南極地球物理学ノート No. 41 (2016.04.26)

合成開口レーダーによる氷河・氷床変動の研究II―白瀬氷河の流れは何故,東にカーブするのか

渋谷和雄・中村和樹・土井浩一郎


Keyword: JERS-1 SAR画像、画像相関法、白瀬氷河流速の東西非対称性



1. はじめに

先の南極地球物理学ノートNo. 40において、我々は3年間(1996-1998年)の白瀬氷河内部の流動速度変化を詳細に明らかにした。従来(2000年以前)、あまり有効に利用されてこなかった多量のJERS-1 SAR画像は、画像相関法を使うことによって有効に使用できた。氷床接地線(GL)付近では流速の季節変化が見られなかったが、下流30 km(リュツォ・ホルム湾への流出口付近)では、季節による違いが明らかになった。即ち南極の夏季においては冬季に比べ、流速が速いという顕著な差が示された。

今回のノートNo. 41では場所による流速の違い、特に氷河の西側の流線は東側の流線に比べ速度が速いこと、それにより、氷流は下流に行くに従い、全体として東にカーブすることを明らかにする。



2. 画像相関法により得られた流速分布

画像相関法の説明はノートNo. 40の第3節に述べたのでここでは省略する。Fig. 1は1996年6月13日と7月27日のSAR画像ペアから画像相関法により求められた流動速度ベクトル図である。背景となっている色は流速が速いほど暖色系(橙色)が、遅いほど寒色系(紫色)が強くなるよう表現している。赤丸囲いのベクトルは流線 (lineと表現) 1におけるGL付近(POS1と表記) のベクトルで、速度の絶対値は~165 m/44day(1.37 km/yr)である。西側から支流が本流に直交するように合流するため、本流とは斜交する向きになっている。緑丸囲いのベクトルはGL下流10 km、青丸囲いのベクトルはGL下流20 km、白丸囲いのベクトルはGL下流30 kmに相当した位置になっている。Line 1沿いではGLより下流のPOS位置においても流れの向きには西から流入する成分の影響が見られ、Riiser Larsen半島側の沿岸からシート状で氷床が流入していることがわかる。このことはFujii (1981)も言及している。

note41_図01
Fig. 1. 白瀬氷河の流動速度ベクトル。暖色系ほど速く、寒色系ほど遅い。丸印囲いのベクトルはRiiser Larsen半島側から白瀬氷河に向かって直交する向きから流入する流れがあるため、本流と斜交した流れになることを示している。POSはFig. 2で参照する西・中央・東の流線における速度を与える場所を表す。

Fig. 2はいろいろなline番号を横軸にとり、GL位置(POS 1)、GL下流15 km (POS 2)GL下流30 km (POS 3)での流速を縦軸にとって表示したグラフである。POS 1位置での最東端の流線がline 6に相当し、そこから西に向かってline 5, 4, と続くがline 3が本流の西端であり、line 3からline 6までの幅は~9 kmである。従って同間隔で表したPOS 1は本流の西端からさらに~6 kmほど西に当る。Fig. 1の画像が切れる最北端では色掛け部分の流線数が11列になり、幅が広がり暖色が強くなることから、下流に向かうほど速度が増えたことがわかる。

POS 1での流速は四角印が示すようにline 2上で~250 m/44 day(2080 m/yr)、本流西端のline 3上で~295 m/44 day (2450 m/yr)で、そこから若干減少傾向になり、line 4上で~285 m/44 day(2370 m/yr)、line 5上で~290 m/44 day(2400 m/yr)、そしてline 6上で~270 m/44 day(2240 m/yr)と上に凸で本流中心(line 4と5の中間)を挟んで非対称な分布になっている。この傾向はGLより15 km下流のPOS 2位置でさらに顕著になり凸の度合いも大きくなる。GLの下流30 km位置のPOS 3ではline 1, 3, 6での速度が~290 m/44 day(2400 m/yr)、~390 m/44 day(3240 m/yr)、~310 m/44 day(2570 m/yr)と凸の度合いがさらに大きくなり、非対称性が強調されている。

note41_図02
Fig. 2. Fig. 1の各流線番号(横軸: Line)におけるGLからの距離(POS1: GL, POS2: GLの下流15 km; POS3: GLの下流30 km)における流速。西側の流線が速くて東側の流線が遅く、本流中央に対して非対称になっている。

