ペンギンについてのQ&A

ペンギン研究者の加藤明子さんのもとに寄せられた質問と回答を掲載しました。
加藤明子さんが作成するページには、他に魚などのQ&Aも紹介されています。)

問い(Q)をクリックすると答えを見ることができます。

ペンギンはどのくらいの速さで泳いだり、歩いたりするのでしょう?
種類にもよっても、状況によっても違うのですが、アデリーペンギンの場合、
歩く速さ 0.6m/s(時速2キロくらい)
腹ばいで滑るときの速さ 0.8m/s (時速3キロくらい)
泳ぐ速さ  2.0m/s (時速7キロくらい)
瞬間的にはもっと速く泳ぐこともできますが、 だいたいこのくらいのようです。
あまり知られていませんが、走ると意外と速いんです。
ペンギンは何羽くらいいるのでしょう?
ペンギンは南半球に約17種類います。
ペンギンは繁殖期をのぞいて、海で暮らしているので、数を正確に数えることはできません。南極や亜南極には8種類(人によっては7種類)、7500万羽くらい、温帯から熱帯には9種類(人によっては10種類)、400万羽くらいいるようです。数が多いのはマカロニペンギンとヒゲペンギン、少ないのはガラパゴスペンギン、キガシラペンギン、フィヨルドランドペンギン、フンボルトペンギンです。
ペンギンは冬の間は何をしているのでしょう?
種類にもよっても違うのですが、夏に南極大陸の露岩で子育てをするアデリー ペンギンの 場合、冬の間の生態は実は余りよくわかっていません。たぶん海氷縁域まで北上して、海で餌をとって暮らしているといわれています。コウテイペンギンの場合 は冬に海氷上でヒナを育てます。卵の間は雄が温め、雛が小さいうちは雄と雌は交代でヒナを守ります。雛が大きくなると、雄雌ともにえさを取りに行きます。 南極の周りの海は冬になると氷におおわれてしまうので、 海の中で餌を採るペンギンは、氷のあまり張ってないところまで行かなくてはなりません。そのため氷の上を長い距離歩いて、海氷縁あるいはポリニア(氷 が張っていないところ)までいって、海に入って餌を採ります。
ペンギンは氷や雪に上に立っていて、足が冷たくならないのでしょうか?
冷たいです。
ペンギンが冷たいと感じているかどうかはわかりませんが、実際、 足の温度はかなり低くなっています。しかし足首のところで冷えた静脈血と暖か い動脈血の間で熱交換を行うことによって、体の熱をなるべく逃がさないように しているため、体温が下がってしまうことはありません。
ペンギンの数は増えているでしょうか?減っているのでしょうか?
種類によって、増えてるのもいれば、減ってるのもいます。
オーストラリア、ニュージーランド、アフリカ、南アメリカのペンギンは減っているものが多いです。これはたぶんヒトが海を汚したり、営巣地の環境を壊したり、魚を捕りすぎたりしているためです。
亜南極の島にいるキングペンギンは増えています。
キングペンギンは昔、脂をとるために人がたくさん殺してしまったので、とても数が減ってしまいました。しかしその後、とるのをやめるとどんどん増えてきたためです。
南極のアデリーペンギンの場合、南極半島などの比較的暖かいところでは、減ってきています。一方、もっと寒いロス海や昭和基地の近くではアデリーペンギンは増えてきています。これは海の氷に関係があると考えられています。
ペンギンミルクって何でしょう?
コウテイペンギンのオスが孵化したばかりのヒナに与える餌、食道からの分泌物で、タンパク質59%、脂肪28%が含まれています。孵化からメスが帰ってくるまでの10日間くらいは、このペンギンミルクで育ちます。このペンギンミルクだけでも体重が2倍になるまで育てることができます。
コウテイペンギンは赤ちゃん泥棒をするって本当でしょうか?
コウテイペンギンは繁殖の途中で自分のヒナを失ってしまったときなどに、他のヒナをとって抱こうとします。激しい取り合いになって、ヒナが死んでしまうこと も少なくありません。また、せっかく盗んだヒナを最後まで育てるわけではなく、数日後には放りだしてしまいます。これは繁殖に失敗しても高いプ ロラクチンレベルを保っているのが原因だといわれています。厳しい環境で繁殖を続けるため、プロラクチンというホルモンは、繁殖の衝動を高めます。しかし多すぎるプ ロラクチンがこのような悲劇を引き起こします。
アデリーペンギンの命名の由来は何でしょう?
アデリーはフランス人探検家デュモンデュルビルの奥さんの名前です。彼は1840年、南極大陸の1部を発見し、奥さんの名前からアデリーランドと名付けました。同じ場所で見つかったペンギンもアデリーペンギンと呼ばれるようになりました。これは彼がペンギンにも奥さんの名前を付けたのか、それともアデリーランドのペンギンだからアデリーペンギンになったのか、定かではありません。ぎゃーぎゃーうるさいペンギンをみて、「うちの奥さんみたいだ」と思ったなんて、失礼な説もあるようです。
なんで北極にはペンギンがいないのでしょうか?
ペンギンは7100万年くらい前に南半球のゴンドワナ大陸に現れ、冷たい海流に乗って南半球全体に分布を広げていきました。赤道あたりは餌が少なため、 赤道を越えてさらに北へ分布を広げたペンギンはいません。唯一、北半球で繁殖するのがガラパゴスペンギンです。冷たくて餌の豊富なフンボルト海流にのって赤 道まで到達したようです。もし北極にペンギンがいたら、飛ぶことのできないペンギンはホッキョクグマやキツネに食べられてしまうでしょう。北極にはペンギ ンとよく似たウミガラスの仲間がいます。彼らは海の中を飛ぶように泳いで餌をとり、空を飛ぶこともできます。
どうしてペンギンは鳥なのに空を飛べないのでしょうか?
陸上に天敵のいなかったペンギンにとって、空を飛ぶことは必要はありませんでした。それよりも海の中で自由に泳ぎ回って餌をたくさんとるために、体を変化さ せたのです。翼のかわりに板のようなフリッパー、軽い骨の代わりに頑丈な太い骨、ふわふわの羽毛ではなく完全防水の羽毛。ペンギンは空を飛べないかわり に、海の中を飛びまわっています。
ペンギンは何メートルもぐれるのでしょうか?

