〜19:00の走行予定)、往路よりは短い旅程ですが、まだしばらく内陸旅行は続きます。(大藪記)

キャンプ地:MD692
気温:-25度(11時半)、-27度(19時半)
風速:2〜3m/s
気圧:612hPa
本日の行動:MD692まで移動(約40kmの走行)、レーダー観測、ルート沿いの積雪サンプリング


ドームふじ出発直前
04:11 | 投票する | 投票数(20) | 日々の活動状況
2018/01/12

変わらないもの、変わったもの、変わってほしくないもの

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【変わらないもの】
 こんにちは、南極出発2週間前に一人で奥華子さんのライブに行き、全曲南極に持ってきている医療隊員宮岡です。その奥華子さんで『時をかける少女(アニメ版)』の主題歌になっている『変わらないもの』という曲があります。その中の一節で『変わらないもの、探していた~』というのがあるのですが、レーダー隊は、100万年間変わらないもの(正確には動かないものかもしれませんが)探しているのだろうな、とプレーヤーから流れてきた曲を聴きながらそんな事を思っておりました。

【変わったもの】
 今回の内陸調査で一番変わったことといえば、ピステンと呼ばれる除雪車を内陸に持ち込んだことなのではないでしょうか。一例をあげると、
・先頭に立って除雪しながら走ってくれる→後続車はうねりが少なく走れる。
・1トン以上ある燃料タンクをヒアブで吊るして移動してくれる→人間が運ばなくて良い。
・試料溶解を防ぐ為に橇の雪入れする雪を集めてくれる→橇に荷物積み込みから完了まで40分で終了!!(おそらく大幅な時間短縮になっているはず)
その他にも非常にお世話になっています。これは除雪車の力だけではなく、数cm単位でブレードを操作できるオペレーター(運転手)の技量によるところが大きいのではないかと思います。



おそらく以前の隊次に比べ、作業時間・量とも大幅に減っているはずです。重い荷物をもつ事が減っていますので医療隊員の立場から申し上げても、腰痛や外傷などのリスクが減っており、非常に助かっています。「俺の時はなあ…」と、OBさん達から言われるかもしれませんが、禁断の果実の味を知ってしまった我々は、もう昔には戻れないでしょう。
そのような中で、空ドラムを橇から人力で降ろす作業中に、ドラムが足にヒットしてしまい皮下出血・擦過傷・打撲の診断を自ら診断する羽目になった自分は愚かとしかいいようがありません。あまりの痛みに雪面の上を転がりながら「お医者さんを呼んでください!!」と叫んでいる時の、周囲の設営隊員の冷ややかな表情は何とも言えないものでした。



【変わってほしくないもの】
 11日ドームを出発し、既に帰路についております。ここ数日は天気も良く風も殆どありません。そんな中心配になってくるのは食料橇内の食材達。強い日差しの影響か、橇に設置してある温度計は-8℃を指しており、わずかではありますが溶けだしている材料がありました。残り3週間、『米とカップ麺しか食べ物がない!』という事にならないよう、気温がもう少し下がり食材が溶けださない事を切に祈るばかりです。
 往路と復路は一部別のルートを走行しますが、基本的には同じルートを走行します。現在のルートは、約1か月前に走行した区間。画像の右半分に以前走ったルートがわずかではありますが残っています。左半分は、現在走行している先行車の跡。雪面が柔らかい影響かエンジンに負荷がかかっているようです。以前の除雪の跡がきれいに変わらず残っていれば走りやすいのだろうな、と素人目にはうつりました。



 助手席にいる時は基本的にすることがないので、依頼された医学研究の調整・整理や、撮りためた写真の整理をしています。カメラの中に、出発2ヶ月前に撮ったものが残っていました。

写真の左に写っているのは、50年前に南極で越冬した第10次南極観測隊医療隊員の85歳の吉川先生。
私が学生時代に友人に連れられて、たまたま入った飲み屋のカウンターで隣になり、それ以来交流が続いています。『おまえが帰ってくるまで生きているかな?』と冗談めかして言っておられましたが、いつまでも変わらず元気でいて欲しい、そんな風に思ったのを思い出しました。


04:07 | 投票する | 投票数(32) | その他、いろいろ、なんでも
2018/01/11

1月10日(水)

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今日も引き続き、ドームふじ基地周辺で作業を行いました。昨日デポエリアから掘り出したチップ45箱の基地内への搬入及び、基地からのコアの搬出を行いました(1橇分・28箱+1箱)。昨日の分と合わせ、全ての第二期深層コアを橇に積み込みました。あとは無事に沿岸近くまで下ろし、ヘリ輸送が滞りなく行われることを祈るばかりです。コア搬出のために開けた入口と搬出口もベニヤ等で塞ぎました。キャンプエリアおよび燃料デポエリアでは、物資の整理、橇編成および燃料ドラムの整理を行いました。NDFに設置したAWSに問題がありましたが、本日杉浦さんと藤田さんがNDFを往復してメンテを行い、無事に問題が解決しました。レーダーによる内陸探査も全てのレグを無事に終え、本日で内陸で行う全ての作業が終了し、帰る準備が整いました。明日はいよいよドームふじ基地を出発し、昭和基地へ向けて帰路の行程に入ります。(大藪記)

キャンプ地:ドームふじ
気温:-30度(7時)、-25度(19時)
風速:2m/s
気圧:610hPa
本日の行動:DF2コア搬出&橇積み完了(172+1箱・5橇)、チップを基地内へ搬入完了(45箱)、物資のデポ、レーダー観測、橇編成、燃料ドラム整理、AWSメンテ、物資整理


掘削チップ45箱


コア搬出口を塞いだ(赤田、川村隊員)


出発準備が整った橇列(銀色のマットで覆われている橇に氷床コアが載っています)
17:48 | 投票する | 投票数(16) | 日々の活動状況
2018/01/10

サスツルギと、水蒸気の大量流入

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※本稿の後半は、研究者向けのやや専門性が高い用語等がでてきます。読者の皆様におかれましては何卒ご了解ください。

 氷床の上を探査走行するとき、障害物となるのが、雪面に風によって刻まれた凸凹、すなわち、サスツルギです。特に、今回の走行ルートの大部分はサスツルギに直交してしまっていました。これはとても走りにくかった。探査をはじめてすぐにその事実に気がつき、走行ルート全体の再デザインの必要も頭によぎりました。しかし、実際に探査走行を4~5日おこなってみた時点で、この程度であれば何とかなりそうだという感触を得たので、結果的に再デザインはしませんでした。サスツルギに直交する走行では、車両も橇も大揺れに揺られます。対照的に、サスツルギに平行する走行は非常に滑らかに走行できます。風がその方向に雪面を滑らかにならしてくれていますから。以前の原稿で述べた、NMDルートのデザインもこの特徴に基づいています。

 では、サスツルギのもつ方向の意味について考えてみます。風が雪面を削って紋様をつけているのは間違いありません。どんなタイミングのどんな風が大きな影響を及ぼすのでしょうか?南極の内陸では、カタバ風と呼ばれる斜面下降風が吹きます。放射冷却で冷やされた重い空気が斜面を下る風なのですが、それに、地球の自転の効果が重なり(専門用語でコリオリの力といいます)、東向きの成分をもちます。氷床頂上であるドームふじからみたとき、反時計回りの渦を巻くような方向をもって風が吹き出します。このカタバ風はかなりの頻度で吹いています。ただ、実際のサスツルギの方向をよくしらべてみると、どうもカタバ風の方向とは、若干ずれています。それよりもさらに反時計回りの角度をもった方位をもっているケースが多いのです。実は、低気圧性の擾乱がやってきたときの嵐が、サスツルギの方位形成にも大きな影響を与えているようです。低気圧性の擾乱がやってきたとき、強風と大量の水蒸気流入があります。大量の降雪と、積雪の後にそれを不均一にはぎとってしまう強風、この二つの要素がサスツルギの凸凹を刻みます。長い時間スケールでみると、気圧配置に応じて様々な風が吹きます。ドームふじで越冬観測がはじまった'90年代のなかばには、「ドームふじには主風向は無い」との見解すらありました。しかし、大量の水蒸気をもってくる嵐の風向はだいたい決まっています。このあたりでは東北東から北東方向の強風です。これが、低緯度方面からの空気を、東南極の昭和基地ーみずほ基地ードームふじを含むエリアに、斜面を吹き上げるようにもってくる頻度が高いのです。斜面にぶつかりそこを駆け上がった空気は、そこで水蒸気を降雪として落とします。さらにドームふじ付近の山越えをした風はフェーン現象(あるいは山岳効果ともいいます)の結果、乾燥した風となり、南極内陸部に吹き下ろします。結果として、ドームふじよりも内陸側の積雪は、ドームふじ付近を境として、沿岸側の積雪とはかなり異なる結晶の特徴や層構造の特徴をもっています。こうした地域でアイスコアを掘削し、気候変動の特徴を分析するときには、風と地形との位置関係がどうなっているかよく認識しておく必要があります。これは研究の現場のホットなトピックです。水の安定同位体成分にも影響してきます。

 また、南極氷床、東南極ドローニングモードランド地域の形状をよく見ると、いくつかの方向に尾根が伸びています。さらに小規模の支尾根も多数あります。支尾根の東側には、上記のような水蒸気流入経路がある結果として、堆積が多く、西側は乾燥域となっています。支尾根と支尾根の間の谷間を擾乱の風が時折吹き上がるので、その先にある氷床のリッジ、たとえばドームふじの西側付近は強風が吹き抜ける地域になっています。ドームふじから10~20kmも西側にいくと、サスツルギとウインドクラスト(風によって表面が固まった雪の状態)が著しく発達しています。このような場所では、気候変動解明を目的としたアイスコア掘削や解析研究は困難です。こうした荒れた雪面状態が、アイスコアシグナルを大きく攪乱してしまうからです。

 サスツルギや強風という意味では、私達が今回ドームふじに至る際に通過してきた、標高2000~3000m付近(みずほ~中継拠点)も、アイスコアに基づく気候研究上の難題があります。このエリアで採取されたアイスコアの解析研究はこれまで、やはり信号の時空間不均一性が問題になってきました。アイスコアとして特に信頼できるのは、ドームふじ近傍の内陸高地のもの(堆積が安定している)と、沿岸で堆積量のとても多いところです。後者は、サスツルギが仮にあっても堆積があまりに多いので影響されにくいのです。南極氷床が拡大しているかどうかといういわゆる「質量収支」問題でも、この地域(標高2000~3000m付近(みずほ~中継拠点))は研究をすすめにくい。堆積の時空間不均一性が大きすぎるのです。統計的に有意な値を得るには、大規模な雪尺網や、氷床探査レーダを用いての氷床内部で観測できる等年代面の分析が有効におもえます。人工衛星データの活用をあれこれ考えますが、レーダ高度計、レーザー高度計、マイクロ波放射、合成開口レーダー、それぞれに、堆積にはただちに結びつかない特効性のある素材ではないようにおもえます。マイクロ波放射信号の応用的な処理(polarization ratioやgradient ratio)と呼ばれるもの、それに、氷床探査レーダ(あるいはGPRと呼ばれるもの)を用いて、時空間特性を解きほぐすのが、有力な手段とおもいます。層構造や粒径の特徴が氷床内部までわかるから。本稿最後の部分は、特にこれからこうした質量収支研究に挑む若手・中堅研究者向けのメッセージです。
(藤田記)
08:56 | 投票する | 投票数(17) | 解説記事
2018/01/10

1月9日(火)

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日中の高い気温を懸念していましたが、本日は昨日より10度程度低く日中でも-25度程度だったため、予定通り、ドームふじ基地からアイスコアの搬出作業を行いました。午前中は、雪に埋もれていたチップ(コア掘削時に生じる氷の削り屑。宇宙線生成核種分析用に保管してある。)45箱の掘り出し、ドーム基地への物資のデポ、コア搬出準備を行いました。午後からは、本隊に残っている隊員8名総出で、基地からのコアの搬出及び橇積みを行いました。第2期深層コアは50cmの長さに切断され、ダンボールに詰め込まれています。間には緩衝材として雪が詰められており、一箱の重さは30kgを超えます。現在ドームふじ基地は雪面下に埋もれており、コアの貯蔵庫から地上までは4m近くあります。この重たいコアを搬出するために、貯蔵庫に設置された昇降機を用いて地上までコアを搬出し、そろばんと呼んでいるローラー台の上を転がして橇へ積み込みます。なるべく作業にあたる人への負担が少ないようにと、伊藤さんのアイディアとPBの力で、橇の高さとコアを転がすローラーの高さが合うように除雪をしてもらったり、コアを積み込む橇を基地ギリギリまで寄せてもらったりしました。その結果、コア搬出から積み込みまでかなりスムーズに行うことができ、午後の作業だけで4橇分、144箱のコアを搬出・積載することができました。写真では様子がなかなか伝わりませんが、無駄のない動きでスムーズに橇積みができています。残りは1橇分です。(大藪記)

キャンプ地:ドームふじ
気温:-29度(7時)、-28度(19時)
風速:2~3m/s
気圧:608hPa
本日の行動:DF2コア搬出&橇積み(144箱・4橇)、チップ掘り出し(45箱)、物資のデポ(角材、コンパネ、タイコン、ダンボール)、レーダー観測、橇編成






06:15 | 投票する | 投票数(16) | 日々の活動状況
2018/01/09

1月8日(月)

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ドーム隊の本隊8名は、今日は30kmほど走行し、ひと月ぶりにドームふじ基地に戻ってきました。残された重要ミッションである第2期ドームふじ深層氷床コアの輸送のため、到着後は積込用のソリの準備や燃料ドラムの整理を行いました。

コア輸送についての懸念事項は、気温が高いことです。夕食前で−18度もありました(ドームふじの年平均気温は-54度、夏期の気温は通常-30から-40度です)。ドーム基地内のコアの保管温度は−50度以下で、この温度であれば氷の質は長期間保たれますが、温度が高いとコア中の気体が抜けたり、物理・化学的性質が変化したりしてしまいます。明日からソリへの積載作業を予定していますが、気温によっては延期するか夕方以降の作業に切り替えることを検討しています。

(川村記)

キャンプ地 本隊:ドームふじ基地、レーダー車:ドームふじの南方60km
気温:-25度(6:45)、-18度(18:45)
風速:2m/s
気圧:615 hPa
本日の行動:BC3からドームふじ基地まで移動、物資整理・ソリ積み替え、ドラムデポ、ドーム基地南口の掘出し
05:18 | 投票する | 投票数(18) | 日々の活動状況
2018/01/08

奇妙な形状の山々

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団らんの際に、「藤田さんは某国情報機関の密命をうけて氷の下にある秘密の宇宙基地の痕跡調査をしているに違いない。」などと冗談がでたりすることがあります。
氷下の調査は謎めいた要素があるのは確かとおもっています。
レーダは電磁波のパルスを、できるだけフォーカスを絞って足元の氷下に打ち込みます。氷の内部や、氷と岩盤の界面、氷と水の界面にあたった電磁波が戻ってくるのをとらえます。それを画像化すると、あたかもサーチライトで上方から照らしだしたような光景・風景の画像ができあがります。過去3,600万年氷に覆われて、外界からは見えなかった光景・風景。人類史は上の数字よりも3~4桁小さいですから、もちろん人類の誰もこうした風景を生で見たことはありません。かつて温暖であった時代には、植生が生い茂り、峡谷や山地や平地、あるいは砂漠など、様々な環境や風景がそこにあったはずです。氷床が南極を覆ってしまったあとは、氷床が流動し大地の表面を削りとりますので、いわゆる「氷食地形」も、発達したはずです。今の欧州北部や北米でよく見られるような地形です。
南極でも沿岸には氷河が削った山々を多数観察できます。レーダ画像のなかには、首をかしげるような地形も含まれています。きわめつけは、キノコのような形状をした山々。ある一部の地域に複数あります。他の地域には見つかりません。上に大きな傘がのり、下にはキノコの茎。傘の影も映っています。高さは0.5キロメートル程度、範囲は数キロメートルのスケールです。
実は、レーダ観測画像では、実際にはそうでないのに、計測の特性上みえてしまう「アーティファクト」(人工疑似効果)もありえます。
電磁波のビームが拡がってしまうことから、自分の直下からはずれている場所にある山々もあたかも直下にあるかのごとく映ります。
観測者が移動しがなら計測する結果として、尖塔のような形状の山の頂上も、放物線形状の画像として画像に出現してしまう。
今後、このアーティファクトと現実の分離作業が必要ですが、こうしたキノコ山が、ある地域にだけ多数。
クイックルック画像を今回の内陸チームの皆様にもご覧いただき、「キノコだったらうまそうだよね」などと冗談を言っていました。
謎解きに悩んでしばらく楽しめそうです。この観測地域の氷食の歴史を解くカギかもしれません。

(藤田記)
23:05 | 投票する | 投票数(19) | 観測トピックス
2018/01/08

氷床の下には水が満ちている

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現在、氷床レーダ観測班は、1/7 - 1/10の日程で、氷床レーダ観測 通称「第4レグ」の区間の計測をすすめています。ドームふじ近傍の氷床レーダ観測としては今シーズンの最終計測走行です。「この第4レグ」がカバーする地域は、アイスコア掘削候補となるような氷下の山岳域はわずかで、大部分は「低い平地」です。「低い平地」の氷床底には水が満ちており、湖もしばしばあります。湖水地方とでも呼びましょうか。


さて、南極氷床の厚さは、全南極全体で約2千メートルです。ここドームふじ近傍では、今まさに計測を継続していますが、概ね、2千2百メートル~3千5百メートルの厚さです。日本の山岳地帯の標高をすっぽり覆うような厚さの氷が、豪州大陸よりも大きく、北米大陸よりは小さい大陸のほぼ全体を覆っています。この巨大なサイズこそが、地球規模の環境変動と南極氷床の関係を研究する多く
の研究者の動機(あるいは問題意識・危機意識)になっています。この氷床が縮小しても拡大しても、地球全体の海水面変動に確実に影響してくるのです。


 電磁波を氷床の底部に照射すると、ドームふじ近傍では氷の厚さが2千8百メートル以上になると、強い信号が底部から跳ね返ってきます。時には、底部の形状が明瞭な平面であることもあります。ここには水があり、時には湖を構成し、電磁波を強く反射していると多くの研究者に考えられています。現在観測をしている場所(ドームふじ東方~南東方)がまさにそういう場所です。地下に山岳地形はみえず、延々と平地が続いています。3千メートル台以上の深部にあたった電磁波が強く跳ね返ってきます。そうした場所では、底面の氷が融解・流出した結果、氷床の内部層構造全体が下側に陥没した構造がみえます。


 南極大陸氷床内陸は、表面こそ年平均気温-50℃を下回って(たとえばドームふじ)いますが、氷そのものが分厚い断熱材の役割を果たしています。氷が厚いほど、底には大陸岩盤を伝わってくる地熱が蓄積され、融点に達します。逆に薄ければ、冷たい氷が底部に流れる結果、底面が凍り付いていると考えられてます。この結果、興味深いことに、大ざっぱに申しますと氷が厚い内陸ほど底部は融ける傾向にあり、氷が薄い沿岸は底部が凍り付いています。内陸の底部で生産された融解水は、その後氷床の底部を流れて海に流れ出すのですが、沿岸部の多くは底部が凍り付いているので、水の海への出口(排出口)は限られています。おそらく、南極が温暖だった時代には河川があったような場所なのでしょう。そこに、大陸内部の広域の水の排出が集中することになります。そうすると、大陸氷床は、底面で水が流れるので、氷床流動と岩盤のあいだの摩擦がなくなります。氷床はここでは加速して一気に海に流れ出します。そうした場所が、たとえば昭和基地近傍の「しらせ氷河」のような大氷河なのです。英語ではストリーミング・フローと呼んだりします。南極氷床からの氷の流出の約9割は、こうした局所的かつ急激な氷の流れで起こっていると考えられています。沿岸の名のある「~氷河」の氷の下には、間違いなくこうした水の流れがあります。水の流れ(氷下の大河)はその上流に遡ることが可能で、支流をたくさんもっています。支流の先には、広大な面積の水の供給地「内陸氷床」があるのです。


 今回の内陸調査チームは、将来の深層アイスコアの掘削候補地探査が目的ですから、氷下の底面が凍結している地点あるいは地域の探査を主におこなっています。本来は、氷下山地が重要な着目点ですが、今実施しているような、周囲の「湖水地方」の観測も怠ることはできません。それは、氷床の流動全体のなかで、「山岳地方」周辺の「湖水地方」の様子も把握しておかなければ、100万年規模
のなかでの氷床の大きなスケールの動きは見えてこないからです。基盤地形を把握し、融解している底面や湖の分布を把握していきます。今夏シーズンにカバーした観測エリアの面積は、約2万平方キロメートルにおよびました。航空機を用いずにおこなった雪上走行車両を拠点としたレーダ探査としては大規模です。締めくくりの数パーセントのエリア(湖水地方)の観測を、10日頃までに完了する見込みです。



(藤田記)
22:55 | 投票する | 投票数(19) | 解説記事
2018/01/08

「木製標識がつなぐ、観測隊の過去と未来」への追記

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以前の記事はこちら

1月7日(日)夕方には、氷床レーダ観測班(通称第4レグ走行、担当:藤田、杉浦)がドームふじの標高最高点近傍を雪上車で通過しました。
この地点は、ドームふじ基地からは東に約15キロメートル離れています。
レーダの観測ルートから数百メートルの距離のところに、木製標識をみつけました。
記憶によれば、人工衛星からの標高観測で求めた最高点には、44次越冬隊が設置した木柱が立っていたはず。
しかし、今回見えたのはそれとは別物でした。経緯度から判断して、既知の木柱からは数キロ離れている場所です。
近寄ってみると、第26次隊が設置した木彫りの立派なものでした。隊長や、越冬隊員と思われる全員の名前が彫ってあります。33年前の隊次。大先輩にあたる方々です。後日にここを訪れたいくつかの隊次の方々の名前も、マジックで追記してありました。主に44次~48次隊の方々のお名前です。実はこれらの皆さん、この標識の存在をご存じだったのですね。私は過去に何度かこの近傍は通ったのですが、44次の木柱のことしか認識がありませんでした。
これを立てた第26次隊といえば、上田豊氏がリーダーをつとめた内陸調査隊がDFルートを開拓したときです。人工衛星からの標高観測データが実用化されるずっと以前に、頂上の位置をこれだけの精度で求めていたことを再認識しました。雪のドーム状の大平原ですから、10キロメートル移動しても標高は1メートル違うかどうかです。後日に立った木柱の地点との標高差はほぼ無いと言っていい場所です。
33年前に建立された立派な記念標識に感動し敬意を表し、記念写真を撮影しました。その後に現地を離れレーダ観測走行を継続しました。

