南極地球物理学ノート No. 3 (2011.10.18)

測地VLBIの原理と発展の歴史


澁谷和雄

Keyword: 測地VLBI, 可干渉性(コーヒーレント), バンド融合成, 遅延時間τ, フリンジ周波数F=f dτ/dt, IVS



1. VLBIの原理

ここでは、理解しやすさを優先し、単純化したストーリーでVLBIの原理について説明する。
銀河系外、地球からはるか遠く数十億光年の距離には準星(クエーサー)と呼ばれる強い電波を発する電波源がある。その位置(赤経α、赤緯δで表す)はほぼ全天に分布し、位置がかわることはない。クエーサーからの電波が地球に到達した時には、幅広い周波数範囲にわたって、同一の振幅を持つ(スペクトルが平坦と言う。図1a参照)平面波で到来し、白色雑音と見なすことができる。すなわち、P地点にあるアンテナ(図1b)が受信するその白色雑音の時系列np (t) は

note03_01数式

で近似できる(図1a)。

note03_01図
note03_02図

Pから平面上、距離d遠方のQ地点にあるアンテナ(図1b)が受信する同じクエーサーからの発振電波はd/c 秒遅れ(ここでcは光速)でQに到達することになるが、dが10 kmとすると、その遅れ(遅延時間という)は約0.03 msである。
Q点での到来電波もやはり白色雑音なので、その時系列は

note03_02数式

で表現できる(図1a)。τを求めるためには、

note03_03数式

を利用する。今、時間軸を少しずらしながら、2つの雑音時系列の相関を計算する。理想的な雑音時系列の場合、ずれの量が真の遅延時間τのときは相関が1、ずれの量がτと異なるときは相関が0になる(図1c)。

note03_03図

現実の地球に即して考えるとP, Qは球面上の点であり、距離が遠くなると、2つのアンテナでみる電波源の共通可視域は限定される。すなわち、受信は有限時間なのでδ(t)では近似できない。さらに地球が自転(角速度ω)しているので、クエーサーへのアンテナ方位角、仰角をP, Qで独立に変えなければならないから(時間変化するから)τも時間変化する。

受信波長(λ= c/f)に対して遅延距離(τc)が1秒あたりに変化する波長の数(波数)Fは観測できる量であり(フリンジレートという)、

F = d(τc)/dt / (c/f) = f dτ/dt    (4)

で表される。

現実の地球上2局のアンテナ受信電波を相関処理すると、δ関数にはならないが、遅延時間τに対応した相関ピークが現れる。こうして、τとFを異なるクエーサー群について実測すれば、2つのアンテナの相対位置に関するパラメータ(基線長ベクトルの3成分)を最小二乗法で決定して行くことができる。これが測地VLBIの基本であるが、これ以上の詳細はVLBIの教科書、例えば、高橋・近藤・高橋(1997)に書かれているので、ここでは省略する。



2. 測地VLBIの歴史

2009年7月24日から約1ヶ月にわたってIVS (International VLBI Service for Geodesy and Astrometry) 関係者間のメーリングリスト(以下ivsccメール)上で測地VLBIの歴史をたどる議論がなされた。その議論をまとめると、測地VLBIの発展は1969年を第一のエポックとして、ほぼ10年おきに、6つのステージにまとめられるだろう、ということであった。測地VLBIはカナダで生まれ、アメリカで発展したものである。従ってivsccメールでは主に両国の事情のみが取り上げられている。


2.1. エポックI, 1969年:最初の測地VLBIセッション

アメリカのジャンスキーが天体からの電波を捉えたのは1931年である。その後の電波天文学発展の延長上に測地VLBIの歴史は位置する。今、直径aのパラボラアンテナが波長λの電波を捉えたとすると、その電波源の空間スケールr(単位はラジアン)、言い換えるとアンテナの指向性を表すビーム角は

r = λ/a   (5)

