南極観測隊便り 2018 - 2019


2018/10/28

はじめに(その1)

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ごあいさつ

●南極地域観測事業の重点研究観測、課題名「地球システム変動の解明を目指す南極古環境復元」(実施期間2016年-2022年、代表者:川村賢二(国立極地研究所)は、昨年度に続き、2018年11月~2019年1月迄の期間、南極内陸部での調査活動を行います。本記事は、イントロダクションとして調査の目的や概要を説明いたします。イントロダクションは、研究計画の説明なので堅苦しいですが、私達がおこなっている事業の重要な点として説明します。

目的(実施期間全体を通して):  南極域の環境変動史を復元し、全球気候変動に南極が果たす役割を解明することが重要な課題となっています。本計画では、南極内陸から沿岸付近にかけての雪氷学・地質学的調査から、南極域の環境変動の復元を第四紀の様々な(数千年~数百万年の)時間スケールにおいて進めます。現存する世界最古のアイスコア(80万年)より古い年代まで遡るアイスコアの掘削を目指した新たな掘削点の探査や掘削拠点となる内陸新基地の設営、パイロット孔掘削を実施するとともに、過去数千年の氷床や環境の変動史を復元するための掘削を行ないます。また、南極ドロンイングモードランド地域に氷河地形地質調査の範囲を広げ、氷床変動史をより三次元的に復元することや、国際共同による大陸棚の地形探査と過去数百万年をカバーする堆積物採取等をより広域で実施し、南極氷床の拡大・縮小を復元することで、地球規模の海水準変動に与える氷床体積変化量の見積もり等を行ないます。

2018年度(60次隊)における達成目標
 夏期計画としてドーム旅行を実施し、ドームふじ周辺での国際雪氷観測を行ないます。基盤・深部・浅部のレーダー探査や浅層掘削、フィルン空気採取、積雪深、雪の物性の観測などを行い、南極内陸における氷床流動や基盤地形、底面融解・凍結、表面質量収支、積雪の各種物理量(衛星検証データも)、気体封じ込め過程を把握し、次期掘削点選定にも不可欠なデータや試料を得ます。

参加メンバー
参加メンバーは合計12名です。
観測系: 川村賢二(国立極地研究所、第59次越冬隊員)、藤田秀二(国立極地研究所)、津滝俊(東京大学)、栗田直幸(名古屋大学、一般観測)、山田恭平(国立極地研究所、第59次越冬隊員)
設営系: 伊藤太市(車両担当、第60次越冬隊員)、金子弘幸(車両担当)、櫻井忍(車両担当)、高村真司(フィールドアシスタント)、岡田豊(医療担当、第60次越冬隊員)
外国人同行者: Jean-Charles Gallet, Brice Van Liefferinge (ノルウェー極地研究所)

●観測の概要
 日本から出発する第60次日本南極地域観測隊の8名は、南極の国際共同の航空路ネットワークである「DROMLAN」を利用し、10月末に日出発し、2019年の1月末にかけて調査を実施します。日本・米国・ノルウェーの国際共同観測により、地上からの氷床レーダー探査を中心とした南極内陸調査を実施します。今回使用する氷床探査用のレーダーのうちの2台は、アラバマ大学およびカンサス大学が開発し、今回の観測に向け供給するものです。これを、日本側のレーダ2台とあわせて観測に活用します。前年度である第59次観測隊や、外国隊によって過去に南極「ドームふじ」地域でおこなわれた観測結果を踏まえ、国際会合によって入念に検討し絞りこんだ地域において、現場と国内外機関の連絡をとりながら詳細な観測を実施します。これにより、この地域の氷床について、高解像度の基盤地形と、大深度の氷床内部構造の検出、表層堆積量のマッピングなどが得られると期待しています。雪氷観測・化学観測、衛星データ検証のための観測も、ノルウェーとの共同で行います。堆積環境と、氷床への空気取り込み過程の理解のため、150m級の浅層コア掘削とフィルンエア(雪と氷の中間状態に含まれる空気)の採取も実施します。

●共同探査参加機関(測器開発、現場観測、データ解析、モデリング)
国立極地研究所(観測主体、解析)、東京大学(観測、解析、年代モデル)、JAMSTEC(氷床モデル)、ノルウェー極地研究所(観測参加、解析、モデル)、米国アラバマ大学、米国カンサス大学(高性能氷床探査レーダーの開発と、本観測計画への供給、データ解析)

続きます。
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