南極観測隊便り 2018 - 2019


2019/01/17

ラッシングロープ

Tweet ThisSend to Facebook | by ishida
写真は、私達が物資輸送に用いている通称「2トン橇」です。
観測隊の早い時期にノウハウとして確立し、これまで用いられてきました。物資を搭載した後、荷物を押さえるために、現在は「ラッシングベルト」と呼ばれる荷締めベルトが多く用いられています、写真に写っている橙色のベルトです。両端のフックを橇に引っかけ、あとはベルト長を調整してバックルを締めるだけなので大ざっぱで扱いは簡単です。古い時代の観測隊では、こうしたベルトではなく、荷締めには直径15mm程度、長さ10-20m程度のロープを用いていました。これを「ラッシングロープ」と呼んでいます。橇の両側にあるフックを用いて、「南京結び」というロープの結び方をします。写真に写っている橙色の細いロープは、かつてのラッ
シングロープとは異なりますが、この「南京結び」をしています。ラッシングベルトが多用されるようになり、今は「ラッシングロープ」は使用されなくなりました。近年はまず見ません。基地在庫の有無を尋ねてもどうも無いようです。ドームふじ基地には数本の在庫があるのを見ました。
 廃れた昔のスキル?。「でも」、です。ロープのいいところは、1本のロープで、写真のようにキメ細かに橇の多数箇所の荷物を押さえることができます。それに安価です。15メートル長程度のロープが一本あれば、現状でのラッシングベルト3~5本程度以上で押さえている荷物を押さえることができます。ランシングロープ全盛の時代の隊員は「南京結び」は基本スキルとして身につけていて、橇の両側にそれぞれ立ち、自分の側を結んでは橇の反対側に居る相手に投げ渡し、両サイドからテンポ良くどんどん荷を絞めていきました。ロープの利用は、ラッ
シングベルトの価格の高額さや、結果として観測隊の現場での数の不足にも悩まされる度合いは減るとおもいます。今回の現場でも不足気味でした。橇一台の荷を押さえるのに、5本程度のベルトをしばしば使っています。これでおそらく数万円の出費。1本のロープがあれば単純に皆済んでしまうのに。荷締め道具やスキルの多様性や選択肢は、廃れさせず今後に継承すべきものであるとおもいます。
「ラッシングベルト」登場時には、「便利だが大ざっぱな道具がきたもの」とおもっていました。いつの間にか今はそれがロープを駆逐してしまいました。写真のように、ベルトが不足していてもロープがあれば不足部分を「ささっ」と南京で締め上げることができます。


写真:2トン橇に積んだ荷物を押さえているラッシングベルトとラッシングロープ。

藤田記
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