になる。a = 10 m, λ~ 16.7 cm (1.8 GHzに対応)とすると、r ~ 1.67 x 10-2 radian (約1°)であり、電波源を特定するにはビームが広すぎる。一方、10 km離れた2台の直径10 mのパラボラアンテナをケーブルで結び、共通のローカル信号(LOと書くことが多い)を供給して1.8 GHz電波を観測すると、光の干渉縞に相当する縞模様状の指向性パターンが得られる。そのビーム幅rは実効的に

r = 16.7 cm / 10 km = 57.296 (180˚/π) x (16.7/106) arc second
= 0.93 mas (mili arc-second:ミリ秒角)            (6)

となり、約1000倍、分解能が向上する。しかし安定なLOをケーブルで配信できる距離には限界があり、1969年当時、約10 kmと考えられていた。従って、1 masはケーブル方式での指向性の上限と言える。

ivsccメールであれこれ議論した後に決着した、VLBI(測地目的ではない)の最初の成功例とされるBroten et al. (1967)の観測概要を表1-Iにまとめた。データの記録・再生には市販のビデオテープレコーダーを使用している。周波数バンド幅の1 MHzに対応して必要なテープ再生時刻精度は1 μsであるが、この性能が保証されたことが契機になったと述べられている。テープ記録中の受信波形どうしの干渉パターンと、再生記録波形どうしの干渉パターンは極めて良く一致することが確かめられた(図2)。このように、Broten et al. (1967)はVLBIが実現可能なことを確かめたが、測地学的応用のための考察、解釈は行っていない。

note03_04図

天文VLBIにしても測地VLBIにしても、受信電波の可干渉性(coherentと言う)が必須である。距離が離れ、LOを有線で結べないとき、各局で位相安定性の極めて優れた周波数標準が必要になる。測地学的解釈を行った最初のVLBI観測はHarold Jonesの1969年論文とされているが、ルビジウム周波数標準を使用している。Jones (1969)はVLBI実験の2局配置について、(1)経線上に2局がある場合、(2)赤道上に2局がある場合、(3)2局が任意の緯度、経度にある一般の場合について、遅延時間τとフリンジ周波数F = f dτ/dt の定式化を行い、観測方程式をたてた。(論文のTable 1; p384)。その観測システムについての記述を、表1-IIにまとめた。

Algonquin~Prince Albert間の2143 km基線について、得られた基線長の標準偏差は20 m (9.5 ppm)で、古典的測地・測量でつないだ長さより30 m長いという結果だった。表1-II以外にも5実験を実施、または計画した。実施実験のなかには大陸をまたぐ基線(Canada・Algonquin – UK・Jodrell Bank の5127 km)も含まれていたが、結果は示していない。実験評価として、大気屈折誤差(及び刻時誤差)が許容範囲を越えていて、もっと高い周波数と広いバンド幅が必要と結論づけている。

エポックIは、Hinteregger (1968) による、実効的なバンド幅を周波数スイッチで広げたこと(バンド幅合成)とされている.実効的バンド幅が(BW)Eのとき得られる遅延時間の分解能は

δτ~ δφ/2π(BW)E ~1/[(S/N) 2π(BW)E]   (7)

になる。ここで、S/Nは受信電波の信号対雑音比で、S/N~1とおいてかまわない。従って110 MHzの(BW)Eではδτ~1.4 ns (~42 cm)になる。重要なのは、110MHzのバンド幅(BW)Eすべてを記録する必要はなく、適当な間隔をおいた狭いバンドの窓(チャンネル)を選んで記録すれば良いことである。

遅延時間τはφ/2π対周波数の傾きとして表されるから、図3 (Hinteregger (1986)の原図Fig. 1)に従い、フリンジ位相を外挿して行くことができて、その決定精度はチャンネルをつないで広げて行けば行くほど、すなわち(BW)Eが広がるほど良くなっていく(Eq. (7)が成り立つ)。しかし、時刻同期し、Coherentな周波数スイッチでないと,この広帯域化は実現しない。このスイッチングには100 kHz ステップ切り替えのHP5100を使用したが、LOの位相安定性を~1 rad/hに保つために、水素メーザーが必須であった、と述べている。

note03_05図

表1-III, IVはHinteregger et al. (1972)に記載された1969年1月実験と10月実験の概要をまとめたものである。2つのVLBI実験の基線長一致度(再現性)2 mと古典的測量との一致度3 m + 2 m (3 mより良くはならないが、余分な2 m分は説明可能なはず)は、その後のcm VLBI発展の土台として十分なもので、だから、1969年がエポックIとされている。