季節性を含めた時間経過を見るため、3年間にわたる流速変化をFig. 3で見てみよう。(a)は中央(line 4と5の間)の流線、(b)は本流西端(line 3)、(c)は本流東端(line 6)の流線に対応する。また、白丸はGL(POS 1)での流速、黒丸はGLの上流30 kmでの流速、×印はGLの下流30 kmでリュツォ・ホルム湾出口(Fig. 1のPOS 3に対応)での流速である。白丸(GL)での流速は西、中央、東、及び時期(1996年4月から1998年5月まで)に関わらずほぼ一定(~290 m/44 day = 2400 m/yr)と見て良く、黒丸(GLの上流30 km)では、やはり時期に関係なく西、東の流線で~50 m/44 day(420 m/yr)とほぼ一定で、中央部のみ~20 m/44 day(170 m/yr)と若干遅くなっているのが目立つ。

note41_図03

Fig. 3. 白瀬氷河の場所により、流速には違いがある。(a) 本流の中央流線、Fig. 2でline 4と5
の中間。(b) 本流西端の流線、line 3。(c) 本流東端の流線、line 6。黒丸:GLの上流30 km、
白丸:GL、x印:GLの下流30 km。詳細は本文参照。

流速の季節変化と東西非対称性が大きくなるのはGL下流30 kmの×印での位置である。1996年での東西速度差は0. 31 km/yrで、1997年では0.29 km/yrであったものが、1998年では0.37 km/yrに拡大している。この拡大はノートNo. 40でも述べたように、1998年4月~5月のリュツォ・ホルム湾からの氷塊複合体流失により、押し出される浮氷舌に釣り合う静水圧平衡力が低下したことと関係があると考えられる。



3. 流行の変化

Fig. 1の速度ベクトル図において南北成分をu, 東西成分をv とすれば、ベクトルの向きθ

       θ = tan-1 (v/u)               (1)

で表される。Fig. 4において、北を0ºとし時計廻りの1回転を360ºの方位とした時、GL(太い円環)より上流側(円の中心側)での流向は、方位~312º (NW) 一定である。季節は右側のboxにNo. 40の時と同様、夏季は暖色系、冬季は寒色系、春・秋は緑で区分けしている。GLより下流側へ進むにつれ、流向は東(方位0º方向)へどんどん振れて、10 km下流では327º、20 km下流346º、30 km下流では2ºと偏りが大きくなり、季節による流向の変化も大きくなっている。

note41_図04
Fig. 4. 白瀬氷河流向の変化。太い黒丸はGL位置。円の中心に向かって上流、外円に向かって下流。薄い青丸は10 km間隔で示したGLからの距離。右側ボックスに流速を求めた時の画像相関ペアが示してあって、濃い青(寒色系)は冬季、赤(暖色系)は夏季、緑と薄い青は(秋と春)を表している。GLより上流では方位312ºであったが、下流に進むに従って東へ(画面右へ)偏移し、GL下流30 kmでは2ºを向いている。

流速の許容誤差は、ノートNo. 40同様、azimuth方向の画素サイズAs = 34.8 m, range方向の画素サイズRs = 28.0 mに対して1回帰44日あたり

note41_図05

(2)

(最小±28.0 mと最大±44.7 mの平均)、即ち、±36.3 m x 365 day/44 day~±0.30 km/yrである。一方、方位の許容誤差Δθ

note41_図06

(3)

になる。GLでの流速は~2.40 km/yrなので、流速の誤差割合は±0.30 km/yr/ 2.40 km/yr ~ 0.13、このとき方位誤差は±25.6º x 0.13 ~ ±3.3ºであろう。つまり、Fig. 4において、許容誤差を考慮しても流れの向きの変化傾向は正しく表現されていると言える。全体としての流向変化は53ºである。



