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 研究成果報告書(平成12年2月発行)より

はしがき

 エネルギーを多量に消費する人間活動は、地球温暖化、オゾン層の破壊、降水の酸性化など地球規模での環境の破壊を誘引している。人間活動から隔絶した南北両極は、こうした地球規模の環境変化を監視するのに優れた地域である。
 しかし、南北両半球での陸海域の配置の相違を反映して、南北両極での大気大循環、海洋循環は大きく異なり、地球規模の環境変化の発現は両極で対称的な相違を見せている。両極を対比すると、オゾン層の破壊は南極で、また温暖化や降水の酸性化は北極で顕著に現れている。我が国は、南極観測事業により南極圏での観測には長い実績を有し、オゾンホールの発見、二酸化炭素など大気微量成分の高精度観測、氷床深層コア掘削、海洋での生物基礎生産観測などで世界をリードする成果を上げてきている。
 地球環境変化の真の理解のためには、南北両極での観測と研究が重要であるが、北極圏における環境変動研究は十分に実施されておらず、平成7年4月に学術審議会は「地球環境科学の推進について」を、また同年6月に測地学審議会は「地球科学における重点的課題とその推進について」を建議し、その中で北極圏における環境変動に関わる研究の重要性を指摘した。こうした背景のもと、国際共同研究事業「北極圏環境観測」が企画され、平成7年度から4カ年計画で実施された。また、本国際共同研究事業は、1990年に設立された国際北極科学委員会(IASC)が提唱する国際北極圏協同研究計画の一環をなしている。
研究分野としては「大気圏」、「雪氷圏」、「寒冷海洋圏」および「陸域生態環境圏」の4分野で、北極圏環境に関わりのある以下の研究課題を、国内外の共同研究として実施した。
   1.北極圏における地球規模大気環境変動の研究
   2.環北極圏雪氷コアによる環境変動の研究
   3.北極圏におけるツンドラ生態系観測と陸域環境特性の研究
   4.北極海ポリニア航海計画
 また、本国際共同研究事業のまとめてとして、2000年2月に「第2回北極圏環境変動研究に関する国際シンポジウム」を開催し、得られた国内外の共同研究の成果の発表と情報交換を実施した。
 本報告は、平成7年度から4カ年計画で行われた国際共同研究事業「北極圏環境観測」の活動報告と研究成果の概要をまとめたものである。本計画の実施にあたっては、さまざまな人の御支援と御協力を得た。関係各位に深甚なる謝辞を表するものである。 

研究総括   藤井理行
(国立極地研究所北極圏環境研究センター)
2000年2月29日

1. 研究課題

 「大気圏」、「雪氷圏」、「寒冷海洋圏」および「陸域生態環境圏」の4研究分野で、北極圏環境に関わりのある以下の研究課題を実施した。

1)北極圏における地球規模大気環境変動の研究
 大気微量成分の変動を北極域の一つの代表点(スバールバル諸島スピッツベルゲン島)で観測を継続するとともに、航空機による広域観測、観測船による海洋での温室効果気体の交換に関する観測を行った。またACSYSと関連して、大気環境変動をもたらすエアロゾル、水蒸気、微量気体の輸送、生成、消滅過程の観測のほか、IASCに関連して大気中のオゾンの変動の観測を実施した。

2)環北極圏雪氷コアによる環境変動の研究
 環北極海雪氷コア観測計画(ICAPP)に参加し、北極圏を取り囲む代表的な地点(グリーンランド氷床、スバールバル諸島、北極カナダ、北極ロシア)で雪氷コア掘削を実施し、得られたコアの解析を進めた。同時に極域の代表的な雪氷域(シベリア東部、スバールバル諸島、グリーンランド氷床など)で大気・雪氷間の物質循環過程や衛星の地上検証に関る観測を実施した。

3)北極圏におけるツンドラ生態系観測と陸域環境特性の研究
 国際ツンドラ実験計画(ITEX)に関連して、スバールバル諸島域の海洋性気候の氷河後退跡地で気候温暖化の影響による生態系変動を観測した。同時に陸上生態系と気候変化のフィードバック(FATE)に関連して、土壌呼吸速度の温度依存性などエネルギー収支過程、及びポリゴンの水循環過程と生物の応答について、スバールバル諸島域及びシベリア域の大陸気候の永久凍土帯で観測を実施した。

4)北極海ポリニア航海計画
 IASC提唱のプロジェクトであるBASIS/BESISや、AOSB/IAPP提唱のノースウォータポリニア航海観測(NOW)に参加し、バフィン湾、バレンツ海等の海域において開水面(ポリニア域)と海氷域にて比較観測を実施し、海面状態の差異が大気と海面間のエネルギー・物質交換過程に関る観測を実施した。さらにこれら開水面および海氷域の動植物プランクトンをはじめとする生物活動の差異を明らかにする観測を行った。また、グリーンランド海、バレンツ海において海洋の物理構造に関する観測を実施した。    【トップへ】

2. 研究組織

研究総括
  渡辺興亜(国立極地研究所究所研究系、平成7〜8年度)
  藤井理行(国立極地研究所究所北極圏環境研究センター、平成9〜10年度)