表1 初期のVLBI実験

 

I

II

III

IV

論文

Broten et al. 1967

Jones  1968

Hinteregger et al. 1972

実験日時

明記せず

Feb. 1968

11-13 Jan. 1969 (第1実験)

early Oct. 1969 (第2実験)

使用アンテナ

Algonquin 46 m

Algonquin 46 m

NRAO Green Bank 43 m

NRAO Green Bank 43 m

 
     〃 10 m

(Tsys unknown)

(Tsys = 110°K)

(Tsys= 170°K)

   

Prince Albert ?m

     Haystack 37 m     Haystack 37 m
   

(Tsys unknown)

(Tsys = 250°K)

(Tsys= 170°K)

         

測量基線長

~ 200 m

2143 km

845129.7 km

845129.7 km

 
 
 
 
 

使用電波源

3C294, Taurus A

不明

3C273bなど6ヶ

CTA21など5ヶ

         

使用周波数

448 MHz

448MHz

L-band (1599.9~

X-band (7797.1~

 
 
 

1709.9 MHz, 6 channels)

7833.1 MHz, 6 channels)

 
 
 
 

L-band (第1実験に同じ)

 
 
 
 
 

バンド幅

1MHz

4 MHz

110 MHz

36 MHz

         

周波数標準

ルビジウム

ルビジウム

水素メーザー

水素メーザー

位相安定性

1 X 10-11

1 X 10-11

2 - 3 X 10-13

2 - 3 X 10-13

 
 
 
 
 

記録

アナログ

video tape recorder

Mark-I 

Mark-I 

 
 
 

360 kHz 6 channels

 
 
 
 

切り換え 720 kbps

 

観測数

       
     遅延時間 τg

--

7

51

173

    note03_11図

--

note03_12図

52

187

         
    τg  のS.D.
   

0.5 ~ 2 ns

0.5 ~ 2 ns

   

1 ps/s for L-band

 
     

0.2 ps/s for X-band

 
         

推定パラメーターの数

--

遅延時間 1

基線ベクトル座標 3

基線ベクトル座標 3

 
 

電波源位置 2

電波源座標 12

電波源座標 10

 
 

clock 誤差 1

clock offset 10

clock offset 18

 
 
 
 
 

VLBI 基線長

 

測量より30 m 長い

845132.1±0.5 km

845130.8±0.3 km

 
 
 
 
 

誤差推定

 

±100 m

第1実験と第2実験の一致度 2 m

 
 
 

方位のずれ ~ 5 m

 
 
 

測量基線長との一致度 3 m

2.2. エポックII, 1979年:定期的S/X実験の開始

1969年のHintereggerらの実験は、基本的にはMark-Iと呼ばれるシステムを用いている。L/Xバンドの同時受信はできず、しかもL帯(後のS帯もしばらくの間)はnoisyで殆ど精度向上に役立たなかったという(従ってデータベース化されていない)。720 kbpsのデータを7トラックコンピューターテープ(CT)に書き出すと2400 ft一巻が3分で一杯になった(800 bits/inch, 150 inch/s)。この方式の最盛期である1972年の6週間実験(Oktoberfest)では10000本のCTに記録したとのことである。

1970年にも大きな出来事があった。測地VLBIのみならず、固体地球物理学と海洋学発展に関わる技術課題を評価し、当面の到達目標を定め、そのための戦略を議論した会議の報告(ivccメールではWilliamstown reportと呼んでいて、日本からは古在由秀・東京天文台教授が参加している)がNASAから出版された (NASA CR-1579)。宇宙技術諸観測の1970年以降の精度向上は、このときの議論に沿っている。VLBIでの課題は、より信頼性のある水素メーザーの開発、受信のより広帯域化、X/S帯の2周波同時受信などであった。

一方、1970年代後半にはMinster and Jordan (1978)が、プレート運動を体系化した論文を発表している。海底地磁気縞模様や地震の発震機構などをもとに地質年代(過去1億年)における平均的なプレート運動速度を求めたが、その値1~10 cm/yrは大陸間VLBIで十分、実測可能な量であった。1979年がなぜエポックIIかというと、このMinster and Jordan (1978)論文に触発され、NASAが計画した地殻ダイナミクス・プロジェクト(CDP)の最初の実験が1979年8月3日に実施されたからである。