(藤田記)
06:50 | 投票する | 投票数(20) | 日々の活動状況
2018/01/08

1月7日(日)

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しばらく続いていた強風がようやくおさまり、今日は穏やかな1日でした。本日、BC3で予定していたアイスコア掘削(ケーブル長:43.32m、コア長:43.26m)と積雪サンプリング(宇宙塵研究と化学分析のための表面雪採取、中ダン30箱分。依頼作業)が全て終わり、今回のドーム旅行で予定していた観測の大部分を終了しました。内陸3カ所でのアイスコア掘削や各種観測をほぼ予定通りに終えることができ、明日再びドームふじ基地へ移動します。最後に残っている重要なミッションはドームふじ第二期コアの持ち帰りで、ドーム基地に貯蔵しているコアを搬出して橇に乗せ持ち帰ります。

また、本日レーダー隊が最後のレグに出発しました(藤田さんと杉浦さん)。昨日書いた通り、今度は1月10日にドーム基地で合流の予定です。BC3でも全員で集合写真を撮りました。NDFでは掘削場、BC2ではレーダー車を背景に写真を撮りました。最後の拠点キャンプ地ですが、ドームふじのように看板があるわけでもないので、白い雪原を背景に写真を撮りました。NDFともBC2とも異なる雪面状況ではありますが、この写真ではよくわからないですね。



帰りの日程や、S16についてからの作業の話などが具体的になり始め、南極内陸から帰ることを実感し始めました。この先も大きなトラブルがなく、天候にも恵まれて、計画通りに旅行が進みますように。(大藪記)

キャンプ地:BC3
気温:-26度(6時半)、-21度(19時半)
風速:4m/s
気圧:619hPa
本日の行動:浅層コア掘削終了(43m)、積雪サンプリング(中ダン30箱)、レーダー観測、橇積み、橇編成、車両整備
06:38 | 投票する | 投票数(18) | 日々の活動状況
2018/01/08

レーダー観測のお手伝いミッション終了

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 一昨日、1日で13時間程度雪上車を運転していた医療隊員宮岡です。よく稚内~札幌や釧路~札幌(本州で言い換えると、東京~名古屋)をノンストップで運転していたので、運転自体はあまり苦になりませんでした。ただ長時間同じ姿勢でいるので、腰が少し痛くなっています。あと雪上車の振動はなかなかのもので、今日は運転終了後も体が少し震えていました。残念ながら西野カナ的に震えているわけではなさそうでした。産業医としては、雪上車が身体に及ぼす振動と騒音の影響を調べてみたい所です。車内は運転していると、エンジンの熱によって暑くなってくるので薄着になります。また、レーダー観測中は車外に出る事が殆どなくなり、1日5~6回程度、1回の外出時間は長くて給油の15分ぐらいです。長ズボンを履くのが面倒になり、某社製のジョガーパンツを履いたまま上だけ羽織って外に出ています。やっぱりというか、寒さに対する防御力は0に近く、車内に入ると足が温まるまで冬の犬のようにヒーターの前でうずくまっています。外の景色を撮影する際はさらに面倒くさくなるので、ワニサンマークの某スリッパで飛び出してパシャッと撮って車内に戻るようにしています。幸いにも、凍傷にはなっておりません。

 
 突然お腹の調子が悪くなったので、機器調整の為停車したすきを見計い、外へ。トイレテントを立てる時間は残されていませんでした。しかし、車外は内陸では年に1回あるかないかぐらいの、地吹雪を伴う10m/s以上の強風。詳細や画像は自主規制しますが、今回の調査の中で最も過酷・困難なミッションでした。幸いにも、装備は汚れませんでしたので人間の尊厳は守られた、とご理解ください。

天気が悪いと外は真っ白で、どこまでが雪面かどこからが雲なのかはっきりせず、運転が難しくなります。まわりに他の雪上車がいなく、建物もないため、GPSを頼った走行になりましたが、殆ど問題はありませんでした。


 今回、50年前の9次隊が極点旅行の際に通過した『ふじ峠』を通過しましたが、峠といっても標高の変化はほとんどなく、正直な所どこで撮影しても『ふじ峠』といってもバレない写真が撮れました。

06:30 | 投票する | 投票数(23) | その他、いろいろ、なんでも
2018/01/07

1月6日(土)

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今日も相変わらず風が強く、朝から夕方まで風速は10m/sを超えていました。朝から昼過ぎまではずっと空が白く天気が悪かったのですが、夕方17時ごろに雲が薄くなり、幻日(太陽の両側同じ高さに現れる白い光で、白色または単色に輝いて太陽に似て見える)と大量のダイヤモンドダストと今までに見たことのない複数の強いハローが見られました。太陽の上にはレンズ状の光と、さらにその外側にハローの一部が見えました。とても綺麗でした。

今日は発電機の調子が悪かったにもかかわらず掘削はかなり順調に進み、34mまで掘削することができました。今日あがってきた13m付近のコアは、NDFとBC2には見られなかった層構造(粒径の異なる5mm程度の層が複数入っているように見えた)が観察されました。明日の午前中には目標深度の40mに達する見込みです。

本日別行動をしていたレーダー隊が再び本隊に合流しました。2人違うだけですが、夕食時に全員揃うと賑やかな感じがします。レーダー隊は明日また出発し、今度は1月10日にドームふじ基地で合流予定です。(大藪記)

キャンプ地:BC3
気温:-24度(6時半)、-21度(18時半)
風速:10〜13m/s
気圧:611hPa
本日の行動:浅層コア掘削(34m)レーダー観測、レーダー隊出発準備、橇編成、発電機改造・整備


05:21 | 投票する | 投票数(18) | 日々の活動状況
2018/01/06

1月5日(金)

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昨日NDF、ドームふじ南東部(BC2)に次ぐキャンプ地(BC3)に到着し、本日から3本目のコア掘削を開始しました。
今日も風が強く1日を通して10m/s近くの風が吹いていたと思われます。気温はさほど低くはなかったのですが、日射もなく風も強かったため、体感温度は低く感じました。


寒く感じたのは人間だけではなかったらしく、掘削機のウィンチのモーターも低温で動かなくなりました。雪上車に持ち込んで温めることを2度行い、掘削開始後は問題なく動きました。強風のため、今回は防風幕と呼ばれる風除けを立てました。布にポールが刺さっているだけの単純な構造ですが、しっかりと風除けの役割を果たしてくれました。掘削場を吹き抜ける風は弱まり、非常に作業がしやすかったです。


雪質はNDFともBC2とも大差はないと思いますが、3度目の掘削ということもあり、非常に順調に進みました。伊藤さんが単菅で作ってくれた通常よりもかなり長いキャッチャー(通称:イトウコアキャッチャー)が大活躍でした。通常のコアキャッチャーでは雪がもろくうまくキャッチできずにコアが上がってこないことも多いのですが、イトウコアキャッチャーによるコアの回収率は100%でした。防風幕を立てたり、動かなくなったモーターを温めたりしたため、掘削開始時間は午後2時を回っており、前回よりも遅かったですが、19時前までの作業で10.14mまで掘削することができ、前回よりもスピードアップしました。明日も引き続き強風が続くようですが、予定通りアイスコア掘削を続けます。


今日は金曜日、カレーの日でした。今日のカレーは伊藤さん特製豚ヒレ肉カレーでした。昭和の調理隊員が作ってくれたカレーではなく、伊藤さんがドームふじで見つけたカレールーと豚肉を使って作ってくれました。具はお肉だけのシンプルなカレーでしたが、とても美味しかったです。普段よりたくさん米を炊いたらしいのですが、あっという間になくなりました!まだカレーは残っているので、明日もう一度食べられるかな?(大藪記)

キャンプ地:BC3
気温:-28度(6時半)、-23度(18時半)
風速:6〜11m/s
気圧:611hPa
本日の行動:レーダー観測(20時現在ドームふじ南東40km)、浅層コア掘削(10.14m)、車両整備、燃料ドラム整理、レーダー隊出発準備、橇編成
05:19 | 投票する | 投票数(21) | 日々の活動状況
2018/01/06

電子機器やバックアップ

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南極観測の現場では、科学観測ですので様々な電子機器を利用します。しかし、温度、湿度、大変な乾燥、アースがとれない、車両や橇の振動など、非常に特殊な環境での集中使用となるので、しばしば故障が発生します。ですので、特に観測にとって肝心な機器であるほど、二重三重のバックアップ対策の用意が求められます。一台しかない機器がひとたび故障すれば、ここまで準備をして人材と予算(血税)を投資しチームで臨んでいる観測が重大な危機に陥ります。

 今回のレーダ観測は、南極の重点観測のなかでも特に重要でありましたため、レーダ機器は相互バックアップとして3セット持ち込んでいます。そのうちのレーダの一台が、二日前から、エラーの頻発をはじめました。制御PCとレーダ本体の通信が、高い頻度で途切れ、また、レーダの受信データにも普段にも増してノイズがのるようになりました。配線の組み合わせ等を様々に変えてもこのエラーは解消せず、その場でレーダ受信機をバックアップ受信機と交換しました。ここでエラーは消えましたので、交換した部分に不調があったと判断しました。不調となった機器は、S16地点を出発以来、レーダ観測としては約2,700キロメートルの行程で非常に良質のレーダデータを生産してくれました。相手は機械ですが、機器と、それを開発下さった方々に深い感謝です。その後は、バックアップ機でデータの生産を続けています。バックアップの重要性をあらためて実感した出来事で
した。観測はダメージを受けずに継続できます。もしバックアップ機がなければそのままレーダ観測の継続を断念せざるを得ないような状況でした。仮にこの2機目が不調のなっても、レーダには更にもう一重のバックアップがあります。ドームふじ近傍でのレーダ観測走行はあと約650キロメートルあります。あと約1週間の日程です。2機目には今の調子を維持してほしい。

 レーダ以外にも、車両の振動で信号ケーブルの断線、電源ケーブルのコネクタの導通不良、GPSアンテナの不調はしばしば発生しています。振動から如何に遠ざけるか、防振対策をするか、あるいは、振動で起こったネジのゆるみや物損などを如何に早く発見し、修復するかがポイントとおもっています。

 また、南極観測プロジェクトの事後評価プロセスのなかでは、起こってしまった機器不調に対し、それを不可抗力とみるのか、それでも対策が甘かったと厳しく評価するのか、議論が起こります。自分たちが観測にもっていく機器の特性などを理解し、機器の内部部品を含め事前にバックアップ対策を多重にしておくことが強く求められています。南極観に臨む者には、強い厳しさが求められています。

 取得したデータにしても同様です。現場で取得したデジタルデータはただちに数重にバックアップデータを作成し、万一どれかのPCやデータディスクに故障が起こっても、必ずどれかは生き残るようにします。レーダ観測を実施しているこの数週間、夕食後は毎夕この作業をおこなっています。外国隊の氷床レーダ観測もそうであると聞きました。「データバックアップセンター」を観測現場に置くのだそうです。データを日本に持ち帰る際にも、航空機搭載、船「しらせ」搭載、それに昭和基地残置のセットをそれぞれ作成し、万一の事故に備えます。現場で筆記記録した野帳は、現場にいるうちにデジタルカメラですべて撮影し、他のデジタルデータと同様の扱いをします。帳面を万一紛失しても実質の記録は残ります。

 ただし、アイスコアサンプルはバックアップ作成というわけにはいきません。1本の深層コアを掘削するのに、十年レベルのエフォートを要しています。バックアップ深層コアなど実質不可能です。深層アイスコアの輸送において、たとえば、大陸沿岸から輸送船「しらせ」へアイスコアを輸送するヘリコプターが突然運用ができななる、あるいは、船の冷凍庫が故障するなどがもし起これば、取り返しのつかない事態になります。国内に於いても、研究所の冷凍倉庫が大震災等の災害で停止するなどすれば、十年レベルで掘削をすすめた深層アイスコアが融解し毀損してしまうことになります。私達は、1月中旬以降、大量のアイスコアを沿岸、そして「しらせ」、そして国内へ輸送します。まずは私達自身、そして、関係各方面の緊張感と事故予防対策は欠かせません。「この事態になったらこう動く」の手を複数、できれば多数、もっておく必要があります。観測隊に参加された医師の方々からは、手術等の際の心得としてしばしば伺う話です。
本稿には、自戒を込めて。
(藤田記)
01:00 | 投票する | 投票数(15) | 観測トピックス
2018/01/05

降雪イベント

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あけましておめでとうございます。
レーダー観測行動中の藤田さんよりご報告です。ICC事務局
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1月3日~4日にかけては、ドームふじ近傍は秒速10メートルを超える風と地吹雪に見舞われました。昭和基地近傍の沿岸に大きな低気圧が接近したようです。昭和基地からいただいていたドームふじの天気予報では、秒速20メートル程度の風になる可能性もあると言われていましたので、私達も、吹きだまりの発生やレーダアンテナへのダメージの可能性など警戒していましたが、結果的には風はそれほどは悪化せずにすみました。

 地吹雪のあとの雪面には、強い風が表面の柔らかい雪をはぎ取ってしまった痕跡のささくれが多数あります。はぎとられた雪はきっとどこかに積もったはずです。堆積・風による昇華や削剥や再分配、水蒸気の移動など、南極の堆積の条件は複雑です。本日も、レーダ観測のための走行をしながら、複雑な形状の雪面を眺め、一時的や雪や年層についての扱いについて思案をしていました。

 さて、本投稿の主題は「降雪イベント」。南極の現場に降る雪にかかわる要素は、「収入」として、「低気圧擾乱等による一時的な降雪」、「晴天時も常に舞うダイヤモンドダスト」があります。収入にも支出にもなるものは、水蒸気の昇華や凝結、風による雪粒子の再分配があります。このなかで、量的には今回のような降雪イベントの役割はとても大きいのです。年間に、指折り数える程度の主要な降水イベントの量を足し合わせれば、年間降雪量の大部分を説明できてしまうのです。だから、アイスコアのデータの解釈にあたっても、アイスコアシグナルには、「降雪イベント」の収入が足し合わさっていることを考える必要があります。極端な例として最近注目を集めている降水イベントに「atmospheric river」と呼ばれる現象があります。水蒸気を豊富に含む大気の流れが中緯度地域から南極に向かってつらなり、短期に大量の水蒸気が南極内陸に送り込まれ、降雪として大陸の上に固定される現象です。大気中の水蒸気があたかも大河のように1本の流れとして送り込まれる。2010年前後に、数回こうしたイベントがおこったことが確認されています。このとき、私達のいる東南極ドローニングモードランド地域で、ごく短期に積雪量が一気に増えました。現場観測でも、南極上空の衛星軌道からの重力観測でも、衛星からの南極表面の高度観測からも、共通して確認されています。これらのイベントを扱ったある論文によると、全地球の海水面の高さをミリにおよぶ単位で変えてしまうような水蒸気の移動だったそうです。では、こうした極端な水蒸気流入イベントが過去にどれだけおこってきたのか、今後の発生頻度や規模はどうなるのか、これが、関連研究者らが着目している部分です。過去の解明に関しては、今回掘削をすすめているような比較的浅いアイスコア(40 - 150mメートル深、年代にして現在~約900年前 -4000年前程度までをカバー)を解読していくことが手段になります。アイスコアは実際に過去を読み解く重要なカギなのです。私達は、ひとたびアイスコアを持ち帰り国内ラボに戻れば、情報読み取りの作業や、その情報公開作業(論文化やデータ出版)に集中することになります。資試料をまずはデータに変換し、そして、出版物やアウトリーチに変換します。今回のような調査活動や採取した資試料は、そうした過程を経て科学情報として社会に還元していきます。
(藤田記)
15:25 | 投票する | 投票数(19) | 研究トピックス
2018/01/05

1月4日(木)

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中澤です。正月三箇日が終わり、1月4日からお仕事の方も多いと思います。我々ドーム隊は、お正月もしっかり観測・調査を続けています。1月に入り、観測期間は残すところ1ヶ月となりました。11月の出発前に観測項目のリストをメンバーで確認した際は、約35項目もあるのかと気が重くなりましたが、現在、7~8割程度は終了したと思います。

昨日(1月3日)は、表層(表面から約10 cm深まで)の雪を中ダン30箱分採取する予定でいました。ちなみに、中(ちゅう)ダンとは、南極観測隊で使用されている定形の段ボール箱のうち、中型のものを指します(写真1)。このほか、小型と大型のものがあり、それぞれ小(しょう)ダン・大(だい)ダンと呼んでいます。



さて、この雪ですが、宇宙塵や化学成分の分析に使用する試料になります。ところが昨日は、夏季の南極内陸にしては珍しく風が強く(風速10 m/s以上)、箱も飛ばされる可能性があったので、この作業は延期しました。1つでも早く観測項目を消化して身軽になりたいと思っていたので残念でしたが、安全第一でやっていきます。昨日の午前は強風対策をし、午後はのんびりと過ごすことができました。私は持ってきた映画を1本鑑賞しました。

今朝起きてみると、雪上車の周りにウインドスクープができていました(写真2)。雪上車の近くにある雪の段差がそれです。ウインドスクープは吹きだまりの一種です。吹きだまりとは、飛んできた雪粒(飛雪)が堆積し丘のようになったものです。地表面に凸部や構造物があると、その近くでは風速が減少するため、それらの風上側近傍で飛雪は堆積します。昨日は、写真2の左前方から風が吹いていました。



今朝は、そのほか、太陽の下に山形の光帯も見られました(写真3)。おそらくハローの一種で、下端接弧と呼ばれるものではないかと思います。



キャンプ地:Base Camp 3 (BC3)
気温:-27度(6時半)、-25度(18時半)
風速:4〜7m/s
気圧:614 hPa
本日の行動:レーダー観測、BC2からBC3への移動、掘削孔温度計回収(BC2)、ドームふじ基地での橇デポとコアケース回収


05:52 | 投票する | 投票数(19) | 日々の活動状況
2018/01/04

1月3日(水)

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昨日、予定していた掘削と大気観測が全て終わりました。40mの掘削を目標にしていましたが、41.00m(コア長)を1月2日午後に掘り終え、掘削場を撤収しました。掘削孔に温度センサーを仕掛けており、現在は掘削孔の温度を計測中です。



また、杉浦さんが進めてきたゾンデ観測も順調に行われ、昨日夜で準備してきたバルーンが全てなくなり、観測終了となりました。

本日朝、レーダー隊が第3レグに出発しました。今回は藤田さん+宮岡さんのペアで現在地の南東部の調査に出かけました。

今日は内陸にしては珍しく、風が10m/s以上吹いています。低気圧が内陸まで入り込んでいるのでしょうか。内陸に低気圧が入った際の降雪中の海塩粒子の組成に興味があるので、降雪が伴っていればどうにか採取したかったのですが、残念ながら今のところは強風のみで降雪はありません。昭和基地からの天気予報によれば、今晩が強風のピークだそうです。
掘削や大気観測が終わったため、積雪サンプリングを行う予定でしたが、風が強いためサンプリングは中止としました。午前中に橇編成などのキャンプ出発準備を行い、午後からは半日休暇でのんびり過ごしています。

明日はドームふじの北西へ、現在地から約70km移動予定です。(大藪記)


(レーダー車の出発前の記念写真)

キャンプ地:BC2
気温:-33度(6時半)、-27度(18時半)
風速:7〜12m/s
気圧:611hPa
本日の行動:レーダー観測、アイスコア・積雪試料の橇積み、橇編成、掘削孔温度計測、大気観測、
ブリザード対策(ソリ再配置、車輌位置変更、ライフロープ設置、物資飛散対策など)
03:06 | 投票する | 投票数(20) | 日々の活動状況
2018/01/04

昭和

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 レーダー隊2名が4泊5日の任務を終えて本隊に合流しました。レーダー観測をしている研究者の方は疲れが見えているものの、充実した表情なのが非常に印象的でした。引き続きレーダー観測は本隊を離れる数泊単位の調査が続きますので、体調には十分注意して取り組んでいただきたいと思います。本日からは私も3泊4日の日程で同行いたします。雪上車の運転をしつつ、研究について色々質問してみたいと思います。日本では、高速道路の渋滞がはじまっている頃だとは思いますが、こちらは車どころか決まった道もありませんので、極端に言うと、GPSのナビゲーションがあれば運転席の窓にカーテンをして走ることも可能です。(見ていないと雪面のうねりで雪上車が飛び跳ねる事があるのでもちろんやりません)



 今年の初夢は、先遣隊で来た現在昭和基地にいる建築の設営隊員がげっそり痩せていて「お互い痩せたな~」と言い合うのと、放尿する夢でした。何を意味するのかは分かりませんが、起きた際にベッドが濡れていなかったので良しとします。
 正月気分は全くありませんが、食事ぐらいは豪華にしようと思い、2日は『海の幸day』とかってに決めて朝食から夕食まで色々提供してみました。南極の、沿岸から1000km以上離れた内陸で、日本で獲れた魚を刺身で食べるのは不思議な感じがしました。いくらを目の前にした某隊員のキラキラした笑顔は今でも鮮明に残っています。ほぼ全員、食事量が落ちているので、少しでも増えるようこっそり努力をしています。





 南極に来る前、BOSSに『君がその病院に1年間いて、君がいたからこそ助かった症例はあるのかね』と聞かれた事があります。隣の総合病院まで1時間以上かかる田舎の病院で勤務していましたが、外科医にとってそこまで緊急性のある症例(病気・疾患)はなかなかありません。その1年間でいうと、たまたま手があいていて、心臓が止まって運ばれてきた患者をレスキューした症例が1件あるのみでした。それも自分だけではなく周りのスタッフがいたからこそ助かった面が非常に大きいのはいうまでもありません。万が一の場合は飛行機にてレスキューしてくれる状況とはいえ、ブリザードの時は困難になります。あと1ヶ月たった10人ですが、いつ何時緊急事態が起こるとも分からない24時間オンコール体制が続いていると考え、『あの時医療隊員が適切な対応をしてくれたからこそ助かった』と言われるよう万全の態勢を整え行動していきたいと思います。なお、作業から帰ってくると、自称世界で最南端にいる「たまごっち」が旅立っていました。



ランダムモードにしていた音楽プレーヤーからレミオロメンの『昭和』が流れてきて、現在の状況とマッチし、柄にもなく少しだけホームシックになっています。暑い日差しと冷たい風が吹きすさぶ中、レーダー車の運転頑張りたいと思います。

(宮岡記)
02:58 | 投票する | 投票数(31) | その他、いろいろ、なんでも
2018/01/03

雪質と層構造

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 氷床探査レーダを用いた広域の探査のために、雪上車でドームふじ近傍の広いエリアを走行しています。走行しているエリアは、標高最高点である「ドームふじ」よりも内陸側であったり、海側であったりします。また、氷の下の大陸岩盤の地形は、氷床表面の微少な起伏や傾斜の変化に影響を与えています。このため、行く先々で、異なった雪質や層構造をみることになります。

 海側からの水蒸気の輸送が比較的潤沢に来るエリアでは、12月頃にここを訪れると新雪に覆われています。粒子が細かい分、太陽光を良く反射し、白い輝きが際立っています。一方、起伏や風等の様々な条件で雪が積もりにくい場所もあります。特徴的には、そうした場所にはさざ波型のデューン - ひとつの波の間隔が十数センチメートル程度の - が頻出します。このさざ波デューン頻出の意味は、その場所には雪はそれほど降らず、風で漂う氷粒子が通過しているような環境です。さらに堆積の少ないところでは、光沢気味の堅い雪面になっています。ときおりサスツルギもともなう。雪の変態(粒子の粗大化など)がすすんでいると、光の反射率もにぶります。新雪に比べれば明らかに、散乱する光の鮮やかさがにぶっています。陰をおびた反射率とでもいいましょうか。雪上車走行をかさねていくと、比較的めまぐるしく、そうした雪面状態の空間変動にぶつかります。

 遭遇した興味深い現象としては、走行するあるエリアの表面はびっしりと新しい霜で覆われて、そこではさざ波型デューンの兆候はみえません。数キロ、あるいは地平線まで、白く輝くやわらかそうな雪面が続いています。しかし、ある明瞭な線を境界に、霜のほぼ全くない、「あまり輝かない」雪面の領域に切り替わります。見回しても、前述の霜領域はもはや全く見当たらない。アイスコアの研究にとっては、どんな性質の雪(あるいは霜)が固定されて気候記録になっていくか知っておく必要があるので、こうした雪質の変化は結構大きな問題です。どんな条件がこの雪面領域の明確な境界線をつくっているのでしょうか?

