南極地球物理学ノート No. 31 (2014.07.22)

昭和基地ジオイド高の精密決定とBreid湾のジオイド高再考

渋谷和雄・福田洋一


Keyword: ジオイド高、ITRF94座標系、海面形状、EGM96モデルジオイド



1. ジオイド高決定再考

ある地点の標高と楕円体高を計測し、ジオイド高を求めることは測地学の基本であり、Breid湾での決定例(Shibuya et al., 1991)を南極地球物理学ノートNo. 30で述べた。決定に関与する物理量のうち、最大の誤差要因はsatellite Doppler 測位における放送軌道要素がもつ~4 mの不確定さであった。1986年のBreid湾実験後、1990年代半ばにかけて精密宇宙測地技術が飛躍的に進歩して、南極での基準点の位置決定精度は1 mより良くなった。また、geopotential modelの展開次数の決定も360次へと大幅に拡大した。ここでは、1990年代当時の新しい技法による昭和基地基準点ジオイド高の決定と、精密暦によるBreid湾ジオイド高再考を主にShibuya et al. (1999)に基づき述べる。



2. 昭和基地DORIS(SYOB)座標

1998年の昭和基地にはFig. 1のように4つの宇宙測地基準点が存在していた。Aはsatellite Doppler (NNSS)基準点、GはSCAR GPS campaignサイト(具体的にはNo. 23-16 測量基準点)、DはDoppler Orbitography Radiopositioning Intergrated by Satellite (DORIS) SYOB基準点、及びVLBI reference point Rである。

後にpillar上のビーコンSYPBに更新されるDORIS点も1993-97年はphoto 1のようにtower上のビーコンとして機能していた。Boucher et al. (1996; Table T7) によると、このbeacon marker (Photo 1の矢印)のepoch 1993.0におけるITRF94 (International Terrestrial Reference Frame 1994)系での座標値は

      XD = 1766498.873,    YD = 1460274.430,   ZD = -5932211.730          (1)

で、その精度は各成分3 cmであった。なお、(1)式はtide free系で与えられている。

note31_図01
Fig. 1.  (左)オングル島の位置と(右)昭和基地におけるいろいろな基準点マーカーの位置関係

note31_図02
photo 1.  DORIS ビーコンタワーがFig. 1右のD点に建設された。
SYOBは発振アンテナに赤い環でマークされている。

Kanao et al. (1995) はnote31_図03ベクトルを二周波GPS受信器相対測位および経緯儀による簡易測量で求め、
     note31_図03_02  =  (-316.322 m, 62.323 m, -73.692 m)                 (2)

を得た。従って、G点のDORISによるITRF94座標値は

XG, DORIS  = 1766498.873 -316.322 = 1766182.551 m,   
YG, DORIS = 1460274.430 + 62.323 = 1460336.753 m,                          (3)
ZG, DORIS = -5932211.730  -73.692 = -5932285.422 m

となる。

WGS84座標系とITRF94座標系は一般にBursa変換式(下記(4)式の一般式)で関係づけられるが、Tobita (1997)によると、McCarthy (1992)の与えたnote31_図12_2は符号が逆で、正しくは

    note31_図04                (4) 

において、note31_図12 =-3.394 x 10-8 , note31_図3 = 1.454 x 10-9 , note31_図14 = -8.872 x 10-8とのことである。

(3)式を(4)式の右辺に代入し、WGS84系楕円体の測地座標に変換すると、

  ØG = 69˚00'24.600"S, λG = 39˚35'06.152"E, HG = 42.240 m            (4)'

が得られた。



3. 平均海水面への取り付け

Breid湾と異なり東オングル島露岩上の昭和基地のBM 1040 (Fig. 1参照) は潮汐観測により、平均海水面へ取り付けられ、1 mm精度の海抜高度が得られている。第33次隊の測量(5-10 January 1992)ではepoch1992.0において

     hBM1040 = 2.3380 m                     (5)

である。またG点は国土地理院が実施する水準測量路線に含まれていて、BM 1040からの比高が計測されていて、epoch1992.0では以下の値である。

     Δh = hNo.23-16hBM1040 = 18.8165 m                   (5)'

BM 1040の平均海水面への取り付けは度々実施されていて、Odamaki et al. (1991)は見掛け上、平均水位がBM 1040に対して1.0 cm/yrで降下していると述べており、従ってepoch 1993.0におけるNo. 23-16点の海抜高度hG

     hG =  Δh  + hBM1040 + (1992-1993間の見掛けの上昇)

                                    ~ 18.8165 + 2.3380 + 0.01 m = 21.16 m          (6)