4. 流動速度の東西非対称性の原因

氷河の流れは非圧縮性流体で近似できるので、各流線についての質量保存則からFig. 5のように、速度と氷厚について次の式が成り立つ。

    vcdc = vwdw = vede                           (4)

ここでv は流速、d は氷厚で、添え字c, w, e はそれぞれ中央、西端、東端の流線を示す。
(4)式は連続の式とも呼ばれ、中央値からの偏差を示すΔ を用いて

    vcdc = (vc + Δvw )(dc – Δdw ) = (vc – Δve )(dc + Δde )     (5)

と表すことができる。ここでdcdw の差をΔdw で表し、dcde の差をΔde で表している。ΔvwΔve についても同様である。(5)式において、Δ の2次の項を省略すると、

    Δdw = dc /vc Δvw      (6)

及び

    Δde = dc /vc Δve       (7)

である。

ここでFujii (1982)を参照してdc = 530 mと置いてみる。vc 、vw、ve として1996-1998年の年平均速度の平均をとれば、vc  = 2326 m/yr, vw = 2433 m/yr, ve = 2210 m/yrである。すると(6)式によりdw = 507 m, (7)式によりde = 558 mが得られる。こうして、白瀬氷河の西端氷厚は平均より30 m薄く、東端は平均より30 m厚いという結果が得られる。

note41_図07
Fig. 5. 流速v と氷厚d (近似的に基盤岩までの深さを表す)の模式的な関係。添え字w は西、c は中央、e は東の流線を表す。


5. 流動パターンと磁気異常分布から推定できる基盤地形

白瀬氷河周辺の基盤地形についての情報はそれほど多くない。しかし、Moriwaki and Yoshida (1983) はリュツォ・ホルム湾での音響測深に基づき、氷河河口から60 km北方69.5ºSに向かって、廻りに比べ500-800 m深い溺れ谷(drowned glacial trough)が存在することを示した。そして溺れ谷を横切る測線において、概して東側の壁では傾斜角が8-11ºで急なのに対して西側では緩やかで壁の端もはっきりせず、形が東西非対称であることを示した。

南極域の基盤地形図としてはLithe et al. (2000) によるBedmap1、その更新版であるBedmap2 (Fretwell et al., 2013) が「標準」と言える。Bedmap2は 1 km spacingによるデータを基に 5-km 分解能gridで氷厚を求め、表面高度から氷厚を差し引くことで、基盤地形高度を求めている。この編集図では、基盤深度が海抜以下の地域がみずほ高原を広く覆っていて、Free-air重力異常図で見て、西側より東側の方が、マイナスの度が強い(基盤深度が深い)ことが概要としては示されている。しかし、白瀬氷河河口域ではデータ密度が十分でなく、基盤地形の詳細は明らかでない。一方、Bedmap2も使用しているNogi et al. (2013) の日本―ドイツ共同航空機探査による基盤地形編集図(Fig. 6a)ではどうであろうか。この編集図では、70ºS以南では氷河西側の基盤深度が東側の基盤深度に比べ相対的に浅いので、整合的な結果とは言える。しかし、白瀬氷河河口での東西非対称性を示すほどはっきりした生の基盤地形データはまだ得られていない。

一方、Fig. 6bの地質構造図は示唆に富む。白瀬氷河河口域は地質構造的にはLHC (Lützow-Holm Complex)と呼ばれ4つの帯に分かれるが、それらには3つの正の磁気異常ブロックが含まれ、河口域西側のYBC (Yamato-Belgica Complex)と呼ばれる別の地質区分と明瞭に区別されるという。そして、白瀬氷河流域西岸がFig. 6b図中、濃いハッチで示されるように両変性帯の境界に対応している(Nogi et al., 2013)。

note41_図08 note41_図09
Fig. 6a. 日独共同航空機探査(アイスレーダーによる基盤地形)、Nogi et al (2013)による。詳細は本文。 Fig. 6b. 日独共同航空機探査(磁気測量による磁気異常)、Nogi et al (2013)による。詳細は本文。