2.3. エポックIII, 1989年:地震断層運動の検出

CDPの実験は1979-1987年にわたって,Mark-IIIと呼ばれるシステムを使用して行われた。最初の実験 (実験名$79AUG03XX; Haystack, NRAO 140, OVRO 130が参加) 当初から標準データベースが作られ、以後アーカイブ化されているので再解析も可能である。1988年に解析結果のサマリー報告(Ma et al., 1989)が出され、プレート運動実測について一応の区切りをつけている。

この時代はまた、極運動観測MERIT(1980年8月―1984年10月)や地球回転変動監視のためのIRIS-POLARIS(NOAA NGSが1984-1993年実施)といったキャンペーン観測が目白押しであった。特にIRIS-POLARISはWestford (Massachusetts)、HRAS 085あるいはFort Davis (Texas)、Richmond (Florida)、 Wettzell (Germany) が加わり(図4)、5日おきの24時間実験となった。1987年にはIAUとIUGGが母体となり、それまでいくつかの機関で独立並行して行われていたVLBI地球回転観測が国際地球回転事業(IERS)として統一されている。

note03_10図

A : Algonquin ; F : Fort Ord ; G : Green Bank, NRAO 140 ; M : Mojave ;
P : Prince Albert ; R : Richmond ; Y : Yakataga

図4 NOAAのhomepage  http://celebrating200years.noaa.gov/magazine/vlbi/Figure2.html の図を改変。Algonquin, Prince Albert局等の位置を追加した。挿入アンテナはAlgonquinの46 mアンテナ。AP間距離が2143 kmである。

ivsccメールが1989年をエポックIIIとしているのは、VLBIによる地震断層運動の検出である。これをエポックとするのは、10年区切りにするためにとってつけた感がしないでもないが、移動VLBI局が1989年にはアメリカ国内で30局に達していて(Ma et al., 1989のTable 1.2)、それら移動局によりロマ・プリタ地震やアラスカ湾地震に伴う地震前後の地表変位を初めて検出できたからと思われる。Argas and Lyzenga (1994)によると1987-1988アラスカ湾地震(Ms = 7.6)によりCape Yakatagaは78 mm 南西方向に動き、1989 ロマ・プリタ地震(Ms = 7.1)に伴ってFort Ordが48 mm北へ動いたという。Fairbanks – Cape Yakataga基線とMajove – Fort Ord基線の地震前後による広域地殻変動に大きな変化はなく、観測された変位を地震断層運動による動きと結論している。

1980-1990年代は日本でも測地VLBIが急速に発展した時期である。1984年には電波研究所(後の通信総合研究所を経て現在、情報通信研究機構)がCDPに参加し、国土地理院、国立天文台・水沢も国内実験、国際実験の実績を重ねている。


2.4. エポックIV, 1999年:IVSの設立

1990年代後半になると、世界中で毎日、どこかの局がVLBI実験をやるようになり、特に国際多局アンテナ間のスケジュール調整が大変になってきた。また、地震断層変位など地域的な地殻変動観測はVLBIというよりGPSの役割になり、VLBIはもっとグローバルな地球基準座標系の構築・維持や地球回転変動に特化した観測を国際的な調整を経て効率的に行う方が良い、ということになった。そして、事業(サービス)という位置づけでIVS が設立されたのが1999年である。IVS参加アンテナにはIERSからの実質的継続事業ということで、IERS Dome Numberという識別票が振られている。ちなみに、南極・昭和基地アンテナもIVSの設立時から参加し、66006S004というDome Numberを持っている。


2.5. エポックV, 2009年:VLBI2010の夜明け
2.6. エポックVI, 2019年:VLBIの未来,リアルタイムVLBI

2.5.と2.6.はVLBIの未来がどうなっているか、10年で区切りをつけたものである。より強固な1 mmVLBIによる地球基準座標系の構築と維持に向けたVLBI2010アンテナのデザイン設計が終わった、というのが現在(2011年10月)の段階である。しかし、実際に定常運用に入ったアンテナ局はまだない。昭和基地アンテナもVLBI2010対応が必要であるが、その未来も実はまだ不透明である。従って、エポックV以降の歴史を語る段階にはない。