と推定された。



4. 昭和基地における実測ジオイド高

平均海水面からジオイド面を求めるためには、海面形状起伏(sea surface topography:SST)を補正しなければならない。時間変化しないGeoid modelと時間変化するSST modelを完全に分離して独立に決めるのはなかなか難しいが、例えばEGM96 geopotential model (Lemoine et al., 1997) には次数20までの付随したSST分布が与えられている。Fig. 2はそのモデルによる0˚-60˚E海域の0.1 m コンター図で昭和基地でのSST値ζSYO

     ζSYO = -1.29 m                                   (7)

と読み取れる。従って、(4)’, (6), (7)式よりジオイド高NSYO, obsはWGS84楕円体上で

     NSYO, obs = HGhG -ζSYO = 42.24 -21.16 + 1.29 = 22.37 m    (8)

と求められる。Table 1は(8)式で得られたジオイド高に関わる測定誤差一覧である。

note31_図05
Fig. 2. 昭和基地周辺域のSea Surface Topography分布図。
Lemoine et al. (1997)のEGM96に付随する次数20までのモデル展開係数に基づき計算された10 cm間隔コンター図。

Table 1  (8)式のNSYO, obs決定に含まれる誤差要因

  誤差要因 誤差の値
(a) DORIS 位置決定 3cm
(b) 地上マークへの取り付け 1cm
(c) Bursaモデル変換  2cm
(d) 平均海水面決定と水準取り付け 1cm
(e) SST決定誤差 20-30cm

formal overall error = (a2 + b2 + c2 + d2 + e2)1/2 < 30 cm



5. モデルジオイドとの比較

Fig. 3はEGM 96モデルジオイド(調和展開係数はdegree, order 360まで:Lemoine et al., 1997)による0˚-60˚E, 60˚-75˚Sのジオイドundulation contour図(1 m 間隔)である。この展開係数はtide freeの理想的な地球楕円体(a = 6378136.46 m, 1/f = 298.25765)上に展開されているので、例えばRapp (1997)による補正項-0.53 mを用いてWGS84楕円体上に変換する必要がある。すると、昭和基地でのモデルジオイド値は

     NSYO, EGM96 = 22.10 m                         (9)

となる。従って実測値とモデル値の差は

     δNSYO, EGM96 = NSYO, obsNSYO, EGM96 = 22.37 - 22.10 = 0.27 m      (10)

である。

note31_図06
Fig. 3. EGM96モデルによるgeoidal undulation. Tide freeの理想的 な地球楕円体(a = 6378136.46 m)に展開された1 m間隔コンター図。 WGS84楕円体上に引き直すためには,この海域では全体的に-0.53 m 補正する必要がある.黒丸の2点が求められたground data。

Lemoine et al. (1997) によると、GPS/levelingで求めたジオイド実測値のEGM96モデルからのずれ(モデル値マイナス実測値)は、Europeで8 cm, Australiaで-80 cm, Scandinaviaで19 cmであったと言う。この場合、各地域とも約30 dataの平均値なので、一概に昭和基地データと比較できないが、昭和基地における0.27 mの偏差は悪い値とは言えないであろう。

OSU91Aモデルジオイド(調和展開係数はやはりdegree, order 360まで:Rapp et al., 1991)とも比較して見ると、理論モデルジオイド値は

     NSYO, OSU91 = 22.95 m     (9)'

となった。(8)式による実測値からのずれは

     δNSYO, OSU91 = NSYO, obsNSYO, OSU91 = 22.37 - 22.95 = -0.58 m     (10)'

なので、EGM96モデルに比べ偏差が拡大する結果となった。



6. Dronning Maud Land の観測再考

6.1 シール岩の擬似観測ジオイド高の結果

南極地球物理学ノートNo. 30で述べたように、satellite Doppler測位によるL0 pointの楕円体高は放送暦を用いた解析なので4-5 mの誤差が避けがたかった。しかし、精密暦自体はDMAが保持しているので、M. Kumar博士に依頼し、再計算して貰ったところ次のような結果が得られた。

     XL0 = 1956937.54,    YL0 = 866768.16,   ZL0 = -5988362.84          (11)

あるいはWGS84楕円体上で

     ØL0 = 70˚27'15.27"S, λL0 = 23˚53'22.36"E, HL0 = 190.01 m            (11)'

ここで楕円体高HL0の決定誤差は1.5 mと見積もられている。

南極地球物理学ノートNo. 30で述べたように、S pointは海域にあるのでマーカーが残らず、L0 pointには竹竿が残ったが、1年もすると雪で埋れてしまい、その後の使用はできなくなる。従って内陸露岩域のシール岩(photo 2)への取り付け測量が必須であった。