 私達は、様々な化学分析や、物理的な解析をおこなってこうした積雪の性質も調査しています。南極の現場でできることは限られており、おもにサンプルの収集です。これを国内のラボに持ち帰り、光の反射率、構成粒子の形状、電気的な性質などを調べます。サンプルの、南極の現場での状態をできるだけ保持できるように、温度条件に気をくばり、輸送中にも震動や衝撃を与えないようにします。アイスコアの研究では、降雪後の初期条件の雪質が、アイスコアの信号(アイスコアシグナル)として、たとえ数千年たっても数万年たっても、含有気体成分や氷の物理的特徴として記録されていることが明らかになってきています。そのため、ごく最近の降雪や降雪直後の変態を知っていくこともとても重要な要素なのです。
 
 現在、チームのベースキャンプ(略称、BC2)はドームふじの南東方約50キロメートルにあります。この地域やさらにその南側は、「ふじ峠」に近く、海側から来る水蒸気が届きにくい場所にあります。人工衛星軌道から、「マイクロ波放射」と呼ばれる雪面からの電磁波の放射量をみると、この地域は極めて特異な場所です。単純に申しますと、単位厚さあたりの層構造数が多く、且つ、氷結晶の粒のサイズが大きい特徴が際立っている場所です。私たち「レーダ探査班」は、年末29日からNDF地点を発ち走行し通しで、BC2入りをまだしていませんが、行く先々の雪質をみるにつけ、硬く、にぶい光沢の雪面 -堆積のすくない場所に特徴的な- を眼にしています。これが、人工衛星データにみえた特異な特徴と強い関連があるはずとの仮説をもっています。海からの水蒸気が届きにくい、そして、カタバ風も弱い。そうした乾燥領域が形成され、層位間隔は細かくなり、日射や日々や季節の温度勾配によって水蒸気の上下移動は活発であり結晶は成長しているのではないか?。BC2で現在掘削がすすめられているアイスコア、それに、BC2に到着後に採取し日本に持ち帰る雪氷試料から、この地域の雪氷や気候の特徴が見えてくるはずと期待しています。
(元旦に、藤田記)
05:10 | 投票する | 投票数(27) | 観測トピックス
2018/01/03

大雪原・大海原・砂漠?

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 今回の内陸調査の主目的の一つに、内陸氷床の内部の調査があります。内陸ドーム地域、特に、私達が「新ドームふじ」と呼ぶエリアの、氷の厚さや内部の層構造を詳細に調査するのです。そのために、国立極地研究所が所有する氷床レーダ探査機器の総力を挙げて今回の観測に臨んでいます。レーダ機器は雪上車に搭載し、氷床内部に向けて打ち込んだ電磁波パルスのエコーをとらえて秒単位の頻度で記録していきます。担当の私は、昨年12月中旬以降、そのタスクで多忙になりました。内陸調査隊本隊から離れた雪上車「レーダ探査班」が、このエリアを縦横に走行し、氷床の探査をすすめます。1日あたりの走行距離は、約50キロメートル~140キロメートル。朝7時から、夕方7時まで、昼食と休憩の時間を除けば走行しっぱなしの長距離雪上トラック運転です。これを、チーム本体の支援を受けながら常時2名の人員ですすめています。12月半ば以降、これまでの総走行距離は約1400キロメートルをこえました。今後1月10日前後までかけて、さらに約1000キロメートルの走行調査を予定しています。南極内陸最奥地の現場に居るとても限られたそしてとてつもなく貴重な時間資源や燃料資源のことも考えて、大晦日も元旦も調査走行を継続しています。本日は、食糧担当の方々がご用意くださった心づくしのおせちをいただきながら。

 今回のレーダ探査の目的は、広域の氷下地形の探査と、氷床の内部層構造の探査にあります。特に、厚さ約2200 - 3500メートルの氷のなかの最下部、大陸岩盤に接する約数百メートルの厚さの氷のなかに、層構造がどのように保存されているかが大きな着目点です。この深度の氷の温度が十分に冷たく(融点以下)層構造が維持されていれば、ここに非常に古い氷、たとえば100万年~150万年程度の古さの氷が保存されている可能性があります。そうした場所をよく見極め、そこでアイスコア深層掘削を将来実施すれば、そうした時間スケールの気候変動記録を私達は入手できることになります。反対に、氷の温度が融点に達しているならば、古い氷は融けて流れ去ってしまっていることになります。また、もし氷床の流動によって深い氷の変形や褶曲が著しくすすんでいるならば、仮にアイスコアの掘削を実施しても、目的とする古い氷は既に無かったり、あるいは、仮に残っていたとしても、気候変動の記録としては解釈がとても困難な複雑な空間分布の氷ということになりかねません。融点以下の冷たい環境、安定した層構造の維持、これらの条件を満たす地域あるいは地点の有無の見極めが重要な仕事です。

 幸い、これまで準備してきた複数のレーダ機器群は、最大限のパフォーマンスを発揮しています。安定したデータ取得を継続しています。これまで開発に関わって下さった製造会社の方々の技術力と心意気には本当に頭が下がります。今回は、3台のレーダシステムを準備しており、測定条件等に応じて使い分けています。相互バックアップでもあります。3台のうち2台は、最近10年程度の範囲で開発されたものです。もう一台は、氷床レーダ研究を先駆くださった先達の方々が'80年代に構築したレーダ装置系です。これも、アンテナ系を更新しつつ、30年後になる今も現役最前線で力を発揮しています。氷床の大深部の層構造の様子も今回かなり明らかになってきました。観測でカバーするエリア、エリアのなかの測線の高密度分布、それに、大深部の層構造の詳細解明度、どれをとっても、日本南極地域観測隊での氷床レーダ探査としてのこれまでの活動の大きな一里塚と呼んでいい状況が実現しつつあるとおもっています。この集中観測の残りはあと約4割。今の順調なペースがそのまま最後(1月10日前後)まで続くことを願っています。

 さて、ここは氷床の大雪原です。360度見渡しても、ほぼ平坦な雪原。GPSナビをたよりに、雪上車は予め定めた地点を結び走行します。道路はありません。一切踏み跡のない雪原を前進します。雪面の微妙な凹凸に雪上車が乗り上げるたびに、上下に大きな振幅でゆらゆらと揺れつづけます。まるで、大海原で船をすすめているときに小さな波が船にむかってくるような感覚です。小さなサスツルギの波が延々と押し寄せてきます。しかし、車両の足下は海ではない。H2Oの固体である雪や氷です。一方、南極氷床のことを、雪と氷の砂漠としてたとえることもあります。年間の降水量は氷換算で厚させいぜい30ミリ程度。極小です。そしてそれは年間平均気温約-57℃で雪や氷ダストとして漂うのみです。単車の車両の走行は、砂漠の航海ともいえるものです。頼りは、エンジン音をあげつづける一台の雪上車、それに通信機器群や航法装置群。どれをとっても真に命綱です。本隊の仲間は50-60キロメートルの範囲の近傍にいます。私達「レーダ探査班」は、万一のときには半日程度で本隊から助けをうけうる範囲のなかで行動をしています。あと、本日は「ふじ峠」の数十キロ南方を走行中です。50年前に第9次観測隊の南極点往復旅行隊がこの近傍を通過していったはずです。ここを雪上車の隊列が通過していった光景を元旦の本日に思い描いたりしています。(元旦に、藤田記)


(元旦の氷床レーダー探査車)
05:05 | 投票する | 投票数(24) | 観測トピックス
2018/01/02

袋麺ブーム到来

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 富士山より高い標高・低気圧にいる今、水の沸点は80℃半ばになっております。皆さんにとっては「ふーん、そうなんだ」と思われるだけかもしれませんが、我々にとっては食事の面で死活問題になってきます。まず、普通のお鍋では御飯は炊けません。圧力鍋を用いてごはんを炊く必要があります。あと、非常にやっかいなのが日本のソウルフードと呼んでいる人がいるかもしれないラーメン。低い沸点の影響で、カップ麺に関しては美味しく頂けるものと、芯が残るものに分かれます。ラーメン好きの隊員だと、『南極内陸地域における日本製拉麺の摂取について』というタイトルで一本論文が書けそうです。さらにやっかいなのは袋麺です。お鍋でぐつぐつさせる必要がある上に、普通の鍋だと時間を要するか、こちらも芯が残ってしまいます。移動中だと中々実行できませんでした。しかし、とある隊員が圧力鍋で美味しく袋麺を作れる事を発見!!観測により同じ場所にいる期間が長い事もあり、ドーム隊の中で袋麺ブームが巻き起こっています。袋麺についてはまだ200食以上(1回に2袋食べる隊員が複数いるため、このdataは正確ではありません)残っているので、『ラーメン不足対策本部』を設置する必要はなさそうです。なお、ラーメンについて熱く語っている小生ですが、ダイエット中の為、殆ど食べておりません。目の前の美味しそうなラーメンを我慢するのは結構つらいものです。普段の仕事では、患者さんに『絶食』を指示する事が多々あるのですが、絶食する気持ちが少しだけ分かったような気がします。(写真は、たくさんある袋麺のほんの一部分です)



申し遅れました、こんにちは、あけましておめでとうございます。お笑いコンビ『和牛』のネタを相棒に見せると「性格そっくり!」と言われた今年で36歳になる戌年年男の医療隊員宮岡です。どちらに似ているかは内緒です。さて、南極も年が明け2018年になりました。ただ、ずっと白夜で太陽が沈みませんので初日の出がいつになるのか分からず、太陽がみえていますが、いまいちありがたみがありません。ちなみに日付を変更した際のお日様は写真のような感じでした。





日本出国前に、皆で楽しめて退屈しないものはないかと物色していた際に、百円均一ショップで平成30年版の運勢の本を見つけたので購入して持ってきています。九紫火星である私は、『平常心と謙虚さを忘れず過ごしましょう』と書かれていましたので肝に銘じたいと思います。


04:34 | 投票する | 投票数(41) | その他、いろいろ、なんでも
2018/01/01

12月31日

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昨日NDFから東北東約50km、ドームふじの南東地域へ移動しました。昨日1日かけて移動し、本日から浅層コア掘削および大気観測(ゾンデ観測・SPC)を開始しました。NDFから50km移動してきましたが、
キャンプ体勢も、掘削場のレイアウトもほとんど変わらず、360度真っ白の地平線が広がっているだけの景色のため、引越しをした気がしません。

私は今回も掘削チームです。午前中に掘削場を立ちあげ、掘削を開始しました。雪質はNDFとほとんど変わらず、表面数メートルはもろい層(しもざらめ)が発達しているため、コアキャッチがうまくいかず苦戦していますが、NDFで学んだことが活かされており、NDFの掘削より順調に進んでいます。半日で8.6m掘削しました。

今日は大晦日ですが、平日と変わらず朝から晩まで全員働きました。夜は年越しそば(香川出身の宮岡さんのみ年越しうどん)を食べました。年末特番が流れるテレビやラジオもなく、除夜の鐘もなく、日も沈まず、全く大晦日感はありません。明日はお昼頃に集合しおせち料理をいただき、午後から掘削再開の予定です。家族と過ごすお正月がとっても恋しいです。

レーダー隊は別行動を続けています。本日のレーダー隊のキャンプ地は本隊から約15km離れた位置にいます。比較的近い距離にいますが、お正月も合流することはなく、別行動で観測を続けます。(大藪記)

キャンプ地:NDFの東北東約50km(Base Camp 2)
気温:-27度(6時半)、-25度(18時半)
風速:2〜3m/s
気圧:612hPa
本日の行動:レーダー観測、浅層コア掘削、大気観測(SPC、ゾンデ)、車両修理

追記:ブログを書いているうちに2018年になりました。明けましておめでとうございます。全日程の2/3が過ぎました。長い共同生活が続いており、疲れも溜まっていますが、引き続き安全に気をつけ、有意義な観測となるよう協力しあっていきたいと思います。


06:36 | 投票する | 投票数(27) | 日々の活動状況
2017/12/30

カレー曜日の悲運

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こんにちは、日本を出発してからの約2ヶ月で撮影した写真・動画が1万枚を超えた医療隊員宮岡です。大半は何のために撮っているかわからない画像ばかりです。ドーム隊は10人で構成されておりますが、そのうち2名はレーダー観測の為、数日分の燃料・食料を持って本隊を離れて旅立っていきました。年末年始は帰ってきません。正月を返上して観測を続ける二人は、観測隊員の鑑であります。私が出来る事といえば、持っていく食事の調整。夕食は1回につき10人分が一つの段ボールに入っているので、それを数日分小分けしました。ちなみに今回の持って行ってもらったメニューはこんな感じです。

・鶏手羽煮、ハンバーグ、おくらとろろ和え
・シーフードカレー、肉じゃが、クリームコロッケ
・豚の角煮、サラダ、煮物
・青椒肉絲、餅入り巾着煮、塩焼きちゃんぽん
・手羽先煮、鮭みりん焼、ひじき煮
・おせち 他

なお、朝食は一汁一菜の簡単なもの、昼食は北海道の某会社の冷凍弁当となっています。



 ごはんを調整するだけでなく、他の観測のお手伝いもしています。この間は4mピット観測のお手伝いをしてきました。簡単にいうと、4mの穴を掘るお手伝いです。計3人で掘ったのですが、私以外の二人は雪を掘るプロといってもいいぐらいで、ただスコップで雪を掘るのではなく、スコップを雪にさしてブロック状に雪を取り出して上に放り投げます。下から上に放り投げた雪のブロックは、放物線を描いた頂点で雪面に着地していました。これぞ職人芸!
お手伝いだけでしたが、結構疲れました。
 サンプリング後の雪の壁はなんだか香港の有名な観光スポットのように見えました。





 砕氷船『しらせ』毎週金曜日はカレーになっているそうで、ドーム隊もそれにならって金曜日の夕食はカレーにしています。29日は金曜日なのでもちろんカレー。カレーそのものは事前に昭和基地の調理隊員が作ってくれたものを冷凍保存しているので、私は解凍して温めるだけの簡単なお仕事をすればOK。と思ってなめていたのがいけなかったのでしょうか。シーフードカレーとイカ墨カレーの二つあり、イカ墨カレーを袋から取り出していた時、事件は起こりました。『ピッ!』カレーの汁が服に襲い掛かりました。迫りくる黒い液体、私にはなすすべなし。そういう時に限って、新品のシャツ。色はオレンジ、黒に対する防御力は限りなくゼロといっても過言ではありません。『ベチャ』私の耳には確かにそう聞こえました。オレンジの空に浮かぶ黒い星達。食事の準備を中断して半べそで洗濯していると、食堂車に入ってくる隊員。事の顛末を話し、『俺南極で何やってるんだろう』とぼやかずにはいられませんでした。なお、洗濯は成功し夕食は美味しくいただきました。



長くなりましたが、今年の私のブログ更新はこれが最後になります。今年放送されるかどうか知りませんが、誰か年末の『笑ってはいけない』シリーズを録画して南極まで持ってきていただけないでしょうか。それでは良いお年を。
22:57 | 投票する | 投票数(38) | その他、いろいろ、なんでも
2017/12/30

12月29日(金)

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明日から新しいキャンプ地へ移動するため、NDFでの観測などの片付けを行いました。明日はNDFから東の方へ約50km移動します。
また、本日レーダー隊が4泊5日の第2レグに出発しました。今回は藤田さんと大野さんがSM111に乗ってレーダー観測に出かけました。1月2日に合流予定のため「よいお年を」と挨拶をして出発していきました。
日本は仕事納めも済み、年末の帰省ラッシュも始まる頃だと思いますが、こちらは年末年始もほぼ無休、渋滞や人ごみとは全く無縁の旅行をさらに続けます。(大藪記)

キャンプ地:NDF
標高:約3750m
気温:-30度(6時半)、-24度(18時半)
風速:2〜3m/s
気圧:616hPa
本日の行動:レーダー観測、掘削場撤収、アイスコア・積雪試料の橇積み、AWS撤収、橇編成、燃料ドラム積み替え、掘削孔温度計設置、掘削孔撮影、大気観測、ドローン空撮


(写真:今朝、レーダー車の出発前、掘削場の撤収前に撮りました)
05:07 | 投票する | 投票数(26) | 日々の活動状況
2017/12/30

南極氷床頂部のAWS

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ようやくAWS(自動気象観測装置)の設置を終えることができました.この新AWSは,風向風速計,温湿度計,積雪深計,放射収支計,気圧計,雪温計,そしてアルゴス送信機で構成されています.これら気象データは,日本からインターネット経由でモニタリングすることもできます.ここ南極氷床頂部は,表面の質量収支が1年で積雪水量にして34mm程度プラスとなるところです.この新AWSも次第に積雪の中に埋もれていきますが,設置高が一番低い積雪深計(写真の左手近くの観測機器)の測定範囲を考えると,あと十数年は持ちこたえると考えられます(ただし,酷寒地での環境下では念には念の保守点検が必要不可欠ですね...).

