「しらせ」の母港は海上自衛隊の横須賀基地

横須賀基地の「しらせ」を訪問

日本から遠く離れた南極の観測は、南極観測船が支えている。基地を維持する燃料や食糧、機材の輸送は船でなければ運べないのだ。「しらせ」は、南極観測のために文部省(現・文部科学省)が建造し、海上自衛隊が運航している船で、海上自衛隊の自衛艦の一つとして、横須賀基地を母港としている。

「しらせ」の輸送能力は、昭和基地の近代的な設備を実現させ、あすか観測拠点やドームふじ基地の建設など、より広域の観測活動を可能にしたのだ。

「しらせ」船名の由来

船首に記された「しらせ」の船名

「しらせ」という名前は、建造当時に当時の文部省の南極地域観測統合推進本部が一般公募し、62275通の応募から選考して決まった。
海上自衛隊による説明では、昭和基地に近い「白瀬氷河」にちなむものとされている。海上自衛隊の隊中の決まりで砕氷艦の名称は「名所旧跡の名」となっているからだ。ただし、一般的には日本人として初の南極探検をおこなった白瀬矗(しらせのぶ)陸軍中尉にちなんでつけられたものと考えられている。
また、船の一般名称は海上自衛隊では正式には「砕氷艦」と呼んでいるが、文部科学省では「南極観測船」と呼んでおり、新聞などで報道される名称も「南極観測船」が多い。

解説ビデオ

母港・海上自衛隊横須賀基地の「しらせ」

案内役をしていただいた「しらせ」の大鋸(おおが)船務長

日本の歴代南極観測船

「しらせ」は3代目の日本の南極観測船だ。1983年から「ふじ」に替わって南極観測隊の輸送にあたってきた。
2008年で25年の就航期限を終える「しらせ」は、新しい観測船にバトンタッチする予定だ。

初代南極観測船「宗谷」

日本の南極観測を拓いた
第1~6次(1957~1962年)6回参加

1957年に南極大陸のオングル島に第1次南極観測隊を上陸させ、昭和期地の開設を成功させた。「宗谷」は建設当初から数奇な運命をたどった船だった。

基準排水量:2,497トン / 全長:78.3m

「宗谷」の歴史

1936年 耐氷構造の貨物船として「ボロチャエベツ号」として進水。旧ソ連の発注だったが注文が破棄され、引き取られなかった。
1938年 「地領丸」と名を変えて完成 辰南汽船の所有となる
1940年 旧海軍が北洋の輸送・測量船として購入 特務艦「宗谷」と改名
戦後は米軍に徴収され、返還後に大蔵省の引き揚げ船として活躍
1949年 海上保安庁の灯台補給船「そうや」となる
1955年 砕氷船「宗谷」として改造 南極観測参加
1955年 昭和基地を開設 第1次越冬隊成功
帰途、氷海に閉じこめられオビ号に救助される
1956年 1次越冬隊収容 越冬隊は断念
1957年 3次越冬隊成功 タロ・ジロ生還
1958年 4次越冬隊成功
1959年 5次越冬隊成功
1958年 5次越冬隊を収容 南極観測中断へ
1963年 海上保安庁の巡視船として北洋を警備救難
1978年 退役
現在 東京の「船の科学舘」で展示公開されている

2代目南極観測船「ふじ」

我が国初の本格的砕氷船
第7~24次(1965~1982年)18回参加

我が国初の本格的砕氷船で、「宗谷」の老朽化で打ち切られた南極観測を再開するために建造された。「ふじ」から運航が海上保安庁から海上自衛隊に変わった。
積載能力は「宗谷」とあまり変わらないが、より大型の輸送用ヘリが2機となり、離れた距離から昭和基地まですべての物資が空輸できるようになった。また洋上観測設備が充実され、観測船として多様な観測をおこなった。
「宗谷」にくらべ、格段に砕氷能力が増強されたが18回の航海でスクリューの折損や氷に閉じこめられて航行不能になるなど、昭和基地への接岸成功は6回のみだった。

「ふじ」の性能

基準排水量 5,250トン
全長 100m
喫水 8.3m
速力 17ノット
主機 ディーゼル発電機による電気推進式
推進軸 2つのスクリューを持つ2軸
出力 11,900馬力
搭載ヘリ ヘリコプター3機搭載

現在は名古屋港に係留され、博物館として公開されている

3代目南極観測船「しらせ」

世界有数の大型砕氷船
第25次(1983年)~ 49次( 2008年)

前「しらせ」は世界有数の大型砕氷船だ。前「しらせ」は47次まで23回の航海で、接岸できなかったのは、1回だけだった。氷に閉じこめられたオーストラリアの観測船ネラ・ダン号(27次)やオーロラ・オーストラリス号(40次)の、2度にわたる救出もおこなっている。昭和基地への接岸でみると、「宗谷」は1次から6次まで、6回の航海で一度も接岸できなかった。「ふじ」は7次から24次まで18回の航海で接岸成功は6回だった。

前「しらせ」の性能

基準排水量 11,600トン
全長 134m
全幅 28m
喫水 9.2m
速力 19ノット
主機 ディーゼル6基・主電動機6基
ディーゼル発電機による電気推進式
推進軸 3つのスクリューを持つ3軸
出力 30,000馬力
搭載ヘリ 輸送用2機
観測用1機

4代目南極観測船「しらせ」

第50次(2008年)~

コンテナ方式の荷役システム、船体塗装による海洋汚染を防ぐステンレス外装、新しいヒーリング(横揺れ防止)機構などを持つハイテク船で、観測隊員搬送数は80名。

「しらせ」の性能

基準排水量 12,500トン
全長 138m
全幅 28m
深さ 15.9m
速力 15ノット
主機 ディーゼル発電機による電気推進式
推進軸 2つのスクリューを持つ2軸
搭載ヘリ 輸送用2機
観測用1機
乗員 179名
観測隊員 80名

コンテナ荷役システム

ステンレスのアイスベルト