直接的なアイスレーダー観測の測線が密でない現状では、白瀬氷河基盤地形の東西非対称性を示す最適なデータは第21次観測隊が実施した航空磁気測量の解釈図になる。Fig. 7aは1980年11月27日1330-1630UT、白瀬氷河上空の一定対空高度(3200-3300 ft)で実施した測量飛行図で、南から北に向かって5測線あるが、Yestekleppaneを通過したS4測線を例にとる。この飛行で得られた観測全磁力からIGRF成分、時間変化成分を差し引いて得られる磁気異常図はFig. 7bの最下図になる。今Fig. 7c(下)のような凸ブロック形状の磁化構造があると仮定し、その磁化方向が白瀬氷河付近でのIGRF1980が指し示す伏角65.3º、偏角46.5ºとすると、flight courseに投影された磁化体のdip angleは78.5ºになる。そして、磁気異常はFig. 7c(上)のような分布になるはずである。即ち、全体として西上がり東下がりに若干傾斜し、edgeでオフセットが現れることになる。

note41_図10
Fig. 7. (a) 白瀬氷河域上空で行われた航空磁気測量飛行測線図、リュツォ・ホルム湾に近い方からS5, S4, S3, S2, S1の5測線がほぼ10 km間隔で実施された。飛行高度は対空一定で約3200-3300 ftである。(b) 得られた観測磁気量(observed)から、地球主磁場(IGRF1980)による成分、昭和基地での定点観測による地磁気日変化成分(diurnal)を差し引いて得られた磁気異常成分(anomalyと書かれた最下図)は、主として基盤地形深度を反映している。後の解釈において、赤い点線を境に西側の磁気透過率κW より東側の磁気透過率κE の方が全体として大きいとしてモデル地形を計算する。


note41_図11
Fig. 7(c) この地域での主磁場の方向に基盤地形が磁化していて、場所的な強度変化の違いがないとすると、図のように突起した地形が生み出す磁気異常分布は上図のプロット曲線のようになる。これは、東西で磁気透過率に違いがないとした場合であるが、(a)図の点線のように東側の透過率を高くすると図で右落ちのトレンドは緩くなる。

S4で観測される磁気異常を再現するためには、南北に無限に長い、切り口が台形状の磁化ブロックを東西に接続して敷き詰め、syntheticに計算した磁気異常曲線が観測された磁気異常曲線に近づくようにinteractiveに二次元構造を変えていけば良い。Fig. 7dの例はstart model下図のような磁化構造に対するsynthetic anomalyが上図実線のようになることを表している。観測される磁気異常(点線)とは一致しないが、1->2->3->4->finalへと逐次的に磁化構造の折れ線近似を変えて行くと、syntheticな磁気異常曲線(実線)が各step上図のように徐々に観測された磁気異常曲線(点線)に近づいて行くことがわかる。そして、final step下図の磁化構造が、求めたい基盤地形を近似的に表していると判断される。

残念ながら、このようにして得られた最終基盤地形の一意性は保証されない。観測された磁気異常曲線自体、基盤地形の形状に由来するだけでなく、Fig. 6bのblock I, II, III, IVの磁化率分布の違いも反映しているからである。ここではtrickyであるが、Fig. 7aの点線の東側の磁化率κEを2.4 x 10-3 emu/cc(一定)、西側の磁化率κWを1.5~1.8 x 10-3 emu/ccで可変としてfittingを行っている。一方、南北方向に無限に長い磁化ブロックモデルも現実にはあり得ない。しかし、第一近似的には、Fig. 7dの近似過程によりS4測線に対応して推定された氷河下の基盤地形は全体としては西上がり東下がりで、4つの起伏を持つと見なしてよいであろう。