05:05 | 投票する | 投票数(21) | 観測トピックス
2017/12/29

12月28日(木)

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昨日様々な観測事項が終了しました。掘削は目標深度の150mを突破しました(ケーブル長151.91m、コア長151.875m)。この深度のドームふじアイスコアの年代は約4400年前、閉じ込められている空気は約2000年前のものです。NDFのコア年代もおそらくドームふじ氷床コアに近いものと考えられるので、今回掘削した最深部は、約4000〜50000年前のものと思われます。150mまでほとんど割れもなく、とてもきれいなアイスコアを掘ることができました。


レーダー隊は5泊6日の観測を終え、本隊に合流しました。良い観測ができたとのことです。広い雪原の中、雪上車1台での2人暮らしから戻った藤田さんと小林さんは、ドーム隊本隊のキャンプ地を「都会だ!」と言っていました。

また、昨日と今日で4mピットの観測も終わりました。ピット観測は雪を掘り、どのような結晶の雪が堆積しているのかを観察したり、どのような成分の雪が堆積しているのかを調べるための化学分析用試料を採取したり、積雪の構造を調べるための物理解析用試料を採取したりします。ピット掘りは大野さん、杉浦さん、宮岡さんが行いました。標高3800mでの穴掘りは相当大変だったと思いますが、とても綺麗でりっぱなピットが掘られていました。

ここ数日、目的の観測等を行うため、全員が夜遅くまで作業を続けました。本日は一応休養日でした。レーダー隊は半日観測、残った隊員も各自観測や試料採取、サンプル整理などを行なったため、完全休暇とはなりませんでしたが、比較的のんびり過ごせたのではないかと思います。夜は4日遅れのクリスマスパーティーをしました。宮岡さんと伊藤さんがクリスマスケーキやチキンの準備をしてくださり、ちょっとしたクリスマス気分を味わうことができました。写真の四角いケーキでは3人のサンタさんが掘削をしています。ウィンチやマスト、プーリーをチョコレートで作ってくれました!明日はキャンプ撤収準備で、明後日はNDFから東方へ移動する予定です。(大藪記)


キャンプ地:NDF
標高:約3750m
気温:-23度(12時半)、-24度(19時)
風速:2〜6m/s
気圧:613 hPa
本日の行動:レーダー観測、浅層コア掘削、大気観測(SPC、ゾンデ)、4mピット観測、燃料積み替え

掘削レポート(川村記)
12月27日(水)最終日 40ランで17.04m掘削。134.87 – 151.91m
ドリルの設定は昨日までと同じ。縦に薄い剥がれが生じたのが5回、コアが上がってこなかったのが1回(原因不明だが、次回のチップ&コア回収ランで回収成功)、カット面が大きく傾いたのが1回あったが、その他は順調で、コアの質は総じてかなり良かった。コアカットはほぼ手動(ウインチでなく手でワイヤを引く方法)で、その際のスピードがカットの質に影響している気がした。これでNDF地点での掘削は終了です。現場の隊員や観測隊、国内からの様々なサポートに心より感謝いたします。
総ラン数:354
06:38 | 投票する | 投票数(31) | 日々の活動状況
2017/12/27

12月25日(月)、26日(火)

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昨日と今日、みな観測で夜まで忙しくブログ更新ができませんでした。今日はピット観測(目標4m)も始まり、自動気象測器も設置がほぼ完了しました。アイスコアの掘削は約135mまで進みました。100mを超えてきて、通気性のない(昔の空気が閉じ込められている)「氷」を掘り進んでいます。

キャンプ地:NDF
標高:約3750m
行動:レーダー観測(今日はNDF南方20km地点でキャンプ)、浅層コア掘削(134.87m)、ピット観測、大気観測(SPC、ゾンデ)、AWS設置ほぼ完了、発電機修理

掘削レポート(川村記)
12月25日(月)67ランで29.91m掘削。85.3 – 115.2 m
12月26日(火)46ランで19.66m掘削、115.2 – 134.87 m
ドリルの設定は、すくい角40度、シュー5 mm、コアキャッチャー3枚、刃の回転数は約100 rpm。
大半は1本もののコアが上がってくる。コアが入っていないことが2度あったが、キャッチャーのバネを強めて回収できた。アンチトルクが滑った際には少し強くする方向に調整。120mを超えた頃から縦方向の剥がれや割れが時折見られるようになった。一度、掘削中に割れた箇所にかけらやチップが詰まり、コアがバレルから抜けなくなったが、カッターマウントを外して氷片を砕いて除去し、逆向きに取り出した。119mに2cmほどの厚さの火山灰層(茶色っぽい層)。

 
火山灰層
 

今回の掘削中、これまでで最も割れの多いコア。
 

本日最後の2コア。
07:53 | 投票する | 投票数(22) | 日々の活動状況
2017/12/25

メリークリスマス

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こんにちは、鶏軟骨の揚げ物とフライドポテトとハイボールをこよなく愛する医療隊員宮岡です。これらを食べなくなってから体重が10kg落ちていますが、BMI換算では25.6とまだまだですので、引き続き食事制限頑張ります。

疲労は蓄積しているように見受けられますが、隊員全員ほぼ健康です。ただ私が4日前から口唇ヘルペスを発症してしまい、こっそり塗り薬で治療しています。ヘルペスそのものは感染症に分類されますが、基本的にほぼすべての人でヘルペスウイルスは体内に潜伏しており、免疫力が落ちたり体力が落ちたりすると表に出てくる(唇や口腔内等)疾患です。ヘルペスを他の人にうつす可能性は少ないものの、慣れない環境で疲れがたまっているようです。以前のドーム隊でも口唇ヘルペス発症の報告はあり、今回も飲み薬・塗り薬双方持ち込んでおります。あと、興味深い事に自分の場合は2,3日で治る事が多いのですが、南極の環境のせいか治りが非常に遅く、今のペースだと1週間ぐらいかかりそうです。

雪上車で寝ることを基本としておりますが、テントで就寝している隊員もおり、テントが一張余っていましたので試しにテントで寝てみました。テント内の気温は氷点下になるかならないぐらいで、白夜なので一晩中直射日光があたり思ったほど寒くはありませんでした。さらに、寝袋の中に湯たんぽを忍び込ませで寝てみると非常に快適でした。皆さんも南極にお越しの際は湯たんぽをご持参される事をおすすめします。ちなみに、私は昭和基地に戻るまで雪上車の中で寝る事を決心しました。



本日はクリスマスイブ、のはずです。こちらはずっとホワイトクリスマスの状態ですし、彼女や家族と会えるわけでもないので、あまり実感がわきません。23日夜に蜃気楼が確認できました。写真の灰色の部分がそうです。皆さんにとっては、ただの色の違いにしか見えないかもしれませんが、白い景色ばかりしか見ていない我々にとっては大きな変化であり、少しはやいクリスマスプレゼントだったのかな、と思っています。



クリスマスケーキセットを用意していただいていますが、今日食べてしまうと別動隊のレーダー車に乗っている二人の隊員が食べられなくなってしまうので、二人が帰ってきてから食べようという事になりました。隊員が家族の、今年のクリスマスは少し遅くなりそうです。
ドームに置いてあったお菓子でメリークリスマス!!



キャンプ地:NDF  本日の行動:レーダー観測(NDF西35km地点)、浅層コア掘削(85.3 m)、大気観測(SPC、ゾンデ)、AWS設置、雪上車整備

掘削レポート(川村記) 62ランで29.4m掘削。55.9 – 85.3 m。1ランにかかる時間は約10分(うち掘削にかかる時間は約2分)。コアブレイクが斜めに入るため、2枚装着していたコアキャッチャーの数を変えてみた。1枚では斜めブレイクは解消する気配がなく、3枚の場合は回によって異なるが、水平にブレイクできることもあったので、3枚で落ち着いた。ブレイク部分に1〜2cm程度のショートピースを生じることがあった。斜めカットの際には、浅い側にいつも同じキャッチャによる爪痕がある模様。キャッチャのバネを調整してみたところ、ブレイクの角度に改善傾向がみられた。今日は夜中までかかり、夜には掘削場が雪上車の日陰になってしまったため、かなり寒かった。


本日最後のコア。



刃先の深度でブレイクし、コア下端の周囲にツバがついてきたコア(今日2回あった)
07:49 | 投票する | 投票数(40) | 日々の活動状況
2017/12/24

12月23日(土)

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浅層コア掘削、大気観測(ゾンデ観測、SPC)、レーダー観測、AWS設置を行いました。今日のコア掘削も非常に順調に進みました。
昨日同様、レーダー隊は別行動です。日本は祝日であり、行程表ではドーム隊も休養日の予定でしたが、リーダーがそのことを忘れていたほどドーム隊10名はフル活動でした。明日はクリスマスイブ、日曜日ですが、こちらは本日同様フル活動の予定です。今まで経験したことのないほどのホワイトクリスマスのはずですが、太陽が一日中沈まず、全くクリスマス感はありません。日が沈み、夜が来ることが大事なのだなと思いました。(大藪記)

キャンプ地:NDF
標高:約3750m
気温:-28度(6時半)、-25度(18時半)
風速:3〜6m/s
気圧:613hPa
本日の行動:レーダー観測(NDF西南西40km地点でキャンプ)、浅層コア掘削(55.90m)、大気観測(SPC、ゾンデ)、AWS設置、発電機修理

掘削レポート(川村記)※アイスコア掘削関連の方、お気づきの点がありましたらメールお願いします(通常のアドレスです)。
52ランで24m掘削。31.7 – 55.9 m。1ランにかかる時間は約8分。
圧密によりコアの強度が上がったため、スムーズに掘削できるようになった。コアカットは特に問題ない。
夕方にドリルが進まなくなり、20cm程度のコアが2度続いた。カッターはまだまだシャープで、コアバレル内のチップの詰まりもなさそうなので、アンチトルクを疑った。バレルの上に乗ってくるチップの量は少ないため、アンチトルクが効いていないのではなくキツすぎるのではないかと考え、緩める方向に調整(1/4回転)してみたところ、再度スムーズに進むようになった。
昨日と今日と、曇りで風があったため(今日は降雪もあり)、体感温度が低く作業しにくい環境だった。今日の夕方は晴れて風がおさまった。


(写真)本日最後に掘削されたコア。少し氷らしくなってきたが、まだ通気性があり「フィルン」と呼ばれる。


(写真)作業終了間際に晴れた空
06:05 | 投票する | 投票数(27) | 日々の活動状況
2017/12/23

12月22日(金)

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浅層コア掘削、大気観測(ゾンデ観測、SPC)、レーダー観測、AWS設置を行いました。観測系の隊員のみならず、医療隊員の宮岡さん、機械隊員の伊藤さんと小林さんにもかなりたくさんの観測関係の作業を負担していただき、ドーム隊総出で作業にあたっています。

今日のコア掘削は順調に進みました。深度が増し、コアがかたくなってきたため、ロギングや袋詰め作業が楽になってきています。

本日より、レーダー車(SM111)が本隊を離れ、5泊6日の観測に出かけました。このレグでは、NDFの西側を合計約670km走行して観測を行います。この車両には藤田さんと小林さんが乗車しています。夜の定時交信によれば、レーダー隊はNDFの南西方向約35km地点にいるそうで、人員装備車両共に異常なし、とのことでした。


(写真:5泊6日のレーダー観測に出かけるSM111)

食事は医療隊員の宮岡さんが毎日準備をしてくださっています。南極にいると曜日感覚がなくなるので、しらせにならい毎週金曜日にカレーを出してくれます。58次の調理隊員に準備していただいたカレーはバリエーションに富んでおり、毎週全く味の異なるこだわりカレーが登場します。今日はイカ墨カレーでした。何の具が入っているのか食べてみないとわからない真っ黒カレーでしたが、味は抜群でした。

明日も引き続き、ドーム隊10名フル活動です!
(大藪記)

キャンプ地:NDF
標高:約3750m
気温:-36度(6時半)、-28度(18時半)
風速:2〜4m/s
気圧:613hPa
本日の行動:レーダー観測、浅層コア掘削(31.75m)、大気観測(SPC、ゾンデ)、AWS設置(単菅組み上げ、10m掘削孔に雪温センサー設置)、車両修理

掘削レポート(川村記)
40ランで約18m掘削。13.7 - 31.7 m。コア回収できなかったのは2ラン。
朝一番でコアキャッチャを2枚に減らしたがコアブレイクできず3枚に戻した。午後後半にコアがしっかりしてきてから再び2枚に変更。ブレイクするポイントは、キャッチャーの高さと刃先の高さのどちらかのケースが多かった。アンチトルクは昨日のまま変更なし。午後にシューを3mmから5mmに変更し、掘削速度アップ(50cmで1分半前後)。カッターはすくい角40°(最初に取り付けてから変更なし)。午後、セパレータがゆるくなりチップが詰まり気味になってきたため交換。


(写真:掘削直後のドリル。コアキャッチャの部分でコアが切断されたことが分かる)
06:02 | 投票する | 投票数(26) | 日々の活動状況
2017/12/22

12月21日(木)

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12月21日(木)

浅層コア掘削、大気観測(ゾンデ観測、SPC)、レーダー観測、積雪サンプリング、AWS設置準備(雪温センサーを埋めるためにハンドオーガーで10mの穴を掘った)を行いました。

私は浅層コア掘削に携わっています。7m付近のコアを掘削するのに大苦戦しました(雪がやわらかく、掘削したコアがうまく折れない)。掘削場からやや離れた位置では、AWSの雪温センサーを設置するために、ハンドオーガーと呼ばれる手掘りのコア掘削道具で10mの穴を掘っていました。午前中の作業だけで7m掘り進めており、あっという間に追い抜かれてしまいました。試行錯誤の末、無事に難所を突破し本日夕方には順調に掘り進められるようになりました。明日からペースが上がりどんどん掘れれば良いなと思います。(大藪記)

キャンプ地:NDF
標高:約3750m
気温:-33度(6時半)、-30度(18時半)
風速:2〜3m/s
気圧:612hPa
本日の行動:レーダー観測、浅層コア掘削(13.2m)、大気観測(SPC、ゾンデ)、積雪サンプリング、10m掘削(AWS雪温センサー設置用)、車両修理

掘削レポート
昨日の孔内撮影前には、掘削が進まない原因がアンチトルクが孔を広げてしまっていることだと思っていたが、そうではなく、アンチトルクが効きすぎてドリルが降りていっていなかったことがわかった。アンチトルクを弱く調整して掘削は進むようになったが、コアブレイクができない。太い針金や鉄板を曲げて大きなコアキャッチャを作って試したところ成功した。10mを超えてくるころにはコアがしっかりしてきて毎回コアカットはできるが、キャッチャがコア表面を数十センチ引きずってからのブレイクが多い。明日はキャッチャを2個に減らしてみる予定。(川村記)


本日最後のコア。コアキャッチャの傷跡が見える。



ゾンデ放球の瞬間(伊藤隊員)
06:19 | 投票する | 投票数(26) | 日々の活動状況
2017/12/21

12月20日(水)

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今日も引き続き、浅層コア掘削、大気観測(ゾンデ観測、SPC)、レーダー観測、積雪サンプリングを行いました。

コア掘削が期待したほど進まなかったのですが、その理由は、ドリルの先端付近についている「コアキャッチャ」という爪がもろい雪のコアをうまく引っ掛けられないことと、ドリル本体の回転防止のために掘削孔壁に突っ張る「アンチトルク」が強すぎることのようです。夕食後に小型カメラを掘削孔に降ろして孔内を観察し(写真)、対応のヒントを得ました。明日は構造がもろい深度域を超えて掘り進みたいです。
(川村・大藪記)



キャンプ地:NDF
標高:約3750m
気温:-28度(6時半)、-30度(18時半)
風速:3〜4m/s
気圧:608hPa
本日の行動:レーダー観測、浅層コア掘削(6.7m)、大気観測(SPC、ゾンデ)、積雪サンプリング
08:40 | 投票する | 投票数(27) | 日々の活動状況
2017/12/20

12月19日(火) 浅層コア掘削開始、ゾンデ観測開始

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浅層コアの掘削が始まりました。午前中は、掘削機(ドリル)の刃の交換と調整作業や、掘り上がったコアを処理する作業場の設営を行いました。午後2時過ぎから掘削を開始し、夕食前までに5回の掘削で1.87mまで達しました。手順を確認しながらの作業なので僅かな進捗ですが、柔らかい雪の層をきれいに掘削できています。





SM111によるレーダー観測は、今日も100km以上を無事に走破してきました。

大気観測では、ゾンデ観測が今日から開始しました。1日2回、毎日続けられます。Snow Particle Counter(SPC)による降雪粒子の観測では、ダイヤモンドダストの微小な降雪粒子が検出されたそうです。厚さ1cmごとの積雪サンプリングも継続中です。(川村・大藪記)

キャンプ地:NDF
標高:約3750m
気温:-30度(6時半)、-26度(18時半)
風速:3 〜 4 m/s
気圧:605 hPa
本日の行動:レーダー観測、浅層コア掘削(1.87 m)、大気観測(SPC、ゾンデ)、車両整備、積雪サンプリング
05:37 | 投票する | 投票数(24) | その他、いろいろ、なんでも
2017/12/20

木製標識がつなぐ、観測隊の過去と未来

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 内陸旅行は、ついにドームふじ基地での初期滞在期間をこえて、新ドームふじ「NDF」地域へと前進しました。中継拠点、ドームふじ、そしてさらに内陸にすすむにあたり、過去の観測隊チームの多くの記念木製標識を眼にします。木製の看板(柱と表示版)がほとんどなのですが、丁寧に、時には木彫りで、地名、隊次やチームの構成メンバー名が記載されています。それに、ドームふじ基地の施設の現在の状況を丹念に視察して、先人の方々のこの地域での活動に思いをはせずにはいられませんでした。

 今から約50年前、第9次観測隊は、南極観測を初期から牽引した大先輩である村山雅美リーダーのもとに、昭和基地から「ふじ峠」経由の南極点への往復旅行を実施しました。それに先立つ隊次の方々が、燃料デポ設置のためにすでに今のドームふじ近傍を訪れています。現地で認識した標高最高点が、富士山ととても近い標高でした。ここが「ふじ峠」と命名されました。この峠の位置は、現在のドームふじ基地から見て、西南西に約60キロメートルの地点です。このとき作成された科学レポート「JARE Scientific Report」は、現在の眼から見ても珠玉のものです。雪質の鉛直分布や空間分布が実に詳しくかつ俯瞰的に記述されています。このチームが、最初の記念木製標識を「ふじ峠」に残しました。木柱に、3枚の方向表示板がついていました。そこには「太平洋」、「インド洋」、「大西洋」の表示。なんと雄大な表示板だったことでしょう!この記念木製標識を、次に眼にしたのは、それから約30年後にここを訪れた観測隊員たちでした。この記念木製標識は、当時上野の国立科学博物館で行われた「南極展」に展示するために日本に持ち帰られました。

 時は流れ、今から約33年前、JAREは「東クイーンモードランド雪氷総合観測計画」を実施するなかで、内陸ドームふじ地域への探査・進出をすすめていました。第26次観測隊は、上田豊リーダーのもと、アイスコア掘削地点の調査を目的に、南進と、ドームふじの標高最高点の位置の探査をすすめました。地平線の高さの測量を繰り返し、高い方向へ、高い方向へと、内陸調査チームの移動をすすめました。そして、ほぼ最も高い所に到達したのが、現在「DF80」と呼ばれる地点です。この「DF80」は、現在のドームふじ基地から約6キロの地点にあります。数日前(2017/12/17)に、私達はこの地点を通過して南進をすすめました。今回のチームのなかの会話で、どうしてこの地点だけルート名がMDではないのだろう?という話題がでました。MDルートは、ドームふじ基地の位置の確定とともに設置されたより新しいルート、そして、DFルートは、この第26次観測隊が探査をすすめたルートだったのです。南極観測隊のルート名には、ほぼすべての場合、観測隊の歴史と深く関わっています。私達がS16から「みずほ」に向かう間、「S」のつくルート名が多数あります。これは、上に述べた極点旅行隊が南進するにあたり開拓したルートなのです。NDFに移動する際に通過した「DF80」には、第46次隊と第47次隊の記念木製標識がありました。

 1990年代にはいり、ドームふじで第Ⅰ期めの深層掘削プロジェクトが実施されました。第33次隊~第35次隊まで、基地建設、物資輸送、パイロット孔の掘削を経て、第36~第38次までの3チームがドームふじ基地で越冬し、深層掘削や各種観測にあたりました。そ今回の基地視察でも、当時の設置した施設や作業場のあとを目の当たりにしました。多くの方々の思いをのせた記念木製標識があります。その後の21世紀にはいってからの多くの隊次の木製標識は、第Ⅱ期掘削を中心としてのドームふじ近傍の観測隊活動の記念碑です。例を挙げきれません。標識をみると、かつてここに来た方々の活動、そして労苦を思い浮かべます。私も参加した隊次については、昔ご一緒いただいた多くの仲間の顔・顔、当時の様々な出来事をありありと思い出しました。

 私たちも、今の活動、ー 観測隊としてはまさに最も現代の先端の ー 活動をここでおこなっていきます。今から5年、10年、20年~たっていったとき、今の活動は将来に科学観測活動のためにここに来る方々にどう振り返ってもらえるでしょうか。多くの観測準備を周到にしてここにやってきました。未来の方々や、過去の多くの仲間や先人に胸を張ってお示しできる、そうした一歩の活動をしたいとあらためて思った次第です。NDF近傍での活動をおこなっていきます。
(藤田記)
05:35 | 投票する | 投票数(27) | 解説記事
2017/12/19

12月18日(月) 浅層コア掘削準備

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今日から浅層コアの掘削準備が始まりました。今回は掘削の経験が豊富な隊員がいないため、マニュアルと過去の掘削の様子を撮影した動画を確認しながら慎重に作業を進めました。キャンプ地から約100m離れたところに掘削場を設置し、1日かけて準備を進めました。ウィンチを設置してマストを立て、ドリルの回転テストまで行い、本日の作業は終了しました。明日から掘削を開始できると思います(作業者:川村、中澤、大藪、赤田)。

その他には、SM111によるレーダー観測が本格的に開始しました。藤田さんと小林さんが乗車し、NDFを中心に約103kmの観測を行いました。また、大気観測もこれから始まります。Snow Particle Counter(SPC)による降雪粒子の観測やゾンデ観測の準備を杉浦さんが行いました。ゾンデ観測は明日から始まります。大野さんと宮岡さんは雪尺観測と共同研究者から依頼されている積雪サンプリングを行いました。伊藤さんはPBの整備をしたり掘削のサポートをしてくださったりしています。明日も今日に続き、各種観測等を行います。(大藪記)

キャンプ地:NDF
標高:約3750m
気温:-33度(6時半)、-30度(18時半)
風速:2〜3m/s
気圧:606hPa
本日の行動:レーダー観測、浅層コア掘削準備、大気観測(SPC、ゾンデ)準備、車両整備、36本雪尺、積雪サンプリング






07:10 | 投票する | 投票数(30)
2017/12/19

ヨーイチ。ヨイチを飲む

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こんにちは、医療隊員宮岡です。下の名前は陽一です。
単なるダジャレなのですが、北海道の余市蒸留所で作られたウイスキーを私物の中に忍び込ませていたので、ドームふじ基地の看板の前で飲んでみました。
涙が出そうなほど透き通った空の下で飲むシングルモルトは最高でした。



極寒での野外作業が続いているせいか、全体的な傾向として体重が減少気味です。中には見るからに頬がこけてきた隊員もいます。今夜は焼肉。たくさん食べてもらえると良いのですが…。



なお、私は今朝から鼻水が止まりません。原因は昨夜シャワーを浴びた後、-30℃前後の食料橇で食料の調達をしていたせいだと考えています。体調そのものは問題ないのですが、外で作業していると鼻水がびろーんとなります。『南極は細菌やウイルスがいないから風邪ひかない』と聞いていたのですが嘘だという事が判明しました。今日の観測のお手伝いでは、不純物が混じってはいけない観測もあり、私はティッシュを鼻につめてさらにマスクをするという方法をとりました。これは、アレルギーで鼻汁が出ているけど手術をしなければならない時に使っていた方法です。
06:01 | 投票する | 投票数(47)
2017/12/18