設営的な制約もあって、シール岩への取り付けは以下のように行った。まず、S pointのジオイド高を更新すると

     NS point, obs = HL0hp + r  -ζS point = 190.0 -162.5 - 7.4 + 0.72 + 1.43 = 22.25 ~ 22.3 m     (12)

である。(12)式中のhp r  などの値は南極地球物理学ノートNo. 30と同一で、HL0の値をノートNo. 30の(5)式のH0から本ノート(11)'式のHL0へ更新し、さらにFig. 2から読み取ったζS point = -1.43 mの追加が変更点である。Fig. 2に見られるように昭和基地(-1.29 m)からS point(-1.43 m)にかけてSSTは西側へ低下傾向にあり、両点での差は約14 cmである。

S point (Breid Bay)とシール岩の距離は~120 kmと短いので、global geoid modelのundulationが示す差がlocalなジオイド差を示すと考えて差し支えないであろう。EGM96モデルジオイドの場合、その差は0.82 mと計算できるので、シール岩での擬似実測ジオイド高(pseudo-observed geoid height)NSeal, obs

     NSeal, obs = 22.25 - 0.82 ~ 21.4 m          (13)

と求められる。

Table 2は誤差のまとめである。依然、satellite Doppler測位に伴う誤差が卓越し、ジオイドモデル次数打ち切り誤差、SST誤差などが続き、総合的には1.8 mの決定誤差が伴うと思われる。

Table 2.  (13)式のNSeal, obs決定に含まれるパラメーター値見積もりと誤差要因

項目 観測/モデル パラメーター 見積もり 標準誤差
       (m)    (m)
(a) 楕円体高 HL0 190.0 1.5
(b) L0とS pointの高低差 h 162.5 0.3
(c)  S pointのローカルな 平均海水面からのずれ p 7.4 0.3
(d) アンテナ偏差 r 0.72 0.03
(e) 海面形状 ζS point -1.43 0.2~0.3
         

NS point, obs = HL0hp + r  -ζS point =  22.25 m by Eq. (12)

         
(f) S pointのジオイド高 NS point, obs 22.25  
(g) S pointとシール岩の Geoid undulation差   0.82 0.8*
(h) シール岩の擬似実測ジオイド高 NSeal, obs 21.4 1.8**

*  S pointとシール岩のgeoid undulation差そのものをlocalなジオイド高差の最大誤差と見なしている。
** 最終的な総合誤差は (a2 + b2 +c2 + d2 + e2 + g2)1/2 < 1.8 m


6.2 シール岩の基準点座標(楕円体高)

第28次隊の夏期行動中にL0 pointとシール岩基準点No. 25-01を直接GPS相対受信で結ぶことは観測行動の制約から不可能であった。そこであすか基地越冬中に (A) L0 pointとあすか基地高さ基準点間のNNSSトランスロケーションによるsatellite Doppler相対受信 (解析法はShibuya and Kitazawa, 1986に示されているが、重要ではないので記述しない)、(B) あすか基地高さ基準点とシール岩No. 25-01基準点間のGPS相対受信、に分けて結合を実施した(photo 2参照)。

note31_図07

 photo 2. あすか基地と周辺露岩域の位置関係。L0 pointは矢印の方向約100 km先。 No. 25-01測量基準点(後のphoto 3参照)はシール岩に、JMRトランスロケーション及びGPS相対受信はあすか基地の高さ基準点との間で実施した。


(A) に関する相対変位ベクトルnote31_図09はWGS84座標系において

     note31_図09_2  = (-106497.57 m, -37834.35 m, -39655.10 m)             (14)

であり、あすか基地でのJMRアンテナと高さ基準点に取り付けたGPSアンテナ間の小さな変位を補正すれば、あすか基地高さ基準点のWGS84直交座標系での座標値は

     XASK = 1850438.47,    YASK = 828932.65,   ZASK = -6028019.19          (15)

であり、測地座標に変換した座標値は

     ØASK = 71˚31'29.14"S, λASK = 24˚07'50.65"E, HASK = 979.1 m            (15)'

であった。そして、1987年3月16日12:38-13:38 UTに実施した(B)の相対受信により得られた相対ベクトルは

     note31_図10 = (929.77 m, -2123.12 m, -25.19 m)             (16)

であったので、両GPSアンテナの高さの差(1.30 m)を補正した結果、シール岩No. 25-01基準点のWGS84直交座標値は

     XSeal = 1851367.86,    YSeal = 826809.37,   ZSeal = -6028043.14          (17)