同様にS1, S2, S3, S5測線で観測された磁気異常分布に対応する磁化構造が推定出来て、それらは近似的に、その測線下の推定基盤地形(Fig. 7e下図)となる。これらの推定基盤地形を重ね合わせるとFig. 7e上図のように白瀬氷河本流域では窪みとなり、中央(scaleの15~20 km付近)西側の壁では傾斜が緩く、東側では傾斜が大きいという、リュツォ・ホルム湾溺れ谷の上流延長となる構造が推定できる。

note41_図12
Fig. 7 (d): 基盤地形の二次元折れ線モデル化(各stepの下図)により推定されるsynthetic anomaly curve(点線)を試行錯誤により観測された磁気異常(実線)になるべく合うように変化させ、基盤地形を推定する。S4曲線の例である。(e): S1, S2, S3, S5曲線についても同様なモデル化を行ったところ、斜線部が削られた形の基盤地形が得られ、それらを重ねた上図では、西側の傾斜は緩やかで、東側の傾斜がきつい非対称性が再現できた。

このノートは主に下記文献中のNakamura et al. (2007a)及びShibuya and Tanaka (1983)を基に構成した。



参考文献

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Nakamura, K., Doi, K., Shibuya, K., 2007b. Estimation of seasonal changes in the flow
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Natl Inst. Polar Res., 28, 1-17 (special issue).



Q and A

Q1: 氷河の流れの湾曲は、それほど注目すべきことなのですか?
A1: 南極の主だった氷河は大体、coastlineに直交するように、また大体、一定方向に流れています。白瀬氷河のように大陸にあるGLから氷舌部末端30 kmにかけて大きく湾曲する氷河の例は少ないです。南極の主だった氷河は地質あるいはテクトニックな構造の境界を示しているので、いろいろな知見を重ねて行く必要があります。

Q2: 磁気異常から地下構造が推定できることは判りますが、あくまで推定であって確証にとぼしい結果なのでは?
A2: それはおっしゃる通りです。本来的にはアイスレーダー観測、航空重力測定を密に実施し、磁気異常と合わせた3種データセットから、基盤地形、重力・磁気異常を解釈するべきです。しかし、四発クラスの大型航空機でないと、上記3種の同時測定はできません。JARE観測地域では、そのような同時測定はまだ実施できておらず、個々の測定項目のデータも密とは言えません。白瀬氷河は幅~10 kmと狭く、領域も~200 km x 200 kmなので、5 km gridでは不十分で1 km gridの分布が必要です。これがすぐに実現する状況にはありません。Shibuya and Tanaka (1983)の航空磁気測定は今から36年も前の話ですが、まだ、参照可能です。南極での観測は一足飛びに斬新な結果が得られるほど簡単には実施できません。なお、衛星観測で1 km gridの氷厚・重磁力分布を得るのは原理的に不可能です。

Q3: Bedmap2をもう少し詳しく説明して下さい。
A3: Fretwell et al. (2013) には32名が著者として名を連ねています。これらの著者はBedmap2の元データの提供機関を代表しています。日本からも2名が含まれていて、日―独共同航空機探査によるデータ(Y. Nogiが代表)、日本―スウェーデン地上トラバース測量によるデータ(S. Fujitaが代表)などが使用されています。Bedmap1の氷厚使用データ数が1.4 million pointなのに対して新たに83の野外測量データが加わったBedmap2の使用データ数は24.8 million pointです。Bedmap1の時代ではまだ本格的に使用されていなかったGPS(位置精度~2-3 m)がBedmap2データでは標準的に使用されているので、単にデータ数が増えただけでなく、データの質も向上しています。 Bedmap2は1-km spacingの氷厚、氷床表面高度、基盤高度3セットを使用していますが、gridとしては5 km分解能で生成されています。Bedmap1と比べ南極氷床の体積は27 x 106 km3に更新され、平均氷厚は4.6%増え、着底氷床下地形の平均深さも72 m低くなりました。そのため海面下にある氷床面積は10%増えましたが、海面上昇への寄与分は58 mでBedmap1の57 mと大差ありません。