12月17日(日) NDF到着

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本日ドームふじ基地を出発し、NDF(New Dome Fuji:名前は新ドームふじですが、次期掘削地というわけではありません)に到着しました。ドームふじから南へ60km弱の地点です。この地で、浅層コア掘削や大気観測を始めとする各種観測を展開します。S16を出発して1ヶ月強、ようやく本格的な観測を開始することができます。また、本日よりSM111とSM115によるレーダー観測も本格的なものとなりました。藤田さんによると、これまでに見たことのない質の良いデータが取れているそうで、NDF下は2250mのところに基盤があり、その上には層構造があることが見て取れている、とのことです。(大藪記)

キャンプ地:NDF
標高:約3750 m
気温:-39度(6時半、参考値)、-30度(18時半)
風速:1〜2m/s
気圧:605 hPa
本日の行動:NDFへ移動、ルート沿いの雪弱観測および積雪サンプリング、レーダー観測、キャンプ地での積雪観測
06:01 | 投票する | 投票数(30) | 日々の活動状況
2017/12/17

医療に関する真面目な話

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こんにちは医療隊員宮岡です。虫干しではないですが、今回持ち込んできた医療物資をすべて並べてみました。3か月という期間だとこれだけの量(200kg程度)になります。この中には、飲み薬・点滴・血圧計・採血機械・手術道具等々が入っています。これらの医療物資は前次隊の医療隊員によって準備していただいています。(今後、私も昭和基地にて来年度の内陸調査用医療物資を準備します)



ドームをはじめとした内陸調査において、皮膚の腫瘤をとるといった局所麻酔の手術の記録はあるものの、全身麻酔や腰椎麻酔(いわゆる下半身麻酔)による手術の記録はありません。実際に手術が出来るか検討してみました。

まず、手術場所の検討です。適度な広さ・電源・温度が必須項目です。
1)    ドーム基地…×;広さはあるものの、電源無し、-50℃以下なので不適です
2)    屋外でのテント…△;広さOK、電源は雪上車から、温度はヒーターいれても氷点下を上回るかどうかといったところで、患者の保温という面では適切ではありません。あと、メスや攝子といった金属をもつ私の手が凍傷になる可能性もあります。
3)    雪上車内…△:狭いものの、電源あり、30℃前後の温度が保てます。但し、ホコリがダイヤモンドダストのごとく見えます

消去法で考えると、雪上車しか残りません。
同じように見える雪上車も内部の構造が微妙に異なっており、術者が立て、なおかつ手術台に見立てたベッドが適切な高さになっているものは1台しかありませんでした。

その雪上車で、医療器材が展開できるか試してみました。点滴は番線のフックにつるします。シリンジポンプやそのほかの注射の類は、術者の対側におきます。手術モニターは無線機の上、酸素ボンベは運転席、人工呼吸器は患者の頭のすぐ横(この機械は製造・メンテともすでに国内では中止になっているもの、予算があれば新しいのが欲しい所)、挿管は場所が狭くて非常に困難ですが、エアウェイスコープ(喉頭をモニターで確認しながら挿管できるスグレモノ)があるので、なんとか可能でしょう。夜の23時、カーテンを閉め切ったうえでの照度は400LUX程度、全然足りないので必要時はヘッドライトや懐中電灯で術野を照らしてもらう必要があります。



結論から申し上げると、『手術は可能だが、緊急要請にて飛行機呼んだ方がレスキューの可能性が高い』です。ブリザードで飛行機が飛んでこない、保存的加療よりも手術の方が助かる可能性が高い時のみ、といった限定的な形になりそうです。(緊急手術が大好きな私にとって、少し残念ではあります)
医療物資を持ち込めば持ち込むほど対応範囲は拡がりますが、搭載にも限界がありますので、何をどれだけ持ち込むかは非常に難しい所です。(医療物資は基本使用しないので、使用期限切れで廃棄する事が多いです)いずれ、どこかの学会で報告してみたいと思います。
00:22 | 投票する | 投票数(46)
2017/12/16

12月15日 ドームふじ基地での作業5日目

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本日でドームふじ基地で予定していた作業がほぼ全て終了しました。ここまで予定位通りに作業が進んでいます。
今日は午前中にドームふじ基地の北側の入口を掘り出し、第2掘削場へのアクセスが容易になりました。午後には基地内に眠っていたロボットモジュールのコントローラを回収しました。また、昨日は掘削場の奥の方にしまわれていた金属製のトイや木製の台車などを回収しました。これらは次期深層掘削に再利用される予定です。藤田さんが進めているレーダーアンテナの付け替えもほぼ終了しました。8素子になり、これまでのアンテナよりも方向を絞った電波を出せるようになったそうです。現在ドームふじ基地下の基盤の様子がはっきり見えているそうです。機械隊員の伊藤さんと小林さんは1日かけてピステンとSM100の点検・整備を行っていました。これからまだまだ続く旅行に備え、万全の体制を整えていただいています。

気温は日中でも-30度近いのですが、昨日と今日はほぼ無風だったため非常に暖かく感じました。太陽の力はすごいなと思います。天気が良かったので、外にテーブルと椅子をセットしてお茶を飲んだり昼食を食べたりしました。お茶タイム程度なら快適ですが、ご飯を食べるにはさすがに気温が低すぎ、箸を持つ手は悴み、せっかく温めたおかずは食べている先から凍り始め、落ち着いて食事ができなかったので、やはりご飯は雪上車内で食べた方が良い、という結論になりました。

本日で予定通りほぼ全ての作業が終了したため、明日は休養日です。しっかり休み、次の目的地NDFへ向けてエネルギーを蓄えたいと思います。
(大藪記)

キャンプ地:ドームふじ基地
標高:3810m
気温:-33度(6時半、参考値)、-36度(18時半)
風速:0〜1m/s
気圧:607hPa
本日の行動:レーダーアンテナの交換作業、PBとSM100の点検・整備、医療物資の確認、ドームふじ基地北側入口の掘り出し、基地内からロボットモジュールのコントローラの回収、積雪サンプルの整理と基地内へのデポ、第2掘削場の撮影


05:47 | 投票する | 投票数(39) | 日々の活動状況
2017/12/16

皆さま初めまして。58次越冬隊、伊藤です。

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今回59次のドーム隊の皆さまと一緒にドームふじ基地へ、わが愛車「PistenBully」と来ています。 何度かブログに登場させていただいてますがPistenBullyの紹介を簡単にしてみようと思います。

「PistenBully」  ドイツ製

本来はスキー場のコースを作る圧雪車で、PB300という車種の上位モデルPOLARを南極用に改造しているPB300 POLAR アンタークティックという車種になります。 PB300は1世代前のモデルなのですが、信頼性が高く南極にはこの車種が未だに新車として出てきます。 市販車と違う部分は、エンジンを温めるプレヒーターが付いていたり、油圧ホースが耐候性に優れている物に変更されていたり、エンジンの始動性を良くする回路を組んでいたりなどなど・・・・エンジンは1万2千cc(トレーラーと同じ位) インタークーラーターボ、馬力は約500馬力。駆動方式はHST(ハイドロスタティックトランスミッション)で重量は、、、  おっと、マニアックな話はこれ位にしておきましょう、、、

南極大陸には世界各国の観測隊が導入しており約130台がこの極寒の地で走り回っております。 JAREはというと2台のPB300と昭和基地用にPB100というミニサイズのピステンを保有しております。

 

運転席の様子
 
運転席には車両モニター、ナビ用PC1台、ナビ用iPad 1台 燃費計算用PC1台、非常用衛星電話1台、VHF無線機、UHF無線機と電子機器に囲まれながら運転しています。
JAREに導入されたのは4年前、55次隊です。今回日本としては初のPB300でのドーム到達となりました。その大役を果たせたのは非常にうれしく思います。
ピステンに携わり26年、生涯運転時間は約40000時間。整備もピステン専門でしている私にとって、雪上の最高峰 南極大陸を走れたのは本当に名誉な事と感じます。




05:10 | 投票する | 投票数(33)
2017/12/15

熱い!寒い!冷たい!

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こんにちは。体重が9kg減少し、だいぶ身軽になった医療隊員宮岡です。高山病による異常な痩せ方ではなく、今回用意して下さった食材の中に低糖質の冷凍お弁当があり、それを食べている為です。今もお腹がグーグー言っていますが目の前のお菓子に手をつけず我慢しています。3年ぶりの70kg台に突入して一人ほくそ笑んでいるのはここだけの話です。ただし、体重計の設置場所が雪上車内であり、完全に水平ではなく傾きがある為、体重計に乗った際の重心のかけ方で1kg弱の変動があります。日々一番やせていると教えてくれる乗り方を研究中です。
標高3800m、気圧600hPa前後のドーム基地に到着して数日が経過しましたが、皆さん特に大きな変わりはありません。ただ、移動とは違って各種作業を行っている関係上、自分はもちろんの事皆さんの疲労はたまっているように見受けられます。私は休憩中や夕食の準備が終わった後によく居眠りをするようになりました。もっとも私の場合は就寝前に、出発前に録音した『オールナイトニッポン』や『伊集院光深夜の馬鹿力』等のラジオ番組を聴いて夜更かしをしているのが主な原因のような気がしないでもありません。

ドーム基地についた翌日、休息日でしたので色々やりたい事を試してみました。

①    かき氷を食べる。
 ドーム基地は、少なくとも5年間は人が足を踏み入れていない場所です。という事は表面の雪はきれいなハズ。ドーム基地の雪は、パウダー状でサラサラしているので、美味しいに違いない!と思って私物の中にかき氷シロップを忍び込ませて持ち込み、大切にとっていました。シロップを直に雪面にかけ、『夏といえばかき氷でしょ!』(南半球では現在夏です)と言って食べてみました。おいしい事は美味しいのですが、暖かい車両の中で食べた方がもっと美味しいに違いない、そう思いました。
(※注:雪面に残っているシロップは、後で隊員がすべて食べました、金属のスプーンだと唇にくっつくので木製のスプーンが良いです。)



②    飛行機をとばす
本当はドローンを飛ばしたかったですが、飛行機の荷物制限の関係上ドローンを持ってくる事が出来ませんでした。ドーム基地周辺だと、気圧が低いため揚力が発生しにくいのではないか、という話も事前にありました。本当にそうなのか実験してみようと、駄菓子屋さんで売っている発泡スチロールで出来ている飛行機を持ち込み、本当に飛びにくいのか試してみました。日本でやるのと変わらず、きれいに飛んでいきました。
ただし、4回目の飛行で着陸に失敗し、翼と私の心が折れてしまいました。



③    風呂に入る
南極で屋外の風呂に入る、これは長年の夢でした。私は野湯マニア(露天の無料or寸志の温泉)で、南極関連の写真で屋外のお風呂に入っているのを見てからというもの、絶対これはしてみたいと思っておりました。
出国前に日本の某入浴剤メーカーに問い合わせて、入浴剤入りのお湯を廃棄しても環境に問題ないか確認してもらったのですが、海にさえ入ってしまえば分解されるので全く問題ないとの事でした。しかし、南極内陸での排水が海に到達するのは何万年、何十万年かかるか検討もつかず断念しました。
今回、ヒノキ風呂を隊として持ってきていたので、それに入らせていただきました。一番風呂です。外は-37℃、お湯の温度は56℃…。雪を入れて45℃ぐらいの所で浴槽にin。
「熱い、熱い!雪ください!」周りにいた他の隊員にお願いしてスコップで雪を投入してもらい、ようやく適温になりました。私の体に雪をかけてくださった方がいましたが、愛情だと思っています。最高の気持ちでしたが、頭にお湯をかけると、1分たたないうちに髪が凍ります。耳が凍傷で赤くなってきます。
次の方もそのまま入りましたが、他の隊員は後日お風呂をテントで覆って入るようです、身体的には、そちらが正しいのは言うまでもありません。



④    雪だるまを作る
残念ながらこれは失敗に終わりました。雪がサラサラ過ぎて固まってくれません。バケツに雪を詰め込んでひっくり返してみたのですが、悲しい形になってしまいました。南極経験者に伺うと、一回雪をバケツにいれ、車内にいれてある程度溶かしてから作ると良いそうです。勉強になりました、まだ時間があるので、次回の休息日に是非再トライしたいです。



キャンプ地:ドームふじ基地
標高:3810 m
風速:0〜1 m/s
気圧:608 hPa
本日の行動:36本雪尺、AWS回収・保守、インターバルカメラ設置、無人磁力計保守、全天オーロラカメラ回収、レーダーアンテナ交換、デポ燃料ドラムの掘り出し完了(合計150本以上)、ドーム基地内の物資移動、積雪サンプリング
04:38 | 投票する | 投票数(42) | 休息・余暇のとき
2017/12/14

12月13日(水) ドームふじ基地での作業3日目

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今日もドームふじ基地にて複数のグループに分かれて作業を行いました。持ち帰り予定の第2期深層コア172梱のマーキングは全て終了しました。1箱あたり32kgで合計5トン以上になります。その他に、物資の仕分けと橇編成、食糧の整理、レーダーアンテナの交換作業、燃料ドラムの掘り出しなどを行いました。

明日は、燃料ドラムの掘り出しとレーダーアンテナの交換作業に加え、ドームふじ基地での雪尺観測や積雪サンプリング、観測測器に関する日本からの依頼作業などを行う予定です。

ドームふじ基地は滞在以降ずっと晴天で風が弱く穏やかな日が続いており、外での作業が苦にならず助かっています。
(大藪記)



キャンプ地:ドームふじ基地
標高:3810m
気温:-38度(6時半)、-31度(18時半)
風速:1〜2m/s
気圧:606hPa
本日の行動:第二期深層コアのマーキングと搬出口への移動(172箱完了)、ドームふじデポ品の仕分けとデポ、物資の積載と橇編成、食糧の整理と食糧橇の補修、デポ燃料ドラムの掘り出し(96本)、レーダーアンテナの交換作業
03:36 | 投票する | 投票数(32) | 日々の活動状況
2017/12/13

12月12日(火) ドームふじ基地での作業2日目

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今日は昨日に引き続き、ドームふじ基地で物資の掘り出しやコアの搬出準備を行いました。54次隊がデポした物資(アイスコアの輸送に用いるブルーシートや銀色の防熱シート)の掘り出しと再デポ、次期掘削に用いる予定のロボットモジュールの掘り出し、持ち帰り予定の第2期深層コアの搬出準備(持ち帰り番号と「冷凍」マークの記載および搬出口近くへの移動)、ドームふじにデポされている燃料ドラムの掘り出しおよび燃料ドラムの積み替え、レーダーアンテナの付け替えを2〜3グループに分かれて行いました。

第2期深層コアのマーキングと搬出口への移動は-50度以下の温度での作業となりました。寒いことを覚悟してかなり着込んで作業に臨んだため、手足先は冷えるものの、体全体が冷えることはなく、1〜2時間連続で作業を行うことができました。風がないこともあり、送風口のある極地研や北大低温研の-50度の冷凍庫よりも暖かく感じました。

明日も引き続き、ドームふじ基地で物資の掘り出しやコアの搬出準備を行います。
(大藪記)


基地内でのコアの搬出準備


54次デポ棚の掘り出し

キャンプ地:ドームふじ基地
標高:3810m
気温:-38度(6時半)、-33度(18時半)
風速:1〜2m/s
気圧:604hPa
本日の行動:54次デポ棚2つの掘り起こし、54次デポ棚からブルーシート、銀マット各2枚回収、ロボットモジュールの回収、第二期深層コアのマーキングと搬出口への移動(120箱)、デポ燃料ドラムの掘り出しと積載(41本)、レーダーアンテナの交換
05:20 | 投票する | 投票数(36) | 日々の活動状況
2017/12/12

12月11日(月) ドームふじ基地での作業1日目

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今日からドームふじ基地での作業が開始しました。まずは第2期ドームふじ深層アイスコアの日本への輸送の準備です。このコアは3035mの長さがありますが、そのうちの約500m分がドームふじ基地に保管されています。その中には、過去に地球が現在より暖かく、南極氷床が縮小して海面水位が高かった「間氷期」の時代の氷が含まれていて、これを国内に運んで最新の技術を駆使して分析することで、当時なぜ暖かかったのか、南極氷床が正確にいつ縮小したのかなど、将来の気候を予測する上でも重要な気候変動に関する知見が得られます。

今日の作業は、ドームふじ基地への出入り口の掘り出しと基地内部の視察、コア搬出のための昇降機の試運転と搬出口の掘り出し、雪に埋まった物品の掘り出しなどで、雪を掘る作業が多い日でした。気圧は約600hPaと平地の約6割しかないので、少し頑張ると息が切れます。また、基地内の気温は−50度以下なので、−30度の地表に出てくるととても暖かく感じられました。私は今まで約20年間、第1期、第2期のドームふじコアを用いて過去の気候変動や大気の研究をしてきましたが、今回始めてそのコアが掘削された現場を目の当たりにし、非常に感慨深いものがありました。

明日もコア輸送の準備作業が続きます。
(川村記)

キャンプ地:MD732(ドームふじ基地)
標高:3810 m
最低気温:-40度、最高気温:-30度
風速:1〜3 m/s
本日の行動:ドームふじ基地への出入口とコア搬出口の掘り出し、基地内視察、南出入口周辺の除雪、デポ物品からローラー台と銀マット掘り出し、昇降機の試運転(既設の機器で搬出する予定)、レーダー試運転




05:40 | 投票する | 投票数(76) | 日々の活動状況
2017/12/11

12月9日 にドームふじへ到着

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※昨日は衛星通信の不調により更新できませんでした。

12月9日、南極地域観測隊として5年ぶりにドームふじに到着しました。58次隊や59次隊、南極観測センター、諸先輩方や同僚、メンバーのご家族等、様々のご支援があってこそのことで、この場をお借りして深くお礼申し上げます。第2期ドームふじ深層コアの輸送や第3期掘削に向けたレーダー探査、浅層掘削等、ここからが活動の本番になります。安全第一で成果を上げていきたいと思います。引き続きご支援のほどよろしくお願い申し上げます。
(ドーム隊リーダー:川村賢二)


昨日(12月9日)夕方、ドーム隊10名は無事にドームふじ基地へ到着しました!11月13日にS16を出発し、5日のブリ停滞を含め合計27日間の道のりでした。ここまで大きなトラブルもなく、ドーム隊10名は全員元気です。車両・装備等にも異常はありません。昨日の夕食はすき焼きをし、ドームふじ到着を祝いました。

本日12月10日は1日完全休養日とし、観測や設営関係の活動は行いませんでした。お昼には食堂車で、ドームふじ基地が舞台の「南極料理人」を鑑賞しました。私は大学院入学前(アイスコアの研究を始める直前)に「これから南極やアイスコアの勉強をするし、南極料理人でも見ておくか!」と思い、南極料理人を見たような気がしますが、ほとんど覚えていませんでした。ドームふじで南極料理人を鑑賞する日が来るとは思わなかったです。

明日から活動再開です。現在眠りについているドームふじ基地へ入ります。今回の大きな仕事の一つに、およそ10年前に掘削され一部基地にデポされたままの第二期深層コアの持ち帰りがありますので、まずはコアの持ち帰りの段取りをつけます。また、デポされた燃料ドラムを掘り起こしたり、各種観測や測器のメンテナンス、積雪サンプリングを行ったりするなど、様々な仕事がたくさん待ち受けています。
(大藪記)

(写真:キャンプイン直前のMD732地点。ドームふじの看板の向こうに基地が見えます)

昨日〜本日の行動
出発地:MD680
キャンプ地:MD732(ドームふじ基地)
標高:3810 m
気温:-28度(10日11時)、-33度(10日18時半) 風速:1〜3 m/s
移動距離:52 km
S16(出発地)からの積算移動距離:1055 km
昨日の行動:移動、ルート沿い雪尺観測とサンプリング、レーダー観測、キャンプ地での観測
本日の行動:休養日
05:15 | 投票する | 投票数(33) | 日々の活動状況
2017/12/09

軟雪地帯を行く

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中澤です。ドーム隊は現在、軟雪地帯を進んでいます。この地域の雪は軟らかいため、雪上車の履帯(キャタピラ)はグリップが低下し、また引いている橇のスキー部は雪面にもぐってしまい、雪上車は進むのに難儀します。中継拠点の辺りから、この軟雪地帯が始まります。私が乗車している115号車は車列の最後尾を走っているため、前の車両が踏み荒らした(耕した)ルート上を走ることになります(写真1)。12月5日には、すぐ前を走る111号車に付いていて行けず、どんどん離されてしまいました。その日のキャンプ地MD500では、帰路の燃料用に、燃料ドラム缶12本を積んだ橇を1橇置いてきました。これにより、115号車が引く物資は約3.2トン分が減りました。現在、走行が随分楽になり、111号車にも遅れずに付いていて行くことが出来ています。

(写真1:荒れたルートを走る。)

 さて、この軟雪地帯の雪質(雪の分類名)ですが、表面はウインドクラスト、もしくは、こしまり雪のようです(写真2)。ウインドクラストは、風の影響で表面近傍の雪が固まってできる薄い硬い層のことをいいます。こしまり雪とは、新雪が積もってから雪温が0℃より低い状態で時間が経ったときに見られます。日本では、降雪時の結晶形から雪粒が丸い形に変わって、且つ隣り合う雪粒同士が焼結作用により、つながり固くなり始めていることが多いのですが、南極は雪温が低いので、降雪時の結晶形が若干残っていたり、雪粒同士のつながりもさほど進んでいないため、さらさらしています。一方、表層数センチメートルより下層では、こしまり雪からこしもざらめ雪へ徐々に変態しているのが観察できます。こしもざらめ雪は、積雪内部に長時間温度差があるとき、雪粒が角ばった平らな形に変わったものです。こしまり雪やこしもざらめ雪は非常にもろく、グラニュー糖のようにさらさらしています(写真3)。このこしもざらめ雪が積雪の表層数センチメートル下から深くまで発達しているのが軟雪地帯の特徴です。

(写真2:表面はやや硬い。)


(写真3:積雪表面から数センチメートル以深では、さらさらした、こしまり雪やこしもざらめ雪が発達しており、もろい層になっている。)

本日の行動
出発地:MD620
キャンプ地:MD680
標高:約3800 m
気温:-36度(6時半)、-32度(18時半)
風速:1〜3 m/s
移動距離:60 km
S16(出発地)からの積算移動距離:1003 km
ドームふじ基地まで:53 km
本日の行動:移動、ルート沿い雪尺観測とサンプリング、レーダー観測、キャンプ地での観測、雪上車整備