研究分担者(所属・職は平成10年度時点)
1)北極圏における地球規模大気環境変動の研究
  岩坂泰信(名古屋大学・太陽地球環境研究所・教授)
  中澤高清(東北大学大学院・理学研究科・教授) 
  木村龍治(東京大学・海洋研究所・教授)
  太田幸雄(北海道大学大学院・工学研究科・教授)
  上田 博(北海道大学大学院・理学研究科・助教授)
  山内 恭(国立極地研究所・南極圏環境モニタリング研究センター・教授)
  岡野章一(国立極地研究所・研究系・教授)  
  和田 誠(国立極地研究所・研究系・助教授) 
  塩原匡貴(国立極地研究所・南極圏環境モニタリング研究センター・助教授)
  森本真司(国立極地研究所・北極圏環境研究センター・助手)
2)環北極圏雪氷コアによる環境変動の研究
  本堂武夫(北海道大学・低温科学研究所・教授)
  高橋修平(北見工業大学・工学部・教授)
  庄子 仁(北見工業大学・工学部・教授) 
  小林俊一(新潟大学・積雪地域災害研究センター・教授)
  西尾文彦(北海道教育大学・教育学部・教授)
  渡辺興亜(国立極地研究所・研究系・教授)
  藤井理行(国立極地研究所・北極圏環境研究センター・教授)
  神山孝吉(国立極地研究所・研究系・教授)
3)北極圏におけるツンドラ生態系観測と陸域環境特性の研究
  増澤武弘(静岡大学・理学部・教授)
  小島 覚(東京女子大学・文理学部・教授)
  幸島司郎(東京工業大学・理学部・助教授) 
  大畑哲夫(北海道大学・低温科学研究所・教授)
  小泉 博(農業環境技術研究所・主任研究官)
  神田啓史(国立極地研究所・北極圏環境研究センター・教授)
  大山佳邦(国立極地研究所・研究系・教授)
4)北極海ポリニア航海観測計画
  高橋正征(東京大学・教養部・教授)
  若土正曉(北海道大学・低温科学研究所・教授)
  池田元美(北海道大学大学院・地球環境科学研究科・教授)
  滝沢隆俊(海洋科学技術研究センター・主任研究員)
  福地光男(国立極地研究所・南極圏環境モニタリング研究センター・教授)
  伊藤 一(国立極地研究所・北極圏環境研究センター・助教授)
  工藤 栄(国立極地研究所・北極圏環境研究センター・助手)
  牛尾収輝(国立極地研究所・北極圏環境研究センター・助手)           【トップへ】

3. 国外の参加研究機関

1)北極圏における地球規模大気環境変動の研究
  ノルウェー・ノルウェー極地研究所
  ノルウェー・ノルウェー大気研究所
  ドイツ・アルフレッドウェゲナー極地海洋研究所
2)環北極圏雪氷コアによる環境変動の研究
  ノルウェー・ノルウェー極地研究所
  ノルウェー・オスロ大学
  ロシア・北極南極研究所
  ロシア・ヤクーツク永久凍土研究所 
  カナダ・地質調査所
  デンマーク・コペンハーゲン大学ニールスボア研究所
3)北極圏におけるツンドラ生態系観測と陸域環境特性の研究
  ノルウェー・ノルウェー極地研究所
  ノルウェー・トロムソ大学
  ノルウェー・オスロ大学
  ロシア・北極南極研究所
4)北極海ポリニア航海観測
  ノルウェー・ベルゲン大学
  ドイツ・アルフレッドウェゲナー極地海洋研究所
  ノルウェー・ノルウェー極地研究所
  ノルウェー・スバールバル大学
  カナダ・ラバル大学
  イギリス・ケンブリッジ大学スコット極地研究所                  【トップへ】

4. 年次計画

 本国際共同研究事業は、平成7年度 から平成10年までの4カ年にわたり実施された。4研究分野における研究課題別の実施状況を以下に示す。

1年次

2年次

3年次

4年次

1)北極圏における地球規模大気環境変動

(1)スバールバル諸島での長期地上観測による時間変動観測

(2)スバールバル諸島等での大気状態鉛直分布の把握

(3)航空観測機による広域大気鉛直・水平分布観測

(4)北極圏高緯度海域における二酸化炭素の吸収に関する観測

2)環北極圏雪氷コアによる環境変動の研究 

(1)極域カナダ氷河でのコア掘削および雪氷調査

(2)ロシア北極諸島で雪氷掘削

(3)スバールバル諸島での雪氷観測

(4)グリーンランドにおける氷床深層掘削国際共同計画参加

(5)東シベリアにおける広域積雪観測

3)北極圏におけるツンドラ生態系観測と陸域環境特性の研究

(1)環境変動に対するツンドラ地域の生態系応答現象観測

(2)大陸の永久凍土帯での気象・生態観測

(3)ツンドラ域における熱、水、温室効果気体収支に関する観測

4)北極海ポリニア航海観測計画

(1)北極域ポリニアにおける航海観測

(2)海氷域の海氷運動・エネルギー物質交換量の観測

(3)海洋環境と生物過程の相互作用に関する観測

(4)スピッツベルゲン海域における海鳥の採餌生態の研究

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