参考文献

Argus, D.F., Lyzenga, G.A., 1994. Site velocities before and after the Loma Prieta and Gulf of
Alaska earthquakes determined from VLBI. Geophys. Res. Lett., 21(5), 333-336,
doi:10.1029/94GL00027.
Broten, N.W., Legg, T.H., Locke, J.L., McLeish, C.W., Richrds, R. S., 1967. Long base line
interferometry: A new technique, Science, Vol. 156, 1592-1593.
Hinteregger, H.E., 1968. A long baseline interferometer system with extended bandwidth.
NEREM Record-1968, 10, 66-67.
Hinteregger, H.F., Shapiro, I.I., Robertson, D.S., Knight, C.A., Ergas, R.A., Whitney, A.R.,
Rogers, A.E.E., Moran, J.M., Clark, T.A., Burke, B.F., 1972. Precision geodesy via radio
interferometry. Science, 178, 27 October, 396-398.
Jones, H.E., 1969. Geodetic ties between continents by means of radio telescopes, Canadian
Surveyor, 23, 377-388.
Ma, C., Ryan, J.W., Caprette, D., 1989. Crustal Dynamics Project Data Analysis, 1988: VLBI
Geodetic Results, 1979-87. NASA Technical Memorandum 100723, 233pp.
Minster, J.B., Jordan, T.H., 1978. Present-day plate motions. J. Geophys. Res., 83, 5331 - 5354.
NASA CR-1579, 1970. The Terrestrial environment: Solid-Earth and ocean physics, prepared
under Contract No. NAS 12-2180 by MIT Cambridge, Massachusetts for Electronics
Research Center, National Aeronautics and Space Administration. (Williamstown report)
高橋富士信・近藤哲朗・高橋幸雄,1997. VLBI技術,オーム社ウェーブサミット講座,258pp,
ISBN 4-274-07852-3.



Q and A

Q1: ivsccメーリングリストではどのような人達がこの議論に参加したのですか?
A1: Marshall Eubanks, Alan Whitney, Dirk Behrend, Tom Herring, John LaBrecque, Tom Clark, Leonid Petrov, Craig Walker, Pierre Kaufmann, John Gibson, Kurt Lambeck, Patrick Charlot, Bill Petrachenko, Zivony Malkinです。所属は示しませんが、多くはVLBIのベテランで、いずれもgoogleで調べればどういう専門家か,すぐに判る人達です。



Q2: 式(6)の1ミリ秒角でも指向性は不十分なのですか?
A2: 宇宙の果てまでの距離が137億光年として、1ミリ秒角が見込む範囲の直径は
137億光年 x π/ (180 x 3600) ~ 6.7万光年なので、とても単一の星とはみなせません。



Q3: プロジェクト名や技術用語にやたら省略形がでてきてかないません。何とかなりませんか?
A3: 宇宙測地学は装置も大がかりで、国際的に多くの研究者・技術者が関わるので、長ったらしい用語は、関係者の誰もが理解しやすい省略形(acronymと言います)でやりとりするのがふつうです。語の頭文字などをつないで発音しやすい造語になっています。慣れて貰うしかありません。なお、このノートに出てきて本文で明記されていない省略語の原形は次の通りです。

CDP: Crustal Dynamics Project
IAU: International Astronomical Union
IERS: International Earth Rotation Service
IRIS: International Radio Interferometric Surveying
IUGG: International Union of Geodesy and Geophysics
MERIT: Monitor Earth Rotation and Intercompare Techniques
NASA: National Aeronautics and Space Administration
NOAA: National Oceanographic and Atmospheric Administration
NGS: National Geodetic Survey
POLARIS: POLar-motion Analysis of Radio Interferometric Surveying



Q4: 地名もたくさん出てきてかないません.
A4: 覚える必要はないでしょう。大体の位置が判って、基線長がどれくらいあるか見当が付けば良いと思います。図4に、このノートに出てきたアンテナサイトの場所を示します。 写真はAlgonquinの46 m アンテナです。AP間の距離が2143 kmです。