05:36 | 投票する | 投票数(24) | 日々の活動状況
2017/12/09

地球温暖化と、今回の調査地域

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 私達は、今回の内陸調査の中心的な地域である内陸高原域にはいりました。ここは、日本が実施している南極観測としては、最も辺境の場所ということもできますが、しかし、温暖化がすすむ地球環境のなかでは、研究をすすめるうえでの最先端の場所ということもできます。多くの研究視点のうちのひとつは、「温暖化する地球のなかで、南極では一体何が進行しつつあるのか?南極はその氷の体積を増やしているのか、それとも減らしはじめているのか?」

 約2年前の秋に、NASAに所属するチームが、南極氷床の表面を衛星搭載レーザー高度計という最先端の機器を用いた長期観測の結果をもとにして、「東南極の氷床は依然拡大を続けており、西南極での氷床後退と足しあわせても、総和としては増え続けている」との研究報告をしました。ニュースがでた当日は、NHKの夜のニュース解説で、国立極地研究所の藤井元所長が解説にあたりました。番組でキャスターが元所長に問いかけたのは、「温暖化で極地の氷床は後退していたのではなかったのですか?」という点でした。専門家の間では「南極では総和として体積が減りつつある。」との論調が多数派です。インターネット上でも、専門科学誌でも、議論が依然続いています。この問題は単純ではありません。過去約1万年間、地球は、「間氷期」と呼ばれる温暖な時期にはいっています。海水の温度があがり、地球上の水蒸気量は増え、そうした水蒸気は降雪として極地に固定されます。ですから、さらに温暖になったとき、氷が融解する地域もあれば、降雪が増えて氷が増える地域もあります。実際に、日本が南極観測をおこなっている地域にある「セルローンダーネ山地」は、南極の沿岸に近い山域で、現在は氷床に覆われずにつきだす剥き出しの多くの山塊があります。今よりももっと温暖な時期には、この山塊の多くは、氷床に覆われていたという証拠が数多くでています。では、今実際に南極で何がおこりつつあるのか?それが、今後の地球の海水面の変動を予測するうえで重要な課題なのです。

 本来、NASAのチームの手法「衛星搭載レーザー高度計」では南極氷床表面高度の変動を精密にとらえています。しかし、南極氷床がその体積の増減をしたとき、南極の体重増減は、その重さと地球内部のマントル層の粘性との相互作用によって、さらに2次的な高度変動を起こします。これを正確に読み解かないと、表面高度の増減を、単純に、南極氷床の体積の増減と置き換えることができない、これが今回の科学論争のひとつの焦点です。ただ、NASAのチームも、「ごく近い将来に総和は負に転じ、氷の体積は減る」と結論づけています。温暖化で、南極の体積の総和が今後減っていき、海水面の上昇に影響していくという点では、研究者の見通しは一致しています。

 では、この観点で、南極のドームふじ地域ですべきことは何でしょうか?ドームふじ地域は、全南極大陸からみたとき、主にインド洋に面した海向きの傾斜をもっています。この方向からやってくる水蒸気が降雪として氷床に固定されるような地域です。この海向きの傾斜のなかのルートの多点に、私達は降雪量計測のための竹のステーク、通称「雪尺(ゆきじゃく)」を設置し、内陸調査隊が通過するたびに、前回通過時以来の積雪量を計測しています。また、ピット観測といって、雪の表面に深さ約4mの穴を掘り、その積雪の層構造を読み解いて過去約60年程度の年々の降雪量を調査します。内陸部のピット観測を複数調査すれば、降雪量の歴史を高い信頼度で読み取りが可能です。さらには、アイスコアを掘削し、掘削できる深度や年代に応じた降雪量の歴史を明らかにしていきます。私達はこうした観測を通じ、降雪量の歴史やその地域特性を読み解いていきます。国際的な南極観測の連携体制のなかで、データをとりまとめ、全南極ではいまどんなことになっているかを明らかにしていきます。

 ドームふじ地域は、全南極のなかの一地域ではあるのですが、インド洋海域を中心とした広い海域の水蒸気を受け止めて、非常に安定した層構造として記録が蓄積されている場所です。気候記録としての代表性が高いのです。だからこそ、ここを調査し発信できる環境情報は南極域のなかでも重要とみなしています。南極の氷の体積の増減の把握も重要です。さらに、私達はこれまで、ここドームふじで2本の深層アイスコアを掘削し、地球上の約72万年間の気候変動の記録を明らかにしてきました。そうした研究作業をさらにすすめる、最先端の場にいよいよやってきました。チームは、これから1月の中旬までこの青色と白色の大雪原「ドームふじ」に居て、風光を常に感じながら、様々な観測を展開していきます。
(藤田記)
05:35 | 投票する | 投票数(20) | 研究トピックス
2017/12/09

生活用水を造る!

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 内陸旅行隊では、基本は雪上車等に居住する長期の不自由な生活になります。日常の生活への様々な工夫は欠かせません。筆者が内陸観測をともなう南極観測に関わってから意外に進歩が乏しかったのが、生活用水の環境です。生活用水は、飲料用の衛生的な水と、体ふきや洗濯に用いるような水になります。南極内陸部は周囲一面雪と氷の砂漠です。水の材料は無尽蔵です。問題はそれを融解するための熱です。雪を鍋に入れてお湯まで沸かすような場合には、融解熱が極めて大きく、コンロの灯油やガスの燃料量も大きくなります。そこで活用しているのが、雪上車のエンジンの廃熱です。

 内陸では、ふたのついた20リットルポリバケツに雪を入れて、雪上車内にある廃熱吹き出し口に起きます。そして、ポリバケツの周りに、熱を逃がさないように木箱をかぶせます。-40℃程度の低温の雪は、空気を介した熱交換で暖められて、やがて水、そして最終的には+45℃程度のお湯に変わります。こうして造った水を、さらに熱して、食事に用いてきました。ただ、バケツの量や、上記の木箱の量が限定されると、造水能力には限界がでます。シャワー、洗濯、入浴にはとても足りない。これまで、JAREの内陸観測旅行といえば、旅行中はシャワー・洗濯・入浴がないことが普通でした。数カ月間の旅行中に皮脂はたまり汗は悪臭となり、決して衛生的ではありませんでした。昭和基地に帰還後、すぐにでも入浴・洗濯に向かわないと、帰還した隊員が放つ悪臭を昭和基地の隊員にいやがられる事例は多々ありました。さて、精神衛生面の点でも、造水能力を強化し、衛生状態を保つ必要がありました。国内での準備段階から、造水用のポリバケツの量を増やしました。さらには、空気を介した熱交換の効率をあげるために、試験的に4個の蓋付きステンレス製寸胴鍋も用意しました。昭和基地に先行して滞在されていた第58次観測隊の越冬隊の方々とも連絡をとり、造水の際に用いる木箱を各車2個用意していただき、各車両でバケツ4個、合計80リットルの造水を可能にしました。大ざっぱにいえば、-40℃の雪から造水をはじめれば、初日で、約80リットルの常温の水になります。翌日も温風を当て続ければ、翌日には約80リットルの50℃近いお湯になる状況ができました。これを雪上車4台でおこないますから、大量のお湯の生産が可能になりました。熱源はこれまでフル活用とはいっていなかった車両エンジンの廃熱です。原料は無尽蔵!コスト増や燃料消費増は一切ありません。

 さらにさらに、小型ユニットバスの用意、野外シャワー用のテントや給水機構小道具の用意を経て、隊員は希望すれば数日に1回程度は、少なくとも温水シャワー・入浴や汚れた衣類の洗濯が可能になりました。これらにかかる内陸観測の衛生環境は今回間違いなく革新しつつあります。衣類の洗濯は各車で日常的におこなわれていますし、夕食時には、「今日シャワーに入る方は?」と人数や順番確認をすることが日常となっています。ただし、シャワーにはいる前の周囲の温度はマイナスです。屋外に張ったテントの初期内部温度はマイナス30℃を下回ることも日常的です。ぬるいお湯しか準備できなかったようなとき、凍えるような寒さを経験するようなことになります。テントでシャワーをはじめて試した隊員が、あまりの寒さに屋外で絶叫したようなこともあります。体にかければとても熱いような、45℃付近のお湯を用意しておくことが必要なようです。車外においたシャンプーは凍っており、使用前にまずお湯に入れて溶かします。今回のチームでは、皆さんがシャワーや入浴法を工夫し、情報交換と改善をおこなっています。既に約1カ月、内陸環境で皆さんと共に過ごしました。今後あと約55日、いろいろなノウハウがたまるといいな。そして、たとえば私は科学研究者です。科学研究者らは、今回もいつも、現場では機械担当、医療担当、野外活動支援の多くの方々の長期の献身的な力に太く太く支えられてこの内陸活動に従事することができています。大感謝なのです。こうした支援に専従くださる方々にとって内陸ならではの不自由さや不衛生がいくぶんでも改善し、南極内陸の科学調査旅行は衛生面では十分OKと思っていただけるような環境になったらいいと思っています。(藤田記)
05:33 | 投票する | 投票数(21) | 内陸隊活動トピックス
2017/12/08

12月7日(木) 最長移動記録更新

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本日、最長移動距離を更新しました!ルート方位表上の移動距離は68kmです(雪上車の走行距離は72km以上)。ドームふじまでは残り114 kmで、あと2日で到着できる距離まで来ました。

標高は3700mを超え、朝の気温が-40度程度まで下がるようになりました。空気が薄いなと感じています。日中でも-30度を下回るようになり、さすがに裸足にサンダル+Tシャツ・・・という出で立ちの隊員はいなくなりました。

1mを超えるような大きなサスツルギがごろごろ出てくるエリアは抜け、雪面がやわらかくなりました(軟雪帯と呼んでいます)。また、これまでのサスツルギ帯とは異なり、霜が付いているサスツルギが見られるようになりました。サスツルギにヒゲが生えているように見えます。かなり内陸まで来ましたが、一面真っ平らな雪原ではなく、サスツルギがあったり、雪面がかたい場所とやわらかい場所が混在して凹凸があったりし、グリーンランド氷床とは雪面状況が異なります。



ドームふじ氷床コアは直径10cm弱、長さ3000mほどの円柱状の氷です。実物はただの氷にしか見えませんが、地球の気候変動メカニズム解明の鍵となる様々な古気候情報が保存された、大変貴重な試料です。これまで多くの人がドームふじコアの分析や解析に携わり、様々なことが解明されてきました。私自身もドームふじ氷床コアを研究対象とし、過去にどのような組成のエアロゾルが南極内陸まで輸送されてきたのか、過去の空気はどのような組成だったのかなどを調べています。広い氷床を毎日眺め、この氷床全てに過去の地球の歴史が刻まれていると考えると、退屈な景色がある時ふとお宝の山に見えました。次の第3期深層コア掘削では「世界最古の氷」の取得を目指します。今年はそのプロジェクトの1年目としてレーダー探査を行い、次期深層コア掘削の候補地を探します。この広い氷床から、たった直径10cmの場所で100万年を超える氷を探し当てるのかと思うととても壮大なことのように思いますが、気候変動メカニズム解明の進展が期待される「世界最古の氷」の取得に少しでも貢献できれば良いなと思います。(大藪記)

本日の行動
出発地:MD552
キャンプ地:MD620
標高:約3700 m
気温:-38度(6時半)、-33度(18時半)
風速:2〜5 m/s
移動距離:68 km
S16(出発地)からの積算移動距離:942 km
ドームふじ基地まで:114 km
本日の行動:移動、ルート沿い雪尺観測とサンプリング、レーダー観測、キャンプ地での観測、燃料1橇デポ


06:10 | 投票する | 投票数(20) | 日々の活動状況
2017/12/08

いくつかの「メガデューン」の近くを通過しました

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 先日の投稿「曲がりくねったルート、まっすぐなルート」のなかで、「メガデューン」とよぶ特徴が写った画像を紹介しました。これについて紹介します。ちょっと堅めのサイエンスの話ですが、おつきあいください。

 本投稿に示した画像は、南極大陸氷床表面の中継拠点付近(右上)から、12月4日に到着したキャンプ地点(図中央部)を含むエリアです。ドームふじと昭和基地方向は、それぞれ、図の左下と右上です。背景の画像は、「MODIS画像」といって、南極大陸表面に地平線方向から太陽光が差し込んだときの陰影がわかる画像を集めたものです。わずかな起伏の変化でもこの画像にうつる陰影でよくわかります。画像の各所に、白黒のしましまがみえています。傾斜が2~5キロメートルの周期で、振幅は概ね数メートルで規則的に波打っているのです。これが、「メガデューン」と呼ばれ、斜面に出現する現象です。

「デューン」とは、砂漠などに風によってできる砂丘のことです。メガデューンは、雪粒子がもとになってできる巨大な風成丘です。

 ここに示した事例は小規模ですが、「メガデューン」は、東南極氷床内部の広大なエリアを覆っていることが知られています。東南極でのその総面積は、50万平方キロメートル以上にもおよびます。実に広大です。メガデューンは、雪の堆積と、風によるその再分配のプロセスで発生します。このため、メガデューンの理解は、南極に積もる雪の量の見積もり(質量収支と専門用語で言います)やアイスコアの解釈には非常に重要とされています。近年の研究によって、卓越風(カタバ風)の方向や気候条件が、メガデューンの生成に決定的や役割を果たしていることがわかってきました。メガデューンが発生する場所は、ややきつい傾斜をもった斜面であり、そこにほぼ常に吹き続けるカタバ風がある場所です。メガデューンは、2~4メートル程度の振幅、そして2~5キロメートル程度の周期をもっています。その周期のなかで、雪の堆積量は、デューンの風上側で大きく(周囲平均の約120%)、風下側で小さく(周囲平均の約25%)なります。風下は、光沢雪面になり、サスツルギがなく、「霜ザラメ」と呼ばれる雪質で覆われます。風上は、最大1.5メートル程度の高さにおよぶサスツルギ帯になります。こうした構造が周期的に続いているのです。しましまは、風の向きと直交しています。このメガデューンが起こり始めるトリガー(きっかけ)は、卓越風向に沿った斜面の傾斜が乱れるところから起こり始めると解釈されています。

人工衛星画像が入手できる今でこそ、大陸の内陸部や、現在私たちが走行しているこの地域にこうした現象があることを私たちは知っています。しかし、かつては、現象の存在を認識しないままこの地域を内陸調査隊が通過していました。人工衛星を用いた観測の進歩によってメガデューンは私達の前にその姿を現しました。メガデューンの内部の構造は、氷床内部探査用のレーダを用いて研究されてきました。氷期~間氷期の数十万年にわたる時間スケールで、こうしたメガデューンが起こってきたことがわかっています。南極の内陸部(たとえばボストークと南極点とドームふじとドームCを結ぶエリアのなかの傾斜地)では、層構造がとても乱れた堆積層の存在を非常に深い深度まで読み取ることができます。メガデューン地域の氷床をアイスコアとして採取して過去の気候を復元しようとしても、層の情報が乱れすぎていて解釈はかなり困難になるでしょう。

 上の画像や、先日の画像にあるようなメガデューン帯を今回私達は数日間にわたり通過しました。斜面上方にある「波」は、地平線が盛り上がってみえます。斜面下方にある「波」も、地平線がいったんくぼみ、その先が盛り上がって見えます。言い換えると、地上からの視界は「ただそれだけ」なのです。人工衛星画像などの俯瞰的にとらえる手法を用いなければ、地上に居る人には認識できません。サスツルギを伴うので、内陸旅行にとっては移動の障害ともいえる現象です。
(藤田記)



図の説明:12月4日の内陸調査隊の走行路(赤線がルート、青線は走行記録)と、周囲の氷床表面の起伏。所々に白黒のしましま構造をもったエリアが散在する。図のサイズは縦と横がそれぞれ約170×100キロメートル。標高は3,400から3,600メートル付近。
06:07 | 投票する | 投票数(12) | 観測トピックス
2017/12/07

12月6日(水) 血圧に悪い

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こんにちは、医療隊員宮岡です。ここ数日、除雪車が整備したルートが、悟空が界王様の所に行く道のように見えてきていますが、意識は正常です。週刊誌を読まなくなってほぼ1ヶ月、『宇宙兄弟』や『ONE PIECE』の続きが気になって仕方がありません。ネット環境さえあれば電子版(定期購読中)で読めるのですが、普段目にすることの出来ない素敵な環境にいるので贅沢は言っていられません。

高所による多少の息苦しさを訴える方はいますが、皆さん概ね健康的で経過しております。最近、ごはんを炊く量が3~4割減になりました。標高があがるにつれて食事摂取量は減少すると伺っていますので、想定の範囲内ではあります。アルコールも隊員によっては半減しています。食事で気になる点が一つ、塩分です。昭和基地の調理隊員が調理冷凍していただいている食品の他に、即席(お湯を入れてできる)食材が多数あります。寒い中から車内に戻ってきて飲むみそ汁は格別です。しかし悲しいかな、非常に塩分が多いのです。調べてみたら2g以上ありました。食品によっては、スープまですべて飲んでしまうと、厚生労働省が推奨する1日の塩分摂取量を超えてしまうものがあるぐらいです!血圧を気にしている隊員がいますので忠告すると「医者が目の前にいたら全部飲めねえな」と苦笑しながらスープを半分残していただけるようになりました。たかが3か月、されど3か月、目くじらをたてなくてもいいかもしれませんが、頑張ります。なお、ビールや清涼飲料水にはナトリウムが殆ど含まれていないので、こちらに関しては塩分という視点からいうと問題ありません。



中継地点で試してみた風呂への入浴ですが、結果からいうと失敗に終わりました。
観測が終わった午後の休憩時間、バケツ4杯分(80L)のお水をお風呂が入っている橇に持っていきました。お風呂の大きさは一般家庭の浴槽と同じくらいで80Lでは半身浴もできるかどうかぐらいですが、体積の大きい私だと十分な量になります。順調にいったのはここまででした。入れた水の水面に何故か油が浮いているのです。匂いからすると軽油。なんらかの原因で、軽油が浴槽についていたようです。ここまで来たら多少の油には負けません。そもそも、日本には油が混じっている温泉があります。北海道の北部に豊富町という町に温泉があるのですが、そこの温泉は油分が混じっています。乾癬という皮膚疾患に対して効果があるといわれている知る人ぞ知る温泉で、私も大好きな温泉です。それと同じじゃないか(本当に同じではないですが)と半分開き直りました。
そこに投げ込みヒーターを2本投入して加温します。(投げ込みヒーター:外部電源によってエネルギーを得た熱い金属の棒)ここでも問題発生。調子が悪く1本しか稼働していません。全然水があたたまらないのです。1時間たっても30度前半の水温。迫りくる夕食タイム。せっかく準備した水・エネルギーがもったいないので、意を決して浴槽に飛び込みました。30数℃でも温かく感じます。水面はおへそあたりまで、そこから上は極寒です。気付いたら無心で手桶を使って上半身にお湯をかけていました。体も洗ってはみたのですが、油のにおいがさらについてしまった感じになりました。さらに寒くて浴槽から出られません。大げさでなく清水の舞台から飛び降りるつもりで、浴槽から飛び出してガタガタ震えながら体を拭いていると、隊員から無線連絡。私の身を案じて連絡してくださったのかと思いきや「ご飯時間来ているよ」……「すみませんが先に食べていてください」
軽油のにおいをさせながら夕食をとる事になりました。今回の失敗を踏まえ、ドームふじ基地で入浴再挑戦しようと考えています。次は成功するといいいのですが……。



本日の行動
出発地:MD500
キャンプ地:MD552
標高:約3600 m
気温:-39度(6時半)、-32度(18時半)
風速:5〜6 m/s
移動距離:52 km
S16(出発地)からの積算移動距離:874 km
ドームふじ基地まで:183 km
本日の行動:移動、ルート沿い雪尺観測とサンプリング、レーダー観測、キャンプ地での観測、雪上車整備、燃料橇つなぎ変え


04:50 | 投票する | 投票数(29) | 日々の活動状況
2017/12/07

雪上車での長旅

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南極ブログファンの皆さん こんにちは 機械隊の小林です

ドーム旅行 という言葉を使っていますが、観光地巡りをするような楽しい旅ではありません。目的はドームふじ基地へ行き、深層掘削地の調査、アイスコア持ち帰り、などの重要なミッションをこなすことにあります。現在はドームへ行くためにひたすら雪上車で移動の毎日です。今回ドーム旅行初の試みで伊藤隊員がPB300でサスツルギを削りながら走りやすいルートを作って進みます。後続の4台の輸送車は気を使うことなく比較的安定した雪面をオートマミッションの2速固定、8㎞/hで進んでいます。時々コースを外れてサスツルギを乗り越えてみるとジャンプ台かと思うほどの落差。PB300と伊藤隊員の技術のおかげで機械にも人にも優しい走りができています。以前の隊は数メートルもの落差のあるサスツルギを越えたとも聞きます。雪上車にも大きな負担がかかったことでしょう。

宮岡隊員と私の乗る109号車は20年前の旧車。故障リスクが一番大きいと思い私が担当しています。さて日々の旅行、ドライブですが決して快適とは言えません。まずは騒音。車内にエンジンカバーが飛び出しているのでエンジン騒音は日本を走るトラックとは比較にならないほどの大きさ。走り出すとキャタピラが雪ときしみ合う音と振動でこれまた凄い。音楽を聴こうとスピーカーを置き最大ボリュームにしてもほとんど聞こええずイヤホーンで聴いていても騒音が割り込んできます。エンジンを挟んで隣の宮岡隊員との会話は怒鳴り合い、まるでケンカでもしているよう。必要最小限の会話しかしないので必然的に疎遠になります(笑)

そして振動、これまた凄い、食堂車であるこの車には鍋やヤカン、食器類、食材が置いてあったり吊るしてあったりしますが、それが一日中、ガランガランと音をたて、棚に置いた荷物はほとんど床に落ちています。一番激しいのはテンパーで左右の駆動輪を制動させて方向を変えるとき、大きく左右に振り回されて、まるで横揺地震体験車のようです。走行中、手すりに頼らず車内で立っていることはまず不可能です。

観光と言えば変化する景色を楽しむことが醍醐味ですが、初日感動した360度地平線を見渡せる真っ白な雪原も見飽きました。湖や山、木の一本も無い生物もまったくいない極寒地です。まるで大海原が一瞬にして凍結したように無数のサスツルギが固まった波のように見えます。ルートは一週間走ってもまったく景色は変わりません。キャンプ地も雪上車、橇の停車時の配列が同じなので写真だけではいつのものか判断できません。ドームまで1000㎞、標高は約4000m 斜面の平均勾配は0.4% ほとんど傾斜を感じない真っ平な雪原は自転車でも登りと感じないでしょう。この地球上にこれほどまでに大きな真っ平な雪原があるのでしょうか。二度とできない退屈極まりないこの旅を楽しみたいと思います。ドームまでの観光地といえば、南緯70度線の看板、みずほ基地、中継拠点くらいなもの、こんな時は隊員全員大はしゃぎです。ずいぶんと走りましたが、長い厳しい旅はもう少し続きます。
小林記

04:45 | 投票する | 投票数(18) | 内陸隊活動トピックス
2017/12/06

12月5日(火) 連想ゲーム?