体重30kgほどのコウテイペンギンは最高565メートル、4kgのアデリーペンギンは 最高170mまで潜った記録があります。またペンギンの中で一番小さいリトルペ ンギン(1kg)は 最高69mです。

大きな種類ほど深く長くもぐることができます。絶滅してしまった巨大ペンギン(体長1.6m、体重80kg!)はいったいどのくらい潜っていたのでしょうか? ちなみに一番深く潜る哺乳類の記録はマッコウクジラ(体長12〜18m、体重 25〜50t)の2085m。一番長 く潜った記録はミナミゾウアザラシ(体長4〜6m、体 重2〜4t)の2時間です。
リンク:http://polaris.nipr.ac.jp/~penguin/penguiness/
リンク:南極動物図鑑(http://polaris.nipr.ac.jp/~penguin/oogataHP/zukan/zukan.htm

ペンギンはどうして寒い南極で暮らせるのでしょうか?
陸の上はとても寒いけれど、ペンギンを襲う天敵がいないし、海の中はとても豊かで、ペンギンの餌がたくさんあります。冷たい海で餌をとるペンギンは、 脂肪と羽毛で保温をしています。特にこの羽毛はドライスーツのように水をはじき、ダウンジャケットのようにあたたかです。そして氷の上で足が冷たくなっても体は 冷たくならない仕組みや体の表面から熱を逃がさない仕組みももっています。そして陸の上で寒いときには押しくらまんじゅうをして寒さをしのぎます(ハドリング)。実はペンギンは暑さに弱くて、南極の夏の天気の良い穏やかな日には、フリッパーをあげて脇の下の風通しをよくし、口を開けてハ ァハァとあえいでいたりします。
地球が暖かくなると、ペンギンが死んじゃうって本当でしょうか?
南極半島などの比較的暖かいところでは、アデリーペンギンの数が減ってきています。一方、もっと寒いロス海や昭和基地の近くではアデリーペンギンは増えてき ています。これは海の氷に関係があると考えられています。もっともっと地球が暖かくなってしまったら、ペンギンにも人間にも住みにくくなってしまうでしょうね。
一度人に捕獲されたペンギンは「人臭い」ために仲間はずれになったりしないのでしょうか?
ないと思います。
ペンギンは見た目(視覚)や鳴き声(聴覚)で親やつがい相手を認識しており、臭い(嗅覚)は使っていません。実際、ペンギン観察の作業が済んで放してやると一目散に自分の巣の場所に戻っていって、つがい相手と鳴き交わしたりします。ヒナも特に気にしている様子はなく、すぐに餌ごいを始めたりします。アデリーやキングの場合、周りの連中は、近くを通るときにつついたりしますが、これは営巣地の中にも小さな縄張りがあるからです。お隣さんがその中に入ってきても激しく攻撃 します。
南極でオゾンホールができて紫外線が増えるとペンギンはどうなるのでしょうか?
わかりません。
今のところは、紫外線が増えてペンギンに影響が出ているという話は聞きませんが、人の場合と同じように、眼の病気(角膜炎や白内障)、皮膚ガン、免疫力の低下などの影響が出る可能性はあります。しかしそれを調べることは難しく、はっきりとわかるほどの影響が現れるのは、何年も先かもしれません。そのオゾンホールもあと45~60年くらいで消滅すると予測されています。南極の動植物に影響が出る前に消えてほしいものです。