WGS84測地座標値は

     ØSeal = 71˚31'29.95"S, λSeal = 24˚03'54.87"E, HSeal = 996.0 m        (17)'

という結果になった。


6.3 シール岩基準点の標高

(17)'によりHSeal = 996.0 m,(13)によりNSeal, obs = 21.4 mであったので、シール岩No. 25-01基準点の標高は

        hSeal = 996.0 -21.4 = 974.6 m        (18)

である。


6.4 シール岩基準点観測ジオイド高その後の結果

第53次隊セールロンダーネ分遣隊の斎田宏明隊員(国土地理院)は2012年1月12日、シール岩のNo. 25-01測地基準点においてGPS受信器Trimble R7 (ver2.26)及びアンテナTrimble Zephyr Geodeticを用いたGPS受信を行った(photo 3)。昭和基地IGS局であるSYOG (説明は別ノートに譲る)や他のIGS局を含めた5点に強い拘束(8 cm)を与え、No. 25-01を含めて、GAMIT ver10.43及びGLOBK ver5.021を用いたプログラムで解いたWGS84系での測量結果は以下になったとのことである。

     ØSeal,2012 = 71˚31'28.856"S, λSeal,2012 = 24˚03'55.016"E, HSeal,2012 = 997.03 m        (19)

シール岩楕円体高については(17)'式より(19)式の誤差の方が小さく< 0.1 mと見なせる。氷床が流動してもシール岩No. 25-01基準点の標高は(18)式で現わされる値から殆ど変わらないので、観測に基づくシール岩ジオイド高を更新すると

     NSeal, 2012 = HSeal,2012hSeal = 997.03-974.6 = 20.6 m    (20)

で、(20)式に付随する誤差はTable 2の(b), (c), (e), 及びHSeal,2012の計測誤差(最大0.1 m)を勘案し、

     σNSeal, 2012 = (0.32 + 0.32 + 0.32 + 0.12)1/2 = 0.53 m        (20)'

であろう。

note31_図11

photo 3. シール岩No. 25-01測量基準点に設置したGPSアンテナ・受信器。看板を掲げるのは第53次セールロンダーネ分遣隊の大岩根尚隊員,撮影は同・斎田宏明隊員。



参考文献

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Lemoine, F.G., Smith, D.E., Smith, R., Kunz, L., Pavlis, E.C., Pavlis, N.K., Klosko, S.M.,
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Tobita, M., Coordinate transformation between terrestrial reference frames. Abstract of
1997 Japan Earth and Planetary Science Meeting, p. 296 (in Japanese).


Q and A

Q1: Sea Surface Topographyをもう少し詳しく説明して下さい。
A1: 平均海水面はひとつの等ポテンシャル面を形成し、陸にも水路を掘って海水を導びいた時できる面に一致し、それをジオイドを呼びます(南極地球物理学ノートNo. 11)。その仮想的な面は、海水の流れや、温度変化のない静的な状態を現しますが、現実には、海流・海水温の地域性により動的(ダイナミック)な変化により、2-3 m規模の凹凸が生じます。その凹凸をsea surface topographyあるいはocean surface topographyと呼びます。Wikipedia http://en.wikipedia.org/wiki/Ocean_surface_topographyを参照して下さい。

Q2: (13)式は擬似ジオイド高ということですが、何故、「擬似」なのですか?
A2: S pointでの観測結果にはSSTモデル値ζS pointが含まれています。また、S pointとシール岩のローカルなジオイド高の差は実測ではなく、EGM96モデルのundulation差を適用しています。このように、(13)式は実測値だけに基づいているわけではなく、モデルによる値、及びモデルの地点差が関与しています。その意味で「擬似 (pseudo)」と呼んでいます。

Q3: 昭和基地もシール岩も、高さ基準値の精度が良くなって行ったことはわかりますが、点数が少ないので、インパクトは小さいのでは?
A3:
基準点での重力測定はLaCoste-Romberg重力計による相対測定から、FG5, A10などの絶対測定値に改訂され、精度と分解能が1桁あがるようになりました。南極では重力も高さも相対測定の点数自体は長年の蓄積で10000点規模になります。点数は少なくても、いくつかの基準点での重力測定値が絶対重力測定で精度が良くなり、また標高(あるいは楕円体高)も精密測位によって更新され精度が向上すると、従来の相対測定点全体の重力異常値の精度も連動して向上します。だからと言って従来の知見をひっくり返すような目覚ましい成果(それをインパクトと言うなら)になるわけではありませんが、測地学はもともと、そうやって発展してきた(発展して行く)学問です。