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こんにちは.早速ですが,雪と氷の南極から連想ゲームです.新幹線,恐竜の化石,新型SUV車,イルカ,といえば?
皆さんは何を連想したでしょうか.答え(こちらが勝手に思っているだけかも)は一番最後に書きました.正解した方は,かなりの南極通です.ドーム隊は,いろいろな雪面模様を描く斜面下降風帯をそろそろ抜け,内陸へと進んできました.南極氷床頂部のドームふじ周辺では,どのような雪面風景が待っているのでしょうか.雪まりもに出会えるか?



  
写真 上:恐竜の化石?,下:イルカ?

[答え:サスツルギ.今回の南極内陸旅行ではサスツルギがいろいろな形に見えました]
(杉浦記)



本日の行動
出発地:MD444
キャンプ地:MD500
標高:約3500 m
気温:-40度(6時半)、-33度(18時半)
風速:5〜6 m/s
移動距離:56 km
S16(出発地)からの積算移動距離:821 km
ドームふじ基地まで:235 km
本日の行動:移動、ルート沿い雪尺観測とサンプリング、レーダー観測、キャンプ地での観測、雪上車整備、燃料デポ(1橇)


04:21 | 投票する | 投票数(18) | 日々の活動状況
2017/12/05

12月4日(月) 時空を越えた贈り物

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こんにちは、現在BMI27.1医療隊員宮岡です、これでも痩せてきています。寝る時は、シュラフ(寝袋)+掛け布団・敷布団というコラボで寝ておりますが、寝相が悪いので、起きるとシュラフだけという事が度々あります。今朝起床時の車内の気温は3℃(外気温は-30℃以下)、まだシュラフのみでも快眠できています。

中継地点での以前の隊が置いてくださった食品ですが、最も古いもので賞味期限が1997年となっているものがありました。20年前の代物です。アルコールでしたら喜んで摂取する所でありますが、摂取してお腹を下してしまっては一大事ですので、躊躇しています。
 興味深かったのはダンボール。外部と内部の段ボールの変色の差が画像でもはっきりわかるほどです。紫外線によるものか、雪が解け水分がダンボールに浸み込み、それが再凍結して色が変わったものか分かりませんが、自然の凄さを感じます。



 南極での紫外線といえば、日焼けや雪目の対策が必須になります。写真でサングラスをかけている人が多いのは、格好つけているわけではなくて雪目(角膜炎)対策です。写真を撮る時だけサングラスを外す人もいます。目の周りだけ日焼けせず、それ以外の顔の部分が日焼けしている人がいるのはこの為です。これも個人差があって、日焼け止めで紫外線対策ばっちりの人は日焼けの境界がはっきりせず、逆にそうでないひとは境界がはっきりしています。良かったら今までの画像をご確認ください。さらに、今まで境界がはっきりしなかった人も、南極での滞在日数が増えるうちに徐々にはっきりしてくるかもしれません。そういった観点で写真を見るもの面白いです。
 一応、医療マニュアルで日焼けや雪目対策はきちんとして下さい、とアナウンスしている手前、元々色黒ではありますが、日焼け止めは個人用として4個持ち込みました。1ヶ月で1個消費しましたので、いいペースです。しかし、ここで問題が一つ。
日本で1回だけ使用してほぼ未使用だったものを1個持ち込んでおり、今朝使用してみたのですが、外に出ると顔が異常に冷たくて寒いんです!!不思議に思って日焼け止めの成分を確認すると、『クール成分配合』の文字が。きちんと確認すれば良かったなあ、と心の底から思ったのでありました。



本日の行動
出発地:MD390
キャンプ地:MD444
標高:約3500 m
気温:-38度(6時半)、-27度(18時半)
風速:2〜4 m/s
移動距離:54 km
S16(出発地)からの積算移動距離:765 km (12/4修正)
ドームふじ基地まで:291 km (12/4修正)
本日の行動:移動、ルート沿い雪尺観測とサンプリング、レーダー観測、キャンプ地での観測


03:20 | 投票する | 投票数(23) | 日々の活動状況
2017/12/04

曲がりくねったルートとまっすぐなルート

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 中継拠点に至るまで通過してしたルートの名は「NMDルート」と呼ばれるルートでした。新(New)のN、みずほ基地の頭文字M、ドームふじのDから成っています。名前の意味は、みずほ基地とドームふじを結ぶ新しいルートというものです。このルートを作る以前の旧来のルートは、単に、「MDルート」と呼んでいます。新しいルートができたわけなどについて、ここでは解説します。
 
 ルートが曲がりくねる場合、基本的にそれは悪路や障害物を回避しています。危険な氷の割れ目であるクレバスがある地帯は避けます。そうした意味のルートの曲がりくねりは、沿岸地域にあり、昭和基地から大陸にあがる「とっつき岬」から、輸送拠点の「S16」地点までのルートは多くのクレバス地帯を回避して曲がりくねります。さらに、「S16」から「みずほ基地」に至るルートのなかにも、直線ルートのなかに時折何かを回避する曲がりがあります。人工衛星画像で見てみると、確かに何か変則的なもの(おそらくはクレバス)を避けている様子を確認できるのです。

 さて、みずほ基地から、ドームふじ方向に向かう約360kmの区間は、南極大陸氷床の斜面を吹き下ろす風が強い場所です。大陸表面で放射冷却で冷えた空気は重く、斜面を吹き降りてくるのです。こうした斜面下降風のことを「カタバ風」と呼んでいます。英語ではkatabatic windです。一方、南極氷床の表面は、氷床の下の基盤岩のもつ地形に応じ、ゆるやかな凹凸をもっています。基盤岩の地形は、そもそもは南極が氷に覆われる前の時代(約3,500万年以前)までに温暖であった大陸の上で形作られた地形です。多くの山や谷を、巨大な氷体が覆い尽くしているわけですが、凸凹な地形の上を氷が流れたとき、基盤岩の凸凹形状は、わずかですが氷床表面の起伏の変化として現れるのです。凸の氷床表面は、カタバ風に常にさらされて、雪が積もりにくい比較的平坦な地形になります。凹の氷床表面には、雪が多く積もりやすいのですが、強い風によってそうした雪が高さ数十センチから時折1メートルにもなる凸凹の雪原をつくります。表面の荒れた地帯を私たちは「サスツルギ地帯」と呼びます。「サスツルギ」はロシア語なのだそうです。さて、MDルートは、みずほ基地とドームふじを結ぶために、ほぼ直線的につくられました。1990年代初頭のことです。当時は、南極氷床表面を撮影した人工衛星データがまだ出始めたころの時代でした。直線的にルートをつくることによって、そこには、氷床下地形として凸も凹もあります。結果として、ルート上には、比較的平坦な地形と、「サスツルギ帯」が多数出現します。サスツルギ帯では、通常は毎時7~8キロできる雪上車も、悪路によって時速3キロ程度まで低下します。雪上車や橇や搭載物資への負荷は大きく、且つ、人員の消耗も大きいものでした。2008年頃に、人工衛星画像から、「サスツルギ帯」の分布が読み取り可能になりました。その結果、サスツルギ帯をできるだけ回避する曲がりくねったルートを作れば、車両や橇や人員への負担を軽減し、さらには旅行期間まで短縮できることがわかったのです。
51次隊、54次隊、そして今回の58/59合同隊が新しくデザインされたNMDルートを通過しました。通過に難渋した長いサスツルギ帯を回避した結果、従来のMDルートよりも60キロ長い距離を走行しているにもかかわらず、日程を平均約1.2日程度短縮して通過できる実績ができました。これがNMDルートの由来です。1.2日分、車両の燃料消費を節約できるほか、おおきなメリットは人が消耗してしまうことを軽減できる点です。

 「中継拠点」からドームふじまでのルートは、サスツルギ帯は小さく、分布も不均一です。これから約1週間走行するこのルートは、曲がりくねるメリットはないので、直線的に最短経路でドームふじを目指します。
(藤田記)
 


GPSナビゲーション画面。白黒のしましまである「メガデューン帯」を縫ってルートができています。「メガデューン帯」についてはまた後ほど解説します。
03:24 | 投票する | 投票数(22) | 解説記事
2017/12/04

12月3日(日) 最後の観光地

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ドームふじに至る道中には我々が「観光地」と呼んでいる数少ないポイントがあります。中継拠点はその「観光地」の一つです。今日は出発前に、「中間拠点」と書かれた看板と、「A COOP中継Camp支店」に立ち寄りました。A COOP中継Camp支店はもともと45次隊が作ったもののようですが、5年前の54次ドーム旅行隊が商品の入れ替えをしてくれたらしいので、全員でA COOP商品の「開封の儀」を行いました。一斗缶と小ダンボールの中にお菓子やアイス、お酒、おつまみ、雑誌などが入っており、隊員はみんな大喜び。ドーム旅行始まって以来の盛り上がりでした。このようなものが置いてあると、嬉しいものです。商品はありがたくいただき、帰路で来次隊のために新しく商品を入れ替える予定です。
(大藪記)





本日の行動
出発地:中継拠点 (MD364)
キャンプ地:MD390
標高:約3400 m
気温:-33度(9時)、-31度(18時)
風速:3〜4 m/s
移動距離:26 km
S16(出発地)からの積算移動距離:621 km (12/3修正)
ドームふじ基地まで:345 km (12/3修正)
本日の行動:移動、ルート沿いサンプリング、レーダー観測、キャンプ地での観測、雪上車整備


00:18 | 投票する | 投票数(18)
2017/12/03

12月2日(土) 中継拠点での諸作業

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昨日「中継拠点」という場所に到着しました。ここは、ドームふじ基地などの内陸活動のために燃料や物資のデポ(一時貯蔵)をする場所であり、また、自動気象観測器や50本雪尺、無人磁力計といった機器による観測も行われています。午前中に手分けして諸作業を行い、午後は休息(自由時間)としました。

今日行った作業:
・自動気象観測器のメンテナンス
・無人磁力計のメンテナンス
・50本雪尺測定
・インターバルカメラ設置
・燃料ドラム缶の積み替えと一部デポ
・デポドラム缶の掘出し


キャンプ地:NMD430(中継拠点)
標高:約3300 m
気温:-33度(6時半)、-27度(18時半)
風速:3〜4 m/s
移動距離:0 km
S16(出発地)からの積算移動距離:685 km
ドームふじ基地まで:371 km

(川村・大藪記)
04:22 | 投票する | 投票数(19) | 日々の活動状況
2017/12/03

機械隊員の仕事(その2)

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南極ドーム・ブログファンの皆さんこんにちは 機械隊員の小林です

私は機械隊員。 雪上車、発電機、橇、その他、できうる限りなんでも修理する。
早い話が南極便利屋。

溶接も得意分野の一つ。出発前の準備期間中11月10日に溶接作業。大原製のSM100雪上車は2tを超える重量の橇を7台も引いて走る。けん引用のピントルフックには莫大な力が加わる。今回はその部分の回り止めの修理。雪の上に寝転んで上を向いての作業。気温はマイナス5℃。日本での仕事とは勝手が違う。


写真:雪の上での溶接作業


ドーム旅行には雪上車修理のために大量の予備部品、工具、油脂類、等々が搭載された機械モジュールというプレハブハウス的な橇を引いて行きます。発電機、溶接機も完備されています。内部は4人ほど寝られる二段ベッドスペースもありますが、下の段には予備交換部品でいっぱいで、上の段を川村隊員と赤田隊員が使用しています。機械隊員にはこの機械モジュールは命の綱。修理屋に工具と部品が無ければ、ただの人。何の役にも立てませんからね…


04:19 | 投票する | 投票数(19)
2017/12/02

12月1日(金) 幻日とダイアモンドダストの狭間で

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こんにちは、医療隊員の宮岡です。定時通信、人によっては衛星携帯電話や日本語の短波放送(アフリカ大陸向けの日本語放送がきれいに受信できます)で日々の情報を入手しております。皆さんは我々の健康を心配してくださっているかと思いますが、我々も皆様の安全を心配しております。
 さて、昨今の世界情勢とは全く無縁の南極は、雪面のうねり方が違うぐらいで全く変わりがありません。本日も天候良くドームふじ基地へ向け移動できております。除雪車が雪上車の先頭にたってルートを切り開いてくれるので、今までに比べると移動スピードが格段に上がっているとききました。今回が初めての南極になる私は、除雪車なしの長期移動は考えられなくなりそうです。
 気圧は650hPa前後になり、パンパンに膨れたお菓子の袋が破れ始めました。袋の中の空気(ガス)の量は一定ですので、PV=一定(P:圧力、V:体積)より温度がかわらないと仮定し、現在の気圧が平地の気圧の3分の2と考えると、体積は1.5倍になります。1.5倍の大きさになると耐えられないようです。ただ、破れるといっても袋のいたるところで破れるのではなく、袋の真ん中にある密着部分がはがれて穴があくといった感じです。(写真参照)湿気る可能性は少ないのですが、味に変化が起こっては一大事ですので、美味しくいただいております。おかげさまで、昭和基地出発以降5kg減った体重は全く変化しなくなりました。PV/T=一定という公式を参照すると、暖かい車内ではなく、-30℃以下の外気温と同じ橇の中へ入れた方が膨らみは小さいはずですが、お菓子を食べる口実がなくなってしまうので黙っています。



 写真を整理していると、幻日(虹)とダイアモンドダスト双方が写っている写真がありました。その間に雪上車や橇が置かれています。とてもキレイです。
明日は移動せず、観測や休息をとる予定です。お風呂を橇で運んでいるので入浴してみようと思います。せっかくなので、寒冷地での入浴が身体にどのような影響を及ぼすか、自分の体を使って調べてみます。温泉療法医(本職はあくまで外科です)の本領発揮です。



本日の行動
出発地:NMD378
キャンプ地:NMD430(中継拠点)
標高:約3300 m
気温:-32度(6時半)、-27度(18時半)
風速:4〜8 m/s
移動距離:52km
S16(出発地)からの積算移動距離:685 km
ドームふじ基地まで:371 km
本日の行動:移動、ルート沿いサンプリング、レーダー観測、キャンプ地での観測


06:05 | 投票する | 投票数(20) | 日々の活動状況
2017/12/01

11月30日(木) 初めてのスタック

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現在雪面の荒いサスツルギ帯を走行していますが、従来の内陸旅行とは異なり、ブレードを持ったPB300が雪上車を先行して走り、サスツルギを馴らして道を作っています。そのおかげで後続の雪上車は1mを超えるようなサスツルギを横目に整地された舗装路を涼しい顔をして走行することができています。昼休みには、給油を行い昼食をとるのですが、その時は一旦ルートから外れることがルールとなっています。そのため、昼食時はPB300が整地していないサスツルギ帯へ入ることになります。今日昼食をとったエリアは、最近走行した中でも1、2位を争う雪面状況の悪い場所でした。私たちが乗車する117号車は雪面状況を見ながら停車位置を決めたつもりでいたのですが、休憩後発進しようとしたところ、大きなサスツルギにはまり履帯が空転しスタックしてしまいました。そこで颯爽と救出に来てくれたのが20年先輩の109号車。117と109号車を直列で連結し、109号車に引っ張ってもらうことで無事サスツルギから脱出することができました。改めて感じたのは、PB300のありがたさでした。明日はみずほ基地に次ぐ第2のチェックポイント、中継拠点に到達する予定です。
(大藪記)


整地しながら走行するPB300と、後に続くSM100型雪上車

 
109号車に牽引してもらって脱出する117号車


本日の行動
出発地:NMD324
キャンプ地:NMD378
標高:約3200 m
気温:-33度(6時半)、-27度(18時半)
風速:4〜8 m/s
移動距離:54km
S16(出発地)からの積算移動距離:633 km
ドームふじ基地まで:423 km
本日の行動:移動、ルート沿いサンプリング、レーダー観測、キャンプ地での観測、雪上車整備


06:20 | 投票する | 投票数(15)
2017/11/30

11月29日(水) 白夜にうつる影

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こんにちは、体重が4kg減ってから3日程停滞中の医療隊員宮岡です。同乗している小林隊員からは「移動中にお菓子食べているからじゃ?」と言われましたが、そのせいではないと、勝手に思っています。

行動中の食材管理及び医療隊員として、日々の食事摂取量を確認しておりますが、みなさん大きな変化はありません。日々チェックしている体重ですが、服を着たままですので差が出ている方も何人かいますが、誤差の範囲内で継続して減少している人はおらず、概ね健康であると考えています。ただ、お茶の使用量が在庫に比べ大幅に多く、『行動前半で、お茶切れ注意報』を発表すると、使用量が激減し、食事における水分摂取量も減ってしまいまいた。我々は通常、尿として大きなペットボトル一本分程度の量を排出します。よって、それ以上の水分を摂取しなければなりません。皆さんに飲水を促したい所ではありますが、トイレに行くためには、温度差が50℃以上ある雪上車の外に出る必要があります。この急激な温度変化は体にとって好ましいものでないのはいうまでもなく、飲水を促す→トイレの回数が多くなる→夜間にトイレに行く→急に具合が悪くなる→気付かれず発見が遅れる、という事態を考えると、やみくもに飲水というのもよろしくないかなと思えます。
外出には注意して飲水していただくようにお願いしました。

さて、現在の地点は太陽が夜になっても沈まない白夜になっています。雪上車の窓際にカメラをおいて、太陽を撮ってみました。夜の23時から朝5時までの写真を並べてみると、確かに沈んでいません。「太陽に対して地球は(23.4°)傾いているから、場所によって一日中太陽が出ていたり、逆に出てこなかったりする」と理科の授業で昔勉強した記憶がありますが、それを実感でき感動しています。
今回この白夜を撮影するにあたり、1分1枚で計400枚の写真を撮影しました。写真を確認していると、朝4時過ぎの写真に雪上車の外を歩く隊員が写っていました。どうやらトイレに行っている際の写真のようでしたが、同じ車内で寝ていた私はトイレに行った事に全く気付きませんでした。



本日の行動
出発地:NMD270
キャンプ地:NMD324
標高:約3100 m
気温:-33度(6時半)、-27度(18時半)
風速:4〜8 m/s   
移動距離:54km
S16(出発地)からの積算移動距離:579 km
ドームふじ基地まで:477 km
本日の行動:移動、ルート沿いサンプリング、レーダー観測、キャンプ地での観測、雪上車整備


04:18 | 投票する | 投票数(22)
2017/11/30

雪上車

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南極ドームブログファンの皆様 こんにちは 機械隊員の小林です

本日は私たちが乗っている大原の雪上車のことをお話します
オレンジ色の大きな雪上車、お世辞にもカッコイイとは言えない、武骨な昭和レトロ感のある車体。全長6100㎜、車体幅2900㎜、高さ3940㎜。日本を走る大型バスの半分くらいの長さと思ってもらえば想像がつくでしょうか。室内高は170cmくらい、身長の高い隊員はいつも背中を丸めています。各車両に3トン近い重い橇を7台も引いて走る頑張り屋。エンジンは日本で走っている4トントラックのもの(220kw)に4速オートマチックトランスミッションが付いていています。デファレンシャルギアだけが特殊なもので左右の駆動軸を独立して制動させるバンドブレーキが付いていて、これでかじ取りをします。運転席にはアクセルペダル、シフトレバー、テンパーという左右の駆動軸のブレーキをかける長いパイプシャフトが出ているだけでブレーキペダルはありません。いたってシンプルです。二名の隊員が交代で運転して、ドーム基地往復を走ります。

私が乗る109号車は食堂車にもなっていて、朝晩は10人の隊員が全員集合して食事をする団らんの場です。走行中はすべて無線機での交信。UHF、VHF、HFの高性能の無線機が搭載されてます。現在、昭和基地とはキャンプ地で20:00にHF無線機で定時交信、人員の無事を伝えています。100vインバーターもあるので、PCやその他の充電には困りません。

車両は南極内陸旅行に特化して作られたもので、あらゆるところに工夫が見られます。ラジエター➡エンジン➡ミッション➡デファレンシャルギアまでがフタの付いた一つの長い箱に収めた状態です。これで吹雪の時の停滞中は前後のフタを閉めて外部と遮断できます。ブリザードという言葉を聞いたことがあると思います。有名なのはユーミンの歌。しかし本当のブリザードとはそんなロマンチックな生やさしいものではなく、風速30mを超える時もあり、南極の細かい雪の粒がどんな狭い隙間からも入り込んできます。フタが無ければ、たぶんエンジンが見えないほど雪が入り込んでしまうことでしょう。ブリザードで停滞中は不必要な冷却をせずに室内のヒーターがとても効きます。当然、走行中はフタを全開にして走ります。

熱線入りフロントガラス以外の窓ガラスは二重ガラスで壁の保温材も厚く、ドアは冷凍室の扉の構造です。エンジンがかかっていればとても暖かい(暑い)です。そのため走行中、隊員は半そで短パンの人もいます。寝るときはエンジンを止めますが、その余熱で朝まで凍えることなく眠ることができます。私は車内のエンジンカバーの上で寝ているので外気温がマイナス20℃でも暑くて汗をかいて目を覚ますこともあります。室内の床板を開くとエンジン、ミッション、デフが丸見えとなり、日常点検をはじめ、ほとんどの整備や修理が室内で行えます。これは寒い南極での修理屋にとっては大変ありがたいことです。今のところ全車異常無く元気に走っています。






04:13 | 投票する | 投票数(20)
2017/11/29

11月28日 日々の暮らし

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大藪です。我々ドーム隊は、毎日ドームふじへ向けて1日50-60kmを時速8-9kmで進んでいます。毎日どのような食事をしているのか、どのような生活をしているのか、1日の流れをご紹介したいと思います。

まずは食事です。58次の調理隊員が作ってくださったレーションが基本ですがとてもおいしいです。どうしても野菜不足にはなってしまいますが、少なくとも私の場合、日本にいるよりはるかに良い食事を摂っています。
11月28日の食事を紹介します。
朝食:サンマの梅煮(前日夕飯の残り)、牛肉とジャガイモとパプリカの山椒炒め(前日夕飯の残り)、ひじき、目玉焼き(市販品)
昼食:小樽ダイニングのランチボックス(市販品)(ビーフシチュー・フォカッチャなど)
夕食:豚の生姜焼き、マカロニサラダ
小林さんと宮岡さんが毎日朝と晩にお米を炊いてくれます。水加減がどんどん良くなり、とっても美味しいお米を炊いてくださり、毎食楽しみにしています。また、ご飯が余った時は、翌朝小林さんが色々なアレンジを効かせたおじやを作ってくれます。



---1日の流れ---
6:00〜6:15 起床
起床直後、雪上車の点検を行いエンジン始動
6:30 気象観測
6:50頃 食堂車(SM109)にて健康チェック(体重・体温・血圧・心拍数・血中酸素濃度測定)
7:00 朝食
朝食後、全員でラジオ体操をし、その後雪上車の慣らし運転。
8:00〜8:30 キャンプ地出発
(PB300で雪上車のための道づくりをしてくださっている伊藤さんは我々よりも1.5〜2時間早く出発します。感謝感謝。)

時速8-9kmで前進。
SM111とSM115ではその間レーダー観測を行なっています。また、雪尺があるルートでは雪尺観測を行います。約10kmおきに化学分析用の表面雪の採取も行います。

12:00〜13:00頃 昼休憩と給油、気象観測

時速8-9kmで前進。

16:00〜17:00 キャンプイン、給油、雪上車の雪落とし
夕食までの時間はそれぞれ雪氷観測や食事の準備、雪上車の整備・点検、データ整理、洗濯などを行なっています。
18:30 気象観測
19:00 夕食
20:15 昭和基地との定時交信
定時交信後、昭和基地から毎日「どうでもいいニュース」と題し、いくつか二ニュースを紹介していただいています。我々は毎日それを楽しみに聞いています。

20:45〜 自由時間

日々更新されるブログが、我々の楽しみでもあります。
毎日誰かが記事を持ち寄り、通信機器を持っている川村さんが代表してアップロードしています。そしてその記事を印刷し、朝の新聞代わりにみんなで読んでいます。(大藪記)



本日の行動
出発地:NMD218
キャンプ地:NMD270
標高:約3000 m
気温:-32度(6時半)、-27度(18時半)
風速:7〜10 m/s   
移動距離:52 km
S16(出発地)からの積算移動距離:525 km
ドームふじ基地まで:531 km
本日の行動:移動、ルート沿いサンプリング、レーダー観測、キャンプ地での観測、雪上車整備


03:43 | 投票する | 投票数(20)
2017/11/29

内陸行動中のナビゲーション

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 本投稿のテーマはナビゲーションです。南極の大陸氷床の上は、とてもゆるやかな起伏のある雪原になっています。360度見渡しても、どの方向も雪や氷の地平線になっています。「測地衛星」と呼ばれる人工衛星が1980年代に登場するまでは、自分が居る緯度経度を知る方法は、時刻の太陽の位置を観測する「天測」と呼ばれる方法が基本でした。これとあわせ、磁方位と移動距離を組みあわせた多数の地点を結ぶ「ルート」をつくり、大陸の上を安全に移動する経路を確保します。かつては、大陸上を移動する際には、コンパス(方位磁針)と距離計が必須の道具でした。さて、科学技術の進歩とともに、GPSの発達によって、ナビ技術も進歩しました。

 現在では、内陸部を移動するのに基本的に頼りにするのは、GPSに基づいたナビゲーションです。昨今は、GPSや、ナビゲーションソフトウェアを載せる電子機器はさまざまにあり、それぞれに、進歩が著しい状況です。今回の調査旅行のナビゲーションで最も頼りにしているのは、PCとナビゲーションソフトウェアとGPSセンサーを組み合わせた仕組みです。Fugawi Global Navigator という、野外用のナビゲーションシステムです(写真1)。こうした仕組みは、昭和基地近傍から内陸ドームふじ地域に向かう内陸旅行では、約10年前から使いはじめました。スウェーデンの南極観測の関係者から紹介いただいたものです。

 このナビゲーション用ソフトウェアに、あらかじめ、移動ルートの緯度経度情報を入力します。昭和基地からドームふじに至るには、データ点としては合計約600ポイントになります。さらに、ソフトウェアには、内陸隊が走行している地域の情報として、様々な地理情報をあらかじめめ背景画像データとして埋め込みます。たとえば、①標高地図、②氷の厚さの地図、③光学センサで南極を衛星軌道から撮影した画像、④マイクロ波を衛星軌道から照射し、電波の散乱をとらえた画像、などなど。これらの地図をもとに、走行しながら、自分たちが今どんな環境を走行しているかを把握することができるのです。氷の割れ目である「クレバス」などの危険が潜む地域の分布も把握することができます。ナビゲーションソフトは、今私達が実際に走行すべき走路と現在位置のずれや進むべき方向を常に運転者に示します。運転者は、こうした情報をみて直観的に舵をきり方向を定めることができます。原理的には、GPS信号が取得できるかぎり、ブリザード(雪嵐)などで視程が悪化してもこのシステムを頼りに慎重に移動することは可能です。

 今回の内陸行動では、こうしたナビシステムを、走行する全車両である5台に配備しています。どの車両にいる隊員も、等しく位置情報を把握することができます(写真2)。現代でこそ活用可能になった便利な技術に私達も支えられています。ただし、いろいろなバックアップは必須です。多数のGPS機器のほか、旧来の航法も可能なように、コンパス等の用意も怠ってはいません。

 少しだけやっかいなこともあります。南極の氷床は、大陸の上に乗った氷が重力によって内陸から沿岸に向かって常に流動しています。みずほ基地のような内陸域でも、年間数十メートル流動しています。ある年次に緯度経度を把握していても、ルートの標識として立てた旗は、数年後に再訪すると数十メートルから100メートル以上動いてしまっているのです。ルート方位表で、ルート点間の相対位置を磁方位と距離で記載されているときは特段に問題ではないのですが、その地点を経緯度で記述すると、毎回ルート旗がある緯度経度を書き換えなければなりません。今回の旅行でも、氷床が流動してしまった結果ルート旗が移動した場所を予め予測したうえで、ナビゲーションをおこなっています。(藤田記)




03:40 | 投票する | 投票数(17) | 内陸隊活動トピックス
2017/11/28

11月27日(月) 犬と熊とペンギン

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こんにちは、医療隊員宮岡です。高度は2800m、気圧は690hPa前後になりました。空気が薄いためか、少しの作業で息が切れます。
 日本から出発する前、南極に行く話をすると、「タロ・ジロみたいに犬ぞりするの?」とよく聞かれました。南極条約により動植物の南極への持ち込みは厳しく制限されており、現在でほぼ不可能になっています。出国前にロボット犬である『AIBO』の久々の発売が発表されていましたが、あれなら可能でしょう。犬の話をしていると実家の愛犬に会いたくなってきます。今は、犬のかわりに除雪車や雪上車を用いた移動を行っています。機械隊員の小林さんと私が乗車している雪上車は、20年選手だそうです。この調査で使用する車両では一番古く、振動は一番大きいしシートなどのガタも見受けられますが、毎日寒さにもめげず頑張って動く車両に乗っていると愛着が湧いてきます。号車番号『109』日本のどこかのおしゃれスポットの名前に似ているかもしれませんが、日々の写真を見てもらってもわかるように、アウターはほとんど毎日同じ物を着用しており、おしゃれとは無縁の生活です。

今回内陸調査に同行するにあたり、約20年前にドームふじ基地に行った、私の大学の先輩でもある大谷医師から色々アドバイスを頂き、そのアドバイスに従って行動しています。その先生もこの車両に乗車したかもしれないと思うと、何か不思議なものを感じました。



「熊はいるの?」とも度々聞かれました。熊は反対の北極にはいますが、南極にはおりません。専門家でなくても現地にたつと、まわりに何もないこの環境で生物が生きていくのが難しい事がわかります。ペンギンは沿岸付近にしかおらず、内陸にペンギンの足あとがあっただけで論文になるぐらい珍しいようです。今回、その熊とペンギンを人形ではありますが南極の内陸に出現させてみました。夕食準備終了後の空き時間、観測の見学に行った際の写真です。厳しい寒さの中調査している観測隊員もほっこりした表情になっています。飛行機での移動中はカメラやパソコンの緩衝材になり、またこうして人々に癒しも与えてくれる彼らに感謝です。



本日の行動
出発地:NMD 158
キャンプ地:NMD 218
標高:約2830 m
気温:-31度(6時半)、-27度(18時半)
風速:9〜12m/s
移動距離:60 km
S16(出発地)からの積算移動距離:473 km
ドームふじ基地まで:583 km
本日の行動:移動、ルート沿いサンプリング、レーダー観測、キャンプ地での観測、雪上車整備

12:48 | 投票する | 投票数(18) | 日々の活動状況
2017/11/28

雪面模様

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中澤です。ドーム隊は今日もサスツルギ帯を進んでいます。
私が乗車している115号車は、車列の最後尾を走っているので雪面は既にならされており、揺れは少ないです。今日は光沢雪面(写真1)など、雪面に形成される種々な模様を見ることができました。光沢雪面は滑らかな雪面で、名前のとおり光沢があります。また写真のような割れ目もよく見られます。この割れ目はサーマルクラックと呼ばれており、気温などが急激に変化するときに生じます。そのほか、さざ波模様(写真2)や蜂の巣状の珍しい模様(写真3)も見られました。この蜂の巣の模様がどうしてできるのか、考え中です。


写真1:光沢雪面とサーマルクラック


写真2:さざ波模様の雪面


写真3:蜂の巣模様の雪面
12:44 | 投票する | 投票数(17) | 観測トピックス
2017/11/27

11月26日(日) 雪面模様

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日本を出発して1か月近くが経とうとしています.見渡す限り,南極内陸は雪の白色で囲まれています.この雪原ですが,よく見るといろいろな表情があります.積雪が削剥されるところと堆積するところがそれぞれ入り交じって,起伏に富む雪面模様を形成しています.削剥によって風上側を先端として彫り刻まれた立体的なサスツルギや,堆積によって風向に沿って細長く盛り上がったデューンなどの雪面です(写真参照).みずほ基地周辺域を雪上車で走っていたときのことです.これまでは数十センチ程度の凹凸がある雪面でしたが,この時は身長程度の高低差の雪面がありました.そこには特に大きなサスツルギが形成されていました.サスツルギを乗り越えるときには,雪上車のサスペンションが壊れないように特に気をつけてゆっくりと通り過ぎて下さいとのこと,小林機械担当隊員からのアドバイスです.燃料などを含む物資を積んだ橇を七橇つなげているため,運転している雪上車が通り過ぎてからも,なおゆっくりと進み,なんとかやり過ごしました.しかし,ドーム基地に向かうまでの間で,このような起伏がさらに頻繁に出てきそうです.ドーム基地に向かってルートを移動する時は,車両それぞれ一列に連なって進んでいますが.先頭はいつもPB300という雪上車です.その後に4台のSM100シリーズの雪上車が続いていきます.このPB300には雪をかくブレードがついていて,後に続く雪上車が走りやすいように雪面の起伏が激しくないようにしていただいています.プロフェッショナルな運転は第58次の伊藤越冬隊員によるものです.ドーム基地まで,まだまだこれからです.後続の車両とはいえ,雪上車の運転は初心者マーク(ちなみに事前に訓練は受けています)なので,私が交代で運転するときには特に油断禁物で気をつけます.
(杉浦記)


写真 みずほ基地周辺域の雪面模様(風向は右奥から左手前へ)

出発地:NMD 100
キャンプ地:NMD 158
標高:約2630 m
気温:-31度(6時半)、-25度(18時半)
風速:7〜10 m/s
移動距離:58 km
S16(出発地)からの積算移動距離:413 km
ドームふじ基地まで:643 km
本日の行動:移動、ルート沿いサンプリング、レーダー観測、キャンプ地での観測、雪上車整備
03:27 | 投票する | 投票数(22)
2017/11/26

11月25日(土) 極寒の洗礼

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皆さま、お元気でしょうか。アルコールを控え始めて丸1週間が経過した医療隊員宮岡です。昨日は、休肝日と称して隊員の皆様にもアルコールを控えていただきました。評判は芳しくないですが、沈黙の臓器と呼ばれる肝臓を守り、3か月という長期に及ぶ野外調査を成功させる為に、怨嗟の声にもめげず心を鬼にして断行致しました。『医療者の鑑』と自画自賛したい所ではありますが、出発前の4か月間痛飲して醜態を度々さらしておりますので、あまり偉そうな事は言えません。

 標高2400m前後まで到達しています。現在の所、SpO2の低下は見られるものの高山病の有意な症状は誰一人出ておりません。何十km移動しても、標高としては100mも上昇せず急激な高度変化が生じていないせいと考えられます。目的地の標高は3800mを超えますので、高山病についてはこれからも注意深く観察していく所存です。(旅行医学認定医という外科医には無縁の資格をもち、高山病については一定の知識を有しています。ご家族の皆様、御安心下さい。)

 今回はじめて-30℃を下回り、風速も10m/s以上ありました。風は1m/s吹くと体感温度が1℃下がるといわれており、これを加味すると体感上は-40℃に相当します。今までは薄着で外に出ても「ちょっと寒いな」ぐらいでしたが、今は「やばい、やばい」と若者のように『やばい』を連呼しています。外で洗濯をしていると、衣類が絞ったままの形で凍っていきます。一晩エンジンを止めた雪上車の内側のドアノブも凍りました。呼気に含まれる水蒸気でメガネのレンズは凍り、鼻の中も凍った感触がわかります。寒さのステージが1UPしたようです。他の皆さんもそれを感じていたようで、今朝のラジオ体操はほぼ全員雪上車の後ろに立って風除けとし、こじんまりした形になって体操することとなりました。



出発地:NMD 044
キャンプ地:NMD 100
標高:約2500 m
気温:-24度(18時半現在)
移動距離:約56 km
S16(出発地)からの積算移動距離:約 360 km
ドームふじ基地まで:約 630 km
本日の行動:
 移動、ルート沿いサンプリング、キャンプ地での観測、レーダー観測、雪上車整備


12:41 | 投票する | 投票数(25) | 日々の活動状況
2017/11/25

みずほ基地を通過

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昨日のお昼に大きな通過ポイントの一つであるみずほ基地へ到着しました。みずほ基地では、101本雪尺観測やAWS(自動気象観測測器)、無人磁力計の保守を行いました。また、ここまで使用した燃料の空ドラムやゴミをデポし、燃料を積んでいるそりの積み替えを行い、さらに内陸へと進む旅行の準備を行いました。夕食は節目のポイント通過祝いとこれからまだまだ続く旅行の成功を祈念して焼肉をしました。

みずほ基地は過去に使用されていた基地ですが、現在は雪の下に完全に埋まってしまい、基地の外観を知ることはできません。基地から煙突が出ていたり、19次隊の雪上車が置いてあったりしました。南極へ来る直前に、1980年にみずほ基地で掘削されたアイスコアを使用して分析を行いましたが、どこで掘削されたのだろう・・・と思いながら基地を見て回りました。

今日は朝に1時間程度全員で再度基地を訪れ、記念撮影を行いました。
その後予定通り旅行を進め、本日のキャンプ地まで無事に到着しました。
昨日あたりからダイヤモンドダストがよく見られるようになりました。とても綺麗です。

また、今日は朝から風がほとんど吹いていなかったため、日中の気温は-20度にもかかわらず日射の影響で体感温度は非常に高く感じました。Tシャツと素足にサンダルで外を歩いている隊員もいたほどです。(大藪記)

出発地:NMD001
キャンプ地:NMD044
標高:約2400m
気温:-23度(18時半現在)
移動距離:約43km
S16(出発地)からの積算移動距離:約 300 km
ドームふじ基地まで:約 700 km
本日の行動:
 移動、ルート沿いサンプリング、キャンプ地での観測、レーダー観測







12:36 | 投票する | 投票数(25) | 日々の活動状況
2017/11/24

空飛ぶおたまと、恩師が越冬したみずほ基地

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こんにちは、医医療隊員宮岡です。雪上車生活約2週間が経過しましたが、体重は約2kg減りました。ダイエット順調といいたいところですが、昭和基地で過ごした数日間のおもてなしで太ってしまった分を取り返した感じになっています。

ブリザード停滞もありましたが、南極の沿岸から数百km内陸に入ってきました。雪上車で移動し始めた当初は雪面もほぼたいらで揺れもあまりありませんでしたが現在の雪面は起伏が激しく、雪上車が前進するたびに体が上下左右に大きくゆられます。気付いたら車内で固定していたおたまが落ちていました。ただ、お鍋や水筒はいくら揺られても台から落ちません。重さや重心・物が置かれている高さが関係しているのかなと推測しています。この雪面はしばらく続くようですので、調査してみようと思います。

今日の天候は非常に変わりやすくなっています。内陸に入っていくと、大陸性の高気圧に覆われてくるので天候は安定するようですが、現在の地点では沿岸付近で発生する低気圧の影響を受けるようです。太陽のまわりに虹が出たかと思えば、ホワイトアウト状態で雪面と地平線の影響を境界が分からず、すぐ前の車両しか見えなくなりドキドキしながら運転する事になります。ただ、各車両最低2種類のGPS機器を搭載しておりますので、そのナビに従えば問題なくなっています。私の携帯に付属しているGPSも正常に作動しており、機器の発達ぶりに驚かされるばかりです。



移動ルート上、景色として見えるのは雪面・空・太陽・車両・点在する観測機器しかありません。動物も内陸に入ると殆どおらず、この2週間で白い鳥を2羽みただけです。本日は移動していると左に大きな人工物が見えました。経由地である日本のみずほ基地の観測タワーです。みずほ基地そのものは既に雪の下に埋まっており一部だけ視認できる形ですが、何もない雪面に人工物がみえるとなんだかほっとします。このみずほ基地は、私の恩師でもある外科医の高木先生が約30年前に越冬した基地でもあり、恩師と同じ場所に立つ事が出来、感慨深いものがありした。我々を歓迎しているかのように、みずほ基地近くのキャンプ地でも虹(天頂環?)が見られました。これはなかなか見られるものではないようです。明日からも無事に行動できるよう祈っているとふっと消えてしまいました。





出発地:Z082
キャンプ地:IM1(みずほ基地そば)
標高:約2250m
気温:-18度(19時現在)
移動距離:58 km
S16(出発地)からの積算移動距離:約 255 km
ドームふじ基地まで:約 750 km
本日の作業:
 みずほ基地まで移動
 ルート沿いの積雪サンプリング、キャンプ地での観測、レーダー観測
 自動気象測器メンテナンス、無人磁力計メンテナンス、101本雪尺、インターバルカメラ設置
 デポ燃料ドラム橇の引出しと移動、ドラム入れ替え、空きドラム橇デポ、橇ワイヤー交換
04:12 | 投票する | 投票数(37) | 日々の活動状況
2017/11/23

11月22日(水) 6日ぶりの移動

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今日は65kmを走行し(ルート上の移動距離は58km)、1日の走行距離が最長となりましたが、PB300の整地の効果や、皆の作業の手際が良くなって来たため、夕方6時過ぎには最後の車両(雪尺観測やサンプリングのため頻繁に停車する車)もキャンプインできました。明日はみずほ基地に到着予定です。

出発地:Z008
キャンプ地:Z082
標高:約2200m
気温:-11.1度(19:10現在)
移動距離:58 km
S16(出発地)からの積算移動距離:約 233 km
みずほ基地まで:約21 km
ドームふじ基地まで:約 800 km

本日の作業:
 移動
 ルート沿い雪尺観測とサンプリング、キャンプ地での観測
 36本雪尺観測
 雪上車点検整備(SM111)


ブレードで整地しながら進む先頭車(PB300)


雪上車(SM117)の屋根からの眺め


夕食と定時交信の後、雪の断面観測をする大野さん、杉浦さん、大藪さん。この巨大なピットは、先にキャンプインした雪上車で掘ったもの。
11:28 | 投票する | 投票数(30) | 日々の活動状況
2017/11/22

ブリ一過

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ついにブリザードがやみました。
今朝も吹雪いていて視程が20mほどでしたが、午後2時頃には風速が少し弱まって地平線付近の空が明るくなってきました。ようやくブリの終わりの兆しが見え、移動の準備に入りました。キャンプ地には5日間のブリ停滞中にできた吹き溜まりがいたるところにあり、橇もかなり埋まっていましたので、除雪と橇の引き出しがまず必要でした。その上で、これまでのキャンプ地から200mほど移動した場所で新たなキャンプ体制を取りました。5時半頃には風は弱まって雲混じりの青空となりました。明日は朝から移動を開始します。
(川村記)

04:52 | 投票する | 投票数(32)
2017/11/21

11月21日(火)

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いまは21日の朝ですが、まだ吹雪いています。
毎晩の定時更新で提供される昭和基地からの気象予想や、インターネットで取得できる米国の予報によれば、今日の午後から作業開始できるかどうかというところです。

今朝7時ごろの、
風速:12 m/s
気温:-11度

(川村記)
14:13 | 投票する | 投票数(26)
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